桜のシーズンが終わってすぐ始まるのが、アメリカシロヒトリの幼虫を駆除するための、殺虫剤散布です。
この時期心配なのは、殺虫剤がまかれたことに気付かず、犬や猫が路上や雑草に付着した殺虫剤によって、中毒することです。
樹木への農薬散布は通常、明け方から朝までに行われるため、朝8時にはすでに終わっていて、駆除作業を生活時間に見かけることはほとんどありません。このため、「この木はまかない」とわかっているもの以外は、定期的に「まかれるもの」と考え、樹木を管理する公園事務所や道路管理者にまいたかどうかを確かめる必要があります。
散布後の殺虫剤希釈液が、直接動物の身体に付着すると、皮膚や粘膜を通して殺虫成分が身体に移行しますが、犬猫は草を食べたり、体の毛を舐める性質があるだけでなく、体重も少ないので、ヒトよりも少ない量で中毒する危険性があるのです。
これは、昨年まかれた神奈川県座間市の状況です。(5:00am)
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「道路が濡れているのは、昨夜の雨のせいかな…?」
住民はまさかこれが殺虫剤とは思わず、いつものとおり犬を散歩させていました。
その理由は、市役所の担当課が、「農薬散布のお知らせ」看板を、500m続く桜並木に2カ所しか付けなかったため、住民のほとんどがこの日に散布があることを知りませんでした。
市の設置した看板です。(斜めの白いもの)
こんな看板の置き方で、「市民に周知した」ことになるのでしょうか。
座間市の住民軽視の姿勢はともかくとして、
実は、ここでお伝えしたいのは、隠れた「殺虫剤のもうひとつの危険性」です。
「農薬がかかっていたら、乾くまで待てば大丈夫!」
一般的にはそう考えがちだし、行政の多くはこう説明してきました。
ところが専門家の指摘は違います。
葉っぱなどに付着した農薬の希釈液は、まず、水分が蒸発 します。
これでふつうは、「農薬が消えた」と思いがちです。
ところが、見えなくなったのは水分だけで、葉の表面にはしっかり殺虫成分が残っている のです。
ここから絶えず、ガス化した農薬が発散し、私たちの吸う空気を汚染し続けている のです。
図解すると、こんな感じ!
右下の びっくりののちゃんに、マウスを乗せっぱなしにしてねっ!
ココ
こうして、水分が蒸発した後、 お天気だと、陽が照り出す11時頃から農薬成分が盛んに蒸発しだし、付近の空気を汚染 します。
実はこのときの散歩は、その空気を吸うヒトにとっても危ない のです。
そして、いったん、蒸発した農薬成分は、夜間に気温が下がると、また、樹木や壁に戻ってきて付着し、翌日気温の上昇とともに、また、そこから蒸発し出す のです。
これを繰り返しながら徐々に空気中の農薬濃度が下がっていくわけですが、これまでの研究では、田んぼなど風通しの良いところでは3日、森林では8日残留することがわかっています。
こうした殺虫剤をヒトが吸い込むと、頭痛、めまい、吐き気、腹痛、眼の痛み、下痢など を人によって起こすことがあると、「農薬中毒の症状と治療法(医師用資料・農水省監修)」に書かれています。
犬猫も、ほ乳動物なので、似たような症状が現れます。
今年1月31日、▲クリック「住宅地等では原則的に農薬を使わないよう」という通知が国から出ました。
この通知の特徴は、
1.学校、保育所、病院、公園等の公共施設内の植物、街路樹並びに住宅地に近接する農地及び森林等で、原則農薬がまけなくなったこと。
2.定期的な農薬散布をやめること。
3.人手による害虫の捕殺など物理的方法を優先すること。
やむを得ず農薬を使うときは、塗布、樹木への注入などにより、散布を避けること。
などが骨子となっています。
また、これらでどうしても防げず、やむを得ず農薬散布する場合は、事前事後の周知が必要です。
これは、愛知県の啓発チラシですが、全国でもっともわかりやすいので、紹介します。
心ない人による毒エサ事件は後を絶ちませんが、不適切な農薬散布による、犬猫の犠牲もまた少なくないのです。
各都道府県では、生態系保全の農業を進めていますが、農薬に頼らない防除方法は、農水省や都道府県でも紹介しています。
近所にサクラやツバキなど虫の好む樹木があって、そこへの農薬散布があるかどうかは、それぞれの管理者(国・都道府県・市町村・企業等)にぜひ、聞いてみてください。そして、住宅地の国の通知を入手しているかどうかも…。
動物の健康は、人間が気を付けてあげたいものです。
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ツバキ、サザンカ、チャ系の木は、チャドクガが大好き
農薬いらずのツバキのせん定法は…→「こちら」
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「農薬毒性の事典」(これ1冊で農業用~蚊取り線香までバッチリ)
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(ここでいう、「農薬」「殺虫剤」は、もっともよく使われる「有機りん系」を指します)
4月19日 朝 → メダイ素焼 。夕 → カツオたたき
4月20日 朝 → カツオたたき 。夕 → カツオたたき
4月21日 朝 → 棒ザメ水煮 。夕 →カツオたたき
4月22日 朝 → 棒ザメ水煮 。夕 →アカマンボウ水煮