厄介なことになった。
今年10月から施行される改正消費税法におけるインボイス制度が、現在ふらついている。
このインボイス制度は非常に問題が多く、私ども税理士会では5年前から反対していた。しかし、世間の反応というか新聞やTVといったマスコミ様の反応は鈍かった。その問題点を一言でいえば、零細事業者苛めになるからだ。
これは元々、零細事業者を保護するため、規模の小さい事業者は消費税の納税義務を免除していることに原因がある。何時の時代でも経済は、弱い者の犠牲が必ずある。日本の場合、多層的な経済の流通システムが必然的に末端の下請け、孫請け業者に負担を求める。
これは世界各国も同様であり、ヨーロッパでも小規模事業者へ無理な負担がいかないように、大型間接税(日本の消費税に該当)は免税の処置がなされている。これに倣い、日本でも同様であるが、日本は零細事業者の判断基準を何故か売り上げ総額で判断している。
これは消費税法の条文構造が旧・物品税法を転用したせいだと云われている。では、なにが問題なのだろうか。
例えば弁護士を例にとれば、年収1000万円は業種的には小規模だが、稼ぐのに必要な経費は少ないから、十分の利益(所得)が算出できる。しかし、物品販売業で年商1000万円は辛い。仕入れや販売コストを考えれば、実質的な利益(所得)は400万円を切ると思われる。
同じ総収入1000万でも、業種により利益は大きくことなる。私は利益(所得)300万円くらいが零細業者ではないかと考えています。
しかし、平成5年の消費税法施行より、消費税は総収入1000万円を基準に、消費税の納税義務を区分けしている。その結果、十分な利益を出しながら消費税を納める義務のない業者と、生活費ギリギリの利益しか出せない業者が同列に扱われている。
にもかかわらず世間は消費税をもらっておきながら消費税を納めないとして一律に消費税の免税業者を誹謗してきた。ここに便乗したのか、あるいは小さい事業者なんて視野に入っていなかったのか知らないが、インボイス制度を無造作に導入しようとした財務省である。
その結果、インボイス登録をしていない零細業者は、令和5年10月以降、取引から排除される可能性が非常に高まった。まさに弱いもの苛めそのものだ。そのため廃業を検討している零細業者は少なくない。悪法であっても法は法。忸怩たる思いを拭いきれないまま、取り敢えずインボイス制度の導入に向けて準備をしていた。
ところが思わぬところからインボイス制度に噛みついた者たちが居た。それが公正取引委員会であった。
曰く、インボイス未登録業者に対して消費税相当額の値引きが予想されるが、それは独占禁止法の趣旨に反するものであると財務省に意見具申をしたのが今年5月だ。ほとんどのマスコミは無視していたと思う。勉強不測で何が起きているのか分かっていないのか、それとも記者クラブでの予定調和を乱すことを恐れたのかは知らない。
ただ、司法の場に持ち込まれたら敗色濃厚だと気付いた財務省は本気で頭を抱えたらしい。先月末になって、インボイス制度の手直しを公表した。おかげで我々、税務会計業界はてんやわんやである。
手直しの内容も小手先の誤魔化しの感が否めない。やはり免税業者の定義からやり直さねば、難しいと思う。
今日の記事は、税務会計にある程度知識がないと分かりずらいことは承知しております。申し訳なく思いますが、分かりやすく書くのが非常に難しい内容なので、読み飛ばして頂いても結構です。
ただ、頭の片隅に置いておいて欲しいのは、キングオブ官庁である財務省といえど、その作成する法案にはけっこう不備があることを。それを指摘するべきマスコミは、大本営発表に終始しているし、国会議員どもは不勉強で分かってない。
さりとて私らのような専門家も、世間の関心を呼び込むような活動が出来ずにいる。最後の砦は裁判所だと思っていましたが、まさか公正取引委員会が一刺ししてきたとは全くの予想外でしたよ。