えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

読みかけ「手仕事の日本」の字体と絵について

2009年04月10日 | 読書
とびっきりの字体です。
指先のある「手」、
その指先からつながる頑固そうな「仕」、
まるで「べろ出しチョンマ」のような「事」、
つづけると「手仕事」、
木彫りの黒で染まったこれこそ、柳宗悦『手仕事の日本』の始まりです。

この字体をつくったのは芹沢介というかたで、
先日の「アーツ・アンド・クラフツ」展のトリ一歩手前、
棟方志功の「十大弟子」の隣に、東北の生活を染めた屏風と、
鮮やかな青と緋色が、邪魔にならずにとびこんでくる日本地図が
展示されていました。
本書では挿画を担当しています。

『手仕事の日本』では、柳宗悦の紹介する日本全国の民具が、
みな芹沢の手によって写真よりも忠実に残っています。
たとえば「羽後坂田の柄杓」の絵では、
柄に対して垂直に、水をすくうカップが取り付けられている
柄杓が、カップを構成する木の組み合わせを模様のように黒白で
単純化しながらも、器の厚さと柄の太さを描き分ける線の細かさです。
四隅のとれた四角形の間を抜いた枠で絵をくるっと取り囲み、
はんこのように開いたページの左側、真ん中よりもすこし上側に
ぽんと押してあるのです。枠の左上の肩がかしげているのがほっこりします。

こうした絵が、およそ100点ほどでしょうか、何しろ第二章「日本の品物」
が大体260ページほどある中で、そのページの半分には必ず彼の挿絵がついて
いるのです。どのページをぱっとひらいても、芹沢の絵は
ページの中から持ち帰りたくなるほどつやつやの芸をあらわしてなりません。

芹沢介は、すこぶる実直な線の人だと思います。
とてもほかほかした身近で、でも遠い線の持ち主です。
今この人の線を模倣しようと言う人は、たぶんいないと思いますし、
これからもきっと出ないでしょう。生活への態度があまりにも違いすぎます。

柳の中身についてはまた後日、かきたいとおもいます。
コメント
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