(1)岸田首相は防衛費5年で43兆円増額、少子化対策倍増を打ち上げてその財源を歳出の見直し、抑制、予算剰余金でまかない、足りない部分を増税で補うと述べているが、これに法人税、社会保険料など名前があがっているが具体的にどうするのかは明確にしていない。
(2)岸田首相が諮問する政府税制調査会が中期答申を提出し、その中でこれまで非課税所得としてきた通勤手当、失業給付、遺族年金などの見直しが含まれていて、一部には「サラリーマン増税」を検討するのではないかと報じられた。
岸田首相が掲げる成長と分配の好循環、中間層の拡大に逆行するもので、しかし防衛費、子ども手当増額の財源としていわれるように歳出抑制、剰余金活用など自民党の政策要求を削ってできるはずもなく、財源不足は現実のものだ。
(3)岸田首相は宮沢党税調会長にサラリーマン増税を考えたこともない(報道)と不満を述べて、宮沢会長も政府税調は「ものを決める機関ではない」と火消しにあたった。しかし、政府税調は首相の諮問機関であり、首相の指示で答申をまとめる機関であり、出された答申内容を岸田首相が否定してみせるのもおかしな話だ。
(4)政府税調としても岸田首相の重要政策の防衛費、少子化対策増額の財源をどうするのかも含めて中期的な対応を諮問したと考えるのは当然だ。岸田首相が防衛費、少子化対策増額の財源を明確にせずに先送りして、政策目標だけを打ち出して国民の関心を引き政策実行にあたっては増税に頼るしかないのが実情だ。
(5)岸田首相が今の時期に神経を使いサラリーマン増税を否定するのも、いざその時になってやむを得ない増税決断前ということもあり、解散総選挙の外堀を埋められることに警戒感、不満を示したものと考えられる。
しかし、岸田首相が諮問した政府税調の答申を自ら否定する不合理な発言には、岸田首相が何をやろうとしているのかわからない、伝わらない政治姿勢、方針のあいまいさがあり、国民はただ中身のない政策アドバルーンをみせられるだけで、それこそアドバルーンに何かひも付けされているのかわからない不安定さ、不信はある。
(6)岸田首相が当初打ち出した成長と分配の好循環、中間層の拡大はいつのまにか安倍元首相の大企業、富裕層優遇の成長論に軸足が移って、なかなか実体がみえずに安倍元首相の国葬独断、反撃能力(敵基地攻撃能力)決断と国民、国会を無視して右傾化しており、あきらかに制度設計不足によるマイカ騒動で国民の批判、不満の中で岸田内閣支持率は28%と低落している。
(7)防衛費、少子化対策増額の財源先送り、政府税調答申内容の否定と不合理性ばかりが目につき、岸田首相、内閣が何をやろうとするのかわからない、理不尽(unreasonableness)、不安定さだ。