トリスタンとイゾルデ/新国立劇場10-11
作曲:ワーグナー、演出:デイヴィッド・マクヴィカー
指揮:大野和士、演奏:東京フィル
出演:トリスタン:ステファン・グールド
マルケ王:ギド・イェンティンス
イゾルデ:イレーネ・テオリン
クルヴェナール:ユッカ・ラジライネン
ブランゲーネ:エレナ・ツィトコーワ
空間に浮かぶ幾筋もの細いリング。円形のネオン管を不規則に束ねた鳥の巣のような構造。2人の愛が燃え上がる時に合わせて舞台を漆黒に変え、その暗闇を強力なシアンの光で妖しく照らし出す。ネオン管らしきものが凄いストレスで青白く透明に光輝く。愛の最高点をやや薄めの強い青、シアンの純粋な色で表現していた。このリングを突き抜けるように太い、上に行けば行くほど序々に細くなる柱が突き抜けている。柱の切れ目は無く、天まで届いているかのようだ。
崇高で深遠な舞台美術のようにも、単なるシモネタのようにも見えて面白い。ワーグナーって、こういう風にも解釈できるのかと感心した。
物語の舞台のコーンウォールはイングランドの南西の端、ケルト文化の地域の1つらしい。輪も柱も道祖神のような意味があるのかも知れない。演出のマクヴィカーはケルト文化の別の地域のスコットランド出身。
幕開けは左端からゆっくり登る大きな月。序曲のゆっくりした音楽に合わせて登る。舞台の向こうから小さな構造物が近付いてくる。こちらまで来ると、それが骨組みだけの船と分かる。朽ち果てた幽霊船のようないでたち。青白く光る月に朽ち果てた幽霊船。そこに幽霊のような恋愛が異常に青光りするのだ。
他の幕でもこの月は出ていて、赤くなったり白くなったりする。
最後の幕はどこか遠くの宇宙の星の地平のような岩山の風景。何かぶっ飛んでいるような印象で面白かった。英国の作家は面白い。やや単調な演劇だけれども、美術を見ているだけで退屈しなかった。
ステファン・グールドとイレーネ・テオリンは強靭なトリスタンとイゾルデ。高いエネルギーを最後まで維持した。特に二重唱はオーケストラの演奏ともあいまってすごい迫力だった。め一杯演奏し、め一杯歌っていた。エレナ・ツィトコーワのブランゲーネは優しく柔らかで細やかな芝居、メリハリのある強い歌いかたで印象深かった。良い歌手だと思った。ユッカ・ラジライネンは1幕では不遜な感じ、3幕では誠実な感じで、その印象は全く違うものだった。
オーケストラの演奏は強くエネルギッシュだと感じた。
11.01.10 新国立劇場
作曲:ワーグナー、演出:デイヴィッド・マクヴィカー
指揮:大野和士、演奏:東京フィル
出演:トリスタン:ステファン・グールド
マルケ王:ギド・イェンティンス
イゾルデ:イレーネ・テオリン
クルヴェナール:ユッカ・ラジライネン
ブランゲーネ:エレナ・ツィトコーワ
空間に浮かぶ幾筋もの細いリング。円形のネオン管を不規則に束ねた鳥の巣のような構造。2人の愛が燃え上がる時に合わせて舞台を漆黒に変え、その暗闇を強力なシアンの光で妖しく照らし出す。ネオン管らしきものが凄いストレスで青白く透明に光輝く。愛の最高点をやや薄めの強い青、シアンの純粋な色で表現していた。このリングを突き抜けるように太い、上に行けば行くほど序々に細くなる柱が突き抜けている。柱の切れ目は無く、天まで届いているかのようだ。
崇高で深遠な舞台美術のようにも、単なるシモネタのようにも見えて面白い。ワーグナーって、こういう風にも解釈できるのかと感心した。
物語の舞台のコーンウォールはイングランドの南西の端、ケルト文化の地域の1つらしい。輪も柱も道祖神のような意味があるのかも知れない。演出のマクヴィカーはケルト文化の別の地域のスコットランド出身。
幕開けは左端からゆっくり登る大きな月。序曲のゆっくりした音楽に合わせて登る。舞台の向こうから小さな構造物が近付いてくる。こちらまで来ると、それが骨組みだけの船と分かる。朽ち果てた幽霊船のようないでたち。青白く光る月に朽ち果てた幽霊船。そこに幽霊のような恋愛が異常に青光りするのだ。
他の幕でもこの月は出ていて、赤くなったり白くなったりする。
最後の幕はどこか遠くの宇宙の星の地平のような岩山の風景。何かぶっ飛んでいるような印象で面白かった。英国の作家は面白い。やや単調な演劇だけれども、美術を見ているだけで退屈しなかった。
ステファン・グールドとイレーネ・テオリンは強靭なトリスタンとイゾルデ。高いエネルギーを最後まで維持した。特に二重唱はオーケストラの演奏ともあいまってすごい迫力だった。め一杯演奏し、め一杯歌っていた。エレナ・ツィトコーワのブランゲーネは優しく柔らかで細やかな芝居、メリハリのある強い歌いかたで印象深かった。良い歌手だと思った。ユッカ・ラジライネンは1幕では不遜な感じ、3幕では誠実な感じで、その印象は全く違うものだった。
オーケストラの演奏は強くエネルギッシュだと感じた。
11.01.10 新国立劇場