ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

国税不服審判所 その二

2012-10-17 15:38:00 | 経済・金融・税制

税金の問題で争うのは、けっこう面倒くさいと思う。

税務署長(もしくは国税局長)の権限は絶大だ。納税者が不満をもっていたとしても、その権限で強制的に課税(処分)できる。

この措置に対して納税者がまずやるべきことは、税務署長に対する異議申し立てだ。これは処分後二か月以内でなくてはならない。まァ、その申し立てに対して異議決定が出されるが、ここで納税者が救済されることは希だ。

ここに至って初めて登場するのが、国税不服審判所だ。税務署長の異議決定に対して不満がある場合、一か月以内に審査請求をすることになる。ここで裁決が出て、納税者が救済されることもある。最新のデーターだと、おおむね12%程度の納税者が救済されているようだ。

たった、それだけと思うかもしれないが、現場に携わる方々からすると、これでも昔よりはマシだそうだ。

ここで白状しなければならないが、私はこの国税不服審判所に対して強い不信感を持っていた。先代の佐藤先生の頃に負けたからではない。あの頃は今より情報開示が少なく、不信感が募るような情報だけがチョロチョロと漏れていたからだ。

実は10数年前から戦後大量に登用された税務職員の人事が停滞する事態が起きていた。既に税務署長になるだけの実績のある官僚が、ポストがないがゆえに宙に浮いているかのような人事がまかり通っていた。

この国税不服審判所のポストなんざ、税務署長候補たちの一時待機場所的な扱いを受けていた。下種の勘繰りと云われても仕方ないが、あの頃私は国税不服審判所が下す審判なんて、情実と組織防衛の目的に利用されているだけだろうと唾棄していた。

ところが、徐々にではあるが情報公開法に基づく情報が明らかになるにつれ、案外とまともな審判がされていることもあると分かってきた。もちろん納得のいかない裁決もある。

その場合、ここで初めて地方裁判所に対して原処分取消訴訟を行うことになる。ただし、青色申告者は国税不服審判所を経ずして直接訴えることも出来る。

裁判の話は、また別の機会にしたいと思うが、ここで改めて国税不服審判所というあまり馴染みのない役所について説明したいと思います。

が、その前に大事なことを書き記しておかねばならない。

国税不服審判所に審査請求をするには条件がある。それは税務署長から処分を受けていることだ。つまり自主的に納税について修正申告をしていたら、それは納税者が納得していることになる。つまり審査請求は出来ない。

たまに散見するのが、税務署から呼び出されて、書類にハンコを押してしまった納税者だ。税務職員にあれこれ言われて、云われるままにハンコを押したようだが、それは修正申告(もしくは期限後申告)を提出している。つまり税務署の主張を認めていることになる。

この場合、国税不服審判所としては門前払いせざるを得ない。税務署の求めに応じて修正申告をしている以上、争うべき問題はない、というのが大前提だからだ。納税者が後から知りませんでした。よく分かっていませんでしたと言っても、後の祭りである。こうなると、後は訴訟しかないが、立場が弱いことは言うまでもない。

国税不服審判所への審査請求は、あくまで税務署長からの処分を受けていることが大前提。ただし対応策がない訳でもない。税務署の云う通り修正申告書を出してしまった場合でも、期限内なら「更正の請求」を出して、税務署長から「更正すべき理由がない」という却下(処分)を受けることで、審判所に審査請求を求める手法もありますが、期限があるので要注意なのです。

私が過去、何度か相談を受けた事例では、この期限後に相談にみえたことがある。残念ながら、もうどうしようもない。もっと早くに相談に来ていただけたら、なんとかしようがあったのだが、期限後では手の打ちようがない。

うちの事務所では納税者が税務署の言い分に納得しない場合、修正申告を敢えて出さず、税務署からの処分を待って、そのうえで国税不服審判所への審査請求または地裁への訴訟へと移行する。

ただし、処分(決定または更正という)による税金(本税だけ)は支払っておく。払っておかないと延滞税(年利14%あまり)が高すぎるからだ。

前置きが長くなりすぎたので、次回に国税不服審判所について具体的に書こうと思います。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 国税不服審判所 その一 | トップ | 国税不服審判所 その三 »

コメントを投稿

経済・金融・税制」カテゴリの最新記事