いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

駆け付け警護のジレンマ。 dilemma for run up to guard

2016-11-16 19:32:56 | 日記
 (1)南スーダンでのPKOに参加する自衛隊に「駆け付け警護」(run to guard)の任務を付与することを政府は正式に閣議決定した。現在、南スーダンに派遣されている施設部隊はインフラ整備事業専門で、現地で非常事態が起きれば宿営地に逃げ込む部隊だ。

 現地からの報道レポートでは、それでも反政府勢力、テロ組織からは戦闘部隊と間違われる危険性はあるとあった。これまた現地報道では南スーダンでは7月に大規模な部族間闘争が激化しその後は小康状態と見られているが、あらたな民族対立が拡大して「第二の内戦」(報道)が懸念されているといわれる。

 (2)またPKO参加の外国部隊が助けを求める人を救護しなかったとして、国連外国部隊責任者が解任されるという混乱も起きている。
 パラドックス(paradox)として、この南スーダンにPKO協力として派遣される自衛隊には「駆け付け警護」の任務の必要性は高まっているとも見られるが、比例して危険度も格段に高まっていることになる。

 誤解を恐れずに言うなら、政府の方針は派遣自衛隊の安全に支障のない治安が安定した地域への派遣を前提として考えており、それならあらたに付与した「駆け付け警護」の役割というのは必要度が低いことを前提とすることになり、2条件相矛盾した政府の方針決定というおかしなダブル・スタンダード(double standard)の方針だ。

 (3)「駆け付け警護」の任務は、治安が安定しない紛争地域では人命救助を目的とした当然の人道的正当行為である。これができなかったこれまでの自衛隊の紛争地域でのPKO参加任務はむしろ現地では異常なものであった。

 しかし国内ではこれに懸念を示し派遣に反対の声も多い。日本が海外での紛争、内戦に理由もなく巻き込まれる危険性が高まり、何より戦力不保持で交戦権を有しない憲法9条に違反する危険性が高いからだ。
 あえて憲法問題を差し置いて海外の紛争、地域に赴(おもむ)いて人道上の貢献をするかのジレンマでもある。

 (4)日本の国内的パラダイム(paradigm)としての国際貢献の役割の範囲とG7国としての国際的役割、責任そして米国追随外交としての政府の外交方針の中で(トランプ大統領の誕生で方針がどうなるのか)揺れているうちに、PKO参加自衛隊にあらたに付与された「駆け付け警護」の危険業務だ。

 いくら平和な国内で想定した軍事訓練をしたとはいえ(しないよりは当然ましだが)、いざ紛争地域の真っただ中での危険業務となればこれまでの海外紛争、戦闘に直接にかかわってきたことのない未体験の自衛隊にとっては大変なプレッシャーとなる。

 (5)日本の国内的パラダイムとしての国際貢献の範囲とG7国の国際社会の一員としての世界平和へのかかわり、貢献とのジレンマだ。
 確かに安倍首相の言うように日本の国内都合だけを優先して世界平和に貢献しないのはG7国の一員としては不足なことではあるかもしれないが、それなら国内パラダイムをそれなりに合わせる、整備をして国民的理解、合意のもとに推進すべきことである。

 今回の「駆け付け警護」任務のPKO派遣自衛隊も、強行成立した安保法への反対による国民的理解、合意が備わっていない(世論調査)中での任務というジレンマを抱えての出発となる。

 (6)昨日閣議決定したあと、官邸のフロアーで取材を待つ報道陣に向かって稲田防衛相が走って「駆け付ける」場面(これまでの通常は報道陣が大臣を取り囲む)が映っていたが、「駆け付け警護」を意識したつもりかあまり見たことがない取材映像だった。

 ちょっと軽い防衛相であり、多分にプレッシャーの大きい派遣自衛隊との落差の大きさが気になる心が痛むものだった。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 法律まかせの行政。 leave an... | トップ | 改憲と家父長。 the constitu... »

日記」カテゴリの最新記事