平成27年10月5日
TPP大筋合意
TPP大筋合意で甘利担当=自由貿易の世界的基準に
【アトランタ(米ジョージア州)時事】甘利明TPP担当相は5日午前(日本時間5日夜)、環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会合で日本や米国など12カ国が大筋合意したことについて、「21世紀型の自由貿易の在り方を示す全世界のスタンダード(基準)になる」と、その意義を強調した。閣僚会合終了後、記者団の質問に答えた。
甘利氏はその後の記者会見で、コメなど重要農産物5項目の市場開放を進める交渉結果となったことについて、「国益を守るべく粘り強く交渉し、関税撤廃の例外規定を数多く獲得した」と説明、理解を求めた。その上で農林水産業への対応について、「政府全体で対策を講じて体質改善を強化する」と語った。
日本の参加から2年2カ月に及んだ交渉を振り返って、甘利氏は「米国に物を言えるのは日本が一番だ。日本の参加によってバランスの取れた協定になった」と強調した。
TPPの市場開放のポイント 1.米国産とオーストラリア産のコメに無税輸入枠を新設。当初3年間は計5.6万トン(うち米国産5万トン)、13年目以降は計7.84万トン(同7万トン)に
2.小麦は輸入差益を9年目までに45%削減。米国、豪州、カナダに国別輸入枠を新設
3.牛肉は関税(38.5%)を協定発効時に27.5%に、16年目以降は9%に削減
4.豚肉は低価格品の関税(1キロ当たり482円)を段階的に削減、10年目以降50円に。高価格品の関税(4.3%)は10年かけて撤廃
5.脱脂粉乳とバターに低関税のTPP輸入枠を新設。生乳換算で当初年6万トン、6年目以降7万トン
6.米国は日本製乗用車に対する関税(2.5%)を発効後15年目から削減し、25年目で撤廃。自動車部品の関税は87%の品目で協定発効時に即時撤廃
TPP発効、早くて来年=カギ握る米国の対応
【アトランタ時事】環太平洋連携協定(TPP)交渉の大筋合意を受け、12カ国は早期発効へ批准作業に入る。
そのスケジュールを左右するのは米政府と議会だ。6月に成立した大統領貿易促進権限(TPA)法に基づき、米議会の審議期間は短縮されるが、米国の批准は早くても2016年初め。TPPの発効はそれ以降となる。
TPPが最短期間で発効するには、参加12カ国すべての批准が条件になる。議会が反発するなど各国で批准手続きが遅れれば、発効も後ずれする可能性がある。
交渉を主導した米政府は大筋合意を受け、直ちに妥結内容をまとめ、議会に「TPPを締結(合意署名)する意向」を通知する。締結は通知から90日を経過しなければならず、12カ国全体としてTPPが結ばれるのは16年1月以降になりそうだ。
一方、米政府の手続きと並行し、独立機関の米国際貿易委員会(ITC)がTPPによる国内産業への経済的影響を調査し、政府と議会に報告。この報告と合意署名の後に議会はTPP批准法案の審議を始める。
米議会は90日以内に審議を終え、批准法案を採決。可決されれば、米国の批准手続きが完了する。
ただ、米議会ではTPP推進派の野党共和党を率いるベイナー下院議長が10月末での辞任を表明。また貿易自由化に慎重な与党民主党指導部は、議論に時間をかける構えを見せており、審議が速やかに進むか不透明さが残る。