小さいことは良いことだ。
それが日本の軽自動車。はっきり言って、あまりに特殊というか、日本独自仕様。世界の自動車界におけるシーラカンスではないかと思う希少な、あるいは特異な車が、日本の軽自動車だ。
ただし、日本では販売数1位である。今や売れている車の2台に1台は軽自動車である。ただし販売価額や企業にもたらす利益となると下位に沈む。つまり一台当たりの利益がとても少ない。
もっというと、あのトヨタでさえ軽自動車を独自に製造することを諦めている。そのくらい利益を出すのが難しい車造りを求められる。
その軽自動車市場を牽引してきたのがスズキ自動車だ。ここ数年はホンダのオシャレ軽自動車に押されているが、長年軽自動車を造り続けてきた実績は馬鹿に出来ない。
実は昨年暮れに、私は久々にスズキの軽自動車に乗ってきた。釣好きの知人が新しい車を買ったので、是非自慢したいから来いというので、ノコノコと行ってきた。興味津々である。なぜなら彼が買ったのがスズキのジムニーの新車だからだ。
最初に書いておくと、このジムニー、乗り心地悪し。おまけに車内が狭い、まず4人は無理。更にいくらアクセル踏んでも加速がトロイ。
昨今の乗り心地も良く、広く高い車内、ターボ利かせちゃ高速も楽しい軽自動車とは別物としか言いようがない。近所へのお買い物や、日常の足にしようと考えている人がいるなら、私は反対するだろう。
でも仕事引退したら、このジムニー、欲しいゾ。
乗り心地が悪いのは、今どき商用車やトラックにしか使われない形式のサスペションを採用しているからだ。乗り心地は悪いが堅牢であり、修理も容易である。
また車内が狭いのは、車の骨格にあたるフレームが縦横に入れてあるからだ。このおかげで悪路でも快適に走れる。ジムニーを使う人は、この車に端から4人乗せるつもりはない。むしろ荷物を座席に置いちゃう。
加速性能が悪いのは、そのようにセッティングしてあるからだ。その分、低速でも粘りのあるエンジンであり、悪路向きである。
つまりジムニーは、山野で車を使う人のための車である。アメリカのハマーはデカすぎるし、ドイツのベンツGVもやはりデカい。日本の細い山道を車で入っていくためには、このジムニーの大きさが限界であり、この小ささ故に使いやすい。
舗装された林道をはずれ、山道に堂々と入れる四輪車なんてジムニーくらいだ。なにせ車体が軽いので、かなり荒れた道でも慎重に運転すれば走れてしまう。渓流沿いの河原なんて、岩ゴロゴロで普通は車が走れないがジムニーならいける。
山で仕事をする人にも欠かせない道具でもあるジムニー。他に代替する車がないほど特殊な奴だ。だから一昨年、久々に新車が発表されて以降、注文が殺到して一年以上納車を待たされている人も珍しくない。
都市部でしか車を使わない人には無用のジムニーであるのは事実だ。もっと乗り易い軽自動車は沢山ある。このジムニーに匹敵する車といえば、軽トラックくらいだろう。
ちなみに軽トラックは、海外ではカルト的な人気があり、安全基準から公道を走れないアメリカでは、強引に個人輸入されて各地の農場や牧場で大活躍している。ジムニーもやはり公道を走れないようだが、山岳レンジャーやジャングルパトロールなどで密かに活躍しているらしい。
小さい車ならイタリアやインドでも造っているが、日本の軽自動車ほどタフではなく、性能も低い。日本独自の基準であるがゆえに海外では通用しないと思われた軽自動車だが、その良さが分る人には熱烈に支持されている。
余談だが、日本にある米軍基地のなかでも軽自動車は活躍している。あの大柄な米軍の軍人たちが、身体を縮めながら軽自動車に嬉しそうに乗っているのは、知る人ぞ知る事実である。たぶん、おもちゃ感覚なのだろうなァ~