「明治の祭政社会がテーマなのに、ずいぶんそれたね」
「君らしいよ」
「せっかくだから、もうひとつそれておこう、あのアウシュビッツのことだ」
「ガス室のあった」
「あれは、アウシュビッツではないんだ」
「ふうん」
「『ユダヤ人問題の最終解決』がテーマでナチスの連中は、これに苦慮した」
「議論が沸騰する、その中には、たしか、マダガスカル島に移送してはどうかというのがあった、だが、すでに制海権は連合国側にあった」
「イギリスは協力しただろうかね」
「戦争だからね、ユダヤ人だかドイツ兵士かなんかは区別できない」
「カンカンガクガクの激論の果てに、ユダヤ人に強制労働を課し、その結果死んでも仕方ない、これがアウシュビッツ収容所になる、それに対して」
「う~ん」
「そのままガス室に送り込んでしまう、これが、ビルケナワ収容所、ふたつのグループに分ける、たしか左側がビルケナワだった、と思う」
「アウシュビッツは強制収容所、ビルケナワは絶滅収容所、ビルケナワには全く救いがない」
「そこは、どこで区別したんだい」
「ビルケナワは、病人‣老人‣子供たち、強制労働に耐えられない人々だ」
ナチス‣ドイツの占領地域から、続々と、ユダヤ人やロシア人ウクライナ人さらにロマが輸送されてきて、引き込み線で、収容所の傍に到着した。