未知の世界を教えてくれる本に、子供の頃から引かれる傾向が強かった。
ファーブル昆虫記、シートンの動物もの。クストー艦長の深海探検、リヴィングストンの探検記。本はいつでも私を未知の世界に引き込んでくれた。
科学技術が進んだ今日にあってさえ、未知の領域が広がっているのが、実は人間の頭のなか。心の問題と言い換えてもいい。なかでも不思議であったのが、自閉症の人たち。同じ人間の形をしているにもかかわらず、その行動は不可解。なまじ外見が健常者と同じであるため、ことさら違和感が引き立つ。
その自閉症の当人が、自らの半生と、心のうちを書き綴ったのが前作「自閉症だった私へ」でした。この本が刊行されたときの、世界的な衝撃は今も語り草になっているほどです。私自身、自らの無知を恥じると同時に、このような心の内面を公表した著者の勇気に感動したものです。
表題の本は、その後のドナ・ウィリアムスの自立の日々を書き綴ったものです。かつての自分と同じような立場の自閉症の子供たちと接し、教師になることを目指し、本のプロモーションで世界を巡る。その過程で、自分と同じような自閉症の人々と出会い、共感し、変わっていく自分に畏れ、そして喜ぶドナの人生の、なんと芳醇なことでしょう。
まだまだ人生は、未知の驚きに満ちている。知識だけは豊富な私の未熟さを、たしなめ、謙虚さが必要なことを思い出させてくれる。自閉症を理解したなんて、とても言えないけれど、以前よりは寛容になれる気がします。
なお、表題の本は文庫版では「自閉症だった私へ Ⅱ」とタイトルを変えています。
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