1
エンジェルトランペットがトランペットを幾つも幾つも吹いている。そんなふうに見えて来る。吹いているのはもちろんエンジェルである。
2
エンジェルはフィクションなんかではない。そう思うことにする。そうした方がずっと楽しくなる。
3
サイクリングをしているとこの時期あちこちでこの花が咲いている。背丈が高いのでよく見える。
4
さぶろうの家の庭にも真っ白いのと黄金色のと2種類がある。どちらも房なりだ。天に向けているのではなく、地に向けて。つまり、われわれが聞き耳を立てるために。
5
白は純潔の大地の誇り、黄金はこの世の豊かさの誇り。それを高らかに鳴らしているのがエンジェル。天使たちだ。天使は神々の使いである。
6
天から使いを寄こしてもらわないと、陰気なわれわれはカーテンを閉じてすぐにも暗くなってしまう。だから、トランペットを吹いてその場を賑やかにするのだ。
7
そうして人の住むところを華やかに明るくするのだ。
8
トランペットの音色なんか聞いたことがない、などと素っ気なくしないでほしい。
9
エンジェルなんかいるものか、などと冷淡を装わないでほしい。
10
われわれは四方八方から数限りなく多くの善意をいただきながら暮らしを立てているのだから。
11
己を前面に押し立てる快感に酔っているあまり、周囲に満ちている宇宙中の善意をひたすらに無視してかかろうとも、善意は動いているのだ。
12
活動をしているのだ。この大地にこの花、ドラマチックなエンジェルトランペットを咲かせているということがなによりの証拠じゃないか。