やはりバランスがいいと思った。
ゴールデンウィークの前半、六本木に食事に行ったついでに、森タワービルで開催されている「NARUTO―ナルト展」を見に行って来た。昨年完結したナルトだが、未だ人気は衰えず、会場は整理券を配布して時間指定で観覧できるような仕組みになっている。
指定された時刻に訪れると、順番待ちはないが、それでも展覧会内部での短時間のフィルム上映を待たされることになる。もっとも、それほど不満はない。会場で目立つのは、若い外国人たちだ。六本木という場所柄、外国人は珍しくないが、ここでは皆、静かにナルトの生原稿や、スケッチを注視している。
ナルトは、オレンジ色の髪に青い目をしているせいか、欧米での人気は非常に高い。それはアジア圏でも同様で、普段なら騒々しいシナ人の観光客も、ここでは静かに閲覧している。みんな表情が真剣なのが興味深い。
私が注目したのは、漫画家・岸本斉史の書棚を模したコーナーであった。御馴染みのONE PEACEやHUNTER×HUNTERと並んで、映画のDVDが目立っていた。映画の手法を漫画に取り入れていると、なにかのインタビューで語っていたとおりであった。
だが、やはり目玉は岸本氏の生原稿であろう。連載初期のものからエンディングに向けてのものまで多数展示されている。その手書きの原稿は、濃すぎることなく、また細緻にすぎることなく、物語の進行に合わせて、コマ割りから吹き出しまでバランスよく配分されている。
どの閲覧者も、食い入るように生原稿に見入っていた光景が印象深い。ちなみに、日本の著名漫画家の原稿は、海外ではオークションが立つほど人気が高い。岸本氏は富樫義博との対談で、手の描き方にこだわりがあると述べていた。
手を上手に描くのは案外と難しい。細緻に描けば、むしろ全体のバランスを崩す可能性があるし、適当に描くと絵の質が落ちる。漫画でもイラストでもそうだが、手の動き、その先端である指の描き方で、観る者の目線を動かすことが出来る。
岸本氏の漫画は、この手の描き方のバランスが絶妙だと思う。興味がありましたら、是非注目してみてください。かなり細心の注意を払って、腕の動きとその先端の手を描く漫画家ですよ。
ところで、この展覧会に入場すると小冊子が全員に配布される。そのなかで、遂にあのカカシ先生の素顔が公開されている。カカシ・ファンは絶対に落とせないアイテムである。まァ、特に驚きもない素顔ですけど、原作では遂に公表されなかったので、これは一見の価値ありますね。