偶然の出会いを装うのは難しい。
如何にも偶然、出会ったふりをして親しくなるチャンスとしたい。色ボケした思春期の若者なら、そんな風に夢想したことはあるだろうと思うし、それを実行したこともあるだろう。
で、結果は?
私自身に関して云えば、ほぼ全敗である。まず予定は未定で、思った通りに事態が推移しない。予期せず同伴者がいたり、それが父親だったりしたら最悪だし、母親はもっと辛辣だ。だいたい、偶然でないことを、当人に見透かされていることは、後年ようやく分かるようになった。
下手な策謀など必要なく、必要なのは素直な勇気であったと今にして分かる。情けないことに、それが分かったのは20代後半であった。まァ、分かってなお、素直に偶然と見做してくれた優しい女性もいたけれど・・・
表題の作品は、そんな勇気のない色ボケした青年と、その青年の想いにはさっぱり気が付かない後輩の女性の物語。よくある二人なのだろうが、周囲に登場する人物が強烈すぎる。
いささか個性的な文体も含めて、好き嫌いが出る作品だと思う。通常ならば、この手の話には興味が湧かない私だが、この作品はタイトルがいい。このタイトルに惹かれてのお買い上げであった。
なおロマンスものを期待した向きには気の毒だが、まったくロマンティックではなく、むしろコメディに近い。つまり面白可笑しい。興味をお持ちの方は是非どうぞ。