ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ドル亡き後の世界 副島隆彦

2012-03-05 12:21:00 | 

私は意地が悪い。

人気の経済評論家の本なんざ、売れてる時には読まず、数年たってから読むようにしている。当然、その評論家の書いたことが、実際に当たっているかどうかも分る。

ほとんどの場合、はずれている場合が多い。ただ、あの人たちはプロなので、言い訳が上手い。その上手さを勉強させてもらう私も、かなり意地が悪いと自覚はしている。

そんな性悪の私が以前から気になっていたのが、表題の著者だ。小室直樹の弟子筋というか、斬新な経済評論で名を成した御仁である。

正直言って、私はあまり好きではない。独善と思い込みの凄さが鼻につく。薄暗いユーモアの持ち主でもあり、素っ頓狂ながら陽性であった小室とは大違い。

だが、その視点には以前から注目はしていた。予言者を気取る様は好感持ちかねるが、部分的にはその予測は当たっている実績は無視できない。

これは戦後の日本人に共通する欠点だが、視点が経済に偏りすぎて、歴史や軍事といった面からの検証にも欠ける。政治には目を配っているようだが、やはり経済優先で物事を判じる傾向が強い。

だからだろう。表題の本で予言(予測だと思うがね)している、オバマ大統領の任期途中での辞任はおおはずれ。2012年にアメリカ発の金融恐慌が起きる予言も、はずれる気配濃厚だ。でも当たっている部分もけっこうあるぞ。

でも、私としてはそんな予言、はずれても一向に構わない。彼の予言の元となっている詳細なデーター分析は、私なりに納得できる。ただ結論が違うだけで、方向性はそう間違っていないと思っている。

なによりも大手の新聞、TVのような右へ倣えの大本営発表でない意見は、やはり貴重なものだと思わざる得ない。いささかの胡散臭さを感じつつも、一応チェックしておく必要はあると思っている。

今回取り上げた作品は、3年前の発表だけに、その予言は当たっている部分もあるが、上記で書いたようにけっこうはずれている。だが経済予測なんて、そんなものだろう。市場の動向なんて、人間程度の叡智で分るわけがない。

ただ、予言という言い回しは止めて欲しい。胡散臭さを漂わせて、はずれて場合に笑って誤魔化そうとの下心が邪推できてしまう。予測なんてはずれてもいい。その予測に至った経緯(データーと分析の論理)さえ明白にしてくれれば十分だ。

私にとっては、そこだけが、それこそが重要なものとなる。だから私の予測は著者とは異なったものになることも少なくない。

繰り返すが、予測がはずれたことを非難する気はない。私自身、けっこう外すし、予測なんてそれでいいとも思っている。大事なのは、その予測に至った経緯だ。そこを振り返って、反省し、今後に活かす。それこそが、一番大切だと思います。

コメント
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