市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【繰り返される悲劇】東京高専の学生自死事件で機構本部が設置した第三者調査委の真相究明能力は?

2021-08-13 23:40:00 | 群馬高専アカハラ問題
■「高専生の自殺」については、当会としても地元の群馬高専で2年間に3名の自殺者が出た事件をきっかけに、高専組織の体質にどのような問題があるのか詳しく調査追及してきました。その後、隣県の長野高専からも同様の事例が寄せられ、県境を跨いで検証を続けております。こうした悲劇が繰り返されている原因としては、独法高専機構という文科省傘下のピラミッド役人組織が、恐ろしく国民の監視とガバナンスの届きにくいシステムになっていること、文科省天下り校長や悪徳教職員の隠蔽揉み消し癖のせいで各種ハラスメントやいじめが恒常化しやすい土壌ができていること、などが挙げられます。これが、これまでの当会の活動を振り返っての概ねの結論です。

 事実、高校・大学生に比べ、国立高等専門学校生の自殺率が約2倍になることは、国会でも取り上げられ問題視されています。原因分析として、コロナ感染拡大の影響で大学在学中に就職先が決まらずに卒業し、孤立感を深める実態があるとされていますが、そもそも高専機構の組織的な問題にメスを入れないと根本的な解決はおぼつかないと思います。

 こうした中で、高専機構本部が、8月12日に「『東京工業高等専門学校の自死事案に係る第三者調査委員会』の設置について」と題するお知らせをリリースしました。さっそく見てみましょう。



**********高専機構HP 2021年8月12日10:00
URL ⇒
https://www.kosen-k.go.jp/news/detail.html?itemid=8659&dispmid=1240&TabModule1107=0
               お知らせ
「東京工業高等専門学校の自死事案に係る第三者調査委員会」の設置について

                              2021/08/12

令和3年8月8日(日)国立高等専門学校機構本部事務局に「東京工業高等専門学校の自死事案に係る第三者調査委員会」を設置し、1回目の委員会が開催されました。

委員会は4名の外部委員で構成され、東京工業高等専門学校の学生が令和2年10月5日に亡くなられたことに関する事実関係や背景を明らかにし、学校として必要な改善に関する提言を行うことを 目的としており、令和4年3月末を目処に報告書がまとめられる予定です。
**********

■この痛ましい自死事件に関する情報をネット検索してみると、経緯や背景等を報じた記事が見つかりました。なんと、学生会長を務めていた有能な学生を死に至るまで追い詰めた原因は、東京高専の教職員によるパワハラ行為であると断じています。当会がこれまで、群馬高専と長野高専で多発した学生の自死事件の原因を究明すべく、再三にわたり学校そして元締めの高専機構に対して情報開示請求を行い、学生を死に至らしめる組織的病巣の真相解明を問題視し、改善を求めてきたのに、そのお膝元の東京高専で再び悲劇が繰り返されたのでした。

 当該記事は次のURLでご覧ください。
○2021年5月12日:いじめ探偵がパワハラ教員を告発。東京高専の生徒を自殺に追い込んだ悪魔の所業
https://www.mag2.com/p/news/496577

 ちなみに、この記事を執筆した「探偵」のかたは、2016年5月、大島商船高等専門学校(大島商船)の学生が校舎から飛び降りて自殺した事件についても粘り強い取材をしています。
○2019年2月26日:探偵が暴露。あまりにも酷い大島商船高専いじめ自殺事件の実態
https://www.mag2.com/p/news/387988
○2019年5月27日;いじめ探偵がNHKスペシャル出演で受けた、脅迫や嫌がらせの数々
https://www.mag2.com/p/news/399432
○2019年8月12日:高専いじめ事件の怪。厚顔無恥な校長の放った「無礼千万」発言
https://www.mag2.com/p/news/409418
○2020年4月17日:現役探偵が糾弾。いじめ自殺事件の加害者を守る商船高専の実態
https://www.mag2.com/p/news/448856

 大島商船の自殺事件では、その後、2018年に福田校長が記者会見で「いじめは否定できないと思った」として、いじめを認める発言をしています。また、この事件でも第三者調査委員会が立ち上がり、事件の調査を進めましたが、当時、大島商船では、もう1つのいじめ自殺未遂事件に関する第三者委員会が立ち上がっていました。

 これは当時、いじめ自殺をした生徒と同室だった学生へのいじめ事件を調査するために設置され、同学生の友人らが同様に校内や寮内で嫌がらせを受けているという事と同時に、教員らによるパワハラ行為があったとされるものに対しての第三者委員会でした。船員養成を目的とする大島商船の特殊性も遠因かもしれませんが、高専という文科省キャリアの天下り組織という特殊性が、主原因だと言えるでしょう。

 今回、8月8日に高専機構本部のお膝元で立ち上げられ第三者調査委員会は、はたして適切な調査機能を発揮するでしょうか?これまで機構本部を相手取り、情報隠蔽体質を改善すべく訴訟を重ねてきた当会としては、高専機構の体質を痛感させられているだけに、期待度は低いのが本音です。

 実際、冒頭の高専機構HPの「お知らせ」を見ても、「機構本部事務局に第三者委員会を設置し、1回目の委員会が開催されました」として僅か7行しか記載がありません。今後、来年3月末までに行われる第三者委員会による調査の過程や結果が、はたしてどれほど公開されるのか、極めて不透明です。

■ところで、この「第三者調査委員会」という名称は、不祥事件が起きるたびによく耳にします。一般的には企業の不祥事件で時限的に設置されることが多く、第三者調査委員会の目的について「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」によると、「第三者委員会は、不祥事を起こした企業等が、企業の社会的責任(CSR)の観点から、ステークホルダーに対する説明責任を果たす目的で設置する委員会である。」と記されています。

 さらに「第2.第三者委員会の独立性、中立性第三者委員会は、依頼の形式にかかわらず、企業等から独立した立場で、企業等のステークホルダーのために、中立・公正で客観的な調査を行う。」という規定があります。

 第三者委員会の構成員は、弁護士が就くことがほとんどで、地元の弁護士会に相談すると担当弁護士先生を紹介してくれます。

 企業の不祥事件の場合、設置される第三者委員会は、真相究明、責任明確化、再発防止の為の調査をするわけですが、費用を出すのは顧客である企業である上に、弁護士先生のバイブルと目される弁護士職務基本規程第21条(正当な利益の実現)として「弁護士は、良心に従い、依頼者の権利及び正当な利益を実現するように努める。」との定めがあります。

 そもそも、ほとんどの弁護士先生の性(さが)として、「顧客の利益を最優先する」という行動規範が先に立ち、どうしても「社会全体としてこうあるべき」とか「社会正義としては絶対に許されない」という考え方が脇に置かれがちであるのは、行政訴訟をしてみるとすぐわかります。なぜなら、行政の違法不当な権限の行使を糾弾しようとすると、行政側は「クロをシロにしてください」とばかりに顧問弁護士と称する弁護士先生に声を掛け、弁護士先生も、「顧客の不祥事の揉み消し」が「顧客の為に働く目的だ」として、ホイホイ請負うからです。

 その対価として我々の血税が支払われ、裁判所の裁判官らも「行政を敗訴させると、出世に悪影響を及ぼす」として、住民側に対して、社会正義とは真逆の歪んだ判決を下すのがもっぱらです。

■無論、現在の裁判制度では、犯罪者にも弁護士が付けられるわけで、「弁護士には依頼者のために働くことが求められている」という弁護士職務基本規程の考え方は、社会のニーズに応じたものであることは確かです。

 問題は、第三者委員会の業務に携わる弁護士先生が、ややもすると、報酬を支払ってくれる依頼者のために忖度するなどして働いてしまうことです。今回、機構本部は企業の場合と異なり、費用は公金、つまり我々の血税で賄われるわけですが、財布のひもを握っているのは高専機構ですから、どうしても、高専機構に忖度するなどして、第三者として公平、公正な判断が歪められはしないか、ということです。

 今後、当会として、この第三者調査委員会の動静に注目したいと思いますが、機構本部が詳しくこの第三者調査委員会の調査業務の過程を都度HPで発表することは期待薄です。したがって、皆様からの情報提供を期待する次第です。ぜひ、このブログのメッセージBOX、あるいは拍手コメントに情報をお寄せください。情報源の秘密は厳守いたします。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連情報「一般の高校・大学生に比べて自殺率2倍の高専生」
**********
第204回国会 参議院 文教科学委員会 第3号 令和3年3月16日
会議録テキストのURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316

000・会議録情報 令和三年三月十六日(火曜日) 午前十時開会

097・佐々木さやか
○佐々木さやか君 是非よろしくお願いいたします。
 そして、そうした様々な対策を是非高等専門学校生にも行っていただきたいというふうに思っています。
 先ほど御紹介いただいた子供たちの自殺者数の数の中には、高等専門学校生は入っていないというふうに聞いております。この高専、国立高専の自殺者数やその推移について教えていただけますでしょうか。
発言のURLhttps://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/97

098・伯井美徳
○政府参考人(伯井美徳君) お答えいたします。
 独立行政法人国立高等専門学校機構によりますと、令和二年度の国立高等専門学校の自殺者数は十三人であります。国立高等専門学校の学生に占める割合の〇・〇二五%となっております。
 自殺者数の傾向といたしましては、平成二十七年度、二十八年度の十四人から減少傾向にありましたが、令和二年度は増加に転じ、二月末現在で十三人となっております。
発言のURLhttps://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/98

099・佐々木さやか
○佐々木さやか君 今、令和二年度の国立高専生の自殺者数が十三人というふうに教えていただきました。そして、自殺率については〇・〇二五%ですかね。
 これ、十三人という数字ですけれども、この自殺率で大学生、また高校生と比べますと、実に二倍以上になっております。令和二年度の大学生の自殺率は〇・〇一三%でございます。そして、高校生については〇・〇一%。これに比較して高専生は〇・〇二五%でございますので、先ほども申し上げたように二倍というような数字になっていると。
 これは一般の高校、大学に比べて多いのではないかと思うんですが、その原因についてはどのように分析しているんでしょうか。
発言のURLhttps://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/99

100・伯井美徳
○政府参考人(伯井美徳君) お答えいたします。
 自殺の多くは、多様かつ複合的な原因、背景を有しており、原因の特定は困難でございますが、友人などからの聞き取りや学生相談室への相談記録などから、将来への不安あるいは学業不振などが多いというふうになっております。(←当会注:組織的な問題なのに、個人の問題にわざと転嫁している)
 また、その背景には、高専独自の要因ということで、厳しい進級基準等による進級、卒業へのプレッシャー、あるいは高専の先生方、教員の生徒指導に対する経験等の不足、それから、一学科一クラスということで五年間同じクラスで学ぶ場合が多いという高専の学級編制など、高専独自の要因もあるのではないかというふうに分析されております。
発言のURL
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/100

101・佐々木さやか
○佐々木さやか君 今、要因についても、もちろんこれというふうにはっきりすることはなかなか難しいかもしれませんけれども、やっぱり過去十年を見ましても、先ほど申し上げたような一般の大学、高校と比べて自殺率が二倍程度というものは、過去十年比べてもその傾向にあります。ですので、この一年、二年で急激にというわけでもありませんし、やっぱり何かしらこの原因があるんだろうと。今お聞きしましたら、例えば学業についてのプレッシャーですとか生徒指導が少し不十分なのではないかと、そういった原因があるというふうに分析しているわけですから、これは早急に対応する必要があるというふうに思います。
 最後に、大臣に伺いたいと思います。
 大臣は、各地の高等専門学校に精力的に足を運ばれていらっしゃって、実際に学生の皆さんともきっと多く接していらっしゃるのではないかなと思います。所信で述べられていらっしゃいますけれども、我が国の高専は産業界や諸外国から高い評価を受けており、我が国の産業界を支える大きな役割を果たしていると。この高専を応援していくというのは私も大賛成であります。この応援をするためには、やはり学生が主役でありますので、是非大臣にもこの学生を応援していただきたい。
 その悩んでいる学生が実は多いということが明らかになっているわけですので、是非大臣にもこの高専生の自殺の問題、対策についてお取組をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
発言のURLhttps://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/101

102・萩生田光一
○国務大臣(萩生田光一君) 先生の質問通告をいただいて、改めてその高専だけを切り分けて今言ったような数字を検証しますと、本当に他の学校群より残念ながら自殺者の比率が多いということが明らかになりまして、そのことを大変重く受け止めています。
 全国の国立高等専門学校を所管する国立高等専門学校機構では、これまで、自殺防止のために学生の異変を速やかに察知し学生に寄り添った対応ができるよう、予防のための統一アンケートの作成、実施、学生支援担当教職員研修の実施などに取り組んできました。また、平成三十年度には文部科学省において予算を措置し、スクールカウンセラーの全校配置による相談体制の強化を図りました。これに加え、今年度から新たに国立高等専門学校機構本部にいじめ対策チームを設置するとともに、いじめ防止等対策ポリシーの全面改定、全教職員を対象としたいじめ防止等研修などを開始し、自殺防止に取り組んでいるところです。
 さらに、令和三年度予算案においては、各高等専門学校のニーズに応じて、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの増員などの学生支援体制の更なる充実やコロナ禍における学生相談体制の充実に活用できる予算を計上しています。
 先生御指摘いただいたように、私、高専に対しては大変強い思いがあって、この学校の仕組みというものはもう日本の誇る教育システムだと思っております。日本の将来、物づくり企業等を支えていく大切な人材でありまして、唯一今回の質問を機に私自身感じたのは、高専に行っていただくと分かると思うんですけど、本来だったら普通の高校生の年代なのに、非常に自立性が高くて、大人として扱い過ぎてしまっているがゆえに、本当はまだ未熟なところもあるのになかなかそういうことにうまくマッチできていなかったんじゃないかという思いがございますので、普通の高等学校と同じように、あるいは普通の大学生、一年生や二年生をフォローするのと同じように、人的な配置をしながら、高専とも連携をして、学生たちに寄り添って悩みに応えてあげられるような、そういう体制を更に強化していきたい、そう思っております。
発言のURLhttps://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415104X00320210316/102
**********

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【高専過剰不開示体質是正訴訟】6/16第一次訴訟控訴審判決…またも機構の杜撰主張全部素通しで全面敗訴

2021-06-30 23:49:00 | 群馬高専アカハラ問題

6月16日昼過ぎに高専機構を相手取った第一次訴訟控訴審判決言渡しのあった東京高裁のある裁判所合同ビル。

■高専組織が執拗に黒塗りにこだわる「都合の悪い」情報の数々について、悪質な不開示処分の取消しを求めて高専機構を2019年10月に提訴した第一次訴訟。卑怯な法廷戦術の嵐やコロナ禍での長期中断を乗り越えて辿り着いた東京地裁の第一審判決は、ありとあらゆる理屈を総動員して被告高専機構の杜撰極まる言い分を片端から素通ししたあからさまな不当判決でした。高専関係者らの憤りとエールに押され、当会が本件を東京高裁に控訴すると、高専機構は相変わらず強弁まみれの杜撰な控訴答弁書を寄こしてきました。

 3月17日に開かれた初回口頭弁論では、同高裁の裁判官らが機構側の藍澤弁護士を始終質問責めで突っつき回し、異例の審理継続となりました。裁判の公平性が疑われるレベルで妙に至れり尽くせりの「アドバイス」を経て、機構側はまたも杜撰な補充書面を出してきました。そこで、当会から詳細に証拠資料を提示しつつ主張の穴を突いた反論書面を提出して第二回期日に臨もうとしていたところ、機構側はなんと期日2日前になって誤字まみれの杜撰書面を投げ込んできて、滅茶苦茶な主張を言い立ててきました。4月14日の第二回口頭弁論では、高裁側の裁判官は特にこうしたマナー違反や論理破綻を咎める様子も無く、「とりあえず言うだけ言ってもらった」というムードで結審しました。

○2020年11月25日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html
○2021年1月31日:【高専過剰不開示体質是正訴訟】第一次訴訟控訴審の弁論日が3/17に決定&控訴人当会が控訴理由書提出
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3274.html
○2021年3月24日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・第一次訴訟控訴審】機構側控訴答弁書と3/17初回弁論(審理継続)の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3290.html
○2021年4月21日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・第一次訴訟控訴審】反撃試みる機構と書面応酬の末、4/14第2回弁論で結審!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3304.html

 そして、第一次訴訟控訴審の判決言渡し日である6月16日を迎え、当会担当者が東京高裁に向かいました。

■2021年6月16日、当会担当者は午前10時50分に自宅を出発し、25分で高崎駅に着きました。少し待って、11時36分発の上越新幹線Maxとき316号に乗車することにしました。平日の昼下がりでしたが、緊急事態宣言が効いているのか、車内はガラガラでした。群馬出発時は晴れ間も見えていましたが、東京に近づくと雲が厚くなっていました。



Maxの2階席。

鴻巣市付近の水田。田植えの真っ最中。

 当会担当者の乗ったMaxとき316号は東京駅21番ホームに12時28分定刻通り到着しました。幸い雨は降っていませんでした。








 ちなみに、E4系と呼ばれる2階建て車両のMax号は、今年秋ごろ引退する予定になっており、ラストラン企画のキャッチフレーズのロゴが車体にラッピングされています。筆者は1994年の初代2階建て車両として登場したE1系や、その後1997年にデビューしたE4系には東京への通勤でこれまで何千回もお世話になっています。そのため、2階席から眺める車窓風景は頭に染みついており、居眠りをしていても、目を開ければ瞬時にどこを走行しているか把握できるほどです。







 東京駅の丸の内中央口の地下改札口を経由して、徒歩で地下鉄東京駅に移動し、12時41分発の荻窪行に乗車して、2駅目の霞ヶ関で下車をしました。地上に出ると、歩道は濡れていましたが、雨は降っておらず傘を取り出す必要はありませんでした。




■裁判所の前の歩道では、何名かの若者がチラシを配布していました。受け取ったところ、共同親権制度の実現をアピールする内容でした。「日本では毎年約21万人の子どもたちが、親の離婚を経験しています」というロゴは衝撃でした。我が国社会において、配偶者によるDVやモラハラ、親による虐待といった家庭内人権侵害の問題は深刻であり、被害者の迅速な保護と救済が図られなければなりません。他方において、一方的な子の連れ去りと親権剥奪、一方的な離婚宣告と銭ゲバな財産処理・養育費請求による泥沼のトラブル、そしてこれらをビジネスチャンスと捉えたハイエナ弁護士達もまた社会問題化しており、離婚当事者らとその子供にとってベストな着地点を探れるような社会的枠組みの構築は急務です。
※裁判所前で配布されていたチラシ ZIP ⇒ 20210616ozzv.zip

 12時50分、いつものとおり裁判所の玄関のアルコール消毒液で手指を清めて、手荷物検査のためカバンを預けました。そして身体検査のため金属探知ゲートを通り抜けようとしたところ、赤色ランプが点滅して警報ブザーが鳴り響きました。当会担当者の前に並ぶ方も同様にひっかかっていましたが、まさか自分もという気持ちになりました。なぜならこの場所で、これまで一度もブザーを鳴らした経験がないためです。

 係員が手持ちの金属探知機を当会担当者の体中に添わせてチェックをしました。どうやらベルトのバックルの金属に反応したようです。しかし、同じベルトを付けてきてても、これまで一度も金属探知ゲートが反応したことはありません。そこで係員に「今回初めてランプが付きましたが、感度を上げたのではないのですか?」と尋ねてみましたが、無言で返されました。

■手荷物検査担当者から荷物を受け取ると、さっそくエレベーターで8階に上り、812号法廷の開廷表をチェックしました。

*****6/16・東京高裁812号法廷開廷表*****
812号法廷(8階)開廷表
令和3年6月16日 木曜日

●開始/終了/予定:10:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第1050号/受信料請求控訴事件
○当事者:立花孝志/日本放送協会

●開始/終了/予定:10:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第1030号/建物明渡等請求控訴事件
○当事者:高沢芙二子/梅島昭夫

●開始/終了/予定:11:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第853号/損害賠償請求控訴事件
○当事者:株式会社明成建設/セイエドネシャド・メディ

●開始/終了/予定:11:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4497号/所有権移転仮登記の本登記手続等請求控訴事件
○当事者:株式会社マドカホーム/株式会社土門 外

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第3346号/敷金返還、損害賠償等反訴請求控訴事件
○当事者:有限会社カンギン/株式会社ローソン

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第3728号/資料等請求控訴事件
○当事者:中谷明/旭化成ホームズ株式会社

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第3892号/損害賠償等請求控訴事件
○当事者:竹花龍 外/依田善永 外

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4059号/損害賠償(交通事故),求償金請求控訴事件
○当事者:須田玲子 外/中島運輸株式会社 外

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4099号/建物明渡等、修繕費用等反訴請求控訴事件
○当事者:佐藤正俊/山田繁行

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第169号/裁決取消請求控訴事件
○当事者:有限会社東亜電機/国/立花竜一

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第251号/法人文書不開示処分取消請求控訴事件
○当事者:市民オンブズマン群馬/独立行政法人国立高等専門学校機構


●開始/終了/予定:14:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第471号/損害賠償請求控訴事件
○当事者:井田正彦/寺尾基

●開始/終了/予定:14:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第827号/損害確定請求控訴事件
○当事者:森田産業株式会社/高橋誠

●開始/終了/予定:15:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第675号/建物明渡等請求控訴事件
○当事者:株式会社フードジャパン/株式会社エヌ・コーポレーション

●開始/終了/予定:16:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第575号/預け金返還等請求控訴事件
○当事者:友山晶子/寒川国見
**********

 開廷表の右側には担当裁判官らの名札が掛けてありました。
*****本日の事件*****
東京高等裁判所第17民事部
裁判長裁判官 矢 尾   渉
   裁判官 橋 本 英 史
   裁判官 三 浦 隆 志
   裁判官 今 井 和佳子
   裁判官 田 中 一 隆
裁判所書記官 石 橋 一 郎
**********

 上記開廷表のとおり、13時10分から7件の控訴事件について判決言渡しが行われることになっていました。当会の事案は言渡しの順番では一番後となっています。実はその時、当会担当者は13時10分からの判決言渡しの事件数を6件だと数え間違いをしており、当会の控訴事件の判決は最後の6件目だとその時思いこんでしまいました。そのため、あとでちょっとしたハプニングが起きることになりました。

■開廷までにまだ15分程時間があったので、窓側の左手奥にある待合室に入ると、すでに男性が一人待機していました。13時あたりに812号法廷の傍聴席の入口のカギが開けられるかと思い、時計の長針が0を指した頃合で法廷の覗き窓に目をやりましたが、まだ中は真っ暗でした。

 再び待合室に戻り、また10分ほど待機していると、待合室にいた男性が開廷5分前になって腰を上げました。そこで当会担当者も再び812号法廷に行ってみると、数名の男女が前の廊下で待機していました。まもなく中から鍵が開けられたので、当会担当者が真っ先に傍聴席に入りました。いちおう出頭簿に署名をしようとしましたが、どこにも見当たりませんでした。

 開廷するころには、傍聴席には10名ほどの傍聴人が座り、判決の言渡しを待っていました。

■定刻の午後1時ちょうどに矢尾渉裁判長と陪席裁判官2名(向かって右側は女性)が正面の扉から入って着席し、さっそく判決言渡しが始まりました。

 男性の書記官が事件番号を坦々と読み上げ、矢尾裁判長が次々に判決文を読み上げます。

「令和2年(ネ)第3346号」
「控訴人、有限会社カンギン、被控訴人、株式会社ローソン。主文、本件控訴を棄却する。控訴人の当審における拡張請求を棄却する。当審における訴訟費用をすべて控訴人の負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第3728号」
「控訴人、えー、中谷明、被控訴人、旭化成ホームズ株式会社。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第3892号」
「えー、控訴人兼被控訴人(当会注:お互いに控訴し合っている場合はこのように呼びます)、竹花龍、被控訴人……、ああ、外(ほか)、被控訴人、えー、依田、あー、善永、外。主文、本件各控訴を棄却する。2、控訴費用は一審原告龍、えー、一審原告ミサトおよび一審被告善永、に生じた費用を、一審原告龍および一審原告ミサトの負担とし、一審原告モトナリに生じた費用を、同一審被告の負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第4059号」
「控訴人、須田玲子、外、えー、被控訴人、中島運輸株式会社、外。主文、本件控訴をいずれも棄却する。控訴人アクサの当審における拡張請求を棄却する。当審における訴訟費用はすべて控訴人らの負担とする。以上です」
「令和2年(ネ)第4099号」
「控訴人、佐藤正俊、被控訴人、山田繁行。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」
「令和2年(行コ)第169号……」

 と、ここで、裁判の進行事件数を数えていた当会担当者が、「行コ」の言葉を聞くないなや、最後の6件目に本件の晩が来たと信じ込んで、傍聴席から、条件反射的に「すいません。判決を法廷内で謹んで拝聴してもよろしいでしょうか? オンブズマンとして、群馬県からこのためにやってきたので、ちょっと法廷の中に入って謹んで拝聴したいのですが」と傍聴席から手を挙げて発言しました。

 すると、男性書記官が反射的に当会担当者を制しようとする仕草を見せました。裁判所では、秩序重視という観点から、傍聴席からの発言にはかなり敏感なためです。裁判長は落ち着いた様子で「当事者ですか」と尋ねてきました。当会担当者が「はいそうです」と返事すると、裁判長は「それではどうぞ」と法廷内に入ることを許可しました。やりとりを聞いていた男性書記官が、「行コの事件番号が251号の当事者です」と裁判長に伝えました。

 裁判長が「あなたの事件はこの次です」と告げてきたので、当会担当者はようやくフライングだったことに気付きました。当会担当者が「すいません。どうぞ続けてください」というと、裁判長は直ちに判決文の読み上げを再開しました。

「控訴人、有限会社東亜電機、被控訴人、国。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」

■そして次に、当会が出訴した控訴事件の判決言渡しの順番となりました。事務官が「はい、どうぞ」と当会担当者を促しました。当会担当者は、傍聴席と法廷を区切る木製格子の左端にある開閉板を押して、法廷内の控訴人席に着座しました。

 事務官が「令和2年(行コ)第251号」と告げたので、当会担当者は「では、どうぞお願いします」と裁判長に声を掛けました。

 矢尾裁判長は、「控訴人・市民オンブズマン群馬、被控訴人・独立行政法人国立高等専門学校機構。主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。以上です」と当会全面敗訴の判決を読み上げました。

 行政側勝訴ありきの負かされ判決は実に聞き慣れたものとはいえ、1年8か月に及ぶ果てしない奮闘の末にこうもあっさり斬り捨てられると、やはり相当な落胆と脱力感を伴います。

 当会担当者が一応、「はい、ありがとうございました」と丁重に礼を言うと、矢尾裁判長はそれに対しては何も反応を見せずに、陪席裁判官と共にそそくさと席を立って奥に引っ込んでいきました。

 当会担当者が、男性書記官に向かって「では、出頭カードに署名します」と告げると、書記官はようやく出頭カードを出してきました。当事者が法廷内で判決言渡しを聞くことなどないだろうと最初から思い込み、形式的にすら出頭カードを事前提示していなかったわけです。高裁での控訴審の判決言渡しが、いかにべルトコンベアのような流れ作業であるかを示す象徴的な対応のように感じられました。当会担当者は、控訴人氏名欄の印刷した氏名に○を付けるのではなく、いつものとおり、大きな字で氏名を自署しました。

■すると、書記官は気を利かせて「判決正本は上の方で受け取れます」と伝えてきました。「14階でしたっけ?」と訊くと、「16階の北側です」と教えてくれました。

 ということで、僅か4分余りの判決言渡しが終わり、16階北側にある第17民事部に判決文を取りにいくため、人が一斉にエレベーターの方へ歩いていきました。傍聴者は、一気に7件の判決、それもおしなべて控訴棄却の判決を聞かされたことになります。当会担当者が流れを止めなければ、確実に3分以内で終わっていたベルトコンベア言渡しぶりでした。このとき、13時14分を少し回ったところでした。

 当会担当者は、どうせ窓口が混むだろうと思い、待合室で少し休み、トイレを済ませてから16階に上がりました。第16民事と第17民事部の窓口はいずれも並んでいました。第16民事部の方から声を掛けると、すぐ隣の第17民事部の事務担当の渡邊職員がすぐに当会担当者に気付き、既に用意してあった判決正本を持ってきました。

 そして受領証に押印をし、予納切手6000円のうち、500円切手8枚中2枚使用、100円切手10枚中2枚使用、84円切手5枚中0枚使用、50円切手4枚中1枚使用、20円切手10枚中0枚使用、10円切手10枚中0枚使用、5円切手10枚中1枚使用、2円切手10枚中0枚使用、1円切手10枚中0枚使用ということで、1255円を差し引いた4745円分の切手が戻されました。

■こうして判決正本と余った予納郵券を受け取り、渡邉書記官には「またお世話になります」と挨拶をして、裁判所をあとにしました。







以前から裁判所合同ビル内のアスベスト除去工事が断片的に施工されてきているが、今回、裁判所の1階ロビーの壁や天井にかけて、広い範囲が白い遮蔽板やシートで覆われている。どうやら天井のアスベスト除去を鹿島建設が請け負って今年10月末まで施工する予定であることが、裁判所前の標識から解る。

 外に出ると、幸いまだ雨が降り出してはいませんでした。裁判所のまえには相変わらず、不当判決に抗議する看板を立てかけたハイエースが駐車してありました。そして、上の方ばかりみるヒラメ裁判官による不当判決への批判が大書きしてありました。当会担当者が先程言い渡された不当判決についても、ぜひ並べて掲載していただきたいと思いましたが、いつものように掲示している方の姿は見当たりませんでした。






 その後、地下鉄丸ノ内線に乗って東京駅に戻りました。帰りは急ぐ必要もなかったため、東京上野ラインの高崎行に乗車し、ゆったり鈍行に揺られて16時18分に高崎駅に着きました。



もうすぐ高崎駅。空模様が怪しい。

■2021年6月16日に東京高裁で言い渡された第一次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第251号)の全面棄却判決の内容は以下のとおりです。

*****6/16第一次訴訟控訴審判決*****ZIP ⇒ 1ij.zip
令和3年6月16日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官 渡邊万倫子
令和2年(行コ)第251号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和元年(行ウ)第515号)
口頭弁論終結日 令和3年4月14日

              判       決

  前橋市文京町一丁目15-10
       控  訴  人    市民オンブズマン群馬
       同 代 表 者 代 表    小  川     賢
  東京都八王子市東浅川町701番2
       被 控 訴 人    独立行政法人国立高等専門学校機構
       同代表者理事長    谷  口     功
       同訴訟代理人弁護士  木  村  美  隆
       同          藍  澤  幸  弘

              主       文
    1 本件控訴を棄却する。
    2 控訴費用は控訴人の負担とする。


              事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
 2 被控訴人が平成31年4月16日付けで控訴人に対してした法人文書開示決定のうち,本判決別紙記載の各部分に係る情報を不開示とした部分を取り消す。

第2 事案の概要(以下,略称は,原判決の例による。)
 1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(法)に基づき,その保有する法人文書の開示を請求したところ,被控訴人から,一部を開示し,その余を開示しない旨の決定(本件決定)を受けたことから,本件決定のうち,原判決別紙 1 記載の各部分を不開示とした部分は違法であるとして,その取消しを求める事案である。
 2 原判決は,控訴人の請求のうち,本件決定中,原判決別紙1記載1の文書(本件文書1) の項目名及び整理Nоに係る情報を不開示とした部分の取消しを求める請求を認容し,その余の請求を棄却した。控訴人は,原判決の控訴人敗訴部分のうち,本判決別紙記載の各情報についての控訴人の請求を棄却した部分を不服として,控訴を提起した。なお,被控訴人は,原判決の被控訴人敗訴部分に対して控訴及び附帯控訴の提起をしておらず,本件決定中原判決が取消し請求を認容した部分について,情報を開示する旨の新たな決定をし,控訴人にこれを開示した。
 3 法の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者双方の主張は,後記4のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の1から4まで(2頁5行目か ら18頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
 4 原判決の補正
  (1) 3頁8行目末尾を改行して以下のとおり加える。
    「(4) なお,被控訴人は,令和2年11月24日,本件決定中,本件文書1(原判決別紙1記載1の本件各候補者一覧)のうち「項目名及び整理Nоに係る情報」を不開示とした部分が違法であるとして,その部分を取り消した原判決の言渡しを受け,同年12月14日付けで,当該不開示部分に係る情報を開示する旨の新たな決定をし,控訴人に対して同決定を通知するとともに,当該情報を開示した新たな開示文書(以下「再開示文書」という。)を送付した(甲47, 弁論の全趣旨)。」
  (2) 原判決別紙1の5のうち 「事件・事故発生状況報告書【最終報】(4枚のもの)」を「事件・事故発生状況報告書【最終報】(2枚のもの)」に改める。

第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,原判決のとおり,控訴人の請求は,本件決定中,本件文書1(原判決別紙1記載1の本件各候補者一覧。以下,本件各候補者一覧のうち個別の年の候補者一覧を「平成23年候補者一覧」などという。)について,項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分の取消しを求める限度で理由があり,その余は理由がないと判断する。その理由は,後記2のとおり原判決を補正し, 後記3のとおり控訴人の当審における新たな主張に対する判断を加えるほかは,原判決「事実及び理由」中の第3の1から5まで(18頁6行目から28頁22行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
 2 原判決の補正
  (1) 21頁6行目から7行目にかけての「群馬高専内の者や群馬高専の関係者」を「群馬高専内の者,これらの者の関係者(当該個人の関係者を含む。) 及び群馬高専の関係者等の不特定多数の者」に改める。
  (2) 21頁7行目の「個人を識別することが可能であるもの」を「個人を識別することを可能にする個人に関する情報(法5条1号本文による保護を要するプライバシーに係る情報)である」に改める。
  (3) 22頁3行目の「群馬高専内の者や群馬高専と関係のある者」を「群馬高専内の者,これらの者と関係のある者(当該個人と関係のある者を含む。)及び群馬高専と関係のある者等の不特定多数の者」に改める。
  (4) 26頁12行目の「弁護士法人が,」の次に「訴訟案件(特に,被控訴人を依頼者とし,当該事件ないし本件と同種の案件のもの)について,」を加える。
  (5) 26頁23行目の「「配分金額」欄に記載された情報は,」の次に「「支払金額」欄のみに記入されたものを含め,」を加える。
  (6) 27頁14行目の「長野高専内の者や長野高専の関係者」を「長野高専内の者,これらの者の関係者(当該学生の関係者を含む。)及び長野高専の関係者等の不特定多数の者」に改める。
  (7) 28頁9行目末尾に改行の上以下のとおり加える。
    「控訴人は,当審において, 控訴人に開示された資料(甲53~55)を組み合わせる方法によって,本件報告書に記載されている事件の発生時期に係る情報をおおまかには確定することができ,したがって,当該情報は,すでに公衆が知り得る状態に置かれているから,法5条1号ただし書イに該当する旨を主張する。
    しかし,控訴人の上記主張を踏まえても,本件報告書に記載されている事件の発生時期に係る情報は,控訴人に開示された資料を組み合わせることによって初めておおまかには推知し得る状態となるにとどまるものであって,上記事件発生の年月日や時刻を特定し得る情報はいまだに公開ないし公表されていないことが認められ(弁論の全趣旨),また,当該情報が将来公開ないし公表されることが予定されていることを認めるに足りる証拠もない。したがって,当該情報は,法5条1号ただし書イ所定の「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当するものとは認めることができない。これに反する控訴人の主張は,採用することができない。」

  (8) 28頁16行目の「対照文書」を「対象文書」に改め,同19行目の「当該情報が」の次に「,「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」として,」を加える。

 3 控訴人の当審における新たな主張に対する判断
  (1) 控訴人の主張
    本件文書1(本判決別紙記載1の本件各候補者一覧)のうち,平成23年ないし平成31年候補者一覧が扱う「推薦機関の種別」の情報は,開示されるべきである。その理由は,以下のとおりである。
   ア 被控訴人は,再開示文書(甲47)によって,本件各候補者一覧のうち, それまで不開示としていた項 目名及び整理Noに係る情報を新たに明らかにした。
     原審での被控訴人の主張によれば,本件各候補者一覧は,各候補者を推薦機関の種別ごとに区分して一覧表としてまとめたものであるところ,平成23年から平成28年までの候補者一覧には,右上に資料番号が付されており,更にその細目番号が二つ(①及び②ないし1及び2)に区分されており,それぞれの細目番号が付された一覧表の項目欄の最初の項目には, それぞれ「推薦機関」(細目番号が①ないし1のもの)又は「学校名」(同じく②ないし2のもの)と記載されているから,細目番号が②ないし2の一覧表が高等専門学校(以下「高専」という。)や大学を含む教育機関からの推薦者ないし出身者を,細目番号①ないし1の一覧表がその他の研究機関や官公庁からの推薦者ないし出身者をそれぞれまとめたものであることが推知できる。そうすると,少なくとも上記細目番号により二つに区分される一覧表がそれぞれ扱う「推薦機関の種別」は,事実上おおまかなものとして既に明らかになっているといえるから,これを開示しても,被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるとはいえず, 法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当しない。
   イ 再開示文書の平成29年候補者一覧は,1又は2の細目番号が付された二つの一覧表と細目番号が付されず候補者が1名のみ記載された一覧表とから成っている。各一覧表の各項目欄の最初の項目にはいずれも「推薦機関」と記載され,「学校名」の記載はない。控訴人に開示された資料(甲51)と,実際に高専の校長に就任した者について公開されている平成29年4月付け高専の校長の人事に係る文書(甲52)から判明する各校長の前職とを組み合わせてみると,細目番号1の一覧表に「国立大学」からの推薦者を,同2の一覧表に「高専」からの推薦者を,細目番号の記載のない一覧表に「高専」からの追加の推薦者がそれぞれ記載されていることが明らかである。
   ウ 再開示文書の平成30年候補者一覧は,平成29年候補者一覧と同じく,各一覧表の各項目欄の最初の項目にいずれも「推薦機関」と記載され,「学校名」の記載はない。各一覧表の整理Noによると,細目番号1の一覧表に6名,細目番号2の一覧表に4名の候補者が記載され,細目番号が付されていない一覧表3枚に,それぞれ1名,2名,1名の候補者が記載されていることが分かる。一方で,実際に高専の校長に就任した者について公開されている平成30年4月 付け高専の校長の人事に係る文書(甲48)により判明する各校長の前職を見ると,高専教員4名,大学(院)出身者5名,文部科学省2名,国立教育政策研究所1名となっている。ある区分における就任者数が候補者数を上回ることはありえないことも考慮すると,細目番号1が大学(院)出身者,同2が高専出身者, 細目番号なしの一覧表のうち候補者2名のものが文部科学省出身者であることが推知される。平成31年候補者一覧の各一覧表についても,平成30年候補者一覧のものと同様に区分けされているから,同様の手法でそれぞれの区分に係る推薦機関の種別が推知可能である。
   エ 以上のとおり,本件文書1に含まれる情報のうち,各一覧表が取り扱う大まかな「推薦機関の種別」は,既に開示されている情報から推知可能な情報であり,法5条4号ヘ所定の不開示情報でないことが明かである。
  (2) 被控訴人の反論
    控訴人の主張は,いずれも争う。
   ア 控訴人が主張する「推薦機関の種別」とは,再開示文書(甲47)の各一覧表(本件各候補者一覧)の標題中の「国立高等専門学校長候補者一覧」との文字の右側に続く不開示部分を指すと解される(以下,上記不開示部分に係る情報を「標題部不開示情報」という。)。
     高専の校長の前職は,高専や国立大学の教授,文部科学省や国立の研究所の職員といったように複数あり(甲48),これらの出身者が再開示文書の各一覧表のどこに掲載されているかは明らかになっておらず,平成30年度の高専の校長の人事文書(甲48)に記載されている各人が,再開示文書のどの整理Noの箇所に記載されているかはもちろん,控訴人のいう二つの細目番号のいずれが付された一覧表に記載されているかも具体的に特定することはできない。控訴人の主張は,控訴人個人による単なる推測にすぎない。
   イ また,上記「推薦機関の種別」に係る情報(標題部不開示情報)が開示されると,控訴人が指摘するように,候補者の人数(再開示文書の各一覧表の整理Noの数)と実際に校長に就任した者の人数(甲48の校長の人数)との比較により,ある程度の精度で推薦機関ごとの校長採用の割合を 推測することが可能となる。これにより,推薦機関が推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,校長の候補者の推薦を躊躇するなど,多数の有為な人材から校長を選任するという被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれがある。
   ウ なお,年度によっては,校長候補者の人数や構成が比較的少数,単純であり,一覧表に記載された校長候補者の推薦母体が推測しやすい年度が生じ得ることは避けられないが,このことを理由に当該年度における推薦母体の分類内容やその表現(例えば「国立大学法人」や「外部推薦分」といった表記)を明らかにした場合には当該年度のみならず他年度の候補者一覧の分類方法や一覧表の構成をより正確に推測することが可能となるおそれがある。これにより,候補者を推薦した推薦機関や推薦機関別の候補者の多寡を判断することができるようになり,推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなどのおそれがあり,被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれがあることになる。
   エ したがって,再開示文書を前提としても,上記「推薦機関の種類」の情報(表題部不開示情報)は,法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当するものである。

  (3) 当裁判所の判断
    当裁判所は,本件文書1の本件各候補者一覧(平成23年ないし平成31年候補者一覧)の標題部不開示情報は,控訴人の当審における新たな主張を勘酌しても,いずれも法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当し,これを不開示とした本件決定の部分は適法であるから,この取消しを求める控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,以下のとおりである。
   ア 上記引用に係る原判決(18頁7行目から11行目まで)が説示するとおり,本件各候補者一覧は,いずれも被控訴人において各国立高等専門学校の校長を選考する際に用いられる資料であり,学校長候補者の氏名,生年月日等候補者を特定する事項や,整理No, 推薦機関,主な学歴,学位,専門分野,職歴及び現職(被控訴人に所属する者の場合には現在の所属先)が,推薦機関ないしその種別ごとに一覧表にまとめて記載されているものと認められる(弁論の全趣旨)。
   イ 再開示文書(甲47)及び弁論の全趣旨によると,控訴人が開示を求める「推薦機関の種別」とは,本件各候補者一覧の標題部不開示情報であると認められるところ,平成23年ないし平成31年候補者一覧は,いずれも控訴人主張のとおり細目番号の有無や相異により区別された各一覧表から成るものであり,各一覧表の各項目欄の最初の項目には,控訴人主張のとおり「推薦機関」及び「学校名」(平成23年ないし平成28年候補者一覧)又は「推薦機関」(平成29年ないし平成31年候補者一覧)と記載されていることが認められる。
   ウ そして, 弁論の全趣旨によると,平成23年ないし平成31年候補者一覧の標題部不開示情報の全部を開示する場合はもちろん,その一部を開示した場合でも,各一覧表の区分ごとの候補者の人数(再開示文書の各一覧表記載の整理Noの数)と,各年度の実際に校長に就任した者の人数等の情報 (例えば甲48から判明する校長の人数やその前職)を組み合わせて考察することや,各年度における上記の考察の結果を比較して更に考察を加えることなどの方法によって,ある程度の精度で各年度の具体的な推薦機関ないしその種別(例えば,高専,国立大学法人,文部科学省,国立教育政策研究所など)ごとの校長採否の割合を推測することが可能となる場合のあることが認められ,現に控訴人も,その正確性は別にして,一部の年度について,具体的な推薦機関やその種別を推測する主張をしているところである。
     したがって,本件各候補者一覧の標題部不開示情報が開示され,これが確定した情報として公開されることになれば,推薦機関が推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,校長の候補者の推薦を躊躇するなど,多数の有為な人材から校長を選任するという被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれが生じるものというべきである。以上によれば,本件各候補者一覧 (平成23年ないし平成31年候補者一覧)の標題部不開示情報は,いずれの年度のものも,法5条4号ヘ所定の不開示情報に該当するから,本件決定中これを不開示とした部分は適法であり,当該部分についての控訴人の取消請求は理由がない。
 4 控訴人は,本判決別紙記載の各部分が法5条所定の不開示事由ないし不開示情報に該当しないとして,当審においても原審と同様に縷々主張するが,その主張を勘酌しても,上記引用に係る原判決(前記2の補正後のもの)の認定判断及び前記3の当裁判所の認定判断は左右されない。
 5 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第17民事部
       裁判長裁判官 矢 尾   渉
          裁判官 橋 本 英 史
          裁判官 今 井 和佳子


 (別紙)
1 平成23年4月1日付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成24年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成25年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成26年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成27年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成28年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成29年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧,平成30年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧及び平成31年4月付け国立高等専門学校長候補者一覧の不開示部分のうち,原判決が開示を命じた「項目名及び整理No」に加えて更に「各一覧表が扱う推薦期間の種別の表示」,「選考通過者のうち実際に校長に就任した者に係る記載情報の全て」及び「各候補者の推薦機関及びその種別」の各部分
2 西尾典眞の平成29年3月15日付け辞職願の不開示部分のうち辞職理由が記載された部分【原判決別紙1記載2に同じ】
3 群馬工業高等専門学校「校報」第129号から第131号までの表紙及び人事関係の不開示部分のうち,同校職員の全てについて,「人事前後の同校における所属・職名に係る情報」,特に同校職員のうち教育研究支援センター所属の技術補佐員については,「氏名および人事前後の同校における所属・職名に係る情報」
4 平成28年度支払決議書,平成29年度支払決議書及び平成30年度支払決議書の不開示部分のうち,「合計金額」,「支払金額」
5 事件・事故等発生状況報告書【第一報】」(報告日時の時刻が1時40分のもの),事件・事故発生状況報告書【第二報】(6枚のもの),事件・事故発生状況報告書【最終報】(7枚のもの),事件・事故等発生状況報告書【第一報】(報告日時の時刻が15時0分のもの),事件・事故発生状況報告書【第二報】(2枚のもの),事件・事故発生状況報告書【最終報】(2枚のもの),事件・事故等発生状況報告書及び故■■■■君に関する報告書の不開示部分のうち,年月日や時刻に関する記載【原判決別紙1記載5に同じ】

                                   以上

                   これは正本である。
                   令和3年6月16日
                    東京高等裁判所第17民事部
                     裁判所書記官  渡 邊 万倫子
                       東京(高)19-004378
**********


■以上のとおり、高専機構側にかなり不利とみられた2つ3つの争点や不開示箇所に関してだけは一応言及するだけした上で機構側の主張をフリーパスで素通し採用し、その他の主張や争点は「原審と同じ」として言及すらしない、というお見事な斬り捨て判決です。

 予期せず控訴審の焦点となった「高専校長候補者一覧」については、せめて大まかにどういったまとめ方をしているか、各文書のタイトル程度は明かされるだろうと考えていたのですが、それすら甘い予測でした。東京高裁は、一覧表のタイトルですら、「高専機構の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれが生じる情報」などとあまりに不条理な認定をしてきたのです。

 それも、この馬鹿げた認定のベースとなっている主張は、明らかに当会からの具体的な反論に慌てた田中・木村弁護士事務所が第二回口頭弁論の2日前に駆け込み提出してきた例の無茶苦茶書面のものです。まさに、「どんな主張でもとりあえず出してさえおけば採用される」入れ食い状態です。

■それにしても、高専校長候補者一覧表の徹底不開示に関するアクロバティックな三段論法は、あまりに噴飯モノです。すなわち、高専校長候補者一覧表の黒塗りを一ミリも剥がさせまいと高専機構側がひたすら強弁し、そして東京地裁・東京高裁が素通しで認めてしまった以下の「ロジック」です。

●高専校長候補者一覧表にかかる情報を、タイトルですらも開示すると……
 ①「ある程度の精度で各年度の具体的な推薦機関ないしその種別ごとの校長採否の割合を推測することが可能となる場合のあることが認められる」
⇒②「推薦機関が推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,校長の候補者の推薦を躊躇する」
⇒③「多数の有為な人材から校長を選任するという被控訴人の公正かつ円滑な人事の確保に支障を来すおそれが生じる。よって不開示が妥当な情報である」

 しかしこの主張自体、国立高専機構が校長選考において「『推薦機関』による特定校長候補者の優遇や差別を行っています!」ということを公に堂々認めるも同然の代物です。その「優遇と差別」の最たるものが、文科省が自省キャリア官僚を高専校長に「推薦」したときの100%フリーパスであることは言を俟ちません。

 この致命的問題点については、当会が再三にわたって指摘し続けてきました。それにも関わらず東京地裁・東京高裁は、この単なる不条理な暗部を「高専機構の公正かつ円滑な人事」と有無を言わさず認定してしまったのですから、開いた口が塞がりません。そもそも、「円滑」はともかくとして、一体どこが「公正」な人事なのか、地裁審と高裁審を担当した裁判官らのご優秀な脳回路に問い質してみたいものです。

■また、長野高専の連続自殺事件の発生年月日についても、事実上明らかになっている情報でありながら、年レベルでの開示すら一切認められなかったのは極めて遺憾というほかありません。

 これでは、連続自殺問題について、長野高専と正面から向き合い、当時の学校側の体質や対応に問題点はなかったか、原因究明と再発防止はしっかり行ったのかといった事実追及を行おうとしても、「不開示情報(発生時期)を明らかにしてしまう」などとして一切回答拒否にされてしまうことは目に見えています。

 したがって、約10年前の長野高専連続自殺問題について、学校側と向き合って紐解いていくという方向での活動は厳しいものとなってしまいました。今後は、当会独自の情報収集に基づき、独立して事態の解明を進めていくことになります。

 そして、不開示取消を求めて数年来闘い続けてきていたその他の情報、すなわち西尾校長(当時)の手によって抜け目なく公開停止させられた群馬高専校報の人事情報や、高専機構の“守護神”である田中・木村弁護士事務所のポンコツ弁護士陣に国費から湯水のごとく注いだ弁護士費用の情報などに関する請求は、ほとんど言及すらされずに「不開示の認定判断は左右されない」と一刀両断されてしまいました。まったく遺憾としか言いようがありません。

■今回の第一次訴訟控訴審を振り返ってみて思い出されるのは、第一回口頭弁論の時に裁判長と右陪席裁判官がやたらしつこく釈明権を行使して、藍澤弁護士に「主張の抜け」を懇切丁寧に教えていたこと、そして高専機構側から杜撰な書面が出た第二回口頭弁論では態度が打って変わって、当会の反論にも関わらずあっさり結審させにかかったことです。

 口頭弁論中からある程度危惧はしていたものの、あらためて思い返すと、やはり高専機構側を勝たせることありきの裁判であったことを痛感します。東京高裁としては最初から高専機構側を勝たせるつもりではあったものの、その訴訟代理人である田中・木村法律事務所の弁護士陣が、重要なポイントの数々にそもそも反論すらしてこないという想像以上のポンコツであったため、第一回口頭弁論で急遽「お膳立て」をしてあげたものと推察されます。

 すなわち、当事者が言っていない主張まで裁判所が勝手に忖度して代弁するわけにはいかないので、とりあえず「内容がなんであれ反論はした」という既成事実だけは作らせるべく、「釈明権の行使」の形で、どう反論すべきかのアドバイスを仔細に行ったものと考えられます。そして、田中・木村弁護士事務所側も東京高裁の意図を察し、期日2日前の強行提出になってでも「とにかく主張を出すこと」を優先してきたと考えられます。あとは、控訴人当会が何を言おうが結審し、どれほど無茶苦茶であろうと高専機構側の言い分をそのまま判決に仕立てるだけの楽な作業、というわけです。

 このように、「とにかくバットを振りさえすれば全部ホームラン」という忖度お膳立てぶりが、今の日本の行政裁判の実情です。


■当会では、高専組織の異常な情報隠し体質に少しでも歯止めをかけようと、2019年10月に「高専過剰不開示体質是正訴訟」プロジェクトをスタートさせました。

 このプロジェクトは、第一次訴訟・第二次訴訟にわたる二つの裁判を軸とするもので、高専機構側が次々仕掛けてくる卑怯な法廷戦術の嵐と、新型コロナ禍による前代未聞の裁判所機能停止をなんとか乗り越え、1年半以上に及ぶ激闘を遂行してきました。

 しかし、徹底的に行政/公機関側に立って判断し、下手をすればスクラムまで組んで、悪意に満ちた判決すら平然と下してくる我が国司法の悲しい実情という厚い壁に阻まれ、残念ながらいずれも当会側のほぼ完敗に終わってしまいました。

 なお、4月に下された第二次訴訟控訴審の判決については次の記事をご覧ください。

○2021年4月29日:【高専過剰不開示体質是正訴訟】第二次訴訟控訴審で曰く付き白石裁判長が案の定・問答無用の全面棄却判決!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3310.html

 よって残念ながら、今回の取り組みを経て、高専組織の情報不開示体質に歯止めをかけることは叶いませんでした。むしろ、何が何でも裁判所が勝たせてくれるという身も蓋もない現実に自信を得て、より一層、問題の隠蔽と揉み消しのための無茶苦茶なノリ弁不開示を加速させてくる事態も危惧されます。もちろん、当会としてそのような事態を認めるわけにはいきません。

 当会では今後、悪化の一途を辿る高専組織の異常な情報隠し体質を打ち破り、闇のベールを引き裂いて腐敗の実態を白日の下に晒すべく、更なる多角的な調査追及方式をもって対抗していく構えです。

■さて、今回の判決をもって、1年8か月に及ぶ「高専過剰不開示体質是正訴訟」プロジェクトは一応の区切りということになります。

 とはいえ、この闘いを経て収穫がなかったわけではありません。得たもののひとつは、高専機構・各高専とその御用達代理人である田中・木村法律事務所の面々が、どれほどまでに汚い手段を平気で使い、呆れるほどに杜撰な主張を平気で言い立ててくるか、というケーススタディが十分に蓄積されたことです。

 今後とも、何らかの事情によって高専組織と闘わなければならなくなった方々は、日本中で次々と生まれてくることでしょう。そうした際に、今回の訴訟経過の記録を、高専機構という腐敗を極めた組織の「手の内」を示す有用なライブラリとして少しでも活用していただければ、まさに幸甚の至りです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【高専過剰不開示体質是正訴訟】第二次訴訟控訴審で曰く付き白石裁判長が案の定・問答無用の全面棄却判決!

2021-04-29 23:38:00 | 群馬高専アカハラ問題
■群馬高専アカハラ犯・雑賀洋平の沼津逃亡時、その予定期間がなぜか徹底秘匿されてきた問題について、当会ではここに争点を絞った訴訟を2019年10月に東京地裁に提起していました(第二次訴訟)。第二次訴訟において当会は、1年間をかけて被告高専機構のデタラメ極まる言い分をひとつひとつ丹念に潰していき、誰の目にも高専機構の敗色が濃厚になりつつありました。ところが、そうして時間稼ぎしている間に雑賀本人の群馬帰還と担任就任強行を成功させて「目的達成」と考えたのか、高専機構側は問題とされた処分ごと突如消滅させてハシゴを外す「訴訟おじゃん作戦」を発動してきました。この事態に、当会では緊急で訴えの変更を申し立てましたが、地裁審を担当した清水知恵子裁判長はそれを問答無用で却下し、一方で被告高専機構の卑怯極まる作戦を素通しで認め、「請求に理由なし」として原告当会の全面敗訴判決を出してしまいました。オマケに、なぜか理由の記載も一切ないまま訴訟費用もすべて原告負担にされていました。

 当会としては、この稀代のトンデモ判決を断じて認容するわけにいかないとの結論に達し、2020年12月に東京高裁へと控訴を行いました。しかし凶報は続き、高裁審を担当することになったのは、理に適わぬ不当判決量産により連日裁判所前で名指し抗議を受けている、なんとも悪名高い白石史子裁判長でした。この状況に圧倒的優勢を確信した高専機構側は、悠々とトンデモ控訴答弁書を提出してきました。そして案の定、開廷早々に白石裁判長は即座に結審しようとしましたが、なんとか当会から緊急準備書面を陳述し、その上で判決日が4月23日に定められました。

○2020年11月25日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html
○2021年2月1日:【高専過剰不開示体質是正訴訟】控訴理由書を提出し初回弁論日3/9決定の第二次訴訟控訴審…早速の暗雲?
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3275.html
○2021年3月23日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・第二次訴訟控訴審】機構側控訴答弁書と 3/9高裁弁論(即日結審)の一部始終
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3287.html

 そして、運命の判決言い渡し日である4月23日を迎えました。

■当会の活動モットーとして、基本的には判決言渡を現に聴取するようにしているのですが、4月23日(金)の13時20分から東京高裁822号法廷で行われた判決言い渡しの場に、残念ながら当会担当者はいませんでした。というのも、当会の取り組む深刻な地域マターのひとつである渋川残土問題につき前橋地裁で目下係争中であるところ、その裁判の第9回口頭弁論が同時刻に設定されたことから、当会担当者はそちらに原告として出頭せざるを得ず、本件の判決言い渡し聴取を断念したためです。

 なので、判決文の送達を待っていたところ、東京高裁から4月26日に送達された判決文が翌27日に当会事務局へと届けられてきました。さっそく内容を確認してみると、案の定というべきか、当会の主張のすべてを問答無用で切り捨てた全面棄却判決でした。

*****第二次訴訟控訴審判決文*****ZIP ⇒ 030423.zip
令和3年4月23日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和2年(行コ)第259号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和元年(行ウ)第549号)
口頭弁論終結日・令和3年3月9日

            判    決

   前橋市文京町1丁目15-10
      控   訴   人    市民オンブズマン群馬
      同 代 表 者 代 表     小  川     賢
   東京都八王子市東浅川町701番2
      被  控  訴  人     独立行政法人
                   国立高等専門学校機構
      同代表者理事長      谷  口     功
      同訴訟代理人弁護士    木  村  美  隆
      同            藍  澤  幸  弘

            主    文
     1 本件控訴を棄却する。
     2 控訴費用は控訴人の負担とする。


            事実及び理由
第1 控訴の趣旨
 1 原判決を取り消す。
 2 本件を東京地方裁判所に差し戻す。
 3 訴訟費用は,第1審,第2審とも被控訴人の負担とする。

第2 事案の概要
 1 本件は,法人格のない社団である控訴人が,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)4条に基づき被控訴人の保有する法人文書の開示を請求したところ,被控訴人(処分行政庁)から,その一部について不開示とする決定(以下「本件一部不開示決定」という。)を受けたことから,その不開示部分の一部を不服として,被控訴人に対し,本件一部不開示決定のうち当該不服に係る部分の取消しを求めた事案である。
 2 控訴人は,原審において,行政事件訴訟法7条で準用する民訴法143条1項本文に基づき,本件訴えに係る請求の全部を交換的に変更する旨の申立てをしたが,原審は,その変更を許さないこととした上,変更前の請求について,取消しを求める訴えの利益を失っており,不適法であるとして,本件訴えを却下したところ,控訴人が,原判決を不服として本件控訴を提起した。
 3 関係法令の定め,前提事実,争点及び当事者の主張は,次の点を改め,後記4のとおり当審における当事者の主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の2から4までに記載のとおりであるから,これを引用する。
  (1) 原判決2頁18行目の「(以下「機構法」という。)」及び20行目の「(機構法3条)」をいずれも削る。
  (2) 原判決3頁4行目から5行目にかけての「その一部につき開示し,その余を不開示とする」を「各文書について,その一部を不開示とし,当該不開示部分を除いて開示する」に改める。
  (3) 原判決3頁16行目の「の4名の教員」を「と題する表に掲げる4名の教員」に改める。
  (4) 原判決4頁7行目の「 他教員不開示部分に係る部分」を「他教員不開示部分を不開示とする部分」に改める。
  (5) 原判決4頁13行目から14行目にかけての「違法である」を「違法であり,これにより精神的苦痛を被った」に,15行目の「損害金」を「慰謝料」にそれぞれ改める。
  (6) 原判決4頁19行目冒頭に「本件訴えの変更申立てによる変更前の請求に係る」を加える。
 4 当審における当事者の主張
  (1) 本件訴えの変更申立てを許さなかった原審判断の当否
   (控訴人の主張)
    控訴人は,被控訴人の応訴により約1年間にわたり不要かつ多大な訴訟手続の負担を強いられている。原審は,訴えの利益を確保するよう配慮すべきであるのに,不意打ち的な本件再決定により即座に裁判をするのに熟したとして控訴人の訴えを却下することは,控訴人のこれまでの負担を無に帰し,新たな訴訟を提起してーから主張立証を積み重ねることを強いるものであって,著しく信義則にもとり,職権濫用である。
    本件訴えの変更申立ては,請求の基礎に変更のない訴えの交換的変更であり,従来の争点と性質を異にする新たな争点が生じるとは考えにくく,著しく訴訟手続を遅滞させるものではない。少なくとも本件新請求2は,本件再決定に至るまでの原審の訴訟手続の過程に密接に関連し,原審の審理を継続して被控訴人の過失責任の有無を審理するのが合理的であり,同種の事案で訴えの変更を認めた事例もある。訴えの変更を認めない原判決は,公正かつ迅速な訴訟の実現を定める民訴法2条に背くものである。
    原審において,被控訴人は本件訴えの変更申立ての不許を申し立てておらず,原判決は,当事者の申し立てていない事項について判決したものであり,民訴法246条に違反する。
    したがって,原判決を取り消し,本件を原審に差し戻すべきである。
   (被控訴人の主張)
    被控訴人が本件各不開示部分を開示した理由は,本件開示請求に係る特定の教員の派遣期間が満了し,派遣元校に復帰していることが明らかであったという個別事情を踏まえ,原審の訴訟手続を早期に終了させるためである。本件訴えの変更申立てが認められると,被控訴人の教員交流制度に係る派遣期間が法5条の不開示情報に該当するかという争点について,主張整理の手続が引き続き行われることとなり,原審の訴訟手続を著しく遅滞させることとなることは明らかである。
    また,本件再決定の前に,控訴人が訴えの変更申立てをすることができなかったという事情はない。本件訴えの変更申立ては,訴えの利益を確保するために争点の範囲を拡大させようとするものであり,これを認めないことは,何ら信義則に反するものではなく,職権濫用にも当たらない。
  (2) 訴訟費用の負担
   (控訴人の主張)
    本件では,提訴後に被控訴人が取消請求の対象となる決定を自ら取り消したために,訴えの利益が消滅したのであるから,単純に訴訟費用を敗訴者負担とすることはできない。控訴人が本件訴えを提起したことは,その時点では権利の伸張に必要な行為であるから,民訴法62条を適用して訴訟費用を被控訴人の負担とすべきである。
    原判決は,裁判所の判断理由が記載されるべき箇所において,訴訟費用に関する判断を一切記載しておらず,訴訟費用の負担の裁判を脱漏しているから,民訴法258条2項,4項に基づき,訴訟費用を全て被控訴人の負担とする判決を求める。
   (被控訴人の主張)
    訴訟費用の裁判に対しては独立して上訴することができないことから,本案の裁判に対する上訴に理由がなく,本案の裁判が変更されないときは,訴訟費用の裁判も変更すべきではない。

第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,本件訴えは不適法であるから,これを却下すべきものと判断する。その理由は,原判決の「事実及び理由」欄の第3の2に記載のとおりであるから,これを引用する。
 2 本件訴えの変更申立ての許否について
  (1) 前記引用に係る原判決第2の3(6)のとおり,本件訴えの変更申立ては,当初の請求を本件新請求1及び本件新請求2に交換的に変更するものである。本件新請求1は,本件再決定のうち本件法人文書2について他教員不開示部分を不開示とした部分の取消しを求めるものであるが,引用に係る原判決第2の3(3)によれば,他教員不開示部分は,本件一部不開示決定において,本件各不開示部分とともに不開示とされた部分であることが認められるところ,控訴人は,本件訴訟において,本件一部不開示決定のうち本件各不開示部分に係る部分の取消しを求めるにとどまり,他教員不開示部分に係る部分については取消しを求めていなかったことからすると,本案前に本件新請求1に係る訴えの適法性が問題となることが想定される。また,被控訴人は,本件開示請求に係る特定の教員に関する個別事情を踏まえて本件各不開示部分を開示した旨主張しているところ,本件新請求1が本案の審理の対象となれば,他教員不開示部分が法5条の不開示情報に該当するかについて,個別事情を含めて更なる主張立証が必要になると認められる。
さらに,本件新請求2について想定される国家賠償法上の違法性の有無等の争点に関する主張立証の必要性を併せ考慮すると,原審が,本件訴えの変更申立てについて,著しく訴訟手続を遅滞させることとなるものと認めてこれを許さないとしたことが,合理性を欠くとはいえない。
  (2) 控訴人は,本件訴えの変更申立てを許さないことは,控訴人の訴訟手続の負担を無に帰し,新たな訴訟を提起してーから主張立証を積み重ねることを強いるものであって,著しく信義則にもとり,職権濫用である旨主張し,また,少なくとも本件新請求2については,原審の訴訟手続の過程に密接に関連し,原審の審理を継続して被控訴人の過失責任の有無を審理するのが合理的であるなどとして,公正かつ迅速な訴訟の実現を定める民訴法2条に背くものである旨主張する。
    しかし,前記(1)のとおり,他教員不開示部分は,本件一部不開示決定において,本件各不開示部分とともに不開示とされた部分であるところ,控訴人は,本件訴訟において,本件一部不開示決定のうち本件各不開示部分に係る部分の取消しを求めるにとどまり,他教員不開示部分に係る部分については取消しを求めていなかったことからして,本件新請求1について,別訴を提起するよう求められたとしても,直ちに不合理であるとは解されず,本件訴えの変更申立てを許さないことが信義則にもとり,職権濫用であると認めることはできない。
    また,本件訴えの変更申立ては,当初の請求を本件新請求1及びその関連請求である本件新請求2に交換的に変更するものであるから,その許否は,本件新請求1及び本件新請求2を総合して判断されるべきであり,本件新請求2について,その請求原因が原審の訴訟手続の過程に密接に関連するといった事情が認められるとしても,そのことから直ちに,本件訴えの変更申立てを許さないことが不合理であるとはいえず,民訴法2条に背くものであるとは解されない。なお,控訴人は,少なくとも本件新請求2については,訴えの変更を認めるべきである旨主張しているとも解される。しかし,本件新請求2は当初の請求とは訴訟手続を異にするので,本件新請求2のみでは民訴法143条による訴えの変更はできないのであるから,本件新請求2についてのみ訴えの変更を認めることは相当ではないというべきである。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
  (3) 控訴人は,原審において,被控訴人は本件訴えの変更申立ての不許を申し立てていないとして,原判決は,当事者の申し立てていない事項について判決したものであり,民訴法246条に違反する旨主張する。
    しかし,裁判所は,訴えの変更を不当であると認めるときは,職権によりこれを許さないことができるのであり(民訴法143条4項),本件訴えの変更申立ての不許が処分権主義(民訴法246条)に反するものでないことは明らかである。控訴人の上記主張は失当である。
  (4) 他に控訴人が種々主張する点を考慮しても,原審が本件訴えの変更申立てを不許としたことが,違法,不当であるとは認められない。
 3 訴訟費用の負担について
   控訴人は,民訴法62条を適用して訴訟費用を被控訴人の負担とすべきであるとした上,原判決は,訴訟費用の負担の裁判を脱漏しているとして,民訴法258条2項,4項に基づき,訴訟費用を全て被控訴人の負担とする判決を求める旨主張する。
    しかし,原判決は,主文において訴訟費用を控訴人の負担とする旨宣言しており,訴訟費用の負担の裁判を脱漏したものでないことは明らかであるから,控訴人の上記主張は,前提において失当である。

第4 結論
   よって,本件訴えを却下した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

   東京高等裁判所第2民事部
       裁判長裁判官   白石史子
          裁判官   湯川克彦
          裁判官   澤田久文

これは正本である。
 令和3年4月23日
  東京高等裁判所第2民事部
   裁判所書記官 岡 松 眞 理

=====予納郵便切手返還書=====
          事件番号 令和年(行コ)第259号
                      令和3年4月26日
 予納者  控訴人  殿
   東京高等裁判所第2民事部
       裁判所書記官 岡 松 眞 理

        返  還  書
予納を受けた郵便切手について,使用残額 4771 円分

 内訳
  500円6枚 100円9枚 84円4枚 50円4枚 20円8枚 10円10枚 5円9枚  2円10枚 1円10枚

を返還します。

(注) 所要の事項を記載した上で,発送する。
**********


■このように、控訴人当会による必死の釘指しと抵抗も空しく、白石裁判長は有無を言わさず徹底的に高専機構側に立った全面敗訴判決を出してきました。担当裁判官決定時から半ば予期されていたこととはいえ、いざ札付きの札付きたる所以を目の当たりにすると、やはり相当な脱力感が漂います。これが我が国の司法の現実です。

 同様事例で賠償請求への訴え変更を認めた事例が現にあると当会が指摘し、実際に判決内「当事者の主張」中でも言及しているにも関わらず、「当初の請求とは訴訟手続を異にするので,本件新請求2のみでは民訴法143条による訴えの変更はできない」などと滅茶苦茶な認定をしてくる有様には、閉口せざるを得ません。

 判決本体も酷いものですが、極めつけには、添付されてきた岡松眞理書記官による「予納郵便切手返還書」を見ると、冒頭から「令和年(行コ)第259号」などと致命的な事件番号ミスを犯しています。昨年度に本件控訴審を担当していた風間新書記官も信じられないミスを犯してくれましたが、今年度になって引き継いだ岡松眞理書記官までこれでは、東京高裁第2民事部自体が杜撰体質に覆われていると断じざるを得ません。当然、このような「ベルトコンベア」審理で負かされた方にとってみれば、司法の現状に反感を抱きこそすれ納得などできないでしょう。

■今回の第二次訴訟の経緯をめぐり、まったく看過できないのは、裁判所が高専機構側の「訴訟おじゃん作戦」を一切不問にしたあげく、理由や根拠を示さず訴訟費用まで全額当会負担としてきた、あまりにも理不尽でムチャクチャな判断です。これは、たんに当会が不条理な被害を受けただけという局所的な話に留まりません。

 今回の一件で高専機構と東京地裁・高裁が見せたやり口が前例になってしまえば、今後の我が国において、情報開示を受ける国民の権利を「合法的に」侵害する以下のようなメソッドが確立されてしまうことが強く危惧されます。

① 国民が、法律・条例に基づき、公機関に文書開示請求をする。
② それに対し、文書保有機関が「(短期的に)都合の悪い情報」を無理やり不開示にする。
③ 開示請求者が泣き寝入りしてくれればそれでよく、開示請求者が審査請求や裁判に訴えてきた場合はそれ自体が時間稼ぎになる。
④ 裁判の場合、公金で弁護士を使ってしばらく適当に応戦し、いよいよ負けそうな直前で自ら不開示の取り消しを行い、「請求に理由なし」の主張を始める(訴訟おじゃん作戦)。
⑤ 裁判に訴えた側の国民はいきなり敗訴させられる上、公機関の責任も問われず、極めつけには訴訟費用まで全額負担させられて、膨大な金銭と時間だけ丸損した形にされる。


 イノベーションを日々模索し続ける高専機構により発明された、このとんでもない「高専式メソッド」が、いわゆる情報公開法とその同種法・同種条例の意義を根底から揺るがす代物であることは言を俟ちません。

 オンブズマンの根本的な活動基軸が損なわれるのみならず、基本的な国民の権利が危機に晒されているわけですから、事態は深刻です。なぜなら、この「高専式メソッド」は、高専機構のみならず、省庁から町役場に至るどんな公機関でも、原理上やる気になればできてしまうからです。このようなふざけた手口を全国に蔓延させてはいけません。

■もちろん、今回の「裁判所による無法公認」に味を占めた当の高専機構側は、今後さらに、都合の悪い情報の不開示を徹底させてくることが見込まれます。

 情報隠蔽と国民の権利侵害を全力で肯定した「白石判決」には、もはや清々しさすら覚えますが、これによって諦めたり黙したりしていると、更に状況は悪化していきます。当会では、情報隠蔽と腐敗を極める高専機構、ひいては行政と司法の現実にクサビを打ち込むべく、手を尽くして抗戦していく構えです。

【7/3追記】
 ヒラメ裁判官ほど出世する。4月23日に当会が高専機構を相手取った第二次訴訟控訴審で全面敗訴判決を出した裁判官が、我が国政府により、なんと札幌高裁長官に抜擢されることになったのです。この国の司法はいったいどこにゆくのでしょうか。

東京新聞2012年7月3日
**********北海道新聞2021年7月2日16:00
札幌高裁長官 白石氏就任へ

白石史子氏(しらいし・あやこ)東大卒。84年判事補。東京地裁部総括判事、京都家裁所長などを経て16年7月から東京高裁部総括判事。62歳。愛媛県出身。
 政府は2日の閣議で、合田悦三札幌高裁長官が8月1日付で定年退官するのに伴い、白石史子東京高裁部総括判事を高裁長官職に任命すると決めた。これを受け、最高裁は白石氏を札幌高裁長官に充てる人事を決定した。発令は8月2日以降。
**********

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【高専過剰不開示体質是正訴訟・第一次訴訟控訴審】反撃試みる機構と書面応酬の末、4/14第2回弁論で結審!

2021-04-21 01:33:00 | 群馬高専アカハラ問題

言わずと知れた高専機構御用達である銀座の田中・木村法律事務所の代表、木村美隆(きむら よしたか)弁護士。イープラ宅建・講師紹介ページ(https://www.epla-takken.jp/kyouzai/koushi_staff/)より引用。名目上事務所の共同使用者である田中和弁護士はすでに法曹界を退き、今は事務所名にその痕跡を残すのみの模様。高専機構からの裁判文書では毎度、筆頭代理人として一番上に載った名前の横に立派なハンコが押されているが、出廷役はすべて下っ端の藍澤弁護士に押し付け、過去5年間で一度も裁判所に姿を見せたことはない

■国立高専校長の選考実態、群馬高専J科アカハラ情報不開示取消訴訟の弁護士費用、長野高専連続自殺の発生年月日などなど、高専組織が執拗に黒塗りにこだわる「都合の悪い」情報は枚挙にいとまがありません。当会では、そうした悪質な不開示処分の取消しを求めて2019年10月に高専機構を提訴しました(第一次訴訟)。その第一審(東京地裁)において、卑怯な法廷戦術の嵐やコロナ禍での長期中断を乗り越えた果てに待っていたのは、ありとあらゆる理屈を総動員して被告高専機構の杜撰極まる言い分を片端から素通しし、ごくわずかの勝訴部分を除いて当会の全面敗訴というあからさまな不当判決でした。

 本件に注目を寄せる高専関係者の方々からの憤りとエールが続々寄せられたため、当会では本件を東京高裁に控訴する決断をしました。当会から控訴状と控訴理由書を提出すると、被控訴人となった高専機構からは相変わらず強弁まみれの控訴答弁書が3月9日に提出されてきました。

 そして3月17日に開かれた初回口頭弁論当日、被控訴人高専機構のあまりに杜撰な主張に対して高裁裁判官から矢のような指摘が相次ぎ、なんと異例の審理継続となりました。

○2020年11月25日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html
○2021年1月31日:【高専過剰不開示体質是正訴訟】第一次訴訟控訴審の弁論日が3/17に決定&控訴人当会が控訴理由書提出
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3274.html
○2021年3月24日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・第一次訴訟控訴審】機構側控訴答弁書と3/17初回弁論(審理継続)の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3290.html

 訴訟指揮どおり、高専機構側から3月22日に主張補充の準備書面が出されてきたため、当会ではこの補充準備書面と控訴答弁書に対する再反論を作成し、2021年4月14日の第2回口頭弁論期日に臨むことにしました。

■控訴人当会による書面の提出期限を4月7日と約束していたので、当会では同月6日、以下の内容の再反論準備書面を東京高裁と被控訴人代理人弁護士事務所宛てに郵送提出しました。

*****4/6付再反論準備書面(オンブズ)*****ZIP ⇒ 210406itir.zip
令和2年(行コ)第251号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件
 控訴人   市民オンブズマン群馬
 被控訴人  独立行政法人国立高等専門学校機構

               準 備 書 面
                               令和3年4月6日

東京高等裁判所第17民事部ニ係  御中

                         控訴人 市民オンブズマン群馬
                          上記代表   小川 賢  印

 被控訴人の令和3年3月9日付け答弁書(以下「控訴答弁書」という。),及び同月22日付け準備書面(以下「被控訴人準備書面1」という。)における主張について,控訴人は以下のとおり反論する。

                    記

1 「控訴の理由に対する反論」1項および被控訴人準備書面1について
(1)被控訴人は,甲第47号証で部分開示された国立高等専門学校長候補者一覧(以下「一覧表」という。)のうち平成23年から同28年分につき,控訴人の請求・主張に対して争うとする。その理由として,国立高専校長候補者のバックグラウンドが高等専門学校や国立大学の教授,文部科学省や国立の研究所といった複数の場合に分けられるため,候補者が細目番号①ないし②のうちどちらに記載されているか,各表の形式からは明らかにならないとする。
 しかしながら,控訴人が指摘しているとおり,記載項目名の違いからして,少なくとも,学校にあたらない機関を前職ないし推薦機関とする候補者が,細目番号②の表に記載される可能性のないこと,したがってこれら候補者が細目番号①に分類されるほかないことは明らかである。一方,細目番号②の表について,学校にあたる機関の出身者しか載せようがないこともまた明らかである。
 特に,平成26年から同28年分の一覧表に着目すると,細目番号①の標目は「国立高等専門学校長候補者一覧」となっている一方,細目番号②の標目は「国立高等専門学校長登用候補者名簿」となっていることがわかる。すると,細目番号②の一覧表において,わざわざ標題を使い分けてまで,「登用」の要素が強く意識・区別されていることは明らかである。「登用」という語が通例,現場経験が極めて豊富な低位者を官職に取り立てる意味で用いられるという常識的事実と,これら一覧表が国立高等専門学校という教育研究機関の長を選ぶ際の名簿である事実を考え合わせれば,細目番号②の一覧表が特に(教育研究の現場経験が豊富な)高専・大学等の教員出身者を主に取り扱うことが念頭とされているのは明らかである。他方において,細目番号①の一覧表は,「登用」の要素がそれほど強く意識されない候補者,たとえばすでに他機関において高位職にある者など,組織運営に長けた候補を取り扱っていることが強く推知できる。細目番号①,②のこうした趣旨の違いは,(一貫する記載項目名の違いからして)平成25年以前分においても同様と考えられる。
 そうなると,細目番号②の一覧表が学校(高専・大学等の教育研究機関)の現場出身者を集中的に取り扱っており,細目番号①がそれにあたらない者を取り扱っているというように,現状においてすでに相当の確度をもって各一覧表の記載分類は推知できるのであって,各一覧表が扱う推薦機関の種別の表示を明かしても法5条4項ヘにいうおそれが生じないことは明らかである。
 また,被控訴人自身も認めるとおり,高専の校長の前職が高等専門学校や国立大学の教授,文部科学省や国立の研究所といったように多岐にわたるのに対して,これらを細目番号①②のたった2つに集約してまとめた一覧表の分類が,相当に大雑把なものであることは明らかである。すると,この分類種別のみを明かしたところで,特定の機関についての校長採用割合を把握することなど到底不可能であり,「推薦機関ごとの校長採用の割合を推測することが可能となる」などとする被控訴人の危惧には一切根拠がない。

(2)また被控訴人は,被控訴人準備書面1の2項において,一覧表のうち平成29年分について,細目番号①,②について,(それ以前のものとは違い)一覧表の項目名に違いがないことを指摘し,平成28年以前の一覧表と比べ,記載内容を推知することが難しい旨を指摘する。
 標題にある「平成29年4月付け」とは,当然に平成29年4月付け就任分の校長候補者にかかる一覧表であることを示し,当然その選考は平成28年度内に行われている。また,この選考業務は,被控訴人内の校長選考委員会が担っている(甲8)。
 ここで,控訴人は,平成28年度内に行われた校長選考委員会の会議について,その議事要旨を法人文書開示請求により入手している(甲51)。当該議事要旨を確認すると,同年度内に会議は計4回開催されていることがわかるため,順を追って内容を検討する。
まず,第1回議事要旨内に「国立大学及び高専から推薦のあった校長候補者」9名を書類選考通過者とする旨の記載が認められる。これは,平成29年分一覧表のうち細目番号①②の合計記載人数とちょうど等しい(細目番号①:5名,細目番号②:4名)。他の回の記事要旨の内容も加味すれば,この年は国立大学及び高専のみからしか推薦がなく,そのため前年までの区分を使わず,国立大学と高専からの推薦者で区分していることが明らかである(それ以外に区分の方法はない)。
 またこれから,細目番号①②の区分が「国立大学からの推薦者」「高専からの推薦者」の二択になるところ,実際の平成29年度4月分校長就任者の内訳は国立大学出身者5名・高専出身者4名であり(甲52),控訴理由1項(2)と同様の推知の仕方を用いれば,細目番号①が「国立大学からの推薦者」,細目番号②が「高専からの推薦者」を扱っていることが明らかである。
 さらに,同年度第4回会議議事要旨によると,他の候補者内定から約2か月遅れて,高専からの推薦者1名について追加で書類審査・面接審査を行い,選考通過としたことがわかる。すると,平成29年分一覧表のうち細目番号のない1名分については,明らかにこの「高専出身」の追加候補1名を記載したものであることに疑いの余地はない。するとこの分についても,一覧表が扱う推薦機関の種別の表示は自明である。
 以上から,平成29年分の一覧表について,各一覧表が扱う推薦機関の種別の表示は事実上明らかであり,これを明かしても法5条4項ヘにいうおそれが生じないことは明らかである。

(3)また被控訴人は,被控訴人準備書面1の3項において,平成30年以降の一覧表では,細目番号が付されていない1名のみの表が混じっており,また推知に用いる分類が正確かも不明であることを主張する。
 しかしながら,まず少なくとも,細目番号の付された一覧表の区分について,平成29年分や平成28年以前分のような形からいきなり極端に分類方法が変化していると推認するに足る合理的な根拠はない。被控訴人は,一覧表の項目Noにどの程度の意味があるかも甲第47号証で開示された一覧表からは不明である旨を主張するが,控訴人は主に細目番号による区分の話をしているのであって,当該主張は無意味な話のすり替えに過ぎない。
 さらに被控訴人は,実際の平成30年の一覧表が5種類に分けられ,分類の仕方が控訴人の想定と異なる可能性があることを主張する。
 しかしながら,上記で触れた平成29年分の経緯からするに,細目番号を振られていない1名分の表については,未知の別分類が用いられているわけではなく,たんに追加で選考が行われた候補者が記載されているだけに過ぎない可能性が高く,基本となる分類について大きな変更を生じているわけではないことが強くうかがえる。こうした経緯については,同様に校長選考委員会の会議議事要旨を確認すれば容易に判明しうるうえ,仮に控訴人の推知を覆すような特殊な区分方法が実際に用いられているのであれば,現実にそうである旨を断言して主張すればよいところ,被控訴人は抽象的な可能性の話を繰り返しており,その主張が採用に値しないことは明らかである。

(4)被控訴人は,甲第47号証の一覧表のうち,実際に校長に就任した者の情報を開示した場合には,その記載内容が明らかとなることで被控訴人における校長の選考において重視される項目が推測され,校長の選考に関する自由な議論が阻害されるおそれがある旨を主張する。
 しかしながら,甲第47号証の一覧表は,被控訴人内部において候補者各人の概要を簡略な表にしてまとめ,一瞥して把握できるようにしただけのものであることは明らかである。各欄の記載項目は,候補者の氏名・性別・生年月日のほか主要な学歴・経歴など,いたって常識的かつ最低限の事項ばかりである。そして,一覧表における各欄のスペースも明らかに必要最低限の大きさであり,多く見積もっても十数字から数十字程度分であることからすれば,必要最低限の主要事項を端的に記載するだけで各欄は埋まってしまい,到底,校長選考を左右するような特別の考慮事項を記載できるようなものでないことは明らかである。
 被控訴人における校長選考業務にあたっては,推薦機関からの推薦書や,候補者本人の実績・経験・能力,職務に対する意欲・熱意がわかる詳細な履歴書や抱負文といったものが参照されていることは,被控訴人自身認めるとおりである(甲8)。そうした詳細な資料を差し置いて,極めて記載事項の限られた一覧表が校長選考の帰趨を決めているとは到底考え難い。
 また,各一覧表の取り扱う推薦機関の種別を明らかにしても法5条4号ヘにいうおそれが生じ得ないことは上記指摘のとおりであり,また,一覧表が大まかな区分を用いている以上,一覧表に一部含まれている実際の校長就任者にかかる情報を開示したとしても,特定の機関についての校長採用率といった情報は依然判明しえないのであって,この観点からしても被控訴人のいう危惧は当を得ない。

 以上から,控訴状別紙1項の情報は,いずれも開示することで法5条4号ヘにいうおそれを生じさせる情報ではないことは明らかであって,被控訴人の主張には理由がない。よってこの点,原判決は失当であるから,速やかに取り消されるべきである。


2 「控訴の理由に対する反論」4項について
 控訴人は,過去の判決確定事件について,かつて被控訴人が訴訟代理人に支払った弁護士費用の額だけが判明しても,その(算出・評価上の)内訳が明らかにならないのであれば,競争上の利益を害しないと説明を重ねてきた。ところが,被控訴人はその反論として,「控訴の理由に対する反論」4項で,「『合計金額』,『支払金額』のみを明らかにした場合でも,被控訴人が訴訟代理人に支払った弁護士費用の額を容易に推測することが可能となる」などと主張する。控訴人が,「弁護士費用の額が判明しても」と主張しているにも関わらず,「弁護士費用の額を容易に推測することが可能となる」などと応答するのが,論理的な反論になっていないことは明らかである。加えて,控訴人が開示を求める合計金額・支払金額は,「容易に推測する」までもなくまさに弁護士費用の額そのものの情報なのであるから,被控訴人の当該主張は率直にいってまったく意味を成していないものである。


3 「控訴の理由に対する反論」5項について
(1)関連他文書との照合によっても時期特定が可能であること
 控訴人は,甲7の事件・事故等発生状況報告書等の関連文書についても長野高専より開示決定を受けている。そして,そうした関連文書に記された内容によっても,記載のある事件の発生時期が特定可能である。
 たとえば,「事件・事故等発生状況報告書【最終報】」のうち7枚のものについて,その2頁目に,16時15分から19時52分までリスク管理室会議を行った旨の記載がある。そのリスク管理室会議の議事概要(甲53)を実際に確認すると,黒田校長(当時)をはじめとする当時の学校幹部の陣容が冒頭に列記されているが,これを実際の同校の役職員名簿の推移(甲54)と照合すると,合致するのは平成24年度しかないことから,「事件・事故等発生状況報告書【最終報】」のうち7枚のものにかかる事件は平成24年度に発生していたことが明らかである。
 また,「事件・事故等発生状況報告書【最終報】」のうち2枚のもの(原判決は「4枚のもの」としているが誤りである)についても,1頁目で言及されているリスク管理室の議事概要と同会議内資料(甲55)を確認すると(経緯等記載内容が一致しており同一の事件を取り扱った文書であることは明らか),これも同様に当時の同校幹部の陣容が記載されており,合致するのは平成24年度しかないことから,「事件・事故等発生状況報告書【最終報】」のうち2枚のものにかかる事件は平成24年度に発生していたことが明らかである。
 このように,事件発生時期は別途開示資料の記載内容からもおおまかには確定できる情報なのであって,すでに公衆が知り得る状態に置かれているものと考えられる。すると,法5条1号ただし書イが適用されるべきであり,法5条1号本文の規定を理由に発生年からすべて不開示とする被控訴人の主張は,明らかに失当と言わざるをえない。

(2)また,控訴人はかつて,同じく被控訴人の設置する群馬高専に対しても所属学生の自殺事件に関する内部調査書等の(法に基づいた)開示を受けた経緯があり,この際には,同様報告書における記載事項のうち,年月日はおろか時刻までの情報が開示されている(甲56)。同一独立行政法人内にも関わらず,このように開示・不開示の基準が異なるのでは,行政処分に求められる公平性や一貫性の観点から極めて問題である。控訴状別紙5項に掲げる年月日等情報は,被控訴人がいったん「不開示情報ではない」と見なした情報なのであり,これを不開示とすることは,不開示情報が記録されている場合を除き原則開示とすることを定めた法5条に違反するというべきである。

 以上の観点からしても,控訴状別紙5項に掲げる年月日等情報が,法5条1号本文の個人識別情報に該当し,また他の阻却事由に該当しないとした原判決は不当なものであり,取り消しが妥当である。


                                  以上
**********

●証拠説明書 ZIP ⇒ 210406itir.zip
●甲51号証 ZIP ⇒ b51h28nxzilc.zip
●甲52号証 ZIP ⇒ b52h29.4zl.zip
●甲53号証 ZIP ⇒ b53201207p1exn.zip
b53201207p2exn.zip
b53201207p3exn.zip
b53201207p4exn.zip
●甲54号証 ZIP ⇒ b54h2225.zip
●甲55号証 ZIP ⇒ b55201204p1exn.zip
b55201204p2exn.zip
b55201204p3exn.zip
●甲56号証 ZIP ⇒ b56qnaejej.zip

 以上のとおり、この再反論準備書面では、主に過去の開示資料・公表情報と高専機構側の主張との不整合をより深く指摘していくことにしました。その後の郵便追跡によると、裁判所宛・高専機構代理人弁護士事務所宛いずれも、7日の昼前に受領されたことがわかりました。


■こうして、裁判長らによる訴訟指揮に基づいた再反論も無事に終え、あとは4月14日予定の第2回口頭弁論を待つだけ……と当会担当者らが思っていた矢先に事件は起こりました。口頭弁論たった2日前である4月12日の午後4時前になって、高専機構御用達の田中・木村法律事務所からの「準備書面」がいきなり当会事務局宛てにFAXされてきたのです。

●4/12付再々反論準備書面(高専機構) ZIP ⇒ 030412.zip

*****送付書兼受領書*****
2021年4月12日 15時42分 田中・木村法律事務所  No.8034 P.1

              準備書面等の送付書

                           令和3年4月12日

 下記のとおり書類をご送付いたします。
 受領書欄に記名・押印のうえ,この書面を当職及び裁判所宛FAX等でお送り下さい。

●送付先:
 東京高等裁判所第17民事部 ニ係  御中
 FAX 03-3592-0942
 控訴人  市民オンブズマン群馬  御中
 FAX 027-224-6624

●発信者:
 〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
     被控訴人訴訟代理人弁護士  木  村  美  隆
 TEL:03-3573-7041 FAX:03-3572-4559

●事件番号:令和2年(行コ)第251号
●当事者名:
 控訴人  市民オンブズマン群馬
 被控訴人 独立行政法人 国立高等専門学校機構
●次回期日:令和3年4月14日(水)午前10時

●文書名:準備書面(R3.4.12付)

●送信枚数:2枚(送信書を除く)
●相手方への送信の有無:有

=====受領書=====
               受 領 書
東京高等裁判所第17民事部 ニ係  御中 (FAX:03-3592-0942)
被控訴人代理人 弁護士 木村美隆 宛  (FAX:03-3572-4559)

 上記書類を受領しました。
  令和 年 月 日
     控訴人

 通信欄:本FAXを正式書面として受領ください。
**********

*****4/12付再々反論準備書面(高専機構)*****
令和2年(行コ)第251号
 控訴人  市民オンブズマン群馬
 被控訴人 独立行政法人国立高等専門学校機構

             準 備 書 面

                           令和3年4月12日

東京高等裁判所第17民事部ニ係  御中

                   被控訴人訴訟代理人弁護士  木 村 美 隆
                        同        藍 澤 幸 弘

                  記

平成29年4月付校長候補者一覧について
 控訴人は,4月6日付準書面(ママ)1項(2)において,平成29年度の校長選考に関する議事録及び実際の就任人数から,平成29年4月付校長候補者一覧の分類内容は明らかであると指摘する。
 年度により校長候補者の人数や,各推薦機関の構成,推薦人数に違いがあることは当然であり,校長候補者の構成や人数が比較的単純であり,一覧に記載された校長候補者の推薦母体が推測しやすい年度が生じうることは避けられない。しかし,このことを理由に当該年度の分類内容やその表現(たとえば,「国立大学法人」や「外部推薦分」といった表記)を明らかにした場合には,当該年度のみならず他年度の候補者一覧の分類方法や一覧表の構成をより正確に推測することが可能となるおそれがある。これにより,候補者を推薦した推薦機関や推薦機関別の候補者の多寡を判断することができるようになり,推薦した者が王朝(ママ)に登用される可能性が低いことを危惧して,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなどのおそれがあり,被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれがあることになる。原判決も,整理Noにかかる情報のみでは具体的な推薦機関までは判明せず,校長に就任しなかった候補者の構成を推測することが可能となるものとはいえない(原判決20頁)としており,整理Noと推薦機関の種類をあわせて開示することを想定していないことは明らかである。
 そうである以上,平成29年4月付校長候補者一覧の分類内容が推定できることを,理由に校長候補者一覧の分類項目が法5条4号ヘの不開示情報に当たらないとする控訴人の主張には,理由がない。

                                以上
**********

■なんと高専機構側は、第2回口頭弁論の2日前になっていきなり、当会が開示を求める文書の中でも校長候補者名簿のさらにそのうち平成29年4月分に限って、滅茶苦茶な反論を言い立ててきました。

 平成29年4月分の校長候補者名簿に関しては、当会が上記の再反論準備書面で、当時の校長選考委員会の議事要旨を証拠にして絡めつつかなり具体的に反論していました。そのため、高専機構側としてもこのままでは苦しいと相当に慌てた様子がうかがえます。その尋常でない焦りぶりは、「準書面」「王朝に登用」など失笑モノの誤字連発にもよく表れています。

 しかし、高専機構側が勢いでまくし立てる「当該年度の分類を明かすと、他年度のそれにまで敷衍して推測され、よって業務運営に支障をきたす」などという屁理屈は、あまりにも無茶が過ぎます。

 控訴人当会は、そもそも校長候補者名簿の分類そのものが不開示情報にあたらないと指摘し続けているわけですから、「平成29年4月分に限って開示した場合」などという、謎に後退した前提を勝手に置かれる意味がわかりません。当会が再反論準備書面で平成29年4月分に限った反論を行ったのは、その前に高専機構側が「記載項目が異なる」などとして当該年度に限った主張をしたことに個別反論をしたに過ぎず、他年度分の不開示を認めたわけでもなんでもありません。

 「平成29年4月分は内容が異なるので他年度分のようには分類を推知できない」という趣旨で分割反論を試みてきたかと思えば、舌の根も乾かぬうちに「平成29年4月分だけでも明かせば他年度分の分類を推知される」などと自己矛盾した主張をしてくるのですから、話のすり替えの早さは一級品です。

 加えて言えば、事実上明らかになっている情報についてまで、「一部を明らかにすれば、他のすべても推測されてしまい、業務運営に支障をきたす」などという論法が通用してしまえば、もはや不開示情報の範囲は無限に拡大してしまいます。いわゆる情報公開法に基づいて文書開示を受けるのは国民の権利であり、開示機関による極めて恣意的な判断でこの権利が著しく侵害されてしまうような主張が認められるべきではありません。

■それにしても、内容面に並んで特筆すべきは、訴訟指揮どおり口頭弁論1週間前に提出した当会の再反論準備書面に対して、口頭弁論たった2日前に滅茶苦茶な反論を書き立てて送り付けてきた、訴訟指揮も裁判進行マナーも完全無視の必死な抵抗ぶりです。

 普通に考えて、反論事項があったとしても、口頭弁論の中で再反論機会を設けるよう正々堂々と裁判長に申し立てたうえで提出するのが筋のはずです。口頭弁論2日前の書面提出では、相手方が主張を精査して反論できないため公平性が損なわれるのはもちろん、期日直前の土壇場になって主張を読まされる裁判所の側にも迷惑がかかります。

 当会による「都合の悪い」主張を目にした田中・木村法律事務所のポンコツ弁護士陣は、口頭弁論中で反論機会を確保するよう申し立てることもできたはずです。にも関わらず、口頭弁論直前に大慌てで無理やり「反論」を駆け込み提出してきた様子からすると、当事者双方からどんな主張や申立てがなされたとしても、矢尾裁判長が第2回口頭弁論で結審とすることをかなり強く確信しているようすがうかがえます。

 なぜ裁判官の胸中にのみあるはずの訴訟指揮予定について木村・藍澤弁護士が「確信」できているのかはまったく不思議ですが、そうなると控訴人当会としても、結審前に更なる反論を取りまとめておく必要があります。

■そのため当会では、以下の内容の4月14日付け再々々反論準備書面(2)を急いで作成し、矢尾裁判長が結審を言い出した場合に緊急提出することにしました。

*****4/14付再々々反論準備書面(2)(オンブズ)*****ZIP ⇒ 210414itir2.zip
令和2年(行コ)第251号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件
 控訴人   市民オンブズマン群馬
 被控訴人  独立行政法人国立高等専門学校機構

               準 備 書 面 (2)
                             令和3年4月14日

東京高等裁判所第17民事部ニ係  御中

                         控訴人 市民オンブズマン群馬
                          上記代表  小川 賢  印

 被控訴人の令和3年4月12日付け準備書面(以下「被控訴人準備書面2」という。)における主張について,控訴人は以下のとおり反論する。

                  記

 被控訴人は,被控訴人準備書面2において,「平成29年4月付校長候補者一覧について」などとし,一覧表のうち平成29年分で用いられた分類内容やその表現を明らかにした場合,他年度分の一覧表についてもその分類方法や構成を正確に推測することが可能になり,被控訴人の円滑な人事の確保に支障をきたすおそれがある旨を主張する。
 しかし被控訴人によるこの主張は,要旨,一覧表のうち平成29年分で用いられる候補者の分類方法が明かされ,一方でその余の一覧表について候補者の分類方法が不開示とされた状態,という特殊な想定を前提としたものと解されるところ,そもそも控訴人は,(法5条4号ヘ非該当性が概して明らかのため)年度を問わず,一覧表の分類方法にかかる情報全体についての開示を求めているのであって,被控訴人においていきなり勝手に設定したに過ぎない飛躍した前提状況を元に展開される上記主張は,詭弁に等しく,採用すべき価値は皆無と評さざるをえない。
 また,被控訴人の想定するであろう前提状況をあえて採用するにしても,上記主張が成立するためには,一般の第三者からして,一覧表のうち平成29年分で用いられている分類方法が,他年度にわたっても等しく用いられていることに強い蓋然性が認められなければならないはずである。ここで,控訴人が,4月6日付け準備書面1項(2)において,一覧表のうち平成29年分につき個別に主張を行っているのは,ただ単に,被控訴人が(3月22日付け)被控訴人準備書面1の2項において,当該年の一覧表がそれ以前のものとは記載内容の一部が異なっていること等を理由にして個別に主張を行ってきたことに対応したに過ぎないものであり,一覧表を総覧して平成29年が一定度特異な年であることは被控訴人自身認めているのは明らかである。すなわち,被控訴人自身のこうした個別主張事実や,控訴人が4月6日付け準備書面1項にて指摘した事実や経緯に鑑みれば,一覧表のうち平成29年分で用いられている候補者の分類方法がそれ以前の分類方法と異なっていることが強く推認される。すると,平成29年分のみにつき分類方法を明かしたところで,ただちに他年度のそれについても「より正確に推測される」状態におかれるとは到底いえない。
 加えて,被控訴人は,被控訴人準備書面2における主張が当を得たものであると示すため,最低限,一覧表の分類方法について年度間での差異の有無を言明すべきなのであって,それにも関わらず一貫して抽象的な可能性の話をもとに法5条4号ヘの「おそれ」を言い立て続ける被控訴人の態度は,信義則違反はもとより,法に基づき情報開示を受ける国民の権利を不当に侵害するものと断じざるをえない。このような極めて曖昧かつ抽象的な主張まで採用し,法5条4号ヘの「おそれ」を認定した場合,もはや(法に限らず)いわゆる情報公開法・情報公開条例に基づいた公文書・法人文書の開示請求一般において,開示実施機関が「円滑な業務・人事に支障をきたすおそれがある」とただ言い張るだけで,極めて恣意的に不開示が許されるような運用を認めるに等しい。その場合,文書不開示の範囲は極大化せざるを得ないのであって,いわゆる情報公開法およびその派生法・条例(法を含む)の趣旨,およびそれにより保障された国民の権利を根底から揺るがすも同然なのであって,被控訴人による曖昧で抽象的かつ根拠の示されない主張が認められるべきでないのは当然である。

                              以上
**********


■そして第2回口頭弁論当日となる4月14日を迎え、上記の再々々反論準備書面(2)を携えた当会出廷者が安中市の自宅を出て、最寄りの安中駅から高崎駅まで信越本線で移動し、そのまま朝8時15分発の北陸新幹線あさま608号に乗りました。



 車内に乗り込むと、長野方面からすでに乗ってきている乗客は相変わらず少なめでした。一方、車窓からホームに目をやると、高崎駅から乗車してくる乗客が目立ちました。それでも、高崎駅を出発した時の乗車率は3割程度でした。


東京駅に9時10分に到着

 群馬県を出た時はまだ曇り空でしたが、途中で熊谷駅・大宮駅・上野駅に停車した後、9時8分に東京駅に到着する段になると、雨がかなり強く降り始めていました。そこから地下鉄丸の内線に乗り換えて、霞ヶ関に到着したのは9時25分でした。





■階段を上がり地上に出ると、案の定かなり強く雨が降っていました。仕方がないので折り畳み傘をカバンから取り出し、それを差して裁判所構内に入りました。



 すると、左手の傍聴券配布コーナーに人だかりができていました。何の事件かと思い、近づいて案内板を見ると、係員が「IRの裁判です」と言ってきました。どうやら、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件において、収賄と組織犯罪処罰法違反(証人等買収)の罪に問われた衆院議員秋元司被告の公判が行われるようです。その傍聴希望者のための傍聴券の抽選が9時40分に行われ、当会の裁判と同じ午前10時から、1階の刑事法廷にて公判が開かれるようでした。当然、傍聴は不可能なので、パスして裁判所の建物に入りました。

 いつものように入口で手指のアルコール消毒を済ませたあと、手荷物検査と金属探知を受けて庁舎の中に入りました。

■その時点で、開廷までまだ30分程度ありました。特にやることもないので、まずはエレベーターで8階に上がり、東京高裁812号法廷の開廷表をチェックしました。

*****812号法廷(8階)開廷表*****
令和3年4月14日 水曜日
●開始/終了/予定:10:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第251号/法人文書不開示処分取消請求控訴事件
○当事者:市民オンブズマン群馬/独立行政法人国立高等専門学校機構

●開始/終了/予定:10:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4349号/交通事故後遺障害損害倍請求控訴事件
○当事者:黒澤隆徳/あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
●開始/終了/予定:11:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4208号/不当利得返還等請求控訴事件
○当事者:川本富淑/上村美穂
●開始/終了/予定:11:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4370号/損害賠償等請求控訴事件
○当事者:亡横田椿三訴訟承継人亡横田裕三訴訟承継人亡横田道夫訴訟承継人横田秀夫/田邊ちづ子
●開始/終了/予定:13:20/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第1084号/損害賠償請求控訴事件
○当事者:佐々木亮/選定当事者小山賢三 外
●開始/終了/予定:13:20/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第2104号/損害賠償、債務不存在確認請求控訴事件
○当事者:野澤信明/吉屋有起 外
●開始/終了/予定:13:20/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第2208号/売買代金等請求控訴事件
○当事者:新電力株式会社/中利ソーラーポールディングス株式会社
●開始/終了/予定:13:20/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第2226号/不当利得返還請求控訴事件
○当事者:小武守一司/アコム株式会社
●開始/終了/予定:13:20/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第2663号/貸金請求控訴事件
○当事者:株式会社ニューウェーブ/山中細美
●開始/終了/予定:13:20/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第69号/法人税更正処分等取消請求控訴事件
○当事者:株式会社ジェイイーティファーム/国 全国農業協同組合連合会 外
●開始/終了/予定:13:20/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第109号/分限免職処分取消請求控訴事件
○当事者:中島清行/東京都
●開始/終了/予定:13:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4443号/彫刻作品返還、費用償還等請求控訴事件
○当事者:榎本潔/君崎譲二
●開始/終了/予定:14:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第43号/共有物分譲請求控訴事件
○当事者:加藤諠秀/加藤秀夫
この他4件の民事裁判事件の第1回弁論あり。
■東京高等裁判所第17民事部 裁判所裁判官 矢尾 渉
                  裁判官 橋本英史
                  裁判官 三浦隆志
                  裁判官 今井和桂子
                  裁判官 田中一隆
                  裁判官 中島 崇
               裁判所書記官 石橋一郎
**********

 口頭弁論の場所と時間に間違いがないことが確認できたので、法廷が開けられるまで奥の待合室で待機していました。すると、数名ほどがガヤガヤと法廷の前に集まる気配がしました。向かい側の法廷でも午前10時から弁論があるようです。

 開廷12分前になり、812号法廷の傍聴席ドアの覗き窓を開けてみましたが、まだ鍵もあかず、法廷内部は照明も点けられていませんでした。再び待合室に戻り、7分前になってまた覗き窓を開けると照明が点いていました。そこで、中に入るために傍聴席入口ドアのノブを回そうとしたところ、中から同じようにノブを回す音がしてドアが開けられ、書記官がバッタリ目の前に現れました。挨拶をしてさっそく中に入り、傍聴席と法廷を隔てる木柵の中央にある小机の上に置いてあった出頭カードに控訴人出廷者の氏名を大書して、法廷内に入りました。

 するとまもなく、口頭弁論開始5分前になって、被控訴人高専機構の訴訟代理人である藍澤弁護士が、機構本部の職員1名と共に傍聴席の入口ドアから入ってきました。書記官が「木村先生は?」と藍澤弁護士に訊くと、藍澤弁護士は「来てません」と手を顔の前で左右に振るしぐさをしました。

 一緒に付いてきた高専機構本部の職員は、傍聴席中央側の前から2番目の列に着席しました。男性で眼鏡をかけており、ダークスーツを着て、濃紺と青の斜めのストライプが入ったネクタイを締めていました。3月17日の前回弁論で来た職員ではなく、第二次訴訟控訴審の方の3月9日弁論で来た職員と同一のようでした。その職員は、着席するなりカバンからノートを取り出し、メモの準備をしていました。

■定刻の10時となり、矢尾裁判長が陪席裁判官2名を率いて法廷に入ってきました。いつものように全員起立してお辞儀をしました。傍聴者は高専機構本部からのお付き職員1名だけです。

 書記官が「令和2年(行コ)第251号」と事件番号を読み上げると、弁論が始まりました。

 裁判長が冒頭に「おはようございます」と挨拶をしてきたので、控訴人(当会出廷者)も「おはようございます」と声を返しました。被控訴人訴訟代理人の藍澤弁護士は、相変わらず不愛想な表情です。

 裁判長は「では、続行の弁論を行っていきます。まず控訴人側から。ちょっとあの、前後しますが、4月6日の準備書面陳述でよろしいですかね?」と、当会出廷者に向かって確認を求めてきたので、「はい、陳述いたします」と答えました。これで、4月6日の準備書面を全て口頭陳述したことになります。

 続いて裁判長は「被控訴人が、3月22日付と4月12日付……」と言うなり、被控訴人に陳述を求めることなく当会出廷者の方を向いて、「これは届いていますかね? 4月12日付けとなっていますが」と控訴人に受領確認を求めてきました。高専機構側が直前に駆け込み提出してきた準備書面が、きちんと控訴人に届いているかどうかについて、裁判長は関心をお持ちのようです。そのため、控訴人当会の出廷者から、「ええ。届いたので、受領書のFAXを書記官殿に送りました」と書記官に振ると、書記官は頷きました。

 裁判長は当会出廷者の方を向いたまま、続けて、「書証が51号証から56号証まで。いずれも写しを?」と確認してきたので、控訴人から「はい。写しを提出いたします」と返事しました。

■矢尾裁判長はそこまで聞くと、「あと、なにかございますか?」と控訴人・被控訴人に声を掛けてきました。被控訴人(藍澤弁護士)は相変わらずポーカーフェイスで「……」と沈黙していました。

 裁判長が控訴人の方に視線を移してきたのを見計らって、当会出廷者は「あの、2日前の土壇場になって、被控訴人から準備書面を頂いたんですけれども」と声を発しました。裁判長が「うん」と相槌を打つなり、控訴人から「それなので、反論の機会。これを与えていただければありがたいんですけど」と切り出しました。

 裁判長は突然の申入れに戸惑いを見せた様子で、「あのう……今までの、その、あれですか。その、他の論点について反論しないといけないということですか?」と訊いてきました。

 そこで控訴人の当会出廷者は、「ええあの、2日前になって頂いたので。裁判長は前回、『次回結審』と仰っていらっしゃいましたが、そのお気持ちはよく伝わっておりますので、実はここに準備してきました」と言いつつ、手元に用意しておいた再々々反論の為の準備書面(2)を掲げて裁判長に示しました。

 裁判長が「ああ、そうなんですね」と言うので、控訴人は「はい、この場で陳述させていただきたいと思います。正副ここにあります。12日付けのものに対しての書面です」と説明し、裁判長に促されて近づいてきた書記官に手元の正副2通の準備書面を渡しました。

 裁判長が控訴人当会の準備書面(2)に目を通しはじめ、あわせて両脇の陪席裁判官もそれをのぞき込むようにして内容を見ていました。藍澤弁護士も同様に目を通していました。

■そうして約1分が経過し、裁判長が「では、これはこれで、陳述でよろしいですかね?」と、被控訴人の藍澤弁護士に向かって声を掛けました。藍澤弁護士は、相変わらず小さい声で「はい」と返事しました。あわせて当会出廷者からも裁判長に「はい、ありがとうございます」と言いました。

 裁判長は「そのうえで何かございますか?」と、再度双方に質したので、控訴人の当会出廷者は「いいえ。結審してもらってかまいません」と答えました。藍澤弁護士は相変わらずの無表情です。

 裁判長はそうした双方の反応を見てから、「では、準備書面(2)を4月14日付陳述としていただいて」と言いました。そこで控訴人の当会出廷者は「はい、陳述します」ときっぱりと宣言しました。これで、準備書面(2)を陳述したことになります。

 最後に裁判長は「他になければ、これで弁論を終結します。判決の言渡し日。6月16日午後1時10分に指定します。6月16日午後1時10分です」と本控訴事件の結審を宣言し、判決言渡期日を告げました。

 当会が「はい」と答えると、裁判長は「ではこれで」と席を立ちました。そのまま退廷しようとする背中に、当会出廷者から「はい、ありがとうございます」と声を掛けました。定刻10時に裁判長らが入廷してから、結審して退廷するまで、ちょうど5分間でした。

 こうして、判決言渡期日は2か月後の6月16日(水)13時10分と決まりました。

■無事に第2回口頭弁論を終えて裁判所庁舎外に出ると、相変わらずの土砂降りです。つい裏手の出入り口から外に出たので、いつもと違った光景が目に飛び込んできました。植え込みの新緑が雨に濡れて鮮やかに写ります。




農水省側に面した歩道




裁判所合同ビルの南側出入り口




裁判所周囲の植込みの樹木の幹には管理番号のタグが付けられている


雨に煙る裁判所合同ビルと地下鉄霞ヶ関駅












高崎線北本駅。1985年ごろお世話になった診療所の看板。産婦人科はなくなり、内科と小児科のみとなっていた

 帰りはとくに急ぐ必要もなく、上野東京ライン経由高崎線高崎行きに乗って、ゆったり群馬に戻りました。途中で雨も上がり、高崎に着いた時には晴れ間も見えていました。


高崎駅から自宅へ車で帰宅。ちょうど東邦亜鉛子会社の濃硫酸運搬用のローリーが追い越していった

■以上のとおり、期せずして審理継続となり、期せずして書面が飛び交った第一次訴訟控訴審についても、二回目の口頭弁論で結審しました。

 本件の判決言渡期日については以下のとおりとなります。

【第一次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第251号)判決言渡】
●日時:令和3年6月16日(水)13時10分~
●場所:東京高裁812号法廷(8階)


 高専組織の異常な情報隠蔽体質に果敢に挑み続ける当会の数年に及ぶ闘いが、高裁においてどのように決着するのか、ご注目賜れれば幸いです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2021年度明けを迎えた群馬高専…アカハラ犯の雑賀洋平が4J”副”担任へ!

2021-04-10 22:31:00 | 群馬高専アカハラ問題

新年度始業式を迎えた群馬高専。ロータリー・モニュメント前の路面に桜の花びらが舞い散る(画面をクリックして拡大してご確認ください)。4月6日10時40分撮影。

■群馬高専電子情報工学科(J科)で雑賀洋平教授が起こした凄惨な大規模アカハラ事件。苛烈を極め、最も甚大な被害が出た2014年度から7年目に入りますが、時の校長による徹底的な隠蔽と揉み消しが事件の清算を阻み続け、未だに最終的な解決の兆しはありません。何人もの部下や教え子を散々に虐げた張本人である雑賀洋平は、事件後も学校ぐるみで守られ続け、反省の態度皆無で同校に居座っています。雑賀は、コネの賜物である1年間の沼津バカンスを経て2020年度を迎えると、なんとコロナ禍のドサクサ紛れにJ科3年クラス(3J)の正担任へと無理やり就任してきました。

 コロナ尽くしの同年度が終わって新年度を迎えるにあたり、雑賀洋平がそのまま持ち上がりで4Jの正担任を務めるのか、それとも担任を外されるのか、はたまた別の役職に就くのか、その行方が強く注目されていました。

 そして、2021年度を迎えて1週間近くが過ぎ、人事情報を出し渋る群馬高専側がようやく当会担当者に明かしたところによると、雑賀洋平は今年度からJ科4年の副担任になり、他の役職や肩書はないとのこと。

 昨年春の雑賀洋平のJ科3年クラス正担任就任騒動、およびその後の群馬高専への追及模様については以下の記事をご覧ください。

○2020年3月4日:【仰天速報】反省なき凶悪アカハラ犯・雑賀洋平が群馬高専に堂々凱旋+J科3年クラス正担任着任か!?
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3127.html
○2020年4月2日:【速報】群馬高専アカハラ犯の雑賀洋平がJ科3年クラス正担任着任確定!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3142.html
○2020年9月16日:アカハラ犯雑賀を学科長が担任に“推薦”!?奇々怪々な群馬高専に質問状提出!そして今暴かれる不都合な真実!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3204.html
○2020年10月1日:【群馬高専】アカハラ犯雑賀の担任就任強行や杜撰コロナ対応への薄ペラ回答にみる相変わらずの腐敗体質
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3215.html

 群馬高専では、3年次に付いた学科クラス担任がそのまま卒業まで持ち上がって務めるのが通例のようです。そのため、雑賀洋平が2020年度3Jの学生に何年も正担任として密接に関わり続けることになる事態が強く想定されました。

 そこで、また季節が廻って年度末も近づいた今年3月、別件で群馬高専に電話を掛けたついでに雑賀洋平の次年度人事について聞くと、村田課長補佐は「資料が手元にないからわからない。4月1日になればわかると思う」とすっとぼけてきました。しかし間もなく同校内部関係者の情報提供と示唆があり、当会がシラバスの記載状況を独自確認したところ、雑賀が次年度4Jの正担任に就かない可能性がいきなり強く浮上してきました。経緯は次の記事の末尾部・追記部を参照ください。

○2021年3月20日:【群馬高専】チグハグ新型コロナ対応に内部関係者から不安の声続く…当会の問合せもヌカに釘
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3285.html

 さしもの群馬高専も、「アカハラ正担任」という馬鹿げた状態を引っ込めたように見えましたが、それでも「あの」群馬高専のことですから一切油断はできません。第一に、あえてシラバスに「雑賀洋平」の名前を載せないようにしているだけの可能性が指摘されました。

 それにもまして、複数の高専関係者から指摘があったのは、「正担任を外れるのが事実にしても、主事や学科長など別の役職に就くためではないか」という可能性です。特に、沼津逃亡中のアカハラ犯雑賀を正担任に「推薦」していた大墳聡学科長が降りる予定になっていることが学科担任就任予定から判明したため、「まさかの学科長返り咲きでは」という危惧も強く飛び交いました。

 かの群馬高専J科アカハラが極めて凶悪化したきっかけとされるのは、2014年春の雑賀洋平学科長就任です。雑賀洋平はこの学科長の立場を利用して、部下を精神科送りにし、多数の学生に対して不登校に追い込む、セクハラをはたらく、果ては進学を断念させるといった所業を積み重ねました。文科省天下りの西尾典眞校長(当時)は、その惨状に際しても雑賀を学科長から外すことすらせず、単なる任期満了を「交代」と言い張ってガス抜きを図る有様でした。そうした経緯を考えれば、学科長返り咲きも悪夢のリバイバルでしかなく、論外中の論外です。

■こうした流れから、雑賀洋平をめぐる新年度人事の行方は広く懸念と注目のマトとなっていました。そのため当会では、年度明けを待って群馬高専に問い合わせ、人事内容についての確認を取る予定でいました。ところが年度明け早々に同校が浴びせてきたのは、意味不明な情報統制のバリアでした。

 新年度明けとなる2021年4月1日、満を持して朝9時半に同校に電話をすると、応対した総務課人事係の関口事務補佐員(女性)は「係長以上は、年度初めの辞令交付式のあと会議に入った」と話しました。そこで13時過ぎに再度、同校総務課人事係に電話をすると、また関口職員が出てきました。同職員は、当会担当者が名乗ろうとする間もなく、「ちょっとお待ちください。いま担当の者に替わりますから」と言って電話口から外れました。20秒くらい待たされた後、電話に出てきたのは尾内総務課長でした。

 さっそく雑賀洋平の新年度役職人事の有無と内容について尋ねたところ、「組織内のことなので、4月5日の入学式前には公表できない」と変なことを言い始めました。「どうせすぐにわかるのだから」と食い下がりましたが、「学生や保護者にもまだ知らせておらず、初めて明かすのが入学式時点になる予定。入学式は4月5日の9時半から約1時間半ほどかかり、それが終了次第お伝えできる。それまでは勘弁してほしい」などと言って譲りません。

■こうして群馬高専は、新年度を既に迎えているにも関わらず、学生・保護者にまだ伝えていないとして、明かすことを拒んできました。村田課長補佐は「4月1日になればわかる」と電話口で言っていたのに、組織として言っていることがまったく一貫しません。

 それよりも気にかかるのは、昨年(2020年)と対応が食い違っていることです。というのも昨年においては、雑賀洋平にかかる学内人事(3J担任就任)について、入学式前の4月2日時点において尾内総務課長自らが口頭で当会担当者に説明してくれたからです(上記の2020年4月2日付け記事参照のこと)。当然、この事実は、記録にも確かにバッチリ残っています。

 それにも関わらず、今年になって理由も無くいきなり対応を変えてくるのはあまりに意味がわかりません。合理的な説明が付けられないなら、国民に対する恣意的な情報隠蔽です。

■そこで当会では、翌4月2日の午前10時前、尾内総務課長に再度電話を掛けて真意を確認することにしました。尾内総務課長が電話に出るなりさっそく、「昨年4月2日には入学式前なのに雑賀教授の3J担任就任情報を教えていただいたにも関わらず、今年はなぜ入学式前には教えてくれないのか。内規で、オンブズマン対策としてさらに情報公開の敷居を高くする旨の通達でもあったのか?」と質したところ、尾内総務課長は「昨年私がそう言ったのか。村田課長補佐から聞いたのではないのか」と部下になすり付けてきました。「尾内大課長自ら教えてくださいました。確かに記憶も記録もあります」と断言すると、尾内氏は「確認した上で連絡します」と言ってきました。当会担当者が「それでは待ちますが、どのくらい待てばよろしいか」と返すと、「10分程度」というので、しばらく待っていましたが、一向に連絡が来ません。

 仕方がないので、13時半になって当会担当者から電話を入れたところ、女性職員が取り次ぐ形で尾内課長が電話口に出てきて、「午前中会議が入り連絡ができなかった」とのたまいました。そして「再度協議するので、結果を10分後に連絡する」というので、再度待ちましたが、やはり電話が来る気配がありません。なぜ自分で言った口約束を、国立の教育研究機関の大課長ともあろう者が軽々と破ってくるのか、うんざりです。

 そこで14時前にまたまた当会担当者から電話を入れ、またまた出てきた同課長はやっと口を開いて、「昨年、内部の人事情報について、入学式前に伝えてしまったとすれば、コロナ禍で、入学式の挙行をどうするのか頭が混乱していたため、つい口頭で喋ったかもしれない。つまり、昨年に自分が喋ったこと自体が混乱によるイレギュラーであり例外」などと説明してきました。おそらく、上(=山崎校長)と「協議」した結果、このような屁理屈を考えてきたものと思われます。

■さらに続けて尾内総務課長は、「また昨日、ルールとしては入学式前と申し上げたが、本来こうした内部の情報は始業式の時点で学生や保護者に対して明示するもの。なので、4月6日(火)の朝9時から全校生を集めて体育館で開催する始業式を経ないうちに、内部人事情報を外部に明かすことができないのをわかってほしい」と言ってきました。

 そこで当会担当者からは、「では、ご希望通り始業式のあとに聴取させていただく。その際、今度は、『オンブズマンは外部組織であり、学生や保護者と異なるから、情報開示を受ける資格がない』などと理由をつけてきて開示を拒むことはないのか」と確認すると、尾内総務課長は「質問されれば回答する」と言いました。

 4月1日時点で現に確定している内部人事について、なぜここまで学生・保護者にサプライズで伝えることにこだわるのか、まったく意味不明です。いきなり決定事項として突き付けることで、反発が起きないようにしたいのでしょうか。それでは、学生・保護者本位の学校運営どころか、学校本位の道具として学生・保護者を付き合わせているも同然です。

 当会では、群馬高専側のあまりの情報統制ぶりに、何かしらの爆弾人事を押し切って既成事実にしてしまいたい目論見があることも想定しながら、群馬高専ご希望の6日を待つことにしました。


■4月6日(火)、当会担当者においてちょうど都合が付いたため、電話ではなく群馬高専への直接訪問の形で雑賀人事の行方を聴取することにしました。


駐車場から見た満開の桜と新緑のイチョウ並木。

 この日、午前9時半までに始業式が終わり情報解禁だというので、別件で群馬県庁に行く道すがら、午前10時40分に群馬高専へ到着しました。北東に突き出た敷地の端にある正門から入り、イチョウ並木を通っていくと、右手の満開の桜がそろそろ散り始めていました。例年より今年は早咲きだったことがわかります。来客用の駐車場はほぼ満杯でしたが、なんとか奥に2つほどスペースが空いていたのでそこに駐車し、徒歩で管理棟玄関に向かって進みました。

 ちょうど6年前にも、当会にとって全ての始まりとなる最初の公開質問状を西尾体制下の群馬高専に提出するために、同じように正門からロータリー・モニュメントの脇を通って管理棟に入ったことを思い返しました。あの日も、春の穏やかな空気と鮮やかな桜吹雪が、同校とオンブズマンを包み込んでいました。

○2015年4月15日:アカデミックハラスメント被害に揺れる群馬高専の学校長に対して実態把握と善処を求める公開質問状を提出
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1584.html

 何年経っても四季折々の豊かな表情が変わらないのは素晴らしいことですが、しかしこれにならって、学校ぐるみでのハラスメント・いじめ・自殺・揉み消し隠蔽何でもアリな腐敗体質までいつまでも相変わらずのままでは困ったものです。

■管理棟玄関入口で手指をアルコール消毒し、1階ロビーに入りました。ロビーには、携帯電話で話し中の男子学生らしき若者が一人いただけでガランとしていました。恐らく始業式が終わって授業中のようです。2階に上がり、まず校長室の前を通ると、ドアが閉まっていましたが、山崎校長の姿はドアのセンターガラス窓越しには確認できませんでした。隣の事務部長室のドアは開けっ放しになっていて、部長席が丸見えでしたが、事務部長の姿も見当たりませんでした。


総務課座席配置図。

 そして、その隣が総務課の部屋です。ドアを開けて、「お世話になります。オンブズマンの小川です」と声を掛けると、尾内総務課長が驚いた様子で立ち上がりました。挨拶すると、廊下の向かい側にある応接室に通してもらいました。


2階の応接室。

 コロナ対策のアクリル板越しに相対で着席し、久しぶりでしたので、尾内総務課長としばし近況を話し合いました。尾内総務課長は、今年が定年前最後の奉職の1年になるとのこと。外見からはとても来年に定年を迎えるように見えません。まだまだ活躍の場があるので、むしろこれからが新たな人生の一歩になることを、当会担当者の経験から申し上げたりしてみました。

■尾内総務課長によると、「いつも村田課長補佐と一緒に応対させていただいていたが、この度、村田は群馬大学の方に異動となった」とのこと。また、山崎校長は今年度も続投だが、亀原事務部長は異動となり、後任に長塚事務部長が着任したとのこと。

 機構本部がオンブズ対策に送り込んだ精鋭である猿田事務部長の後任として、2019年度から事務部長の座にあった亀原氏ですが、積極的に陣頭指揮を執って顔を出してきた猿田氏とは対照的にまったく顔を出したがらず、結局当会担当者が一度もお目にかかる機会のないまま群馬高専を去っていってしまいました。群馬高専事務部長としての2年間、亀原氏がオンブズマン対応・コロナ対応などでどのような裏の働きをしていたのか、漏れ伝わってくる機会があればぜひ知りたいものです。

 一方で見逃せないのは村田謙一課長補佐(総務担当)の異動です。村田氏は、平成27年(2015年)4月に群馬大学から群馬高専の総務課総務・広報・評価係長として異動してきて以来、途中で課長補佐への昇任も挟みつつ6年間にわたって群馬高専に奉職し続けてきており、入れ替わりの激しい同校の事務管理職の中ではもっとも在籍歴の長い人物となっていました。オンブズマン対応でも、その初期から部長・課長・課長補佐の陰に隠れてたびたび顔や声を出していました。

●参考:群馬高専『校報』127号(H27.1-6分)/人事関係欄
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/html/2017101011_kaijisiryo_kouhou_127_jinjikankei.pdf

 当会の調査追及開始時点から管理職として群馬高専内部におり、オンブズマン対応の裏事情、寮生連続自殺・不審死事件(2・3件目)の発生当時の内情、文科省天下り西尾典眞前校長の隠蔽・揉み消し・逃亡劇の黒い内幕、山崎現校長就任後の「臭い物に蓋」な学校運営の汚い実情、などをすべて一貫して知っている唯一の「古株」も、こうして出向元とみられる群馬大に帰っていってしまいました。内部の対応当事者として当時を知る人間がいよいよ群馬高専に残らなくなってしまい、否が応でも事件の長期化を痛感させられます。

■簡単に同校の現況を把握できたところで、ようやく本題である雑賀洋平教授の新年度人事に話を移しました。当会担当者が居住まいを正し、「さて、肝心の話ですが、もう公表できるようになりましたか?」と尾内総務課長を見据えて訊くと、同課長は「雑賀先生の担任と、その他肩書が何か付いているかどうかでしたよね」と確認してきたので、「ええ」と返事しました。

 すると尾内総務課長は、意を決したかのように、「雑賀先生は4Jの副担任です」と答えました。当会担当者から続けて、「あと肩書き等は何か付いていますか」と尋ねると、「役職とかは……この前言っておられた副校長とか、学科長とか、そういった肩書は付いていません」と返ってきました。

 そのうえで、「村田さんの後任は何というお方ですか」と質問すると、「今度、野村という者が後任になりました」といいます。当会担当者からは、「いつも電話を総務課にかけると、村田さんにお出になっていただいたものですから、後任の方にも今後お世話になるかと思います。もしいらっしゃいましたらぜひ面通しをさせていただければ」と依頼してみました。

 すると、尾内総務課長は席を一旦外して、総務課に戻り、一人の女性職員を連れて戻ってきました。当会担当者からは、「はじめまして。いつも情報公開等でお世話になっているオンブズマンの小川と申します」と挨拶をすると、その女性職員は「村田の後任で、野村と申します」と答えました。当方からは「これまで数年来、文書開示請求等で(事務管理職には)お世話になっており、今年度も多分何件か請求するかもしれませんので、その際はお手数をお掛けしますがよろしく対応お願いします」と申し上げました。

■ふと、意味不明なプール取り壊し強行問題が勃発しているお隣の長野高専のことを思い出し、「ところで、群馬高専にはプールはありますか」と訊いてみたところ、尾内総務課長は即座に「あります。自分の高校の時もありましたからね」と答えました。夏でも涼しい北日本ならともかく、やはり関東甲信越でプールのない学校は珍しいことを感じます。

 「隣の県の高専では、プールをめぐって色々と問題が起きていますが、今後の動きはぜひ当会のブログでチェックしてみてください」と伝えてみると、尾内総務課長はすでにご存じの様子でした。群馬高専側の担当者が、日々オンブズマンのブログを監視……もとい愛読してくれていることは昔から共通了解事項なので特に驚きもありませんが、カテゴリ分けも済ませた別高専の動向にもしっかり目を配っているとは、群馬高専のみならず高専組織全体が普遍的に抱える腐敗問題について実に勉強熱心であることがうかがえます。

○2021年3月18日:【長野高専】石原の悲願ついに成就…土居体制が水面下で強行の水泳プール解体に同校関係者一同呆然!!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3284.html
○2021年3月30日:長野高専水泳プール解体強行問題…理由と経緯を質す当会質問状に同校から返された支離滅裂回答
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3294.html

 尾内総務課長の反応からは、やはり学校にプールが整備されていることなど当たり前以前の常識だという認識がうかがえました。さしもの群馬高専ですら、水泳部員に自腹を切らせて遠方の外部プールに通わせ、意味不明な理由で説明もなくプールを無理やり更地にしてしまおうなどという発想は思考の埒外なようです。山崎誠校長が、同じく高専教員出身の土居信数による「『無駄な』学生の営みごと『無駄な』施設を叩き潰す『鮮烈な改革』」から、変にインスパイアされてしまわないよう祈るばかりです。

■なお、尾内総務課長の説明によれば、群馬高専の新学期の授業は対面形式で行う予定とのこと。当会としても対面授業の必要性は強く理解するところですが、3月下旬に第二次緊急事態宣言が解除されて以降、またまた感染状況もじりじり悪化してきています。切実な事情から遠隔授業を望む学生らにも十分に配慮して、可能な限り多くの関係者が安心と安全、そして満足を確保できる手立てを打ってほしいものです。

 そこまで話したところで、「それでは、コロナ対策にお互い十分気を付けましょう」と告げあって、当会担当者は会議室を退出しました。およそ8分間でしたが、新年度の挨拶として、尾内総務課長そして新任の野村総務課長補佐と面談の機会をもつことができました。


手指消毒用アルコール液が備えてある玄関ホール内の壁にある平成24年度の群馬高専創立50周年記念行事高額寄付者一覧。



 管理棟玄関の自動ドアを出たところ、やや風が強かったので、案内板の隣にある桜の花びらがひらひらと舞い落ちていました。車を出し、管理棟から正門に続く進入道路を通っていく途中、両側のイチョウ並木に目をやってみると、新緑の若葉が吹き始めていました。コロナ禍でありながらも、変わらず新学期の初々しい雰囲気を醸し出していました。


■このように群馬高専は、2020年度に無理やり正担任就任を強行してきた雑賀洋平について、2021年度には担当クラスは同じまま「副」担任に格下げするという手に出てきました。危惧された雑賀洋平の学科長返り咲きなどは、幸い杞憂に終わりました。

 当会の度重なる抗議にも関わらず雑賀洋平を正担任に据えたがった群馬高専が、なぜ今になってなぜこのような格下げ人事を行ってきたのかはわかりませんが、当会の抗議のほか、さすがに担任される側の学生・保護者からも悲鳴に近い苦情が裏で相次いだのかもしれません。

 しかしそれでも、完全には担任職を外さず、「副」とはいえ同じクラスに担任として留まらせているわけですから、何としても雑賀洋平をこの学年の担当としてしがみ付かせたい群馬高専の狂気的な意地がうかがえます。

 なお、群馬高専内部関係者の話によると、「群馬高専では、5つある学科ごとに約40名ずつ入学者を取るが、1-2年次では同学年約200名をランダムに割り振った混合クラスになっており、3-5年次で本来の所属学科クラスになる。基本的に、1-2年次混合クラスでは正担任を一般教科(人文・自然)の教員、副担任を各学科や専攻科の所属教員が担当する。逆に3-5年次の学科クラスでは、正担任を当該学科の所属教員、副担任を一般教科の教員が担当するのが普通。4年次の学科クラスの副担任を学科教員が務めるという事態は、かなり例外的であり、相当に奇妙」とのこと。

 こうした観点からしても、群馬高専側は、「アカハラ犯雑賀洋平をどうしても担任にしたいが、正担任では反発が大きすぎる」という相反した状況に鑑み、苦肉の策として慣例無視の「副担任」という奇手を打ってきたものと思われます。しかし、そこまでして雑賀に「担任」の肩書を付けてやることに、そして新4Jクラスの学生たちに執着する理由がさっぱりわかりません。当該クラスの学生に何か恨みでもあるのでしょうか。

■もっとも、正担任でなくなれば学生との関与度合いが低下するのは事実ですから、一歩前進という見方もできるのかもしれませんが、群馬高専の内部関係者によれば、「たとえばクラスのホームルームには副担任も来ますし、また何かしらの手続き等で副担任のハンコが必要なシーンも相当に多く、副担任とはいえ関わる場面は多い」とのこと。

 さらには、一年後、新4J学生が5Jに上がるタイミングで、雑賀が再び正担任返り咲きを試みてくる可能性も強く危惧されます。

 したがって、やはり一切の予断は許されません。引き続き警戒しながら、本件の行方を監視し、都度抗議を行っていく必要があります。

 それにしても、充実した学生生活を送るにあたり、担任との固い絆と信頼関係をもった学級を作れるかどうかは、学生がたにとっても極めて重要な関心事のはずです。しかも昨年度は、担任による綿密なケアと関与が通常より遥かに必要とされるコロナ禍の1年でした。その決定的な1年間に突如担任として超凶悪アカハラ犯を付けられた挙句、今度はまたいきなり担任を取っかえ引っかえされ、かといって肝心のアカハラ犯は完全に外れるでもなく副担任に居座ってくるわけですから、学校都合のオモチャとしてひたすら振り回される新4J学生らがまったく不憫極まりないと感じざるをえません。

■当会では引き続き、雑賀洋平を特定学級の担任に就けることに異様に執着し、アカハラ事件の解決もないまま青少年たちをアカハラの危険に晒し続ける群馬高専について、国立教育機関としての資格を問い続けることにしています。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする