ノイバラ山荘

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天金の書

2013-01-21 10:38:34 | 短歌
こんにちは(*^_^*)
今日も寒いけれど
よいお天気です。

天金の書を久しぶりに見ました。


先日図書館で借りた
『白秋全歌集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』の3冊。

赤、抹茶色、紺の表紙。
上から見ると、
天の部分が金色です。

洋式製本の工程で
金箔を貼る技法を
金付けというらしいです。

金付けには三つの種類があり、
本の天(あたま)に金箔を押すのが「天金」(てんきん)、
小口に押すのが「小口金」(こぐちきん)、
本の裁断面すべてに押すのが
「三方金」(さんぽうきん)。

聖書や全集といった
特別な本に施されているらしいです。


・かもめ来よ天金の書をひらくたび    三橋敏雄


この本もきっと特別な本で、
大切な気持ちで何度も開いたに違いありません。

本を開いた形がかもめに似ていると
解説してあることが多いのですが、
私はロセッティのある絵画を思います。


[ベアータ・ベアトリクス]
画家がその妻の死を悼んで描いた画です。

この画では鷗ではなく鳩であり、
女性はただ手を広げて
鳩の運ぶ芥子の花を
受け取ろうとしているのですけれど。

金と闇が支配する画は
白と金と青の支配する句の
生命感あふれる明るさとは違いますが、
天との交感、
ひたむきに祈る気持ちが
私にこの画を思い出させるのかもしれません。

ネットの古書店で
適当な価格のものを見つけたので、
『白秋全歌集』
頼んでしまいました。

天金の書を持つのは、
初めてかもしれません。




「高尾薬王院唱」

2013-01-21 10:13:27 | 短歌
北原白秋『橡(つるばみ)』より17首


「高尾山薬王院唱」

       昭和十二年八月十六日より三日間に亘り、我が多磨の第
       二回全日本大会を武州高尾薬王院にて催す、予はその前
       日より先行その参集を待つ。

   精進のともがら六十九人なり

我が精進(さうじ)こもる高尾は夏雲の下谷うづみ雲となづさふ

   薬王院前 十六日

高尾やま蒼きは杉の群立(むらだち)の五百重(いほへ)が鉾の霧にぬれつつ

雲にして蒼きはさぶき神杉の老おのづから千歳養ふ

   茶亭にて 十七日

小鳥たつ高山岸の舞い昧爽(あけぐれ)は声多(さは)にしてすがしかりけり

日あし未だ雲ゆ立ち来(こ)ね高尾嶺(ね)や五百重神杉木膚(こはだ)明れり

子らと在り杉の木のまを射し来たる朝日の光頭(づ)に感じつつ

   実作指導のため見晴台へ吟行す、その道にて 十七日

この山の榧(かや)の木群(こむら)の榧の果のここだかなしきこれや我が子ら

君が杖石にひびくを汗あえて足病ましむな山路近きに  足を病む庄司正史に

岨(そば)の土塩しろくふく夏今やひたぶるに歌は思ひていくべし

こぼれ日に落ちたる蟬の腹見れば粉(こ)のしろくうきて翅(はね)は乾(から)びぬ

叢咲(むらざ)きて粗(あら)き臭木(くさぎ)の花ながら奥山谿(おくやまだに)の照りがしづけさ

鳩笛や子らを連れゆく山路にぞほろこと吹きて我はありける

   講堂にて 十七日 清浄心と書ける大額の下にて

薬王院反(かへ)しはげしき外(と)の照りを見つめて痛し我らこもらふ

日の光はげしくしろき石の上(へ)に息はずまする蝶ぞ闌(た)けゆく

   下山の前夜 十八日

月あかり後(のち)や来たりしくろぐろと杉の葉むらを見つつ我が寝つ

笛ながら仏法僧の音(ね)は吹きて誰か梢の月に覚めゐる

この夜聴く杉のしづくは我が子らも聴きつつぞあらむ枕しつつも





    

「づ」を尋ねて

2013-01-21 09:46:21 | 短歌
高尾山には歌碑、句碑が
たくさんあります。

北原白秋の歌碑もあったはずだと、
ネットで調べたのですが、
どうも腑に落ちないことがあり、
確かめたいと思いました。

ネットで調べるとこうです。

・わが精進こもる高尾に夏雲の
        下谷うずみ雲となづさふ

何か変な感じがしました。
新仮名遣いなら「うずみ」「なずさう」
旧仮名遣いなら「うづみ」「なづさふ」
・・となるべきではないでしょうか。

一首の中で混在するのは
何とも落ち着かないです。
歌人のサガというべきものでしょう。

以前見たときは、
ついうかうかと通り過ぎましたが、
今、品詞分解をしているので、
細かいところまで気になります。

確かめに行くことにしました。


ケーブルカーを下りて、
薬王院まで歩く途中に歌碑はあります。


権現茶屋。
このすぐそば。


これです。


ああやっばり「うづみ」です。


この解説の立て札!
これが原因にちがいありません。

原因がわかったので、
安心しました。

先に掲げました『白秋全歌集』
「高尾薬王院唱」の始めの歌です。

こちらは旧仮名表記ですので、
「うづみ」「なづさふ」です。

 
白秋一行はこの杉並木も歩いたのでしょうね。

 
ついでに初詣もできて、ありがたかったです。


破魔矢の白蛇さんが一番かわいかったので
買い求めました。