カム・フロム・アウェイ

2024-04-08 20:23:00 | うらけん
ぶっちゃけ書くけど、この作品、ミュージカル界の主役級の名だたる方々だから成立するんであって、私に限って言うと、全く存じ上げない方々だったら脳内カオス状態になってたと思うよ。

名前で呼び合ってくれなかったら、誰を演じているのかさっぱり分からなかったよ。それくらい

役替りが激しい!!

主役級の方々だからこそ、その個性とスター性が生かされた、椅子だけで場面転換を行うだけで観客に想像力を働かせる、これぞ究極のエンターテイメント作品だと言えると思う。

この作品は、まるで、都会の夜空みたいにネオンと排気ガスで汚れた空気の中では限られた星や星座しか見えない世界観ではなく、車も走らない自然豊かで空気が澄み切った、私の知る限りでは、白山の山頂から望む夜空一面を埋め尽くす数多の星々の中から星座を見つけ出すような世界観を感じた。

一人一人は、シリウスやベカ、アルタイル、ポルックス、アンタレス…といった名前を持つ一等星ではある。でも、名前のない数多の星々の中ではその輝きは紛れてしまうけども、輝きは一等級。

名前がない無数の星々も演じながらも名前がある一等星を演じ、メッセージという星座を作っているようなイメージ。

主役級で実力とスター性がある方々だからこそアンサンブルでもキャラが立つが、メインを演じると更に個性と輝きが増す。

誰もが主役で誰もがアンサンブル。人生と一緒。

本来なら2時間半で上演してもおかしくないような内容を100分に凝縮し、1分1秒、1分じゃ遅すぎるな、秒単位で狂いが許されない緻密に練られたステージングとスピード感。

舞台装置がド派手演出のスペキュタクルなエンタメ作品とは違う、12人の主役級の役者の方々が、椅子だけで場面転換を表現しながら、100分という短い時間の中で、メインの役柄とアンサンブルの役柄合わせて100人以上の登場人物をノンストップで演じ分け、歌い動き回るなんて!

マジ凄ごすぎる!

1階席だったので舞台の床が見えなかったけども、もし2階席から観たら、バミリの数がどれくらいなのか気になって気になって仕方なかった。それくらい椅子移動が激しかった。しかも盆が回る回る!

スポットライトが当たっている方についつい意識を向けていたら、いつの間にか気付いたら椅子の位置が変わって次から次へと場面チェンジしているので、ステージングの抜かり無さと1秒でも狂ったら流れがストップするんじゃないかくらいのスピード感があった。

100分だからこそ、必要とされる緊張感と集中力。キャスト陣の集中力とイメージ力、そして表現力が試される前代未聞のミュージカル作品でしたね。

マジ圧巻!

ということで、梅田日新しく出来たSKYシアターMBSに行ってきました!

こんなこと書いたら申し訳ないですが、新宿の某劇場に比べたら見易いわ、座席もいいわで設計者のセンスが本当に素晴らしい!この客席なら六平さんも文句言わないと思う。藁

日生劇場のゲネ?初日?ダイジェストをYouTubeで観たときに、キャスト陣の呼吸が合った統一感と秒単位の瞬時の切り替えに魅了され、なにより、浦井氏と万里生氏の2度目?の共演がまさかのゲイカップルということで、興味倍増、増し増しに惹きつけられたので(笑)観てきました。

最初に視覚的な感想しか書いていませんでしたが、この作品のメッセージは、100人いたらきっと100通りのメッセージを受け取るであろうと言ってもいいくらい、12人のキャストが演じる100人の登場人物の人生観のどれかに琴線が触れるのではないかと思った。

間接的ではあるが、9.11同時多発テロに関わった方々の、我々日本人には知る由もないテレビでは報道されていない(多分…)裏側。

9.11を題材にした作品ということで、犠牲者とその家族の物語と勝手に思い込んでいましたが、

ハイジャックされた飛行機ではなく、アメリカ着陸を拒否された飛行機とその乗客トータル約7000人が着陸したカナダのニューファンドランド島にあるガンダーという国際空港がある町。

ガンダーの地に導かれ降り立った者達の運命の出会いと別れが描かれている。

ハイジャックされた以外の飛行機がアメリカ上陸封鎖のためカナダに着陸を余儀なくされていたなんて今まで知らなかった。上陸封鎖=欠航だと思っていたからね。確かに、ハイジャックされた飛行機以外も同じ時間帯にアメリカに向かってたはずだからね。

それはさておき、

スピード感があるから台詞やシーンを咀嚼する時間がない中で、最後まで印象に残ったのは、瞳子さん演じるダイアンの台詞と万里生氏演じるイスラム教徒、そしてモリクミさん演じるお母さんの息子を想う気持ちでしたね。

さすがに浦井氏と万里生氏のゲイカップルは…、それより、加藤君が一瞬でかっさらっていった感があるけどね(笑)

瞳子さん演じるダイアンの台詞にあるように、9.11があったからこその皮肉?運命の出会い。そして、モリクミさん演じるお母さんと息子との悲しき別れ。浦井氏と万里生氏演じるWケビンの必然的な別れ。

万里生氏演じるイスラム教徒の人種と宗教故にテロ組織と同一視されてしまう憤り。

濱めぐさん演じる女性パイロット役は、仲間のパイロットがハイジャックの犠牲者ということもあって、自分もパイロットとして、また1人の人間として職務を全うする信念がある。

飛行機に乗っているのは人間だけでなく、猫や犬そして猿などのペットも同様である。シルビアさん演じる動物愛護団体の厚い保護精神も描いている。

いつまでガンダーに居座らないといけないのか?いつになったらアメリカに戻れるのか?乗客の不安以前に、なぜガンダーに到着しなくてはならないのか、乗客はその理由も分からないままガンダー空港に到着する。これに関しては電話ができる携帯を持ってるのになぜなのか疑問なんだけどね。情報を知ったらすぐに噂が広まると思うんだけどな…。

それはさておき、様々な感情が交差しながら、アメリカに帰れる日を待つ乗客と町の人々との交流が描かれている。

正直なところ、もう少し時間をかけて描いてくれたらもっと一人一人を理解して、感情移入もできたと思うんだけどね…。

それにしても、こんなにも脳みそをフル回転して観た作品は久々かもね。

目まぐるしく展開して、キャスト陣は本当に大変だったと思う。

本当に贅沢なキャスティング。

超久々に拝見する方々や、お馴染みの方々だけども、

皆さん、主役級でスター揃い!

ちえちゃんも加藤君も、モリクミさんも濱めぐさんも、禅さんも吉原さんもコロナ前以来かも。

ちえちゃんの、たまに聞こえてくる関西訛(あえて関西弁とは書かない)がツボだった(笑)

瞳子さんは宝塚OG関連でお見かしますが、演技は超久々。

去年は、浦井氏、ゆうみちゃん、シルビアさんはストレートプレイで、さとしさんは「ムーラン・ルージュ」、万里生氏は「GUYS&DOLLS」以来か。

それにしても、万里生氏の自己アピールというか芸達者ぶりが凄まじいな。最初の頃は優等生のイメージしかなかったのに、フランツもNNジョンソンも優等生キャラをぶっ壊す破壊力が凄かったしな。いやー、紳士なフェルセン役が懐かしいわ(笑)

逆に浦井氏は、珍しく正統派2枚目だったね。声の出し方は新国立の時と同じで野太い声だったし。キャラ設定は圧倒的に正統派だった。バートラムは完全にたらしやったからな。

「GUYS〜」では、浦井氏と万里生氏はそんなに絡みはなかったと思うが、今回はまさかのカップルだとはね!ま、それほど濃いカップルではなかったけどね(笑)万里生氏に関しては、圧倒的にイスラム教徒の役が良い。

いやー、ホンマ、めちゃくちゃ豪華キャスト陣!それだけでも眼福眼福!歌も素晴らしいから耳福耳福!

皆さん、ミュージカル俳優さんではあるけど、やっぱりストレートプレイもできる俳優さん方でもあるのでお芝居も表現力も自然で上手い!何よりスターオーラが半端ない!

だからこそ成立する作品だと思うよ、やっぱり。何度も書きますが、見ず知らずの方々だったら、同じ顔にしか見えなかったと思う。完全に脳内カオス状態になっていたと思う。少なくとも私は。それこそ、目まぐるしくただ時間が過ぎていくだけか、置いてけぼり感を食らって寝てしまうかのどちらかだと思う。ワタクシ、爆音でも寝られるので(笑)

場面転換も自分たちで行わないといけないし、観客にとってはたった100分だけど、演者にとっては息つく暇もない、それこそ脳内フル回転で大忙しの100分だと思う。

でも、すでに東京公演も終えて何十回とやってきただけあって、滴る汗も焦りも微塵もなかったように感じた。手際良くこなれた印象。実際は本当に大変だとは思うけどね。

これだけのメンバーが揃うなら、王道のミュージカル作品も観たいね!

たとえば…

「尺には尺を」2回目 & 歴史劇皆勤賞トーク

2023-11-08 01:09:00 | うらけん
うわー、占い当たりすぎ!

7日まで土用期間なので遠出禁物と言われていたけど、最終日だから大丈夫だろう、財布をなくさないようにだけ気を付けていたら大丈夫だろうと半ば油断していたら、新大阪行の最終新幹線に乗っていた時に、まさかのJR神戸線接触事故のため振替輸送という情報が入ってきた。焦りに焦った。感想ブログ書いていたのにそれどころじゃなくなったよ。

明日仕事だから新幹線を使ったのに、新大阪からの終電を乗り損ねたら大阪泊、始発帰宅の即出勤状態やん!?

他に帰宅出来る術を検索したら、地下鉄と阪神電車を使えば帰宅できることが判明した。

今まで新大阪から地下鉄に乗ったことないから、迷子になって乗るべき電車に乗れなかったら一大事なので新幹線口から地下鉄に行くルートをちゃんと検索し、地下鉄と阪神電車を乗り継いで無事帰宅することができました。

これ、新幹線に乗ってる時に知れて良かったよ。これが在来線に乗ってる時だったらもう泣くにも泣けない。


大阪地下鉄様、阪神電車様感謝感謝でございます!



ということで、私のどうでもいい話はさておき、

たまたま7日が休みだったので、浦井氏筆頭に歴史劇皆勤賞トークもあるということで、2回目を観てきました。

「尺には尺を」は、やはりソニンちゃんが素晴らしい。ぶっちゃけ賞獲れる!っていうか、私なら女優賞上げたくなるくらいめちゃくちゃ良い。

前回は、結構前方席で観させてもらったのに全然気づかなかったけど、今回は2階席でオペラ使用で観させてもらったら、あんなに泣いてたっけ?って思うくらい、ソニンちゃんがめちゃくちゃ役に入りこんでいて、イザベラの切羽詰まった感情、お兄ちゃんの命は助けたいが、その反面、自分の操も守りたい必死な気持ちが更にリアルに表現されていて、私ならソニンちゃんに賞をあげるよ!

ソニンちゃん演じるイザベラや朋子姐さん演じるマリアナも、男性に都合よく利用される男性社会の犠牲者なわけやん。

シェークスピア大先生が女性蔑視から女性上位へと描いていて、結局は大団円で終わってるからいいものの、今でも権力を傘に弱い立場な者を虐げるケースはよくあること。

シェークスピア作品って、「ヴェニスの商人」に代表されるようにウイットに富んだどんでん返しが絶妙で、今作もベッドトリックで悪の権化のアンジェロを追い詰めるわけですが、今作は現在にも通じる社会性があり、しかも風刺して表現されており、2回目でもやはりめちゃめちゃ面白い!



そして、終演後のヘンリーシリーズ歴史劇皆勤賞トーク付き。

登壇者は、司会が三崎プロデューサー、浦井氏、木下浩之さん、小長谷勝彦さん、急きょ立川三貴さんに代わり舞台監督の北条孝さん。

トーク内容はほぼヘンリー6世のエピソードでしたね。

浦井氏は、亡くなられた方への敬意を窺えるトークでした。

私が知る限りでは、中島しゅうさん、渡辺徹さん、久野綾希子さん…が亡くなられました。

しゅうさんに至っては、浦井氏とは「ヘンリー6世」でほぼ親子関係みたいな主従関係を、「ヘンリー4世」ではガッツリ親子関係を、「あわれ彼女は娼婦」でも新国立劇場で共演しているだけに思い出がひとしおなのも浦井氏の発言からも伝わってきた。そういえば、瞳子さんの「エディット・ピアフ」でも共演したね。

私は、「ヘンリー6世」と「リチャード3世」は、新国立劇場での映像上映でしか拝見したことないけど、それ以降のヘンリー作品は新国立劇場で拝見させてもらってるだけに、やはり、「ヘンリー6世」は生で拝見したかった。

カットされまくりだったけど、映像でも観れただけでも新国立劇場には感謝。

蜷川版をDVDで購入しましたが、やはり、世界の蜷川さんでも新国立劇場版には敵わなかった。と私は思ってる。

ぶっちゃけ、天国の蜷川さんには申し訳ないが、蜷川版のキャスト陣は、何を喋っているのか、誰を演じているのかさっぱり分からなかった。演者さん皆同じ喋り方だし、ただ大声でがなってるだけで役の気持ちがほとんど伝わってこない。何より舞台美術がシンプル過ぎて設定が分からない。わざわざ中古パンフレットも購入したくらい。

その点、新国立劇場版のキャスト陣は、適材適所。ちゃんと敵と味方が分かる演じ方、演出だった。

浦井氏ヘンリーの、もう二度と演じられないあのピュアさはヘンリーにピッタリだった。これはリチャード3世で証明済。

朋子姐マーガレットのしたたかぶりや村井国夫さんノーフォーク公との不倫関係もリアリティーがあったし、木場勝己さんトールボットと息子との関係ではめちゃくちゃウルウルしまくった。

渡辺徹さんヨーク公はめちゃくちゃ策士で憎たらしいし、ソニンちゃんジャンヌは勇ましかった(カットが多かったのが残念)、岡本さんリチャードは、まさに続編リチャード3世を演じるに相応しい存在感だった。

本当に本当に、「ヘンリー6世」、ノーカット、フルで観させて下さい!せめてもう一回上映して下さい!と訴えたいくらい完成度が高かった。蜷川版と比べたらその良さがひしひしと分かる。

それはさておき、

トークの内容で覚えているのは、浦井氏ヘンリーが天井からブランコで降りてくるシーンがあって、ただでなくても高い天井なのに、客席から見える高さより更に1.5メートルの高さで待機していたエピソードや、

舞台監督の北条さんがキューを出すタイミングが雑音で分からなくなって一か八かでキューを出したエピソードや、殺陣のシーンでは重たい鉄の剣で戦っていたこと、ソニンちゃんが木場さんに危うく剣で当てそうになったエピソードとか、高低差のある舞台美術だったり、木下浩之さんシャルルのマントは、ブルーシートで作られた大きいマントだったりとか、

浦井氏も言っていたけど、役者陣、めちゃくちゃ命懸けやん!?っていうのが目に浮かぶ。

今だから言えるエピソードだったから、もう一回映像で確認として観たくなった。

「リチャード3世」では、小長谷勝彦さんがスティーブ・ジョブズの格好の衣装だったこと。ここでな書けないNGエピソードがあったり、今回はその時と同じ格好で登場され、靴も当時の舞台で使用した靴を履かれていました。本当に物持ちがよい。

舞台監督のオッケーが出ないと、いくら演出家鵜山さんの希望でも通らないとか、実際は希望に添えるように尽力されていたとか、舞台監督の仕事説明をされたり、プロデューサーが最初にオファーする相手が舞台監督だということ。

池エピソードは面白かった。「終わり〜」では池ポチャ&水バシャがあるから、下手前列の方は要注意しないといけない。どれだけの被害が被るかは浦井氏にかかっている。以前、水バシャでお客様からクレームがあったとか。面白かった。

「ヘンリー6世」の千秋楽で、鵜山さんが北条さんに握手してきたこと。普段はクールだから握手なんてしない方らしい。鵜山さんエピソードも面白かった。

今思い返すと、ヘンリー4世だったか5世だったか忘れたけど、まるで板だけで組んだかような結構な高さの足場だったり、鵜山さんって案外、蜷川さん以上にアグレッシブな要求をされる方だということが伝わってきた。

あと、木下さんが、浦井氏の今回の役に対して、今まで見たことがない役を見れて喜んでいらしたことに強く同意!藁

「尺には尺を」の1幕目でのソニンちゃんとの掛け合いは、本当に見ていて新鮮。「終わり〜」はマジ下衆だったし。藁←これ、褒めてますから!


新国立劇場シェークスピアシリーズ継続して欲しい!

来年は、天国の蜷川さんに代わって吉田鋼太郎さんが再びシェークスピアシリーズに挑まれ、ハムレットを上演されます。

新国立劇場も吉田シェークスピアシリーズに対抗して上演してくれたら、演劇界も活性化すると思う。昔、「バンドラの鐘」で蜷川さんと野田さんが対決したように。「祈りと怪物」で蜷川さんとケラさんが対決したように。

終わりよければすべてよし

2023-10-22 16:48:06 | うらけん

ソワレはこちらを観ました。

「尺には尺を」同様、まるでラース作品を見ているかのようにダメンズしか登場せず、「ヴェニスの商人」のポーシャみたいに頭がキレる女性が主人公で、面白いことにどちらも処女を、貞操を守ることを尊厳とした女性像が描かれている。

今では考えにくいと書いたら女性に失礼だとは思うが、シェークスピアの時代の独身女性は、処女か売春婦のどちらかしかいなかったんだろねって想像してしまう。

「尺には尺を」は脚本的にも面白いと思ったが、「終わりよければすべてよし」は、ぶっちゃけ、作風が似てたので「尺には尺を」の二番煎じ感が否めなかった。当たり前っちゃ当たり前なんだけど。

また、最後まで浦井バートラムが朋子ヘレネを毛嫌いする理由が全く分からなかったのが唯一の残念要素。

ヘレネ役って、実は、朋子さんじゃなくて那須佐代子さんが演じた方が姉さん女房風で嫌味感があってしっくりきたのかな?って思ってしまった。

朋子さんだと可愛さも相まって全然非の打ち所が見えてこないから、浦井バートラムにあそこまで嫌われる理由が全く見えてこない。ただただ不憫でならかった。


それ以外は、「尺には尺を」の二番煎じ感色が強いなー、そういうものかーと思ってしまったくらい。

だからかは分からないが、こちらは舞台演出にかなり動きが加わっていた。池、布、照明、客席降りなど。

こちらは、浦井氏と朋子姐さんがメインに話が展開し、「尺には尺を」では、浦井氏はそんなに出てこなかったし、朋子姐さんももっと出番が少なかっただけに、「終わりよければすべてよし」は2人ともメインなので本領発揮でしたね。

何と言っても、浦井バートラムのゲスぶりが、「尺には尺を」のクローディオよりも更に磨きがかかっていて、笑えるという意味ではなくめちゃくちゃ面白い役どころだった。

かつてのトロイラス役もゲスの部類に入るけど、まだ人間味があった。バートラムは完全に最低男だった。「尺には尺を」の岡本さん演じるアンジェロと同じ役割だった。

クローディオはまだジュリエットに一途な分愛すべきゲスぶりだったけど、こちらは完全に女たらしのゲス役だからね。だからヘレナになびかない理由が見えてこないんだけどね。

浦井氏の場合、主役をはる人だから良い役が回ってくるのは普通な分、悪役ではないが女たらしのゲス役なので見ていてめちゃくちゃ新鮮だった。悪役のマクベスも良かったが、ゲス役も意外とハマっていたのが驚きだった。

ヘレネを演じた朋子姐さんは、非の打ち所が全くなく、バートラムに一途なところも含め、フランス王を利用してバートラムと結婚するくらいの下心があってもいいやん!って言いたくなるくらい、浦井バートラムがゲス野郎にしか見えないくらい、同情の余地しかないヘレネ像に作り上げてました。

二幕目のヘレネなんて健気!ますますバートラムのゲスさが際立つ。そういう意味では面白い脚本。

人間だれしも下心はあるよ。

下心と一途さは全く別モノで、「尺には尺を」のアンジェロのように下心と裏切りとはもっともっと別物のわけやん。

じゃあ、ヘレネとアンジェロのどっちを応援しますか?ってことになるやん。

ヘレネに決まってるやん。

二幕目の朋子ヘレネこそマリア様だったよ。素晴らしかったです。


岡本さん演じるフランス王は、もうオチャメ。アンジェロ役と対照的な役どころだったね。

ソニンちゃん演じるダイアナは、バートラムに誘惑される役。マリア様みたいにめちゃくちゃ光輝いていて、そりゃ誘惑されてもおかしくないオーラを纏っていた。

「尺には尺を」ではチョイ役だった立川さんと那須さんの存在が大きく、特に立川さんの力がこもった台詞回しや魂を注入してる感があるくらい力説していて、ぶっちゃけお身体を心配してしまったほど。

「尺には尺を」では売春宿の女将?をパンク風に演じていた那須さんが、こちらでは貴族感溢れる気品さがあり、そのギャップが堪らなかった。「エンジェルス〜」の母親役もラビ役も出色だったが、那須さんの表現力と引き出しの多さに慄くばかり。

「尺には尺を」では、宮津侑生君演じるルーシオ役の道化っぷりが出色だったけど、こちらでは、ルーシオに相当する役のベーローレス役の
亀田佳明さんが出色だった。

ガチの道化師の風貌の吉村直さんもキュートで良かった。

最初に書いたように「尺には尺を」も「終わりよければすべてよし」もダメンズしか登場せず、男性は、ゲス、道化、ヘタレしか登場しない。代わりに、女性は、男性に蔑まれつも叡智に富んでいる。どちらもフェミニスト色が強い作品だった。

独身女性は操を守っていたり、本来結ばれてべき相手と一夜を過ごさせたり、最後は無理矢理
大団円感があったりと同じ設定なのも、2作並べてるからこそ見えてくる部分だった。

ヘンリーシリーズのように、同じタイトルの3部構成であったり2部構成の1日連続上演もかなり大変だったとは思うけど、違う作品の連続上演も本当に大変だと思いますが、初めての方もいらっしゃると思うし。

千秋楽に向かうにつれてもっともっと作品が熟成されているのが視えてくるので、お身体に気をつけて千秋楽まで頑張って下さい。


今後は、新国立劇場の鵜山組によるシェークスピアシリーズとして全37作を目指して欲しいです。

鵜山さんなら理解不能な「テンペスト」をどう演出するのか観てみたい。

それよりも、できれば、今の座組のまま「ハムレット」の上演を切望します!!


尺には尺を

2023-10-22 15:31:57 | うらけん
先ず初めに、

有楽町のマクドナルド様に感謝です。無事観劇でき、無事帰宅できました。本当に本当に感謝しかありません。

神様にも有楽町界隈を行き来されている方々にも感謝の気持ちでいっぱいです。

本当にありがとうございました!


ここから本題です。

さすが、シェークスピア大先生と新国立劇場鵜山組だけあるわ!

めちゃくちゃ面白かった!

まるで日本の時代劇「遠山の金さん」を見てる感覚があって、まさにあのお白洲シーンが白眉だった。「ヴェニスの商人」にもあったね。

言葉遊びはさておき、「ヴェニスの商人」よりもはるかにウィットに富んだどんでん返しと大団円と皮肉さ入り交じっており絶妙だった。

さすが問題劇だと言われてるだけあって、私みたいな庶民にはゴシップネタ的な問題だけど、ある程度の地位やステイタスをお持ちの方々にはなかなかの痛いとこを突く問題劇だったと思う。最後の最後までアイロニーたっぷりだった。

それくらい、まるで今の日本社会の状況を見通してチョイスされたのでは?と思うほど、日本社会を風刺する内容にもなっていて、めちゃくちゃタイムリーな内容で驚いた。

まさに今の日本やん!?と言いたくなるくらい、シェークスピア大先生が生きていた時代と何も変わってないことに更に驚きだった。

ラストのソニンちゃんの表情が全てを物語ってた。最高なアイロニーぶりだった。

ということで、新国立劇場に行ってきました。

本当はね、11月に観たかったんだけど、優先すべきことが11月に増えてしまい初日が開いて間もないホヤホヤの、マチソワ交互上演の初回を観てきました。

シェークスピア作品って、バレエと同じで頻繁に上演される演目が決まっている中、

新国立劇場は、ヘンリーシリーズしかり、世間では上演されにくい作品を積極的に上演して下さり感謝しかありません。戯曲も読んでない舞台も観たことない作品がまだまだあるからね。


「尺には尺を」って言いかえれば「目には目を」の意味になり、まさしくそういう展開のお話なのに、大団円の綺麗事で終わらないラスト、お前もか!?と言いたくなるとラストがマジ秀逸だった。

戯曲本を持ってないからラストは、戯曲通りなのか、鵜山さんの演出なのかは分からないですが、最後の最後までアイロニーたっぷりでマジ圧巻だった。

歴史は繰り返されるが、結局何も学んでないやん!?を象徴しているかのようだった。

私も人のことは言えない。実は、まだ舞台を観ていない時間帯に有楽町のマクドナルドで財布を落としてしまったからね。これで2回目の財布紛失。場所が特定出来たからよいものの、歩いている最中に落としていたらもう探しようがない。財布がないことに気付いたのは、マクドナルドを出て2時間以上経過していたからね。

店員さんが見つけてくれてなかったら本当に大惨事。なんてたって東京だよ。どうやって帰る?まだ携帯があるからなんとか高速バスか電車の予約が可能だけども、さすがに財布が見つかるまでは舞台を観る余裕もなかったよ。本当に、有楽町のマクドナルドさんに感謝です。

そんなことが、高速バスで東京に着いていきなり起こりました。

もうあの焦りは3度も味わいたくない。

私のことはさておき、

本当にめちゃくちゃ面白い脚本だった。

今回の鵜山演出というか、美術は、とってもシンプルなのに、ストーリー展開がわかりやすかったのもめちゃくちゃ良かった。

中ホールって、ホリゾントまで遠いのに前方の客席を潰したうえで舞台中央に壁を作り、贅沢な空間だった。

本作は、岡本さんとソニンちゃんが中心で、ソニンちゃんの演技だけだと悲劇的内容なのに、それ以外の登場人物がコメディーリリーフとして存在していて、その悲劇要素と喜劇要素のさじ加減やギャップが更に作品を深めていたし、また人間性の善悪がより浮き彫りされていたように感じた。

ソニンちゃんが本当にめちゃ出色だった!

浦井氏演じる兄が貫通罪?で死刑判決が下され、死刑放免してもらうためには、自分の処女を岡本さん演じる公爵代理に捧げなくてはならない。

兄への想い、女性としての尊厳、公爵代理への不信感などなど、私が財布を失くした時と同じように、死刑執行まで時間がない焦り、兄を助けたいがだからといって自分の貞操は失いたくない気持ち云々やらで心がかき乱されている。

そこだけじゃないが、ラストの公爵代理への赦免の表現も大変素晴らしかった。

岡本さんは、まるで「ヴェニスの商人」のシャイロックみたいな存在で、厳格さと下心といった男の理性と本能剥き出しの表現がでとても滑稽でまたチャーミングで良かった。「ベニスの商人」ほどの悲劇性は強くはなく、改心が裏テーマの役割を担っていた。

朋子さんなんて出番が少ないのに、めちゃくちゃ重要な役で、最後は泣かせる演技で白眉だった。

浦井氏もそんなに出番は多くないが、とんでも兄貴役で、死刑判決を一旦は受け入れるが、死にたくない気持ち、妹に犠牲になって欲しいと思っているちょっぴりゲスな役どころ。妹役のソニンちゃんが真剣であればあるほど兄貴の愚直さが滑稽で笑えてしまう。めちゃハマり過ぎ!藁

鵜山組の常連かつ大御所の勝部演之や立川三貴さんの存在も、お二人の存在だけで作品に厚みを出す役割を担っていて、本当に有り難い存在。

木下浩之さんの公爵が、遠山の金さんみないな役柄で、ラストのオチも最高だった。ツッコミ入れたかった。

本当に面白い作品でした。

めちゃオススメ!





「家族モドキ」

2023-08-02 00:27:00 | うらけん
斬新かつ新しい家族の形を提示してるように見せつつも、登場人物の心に寄り添った家族のあり方を提示されていたので、最初から最後まで脚本家と演出家の策略にハマってしまい、第1幕爆笑、第2幕号泣(に近い)だった。

もうさ、第1幕の山祐さんの登場で完全に掴みオッケー!

(笑)

めちゃくちゃ良かった!!

ということで、去年の「GUYS & DOLLS」以来の浦井氏の舞台を観てきました。

本来は全く観る予定にはなかったのですが、

m(__)m

東宝さんが珍しくお得チケットを販売してくれたので、東京に行く予定もあったので観てきました。

実は、初シアタークリエでした。思った以上に広い劇場で、ドラマシティーより傾斜が緩やかで見やすくかった。

久々の浦井氏は、特にコメディーものだと声がうわずる傾向があったのに、既に新国立のシェークスピア作品の準備をしているのか?と思わすくらい低音が素敵でした。

相変わらずの変顔尽くしではありましたが(第1幕ね)、これは完全当て書きか!?と思ってしまうくらい役と同化していて、めちゃ愛されてるやん!というのだけは伝わった。

そして、知寿さん演じる奥さんの気持ちがめちゃくちゃ理解できたから、第2幕の予想はしていたがまさかのそっち!?だったので、ラストはマジ号泣。

闇があろうとなかろとそんなこと関係なく、大好きだから幸せになって欲しい気持ちはめちゃくちゃ分かる。

ぶっちゃけ書いて申し分ないですが、「オトコフタリ」と比べものにならないくらい良かった!田渕久美子さん、どうしたんですか???と聞きたくなるくらい脚本がめちゃくちゃ良かった!←失礼極まりない。m(__)m


4名の役者さんそれぞれリアルに当て書きだと思った。
楽屋の4人じゃないのくらい自然だった。あ、千弘さんと山祐さんの関係がギクシャクしてると言っているんじゃないので誤解なきようにm(__)m 普段から親子みたいな関係性だとは思う。

作品としての完成度も高く、美術や展開も含め見応えがありました。

どなたかも書かれていましたが、ストーリーは全く異なるけども、人物設定が、山祐さんが先生、知寿さんが家政婦(もどき)、浦井氏が謎の青年と「オトコフタリ」と同じだったのが、そのTwitterとストーリーを読んでジワった。

「オトコフタリ」から約3年、山祐さん演じる先生の幽体離脱台詞しか正直記憶がなかったのですが、改めてストーリーを確認したら少しずつ記憶が甦ってきた。

4人の間も表現も関係性も絶妙に良く、第1幕はめちゃくちゃ笑わせてもらった。

山祐さんの劇団四季仕込み?の独特の言い回しもキャラ設定も全く違和感なかったし、 

知寿さんと大塚千弘さんがちゃくちゃ自然な演技をされ、知寿さんは劇団四季時代から台詞回しが自然だった。

っていうか、千弘さんがあんなにお芝居が上手いとは思ってませんでした。←マジ失礼!m(__)m 感情表現がめちゃくちゃリアル過ぎて、千弘さんのお芝居を軸に3名さんが同調していってる印象を受けました。

とてもいいチームワークだと思いました。

浦井氏は最初にも書いたように、浦井氏がそのまま存在しているかのように自然に存在していた。以前なら、山祐さんや知寿さんや先輩がいらっしゃると引き立て役に回ろうとしていたけど、それがなかったのも良かった。ちゃんと渉として存在していた。

闇がないと次郎先生に言われていたけど、3年間の闇はある演技だったよ。3年間行方不明なんだもん、闇がなかったら次郎さんの台詞には繋がらない。そんな人にお願いしないよ。うん、いい脚本だ。

ということで10月の新国立の鵜山組シェークスピアシリーズがめちゃくちゃ楽しみ!

もうさ、浦井氏再演多すぎやねん。久々にキタぁ!って思わせてくれたよ。

やっと待ち望んだシェークスピアシリーズ。岡本さんに朋子さんにソニンちゃん、完璧な布陣!ソニンちゃんが出るならハムレットやって欲しかったな…。ロミジュリは、岡本さんと朋子さんが宝の持ち腐れになってしまうからね。