自由で公正な市場なんて教科書のなかにしかない。
日本製鉄によるUSスティール買収が、バイデン大統領の反対により頓挫した。これを不公正だと主張するのは自由だが、訴訟に訴えても無駄だと思う。少し視点を変えてみよう。
反対の急先鋒はライバル会社であるクリーブランド・クリフスは毎年赤字続きであり、決して経営状態は良くない。これはUSスチールも同様だが、会社の規模こそ大きいが技術水準は高くない。何故なら株主への配当が最優先されていて、老朽化した設備の更新や、新しい技術の導入が遅れているからだ。
そこで世界最高水準の製鉄会社である日本製鉄がアメリカ本土に直接最新設備を導入なんかされたら、クリーブランド・クリフスの立場が危うくなるのは明白だ。もちろん全米鉄鋼労働者組合も弱体化してしまう。何故なら合理化し、機械化が進んだ日本の経営手法は人員削減につながる可能性が高いからだ。
だからこそ日本製鉄のアメリカ進出には断固として反対せねばならない。それがアメリカの正義だ。
経済合理性を考えれば愚かな判断だと思う。しかし、世の中、不条理な感情は無視できない。愚かさも含めて選択の自由を与えているのが民主主義だ。アメリカ大統領選挙が燃え上がる時期に、日本製鉄のUSスティール買収が行われんとしたのが、あえて言えば最大の失敗だったと思います。
今回の買収劇は失敗に終わったが、なんらかの形で日本製鉄はアメリカ進出を果たすと思います。なにしろ市場が巨大だ。20世紀に構築された橋や鉄道、道路、送電設備などの更新需要が腐るほどある。そして、それに十分対応する力がアメリカの製鉄会社にはない。
とはいえアメリカは21世紀、相当に社会が変動するでしょう。白人が減少し、ラテン系が増大し、もはや国としての一体感を喪失している。タイミングを間違えると、大きな痛手を被る可能性もありますよ。
この出来事の解説のなかで最も核心を突いた解説だと思いました。僕も同じようなことを考えていましたが、明確な言葉が思い浮かばなかったです。流石の解説です。そして大統領選。いくら去り行く大統領とはいえ、このタイミングでバイデンバッシングをしたところで実利はないと思っていました。そこも踏まえて今後を睨んでいるのかまでは分かりませんが、ニュース(くらいしかテレビを観ませんが)でコメンテーターを使うなら、もっと考察してくれと思いました。
余談ですが、今朝も事務所のPCでは編集画面にログインできません。そろそろ何とかして欲しいです。