貴婦人の丘と 鹿の足跡
昨日、気になっていた入笠にあえて車(スズキジムニー)で、思い切って行ってみた。雪の状況については必ずしも楽観してなかったが、管理棟には管理人用のビールの在庫が不安だったし、それよりも石油ストーブをもう1台持ち込んでおきたかった。それに、取水場の様子も見ておきたかった。
意外にも今年は「枯れ木」までは除雪してくれてあり、そこまでは難なく行けた。しかしそこから先、荒れた雪の上に車の通った跡はあったが古いもので、迷いつつもとりあえずオオダオ(芝平峠)まで行ってみることにした。やはり思っていた通りで、一筋縄ではいかない雪の悪路が挑戦してくるように続いた。
オオダオに出ると、雪を被った八ヶ岳、その中でも西日を浴びた荘厳な赤岳と阿弥陀岳が木々の間から現れた。この峠で10年、春夏秋冬、季節の衣は違えども同じ山を眺めてきた。普段わざわざ停まったりはしないが、ようやくそこから舗装された道に合流できると一安堵して、新緑の春を、鬱陶しいほどの緑の夏を、紅葉にに染まる秋を、そして雪の罠に怯える冬を通過してきた。
雪はさらに深まり、急な曲がりでは先行者が足搔き乱した轍に手を焼きながら、ともかくも進んだ。後にした山奥氏への状況報告では、「高度な運転テクニックを使ったから」と言って、暗に氏には無理だと伝え、腐らせた。
北門を過ぎ「貴婦人の丘」で写真を撮ろうとしたら、鹿の群れが雪煙を上げて逃げていった。鹿もこの雪では、草を掘り出すのが大変だろう。気を抜かないようにして弁天下の三叉路まで来て、そのまま管理棟まで行けるかと思ったら、南テキサスゲート少し手前で轍は消え、なおも数十メートルを進み、そこで諦めた。管理棟までは、今度は潜る雪の中を徒歩で石油ストーブとビールのために、帰路の不安を抱えながら二往復を余儀なくされた。
これで、今冬は車で行くことを最後と決めた。肉体的にはきつくとも、安気な法華道を歩いて登る。
カントさん、TBIさん、そんなわけで、入笠牧場での機材を使っての天体観測はしばらくできなくなりました。
降りものは 雪ともつかぬ 寒さかな ― 井月 -