ヌマンタの書斎

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人を襲う狼と自然保護

2017-06-07 13:51:00 | 社会・政治・一般

犬は人類の友である。

その犬は狼と系統樹上、近い種である。交配も可能だし、非常に近い関係にあるのは間違いではない。しかしながら、狼と人類は友とは成れない。

かつてアメリカ大陸では数万頭の狼がいたが、家畜を襲うことから嫌われて、徹底的に駆除されて数百頭まで減少し、絶滅に危機にあった。天敵の狼がいなくなったことで、鹿やビーバーなどが増えすぎて、自然のバランスが崩れた。

そこでカナダから狼を移植させるといった荒療治を行った。牧場主などの反対はけっこうあったが、狼が増えた結果、鹿やビーバーに食い荒らされて枯渇した森は再生し、自然のバランスはある程度回復した。

しかし、狼のエサである鹿やビーバーの数が減ってくると、家畜への被害が増えた。それどころか、人が狼に襲われて殺される事件が発生するようになった。郊外をジョギング中の若い女性が食い殺され、森を散策中の学生が襲われ食い尽くされる。彼らは食べるために獲物(人間)を襲っただけだ。

狼にとっては、人間は古来より襲いやすい獲物の一種に過ぎない。それは昔話などにも、よく反映されている。狼にも生きる権利はあり、そのために獲物を狩っただけなのだ。だが、それは地球の覇者である人類には、到底容認できるものではない。

当然、狼を駆除するような苦情が上がるのだが、これに反対する人たちもいる。なかでも、狼を友のように考えるウルフマンと呼ばれる人たちが難儀だ。この人たちは、狼を飼っていたりして、狼を擁護する。またナチュラリストと呼ばれる人たちも狼駆除に反対する。

おかげで、北米大陸の狼は増える一方だ。だが、改めて分かったこともある。小さい時から育てた狼は、成長するまでは人に馴れることは、確かにある。しかしながら、成長して大人になると次第に本能に目覚め、人を獲物として認識してしまう。

そのため、如何に犬に似ていようと、狼は犬にはならないと分かった。相変わらず、分かりたくない人たちもいるが、いずれ北米大陸では狼の限定的な駆除が始まると私は見ている。

人のエゴイズムの犠牲になるのかと憤りを禁じ得ないが、歴史的にみても、狼はライオンや虎、豹と同様に肉食動物として人間に敵対する存在なのだと思う。肉食獣がいないと、草食獣が増えすぎて自然のバランスが崩れることは、はっきりしている。

野性動物の保護は必要だと思うが、そこには過剰な想い入れが含まれることが多い。どんなに人が狼に想いを託そうと、彼らの本質は肉食性の野生動物である。一定の距離をもって接するのが、双方にとって最も好ましいと思う。

そして、その距離を犯されたら、駆除するしかない。この残酷さも、また自然であると考えて欲しいものだ。


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2 コメント

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Unknown (kinkacho)
2017-06-08 21:52:49
ヌマンタさん、こんにちは。
日本にもニホンジカの食害が酷いので狼を放ったらと主張するおバカな方々がいらっしゃいますが、ヨーロッパやらアメリカの狼を放ったら、鹿より人間を食いますよね???
絶滅したニホンオオカミと欧米の狼の違いすら理解してないのに、暴論ですわ!
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Unknown (ヌマンタ)
2017-06-09 13:26:07
kinkachoさん、こんにちは。居ますねぇ、日本にも、この手の論者が。狼にとっては、鹿よりもカモシカよりも、人間の方が襲いやすい獲物です。ニホンオオカミは山岳地帯に特化した特異種ですから、平原を生息地としる欧米の狼とは別種なはず。
狼を放つよりも、今の日本では猟銃での狩を進める方向に舵を切らないと、危ないことになると思います。未だに銃=戦争とでも考える平和馬鹿が多いのには呆れるしかありませんけど。
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