子供はいつか必ず大人になる。
だからといって、子供時代に楽しんだ作品が、大人向けにリニューアルされることが幸せだとは限らない。この映画の原作は、週刊少年サンデーに連載されて、けっこう人気を博した漫画だ。
以前このブログでも取り上げた覚えがあるが、警察用巨大ロボットの活躍よりも、その担当部署の警察官の面々の描き方が面白く、従来のロボット漫画とは一線を画すものであった。
この漫画を原作とし、成長した特機二課の面々を前面に出しての実写化版だと思っていたのだが、かなりの違和感があった。
たしかに、子供はいつか大人になる。漫画の読者たちも成長し、大人になり、社会の中に組み込まれていく。同様に、この漫画の登場人物たちも、巨大な官僚機構である警察組織のなかで成長し、あるいは磨滅しながらも働く大人となっている。
だからだろうが、この漫画の実写化版パトレイバーでは、巨大ロボットの活躍よりも、複雑怪奇な官僚組織と、その軋轢のなかで必死で職務をこなそうとしている登場人物たちの葛藤が大きくクローズアップされてしまう。
はっきり言えば、決して爽快な映画ではない。またハッピーエンドを素直に喜べる作品でもない。
強いて言えば、子供向け漫画では描けなかったパトレイバーの大人の一面を深く掘り下げた映画である。非現実的な日本の有事法制の矛盾や、組織の冷徹な論理に屈せざる得ない大人が、必死で抗い続ける姿を描いた映画だともいえる。
実写版の巨大警察ロボット・パトレイバーの活躍を期待すると、かなり裏切られると思う。また原作を知らない人が見ても、よくは理解できかねる内容である。
原作漫画を読んでおり、その後の大人の事情を弁えたかつてのファンが、あれこれ悩み、自分なりの答えを導き出す作品だと思います。そうでない人が見ても、決して楽しめないし、戸惑うばかりの映画です。
お薦めはしません。観たい人は、私が何を書こうと関係なく、必ず観るでしょうから。