言い訳を優先するな。
九州は宮崎で起きた中規模な地震を契機に、突如飛び出したのが「南海トラフ臨時情報」って奴だ。
私は当初から胡散臭いと思っていた。そもそも南海トラフ巨大地震に関する予測情報は、もう数十年前から聞かされている。ほぼ間違いなく、いずれは発生する可能性が高い地震だと考えている。
だから政府は宮崎・日向灘沖を震源とする地震が起きたことを良い機会だと捉えて、改めて国民に注意を喚起したのだろう。
しかし時期というかタイミングが悪すぎた。よりにもよってお盆休み直前である。政府が賢しげに提示した「南海トラフ臨時情報」は人々を不安にさせ、旅行など行楽の予定をキャンセルさせてしまった。
改めて確認するが、南海トラフを震源とする大地震が起こる可能性は決して低くはない。しかし、それが何時起こるかは誰にも分からない。ただ注意を喚起させるのに日向灘沖を震源とする宮崎地震は丁度良かった。それしか考えていなかった。
その結果として夏休みの行楽シーズンの最盛期であるお盆休みに、ホテルや旅館はもちろん鉄道や航空会社にキャンセルが殺到した。当然に各業界関係者からの苦情が上がり、地震予測情報を出した関係者を慌てさせた。
年末の予算獲得に向けて一大キャンペーンを張った本音は押し隠し、慌てて言い訳を口にするがもう遅い。おそらく関係者は正しいことをしたと内心確信しているはず。少なくとも嘘は言っていない。しかし、あまりに思慮不足だと思う。
予め書いておくが、現代科学は地震の予知には成功していない。可能性を提示しているに過ぎない。政府がやるべきことは、予知を報じることではなく、予測される地震の被害に対して迅速に対応できる体制を準備しておくことだ。しかし、これだと地震学者及び大学や研究機関に予算が十分に回らない。
下種な勘繰りなのは承知しているが、科学的に正しい予測が出来ない地震の予知に関わっている人たちは、政府からの研究予算が命綱だ。だから時折、人心を冷やすような地震の情報を出してくる。
間違いなく地震は起こる。それは確かだが、必要なのは臨時情報ではなく、被害の予測と対応策であろう。それでは食えない地震予知関係者の暴走、それが今回の「南海トラフ臨時情報」なのだと私は考えています。
それとどうしても言いたいのが与党政治家様たち。なんで、こんな不確定情報を堂々と認めた。大事な情報かもしれませんが、報じるタイミングが悪すぎる。担当大臣が誰か知りませんけど、相当に人間に疎い勉強のよくお出来になるお馬鹿ちゃんなのでしょうね。
本件、「政府がリスクコミュニケーションに失敗した」という案件に感じました。
多くの国民が「地震予知」だと捉えてしまった今回の「注意情報」の出し方はやはり良くなかったのでしょう。
「地震発生のリスクが高まった」と言われても、だから何なのだと。
政府に対して箸の上げ下げまで指示してくれなどとは言いませんが、「地震に対する備えをしっかり」「監視しているひずみの数値がいつもより多く見られる」「だから、地震が発生すると巨大地震に繋がり易いですよ」と言われても、じゃあどうしたらよいのか?という点が伝わってきません。そこは明確にして欲しかった。
政治家達も気象庁の出すデータに対してどう対処すべきかをしっかり話し合っていなかった為に、右往左往する始末でした。
全国各地で旅行のキャンセルが増えてきたという時に、総理大臣が出てきて「旅行キャンセルをする必要はありません」と言うべきでした。しかし、それを言って本当に地震が来た時に責任をとる積もりはないので、言えなかったんでしょうねぇ。
次の時には、今回の様な失敗がないように、取り決めをしておいて欲しいものです。
南海トラフ地震はいずれ来るかもしれませんから、心づもりは必要でしょう。でもその時期は分からない。徒に人心を迷わせた気象庁関係者の軽率さと、それを留める覚悟の無い政治家も同罪です。