goo blog サービス終了のお知らせ 

ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

大阪都構想の失敗

2015-05-21 14:21:00 | 社会・政治・一般

今日を生きのびなければ明日はない。

その妄執に橋下・大阪市長は敗れた。大阪の行政に問題があることは、ずっと前から分かっていた。万年赤字体質であり、行政に無駄が多いことは、誰が府知事、市長になっても取り組むべき課題であった。

呆れたことに、住民投票に勝った側の政治家さえ、大阪市及び大阪府の財政危機に関する課題は認めていた。みんな分かっていた、分かっていたのに大阪都構想には賛意を示せない有権者が半数を超えていた。

これは大阪に限らないが、多くの地方自治体は収入よりも支出の方が多い万年赤字体質である。これは日本政府自体も同様なのだが、国政と地方政治では、同一に捉えることが出来ない。

既に夕張市が財政破綻した実例をみれば分かるように、自ら通貨を発行できない地方自治体の財政基盤は脆弱だ。決して大阪が一番ひどいわけではないが、なまじ大きいだけに、その財政赤字の規模も大きい。

だからこそ、橋下市長は二重行政の無駄を省くという題目を掲げて、その具体的な指針として都構想を打ち出した。その方向性は、決して間違っていない。ただ、以前から思っていたのだが、この弁護士上がりの政治家は拙速に過ぎる。

二重行政の無駄を省くとは、一言で云えば役人のリストラである。これが役人たちから強烈な反発を生んだ。基本的に役所の仕事は書類仕事であり、事務仕事である。

破綻した民間企業のように、放り出された社員たちで、最も再就職に苦しむのは事務系の仕事を長年やってきた人たちだ。特にITに弱い中高年の場合、元の給与と同水準で再就職できる可能性は低い。

まして効率とは程遠い役所の事務系の仕事ばかりやってきた人たちにとって、二重行政の無駄を省かれれば、当然に自分たちがリストラの対象になるとの恐怖に怯えるのは必然である。

プライドが高いので口にはしないが、自分たちのビジネス・スキルが決して高くなく、民間企業で役所と同水準の給与や福利厚生を享受できる可能性は、極めて低いことを自覚している。

この怯えた役人たちこそが、今回の住民投票の影の主役である。都構想が漠然としていて具体的なイメージが湧かないことを利用して、住民に「行政サービスが今より低下する」と囁いてまわり、都構想へ反対票を投じるよう陰に日向に暗躍したのが、この怯えた役人たちである。

これに乗じたのが、役所の下請け事業をやる民間企業(当然に天下り先でもある)であり、生活保護などの行政に寄生して生きている人たちである。役所の無駄で食っている以上、その無駄を減らそうとする政策なんぞ支持できる訳がない。

橋下という政治家は、物事を白黒に分けすぎるため、行政の無駄を省くことに反対する人たちを敵視し、彼らの不安、怯えを理解することを避けた。大きな声を出して反対しない、このリストラの恐浮ノ怯える役人たちを懐柔することをしなかったがゆえに、大阪都構想は失敗に追い込まれた。

だが、大阪の財政危機はこの先、改善される見込みは薄い現状に変わりはなく、財政破綻自治体となる可能性が高まったのも事実だ。だからこそ、今回の住民投票でも4割強の人たちが、大阪都構想に賛意を示した。

橋下市長は今期限りで引退するそうだが、誰が後継となろうと、この財政危機は取り組まねばならぬ深刻な課題である。日本人の悪い癖である、問題の先送りとなってしまった今回の住民投票。

私のみるところ、大阪は実際に財政破綻しない限り、その無駄をなくすことは出来ないと思う。おそらく国、とりわけ財務省は決して大阪を助けようとはしないだろう。気の毒ではあるが、そう予測せざるえない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする