市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【高専過剰不開示体質是正訴訟・第一次訴訟控訴審】機構側控訴答弁書と3/17初回弁論(審理継続)の様子

2021-03-24 22:59:00 | 群馬高専アカハラ問題

3月17日午後2時半から高専機構を相手取った第一次訴訟控訴審が開かれた東京高裁のある裁判所合同ビル。同日午後2時撮影。

■国立高専校長の選考実態、群馬高専J科アカハラ情報不開示取消訴訟の弁護士費用、長野高専連続自殺の発生年月日などなど、高専組織が執拗に黒塗りにこだわる「都合の悪い」情報は枚挙にいとまがありません。そうした悪質な不開示処分の取消しを求め高専機構を提訴した第一次訴訟では、卑怯な法廷戦術の嵐やコロナ禍での長期中断を乗り越えてようやく結審し、2020年11月24日に森英明裁判長らにより判決が下されました。

 しかしそれは、ありとあらゆる理屈を総動員して被告高専機構の杜撰極まる言い分を片端から素通しし、ごくわずかの勝訴部分を除いて当会の全面敗訴というあからさまな不当判決でした。「こんな滅茶苦茶な判決を許してはいけない」という憤りとエールの声が次々に高専関係者らから寄せられたこともあり、当会では2020年12月8日に第一次訴訟の不当判決に抗うべく控訴を行い、追って本年(2021年)1月27日に控訴理由書を提出しました。そして、高裁での口頭弁論期日が3月17日に設定されました。

○2020年11月25日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html
○2021年1月31日:【高専過剰不開示体質是正訴訟】第一次訴訟控訴審の弁論日が3/17に決定&控訴人当会が控訴理由書提出
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3274.html

■そのまま高専機構側からの控訴答弁書を待っていると、口頭弁論期日の約1週間前となる3月9日の午後4時過ぎ、銀座の田中・木村法律事務所による同日付けの控訴答弁書が当会事務局にFAXで送られてきました。

 第一次訴訟控訴審の被控訴人となった高専機構による控訴答弁書の内容は以下のとおりです。

●第一次訴訟控訴審・控訴答弁書 ZIP ⇒ 20210309til.zip

*****送付書兼受領書*****
2021年3月9日 16時08分 田中・木村法律事務所  No.7886 P.1

              準備書面等の送付書

                           令和3年3月9日

 下記のとおり書類をご送付いたします。
 受領書欄に記名・押印のうえ,この書面を当職及び裁判所宛FAX等でお送り下さい。

●送付先:
 東京高等裁判所第17民事部 ニ係  御中
 FAX 03-3592-0942
 控訴人  市民オンブズマン群馬  御中
 FAX 027-224-6624

●発信者:
 〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
     被控訴人訴訟代理人弁護士  木  村  美  隆
 TEL:03-3573-7041 FAX:03-3572-4559

●事件番号:令和2年(行コ)第251号
●当事者名:
 控訴人  市民オンブズマン群馬
 被控訴人 独立行政法人 国立高等専門学校機構
●次回期日:令和3年3月17日(水)午後2時30分

●文書名:答弁書

●送信枚数:9枚
●相手方への送信の有無:有

=====受領書=====
                  受 領 書
東京高等裁判所第17民事部 ニ係  御中 (FAX:03-3592-0942)
被控訴人代理人 弁護士 木村美隆 宛  (FAX:03-3572-4559)

 上記書類を受領しました。
  令和 年 月 日
     控訴人

 通信欄:本FAXを正式書面として受領ください。
**********

*****答弁書*****
令和2年(行コ)第251号
 控訴人  市民オンブズマン群馬
 被控訴人 独立行政法人国立高等専門学校機構

              答 弁 書

                            令和3年3月9日

東京高等裁判所第17民事部ニ係  御中

              (送達場所)
                〒104―0061
                 東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
                  田中・木村法律事務所
                   電話 03(3573)7041番
                   FAX 03(3572)4559番

               被控訴人訴訟代理人弁護士  木 村 美 隆
                    同        藍 澤 幸 弘


                記

            控訴の趣旨に対する答弁

1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
 との判決を求める。


            控訴の理由に対する反論

1 原判決別紙1項について
(1)控訴人は,原判決の別紙1項(控訴状別紙1項)について,甲第47号証の再開示で開示された一覧表の「学校名」等の項目名により,この一覧表が高専や大学を含む教育機関からの推薦(控訴人の言う細目番号②)に関するものであることや,その他研究機関の推薦(同じく細目番号①)に関するものであることが極めて強く推知できる,とする。そして,それぞれの一覧表に付されたNoから推薦機関ごとの推薦者数が推測され,これと高専校長に就任した者の前職(甲48)を比較すれば,甲第47号証のうち区分に係る推薦機関の種別が推知可能であるため,各文書が取り扱う大まかな推薦機関の種別は,人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人車の確保に支障を及ぼすおそれ(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という)5条4項ヘ)のある情報にあたらない,と主張する。
   また,甲第47号証の一覧表のうち,実際に校長に就任した者に係る記載情報について,もともと公開されている情報を開示しても,人事管理に支障が生じるおそれはなく,他の候補者に係る情報が明らかとなるわけではないとして,法5条4号ヘに該当するとの原判決の判断は誤りであると主張する。

(2)控訴人の言う,「推薦機関の種別」は,甲第47号証の一覧表のうち,上部の「(年度)付国立高等専門学校長推薦者一覧」の標題に続く不開示部分を指すと解する。
   高専の校長の前職は高等専門学校や国立大学の教授,文部科学省や国立の研究所といったように複数あり(甲48),これらの出身者が甲第47号証の一覧表のどこに掲載されているかは明らかになっていない。控訴人は,甲47号証の項目にある「学校名」,「推薦機関名」の表示と実際に校長に就任した者の前職から,上記の「推薦機関の種別」を強く推認することができるとする。しかし,たとえば甲第48号証記載の各人が,甲第47号証の一覧表のどのNoの箇所に記載されているかはもちろん,控訴人の言う細目No①と②のどちらの表に記載されているかも,具体的に特定することはできないのであり,同号証の現在の開示内容が,人事管理に支障を及ぼすおそれがないものとなっているとは言えない。
   かえって, 上記「推薦機関の種別」を開示すると,控訴人が控訴理由書で指摘したように,候補者の人数(甲第47号証のNo)と実際に校長に就任した者の人数との比較により,ある程度の精度で推薦機関ごとの校長採用の割合を推測することが可能となる。これにより,推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなど,多数の有為な人材から校長を選任するという被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれがあることは,原判決 (19頁)の指摘するとおりである。
   したがって,上記「推薦機関の種別」を開示しても,被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれはなく,5条4号ヘの不開示事由に当たらないとの控訴人の主張は,失当である。

(3)また,甲第48号証のうち,実際に校長に就任した者の情報を開示した場合には,甲第48号証に記載された情報が,単なる項目名に止まらず具体的にどの程度のものなのかが明らかとなり,被控訴人における校長の選考においてどのような項目が重視されるかを推測することが可能となって,校長の選考に関する自由な議論が阻害されるおそれがある。さらに,校長に就任した者の項目を開示することにより,甲第48号証の一覧表がどのような分類(控訴人のいう,大まかな「推薦機関の種別」)によるものか,より具体的に推測することが可能となる。この「推薦機関の種別」が明らかになることにより,被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれが生じることは,前記(2)と同様である。
   このように,甲第47号証の一覧表のうち,校長に就任した者についてのみ各項目の記載事項を開示したとしても,被控訴人の円滑な人事の確保に支障を来すおそれがあるのであり,校長に就任した者の各記載事項は法5条4号ヘに該当しないとの控訴人の主張もまた,失当である。


2 原判決別紙2項について
(1)控訴人は,原判決別紙2項の不開示部分について,該当する辞職顔が「西尾典眞」元校長のものと特定されているにもかかわらず,辞職理由が法5条1号の「個人職別情報」に該当すると判断した原判決を論難する。

(2)しかし,控訴人が指摘する原判決の「個人識別情報」(原判決21頁,2項(1)下から2行目)との記載は,不開示部分の記載から記載対象の個人を特定できることのみを意味しているわけではなく,当該情報の関示が特定人に関する情報を開示することになる,ということを当然の前提としている。
   辞職願の作成者の氏名と,記載された辞職理由はそれぞれ別個の個人識別情報であり,作成者の氏名が明らかになっているからといって,別の個人識別情報である辞職理由が開示されなければならないわけではないことは,自明である。
   原判決が,辞職理由について,個人に関する情報であって個人を識別できる情報(法5条1号)に該当するとし,辞職は単に職を辞する行為にすぎず職務の遂行(法5条1号ただし書ハ)にあたらないと判断したことは,極めて当然である。

(3)また控訴人は,被控訴人が甲第9号証により西尾氏の退職理由は公開されている旨指摘するが,同号証は控訴人が群馬工業高等専門学校を訪問した際の面談記録であり,このやりとりをもって被控訴人が西尾氏の辞職理由を公開したことにはならない。さらに,原判決(21頁)が指摘するように不開示部分は20字強の記載があり,甲第4号証の不開示部分の記載が「交流元への復帰」(甲9,10頁)といったものに止まらないことは,その体裁上明らかである。このことからしても,甲第9号証の記載をもって,西尾氏の退職届けの記載が公開されているということはできない。
   原判決別紙2項の開示請求に関する控訴人の主張に理由がないことは,明らかである。


3 原判決別紙3項について
(1)控訴人は,原判決別紙3項の不開示部分について,氏名の部分を除いた所属や職名のみを開示することで,内部の者に個人が特定できるとしても,内部の者にとって人事異動は既知の情報であり,職名等のみでは外部の者は個人を特定することはできないため,所属や職名は不開示情報には該当しない,と主張する。
   また,技術補佐員については,採用,昇進,異動等の情報が群馬高専のHPで事実上公表されており,群馬高専において,技術補佐員を含む技術職員の所属は群馬高専の教育研究支援センターに一元化され,同センターの所属が採用や退職と直結しているとして,技術補佐員の人事に関する情報は法5条1号ただし書イに該当する,と主張する。

(2)まず,甲第5号証のうち,氏名を除く所属や職名等(原判決別紙3項(1)の項目)は群馬高専の補助職員に関する記載であり,補助職員は群馬高専の各学科に1名ないし若干名しかいないため,退職や異動等に関する所属や職名を明らかにすることにより,群馬高専内や群馬高専と関係のある者について,当該記載の対象となる個人を特定することが容易に可能となる。
   控訴人は,職名等のみでは外部の者は個人を特定することができないと指摘するが,控訴人のいう内部の者,外部の者の区別は不明確である。群馬高専の職員会議等において異動,退職を告知された者や,群馬高専の学生を内部の者と解するとしても,それ以外に群馬高専の取引関係者や補助職員の知人等不特定多数の者が,退職や異動等に関する欄に記載された所属や職名の記載のみによって,記載対象である個人を特定することが可能である。
   このように,控訴人の言う(と解される)外部の者であっても,不特定多数が個人を識別することが可能となる以上,氏名を除く所属や職名のみの記載も個人識別情報に該当することは明らかである。原判決(22頁)も,「職名」に異動等の時期を併せることで群馬高専と関係のある者において当該情報に係る個人を特定することが可能になると考えられるから,「職名」は法5条1号本文の個人識別情報に該当すると判断しているが,至極当然である。
   なお控訴人は,個人識別情報該当性を判断するにあたり,照合することができる「他の情報」(法5条1号本文)について,一般に入手可能なものに限定される旨主張する。しかし,情報公開や法人文書開示請求を行う請求者が「何人も」として限定されていないことから,上記「他の情報」は,一般に容易に入手可能なものだけでなく,当該個人の近親者や地域住民が保有するか入手可能であると通常考えられる情報も含むと解されており(総務省HP,「総務省情報公開審査基準」),この点に関する控訴人の指摘にも,理由がない。

(3)また,群馬高専に所属する技術補佐員の多く(すべてではない)が,同高専の教育研究支援センターに所属することになっていることは控訴人の指摘するとおりであるが,同センターの所属が技術補佐員の採用や退職と直結しているとの控訴人の指摘が,法5条1号ただし書イに該当するという主張とどう関係するのか不明である。しかし,同センターにおいて技術補佐員の氏名や異動情報をホームページ等で公開している事実はなく,技術補佐員の異動が法令の規定ないし慣行として公にされた情報であるとの控訴人の指摘は当たらない。
   さらに控訴人は,技術補佐員の採用,昇進異動等の情報が群馬高専のHPで事実上公表されていると主張する。これは,年度に応じて群馬高専のHPのうち教育研究支援センターの年報の記事に一部の技術補佐員の氏名が記載されているものがあることを指していると解される(上記教育研究支援センターの所属に関する主張も同様と解される)が,これにより判明するのは当該年度に氏名が記載された技術補佐員(全員ではない)が群馬高専に所属しているということのみであり,これをもって技術補佐員の採用や異動が公表されている,ないし公表される慣行があるなどと言えないことは明らかである。原判決(23から24頁)も,職員が当該部署に在籍するようになったり,在籍しなくなったりしたことが確認できるのみであり,異動,退職の具体的な内容が明らかになるわけではないから,群馬高専において(技術補佐員の)異動,退職等の人事情報を公表する慣行が存在するとは言えない,と判示しており,極めて当然である。
   以上のとおり,原判決別紙3項に関する控訴人の主張にもまた,何ら理由はない。


4 原判決別紙4項について
(1)控訴人は,原判決別紙4項の不開示部分について,控訴人が開示を求めている弁護士費用(甲第6号証のうち「合計金額」,「支払金額」)は,開示請求(甲1)の時点で判決が確定している事件に関するものであり,他の弁護士等が容喙して競争上の利益を害する余地はなく,また原告が開示を求めている甲第6号証のうち,「合計金額」,「支払金額」を開示しても弁護士費用の内訳は明らかにならないとして,少なくともこれら「合計金額」,「支払金額」は開示すべきであると主張する。

(2)しかし,支払決議書(甲6)に記載された弁護士費用が,既に判決が確定した事件に関するものであるとしても,本件がまさにそうであるように,被控訴人が支払決議書の対象となる事件と同種の事件について訴訟代理人を選任して対応を依頼することは充分に見込まれるのであるから,支払決議書の対象事件が終了していることと,弁護土費用の開示が当該弁護士の競争上の利益を害するかどうかはまったく別の問題である。
   また,支払決議書(甲6)には,被控訴人が支払った弁護士費用や訴訟に関連する実費,弁護士費用に関する源泉徴収の項目しか記載されておらず,支払決議書のうち,「合計金額」,「支払金額」のみを明らかにした場合でも,被控訴人が訴訟代理人に支払った弁護士費用の額を容易に推測することが可能となる。
   原判決(26頁)が,弁護士費用にかかる情報は,事業を営む個人である木村弁護士の弁護士事業に関する情報に該当し,「合計金額」,「支払金額」もこれを開示することにより弁護士費用の額が明らかになるとして,法5条2号イの不開示情報に該当すると判断したことは極めて当然であり,この点に関する控訴人の主張にも,何ら理由がない。


5 原判決別紙5項について
(1)控訴人は,原判決別紙5項の不開示部分について,開示請求の対象文書の作成日をどのように区切るかは,開示請求者が任意に設定できるのであり,複数回開示請求を繰り返すことにより開示請求対象文書の作成時期をある程度特定することができる以上,事件・事故等発生状況報告書等(甲7,以下「本件報告書」という)のうち年月日の情報については公衆が知り得る状態に置かれているものとして,法5条1号ただし書イに該当すると主張する。

(2)しかし,控訴人の主張する方法でおおよその作成時期をある程度特定できるとしても,それは控訴人による文書開示請求の内容と付き合わせた結果にすぎない。
   法5条1号ただし書イの「法令の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とは,情報の保有者である独立行政法人が法令の規定等により公にし,または公にすることを予定している情報を指すことは自明であるところ,被控訴人は,本件報告書のうち日時に関する記載を不関示としており,被控訴人が本件報告書の日時を公にした事実はない。控訴人の開示請求書と合わせて本件報告書に記載されたおおよその日時を特定できたとしても,これをもって当該日時が公にされ,公にすることが予定された情報と言えないことは明らかである。
   原判決が,控訴人の指摘する開示諸求の方法により本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があることをもって,当該情報が法5条1号ただし書イに該当するとはいえないと判断したことは,極めて当然である。


6 結語
以上のとおり,控訴人の控訴には何ら理由がないことは明らかであり,本件控訴はすみやかに棄却されるべきである。

以上
**********

■以上のとおり、高専機構は、ありとあらゆる理屈を総動員して情報隠蔽に太鼓判を押してくれた地裁判決を何が何でも死守しようと、詭弁強弁のオンパレードを並べ立ててきました。とはいえ長々と並べ立てたその内実は相変わらず、機構の業務に支障をきたす・自分たちの利益を害する・個人識別情報であると言い張っているだけです。

 気になったのは、控訴答弁書に関する動き方が、並行して同じく控訴している第二次訴訟控訴審と明らかに違っていることです。

 第二次訴訟控訴審において高専機構側は、口頭弁論期日に2週間も先立ち、控訴答弁書のクリーンコピーを郵送で提出してきました。しかしその内容はというと、実質2ページ程度の分量で、主要な論点や問題点をいくつも丸々無視したお粗末な代物でした。

○2021年3月23日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・第二次訴訟控訴審】機構側控訴答弁書と 3/9高裁弁論(即日結審)の一部始終
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3287.html

 ところがこの第一次訴訟控訴審での控訴答弁書は、口頭弁論期日1週間前の夕方になって、FAXによる駆け込み提出がされてきました。しかも、追ってクリーンコピーを郵送するというわけではなく、「本FAXを正式書面として受領ください」という間に合わせぶりです。

 そして内容はというと、控訴人当会からの都合の悪い指摘や主張のいくつかは例の通りしれっとスルーされているものの、ある程度正面から「反論」に努めた様子がうかがえ、その労力が実質8ページ分という分量に表れています。また、「準備書面等の送付書」下部にある「受領書」の記載をよく見ると、第二次訴訟控訴審の控訴答弁書では「被控訴人訴訟代理人」と(正確に)記載しているにも関わらず、今回第一次訴訟のそれでは「被控訴人代理人」となっており、内容とは関係のない送り状まで余さず目を通す余裕がなかった様子がうかがえます。すると、このFAXによる駆け込み提出は、意図的な調整によるものではなく、本当に直前まで反論作成に手を取られたためという可能性も浮上してきます。

■つまり、控訴答弁書について、第二次訴訟控訴審では「杜撰でもいいので早く提出する」方針で来ていたところ、第一次訴訟控訴審では「駆け込み提出になっても入念に反論する」方針で来ていることがわかります。この明らかな方針の違いは、いったい何を意味しているのでしょう。

 第二次訴訟控訴審では、稀代のトンデモ判決を問答無用で出した東京地裁の清水知恵子裁判長から、これまた「前科」が多い上に開廷前から機構優遇姿勢が見え隠れする東京高裁の白石史子裁判長へと審理が引き継がれています。すると高専機構としては、当事者双方が何を言っても言わなくても高専機構勝訴ありきで処理してくれると確信して、どう勝たせるかの方針を白石裁判長がさっさと立てられるようにと、内容はそっちのけで早期提出に踏み切ったのかもしれません。

 一方、この第一次訴訟控訴審では、打って変わって反論の分量にリソースが割かれています。すなわち、高専機構と田中・木村法律事務所として、あまり手を抜けない状況にあることがうかがえます。となると第一次訴訟控訴審については、高裁での担当裁判長・裁判官らが高専機構側にとって「コントロール外」であり、果たしてどんな判断を下してくるのか見通せない状況にある可能性が指摘されます。

 すると、第一次訴訟控訴審を担当する矢尾渉裁判長らがどのような訴訟指揮と判断をするのか、注目されました。


■3月17日当日、当会出廷者は午前中に前橋地裁で10時10分と同20分の2件連続で住民訴訟の口頭弁論を終えた後、11時35分の前橋発両毛線高崎行きに乗車し、11時50分に高崎駅に着きました。新幹線で早く行っても時間が余ってしまい、かといって東京で時間を潰す用事も特に思い当たらなかったので、鈍行でゆったり向かうのも一興と考え、ちょうど発車直前の11時52分発上野東京ラインに乗り込みました。そして、13時46分に東京駅に着きました。そこから丸の内線に乗り換え、14時ごろ地下鉄霞ヶ関駅に着きました。地上に出ると、9日の大音響演説の時とは打って変わって、裁判所前の歩道は静かそのものでした。

 さっそく裁判所庁舎に入り、東京高裁8階の812号法廷の開廷表を確かめました。以下のとおり、間違いなく本日開催されることを確認しました。

*****東京高裁812号法廷開廷表(3月17日)*****
令和3年3月17日 水曜日
●開始/終了/予定:13:30/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第2418号/損害賠償請求控訴事件
○当事者:仙波仙太郎/武田裕二
○代理人:-

●開始/終了/予定:13:30/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第2490号/詐欺、ストーカーによって損害賠償請求控訴事件
○当事者:武田香/小林直哉
○代理人:-

●開始/終了/予定:14:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第251号/法人文書不開示処分取消請求控訴事件
○当事者:市民オンブズマン群馬/独立行政法人国立高等専門学校機構
○代理人:―


●開始/終了/予定:15:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第3361号/土地明渡請求控訴事件
○当事者:株式会社マックアース/畔上平和
○代理人:―

●開始/終了/予定:15:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第2545号/労働契約上の地位確認等請求控訴事件
○当事者:日高正人/パシフィックコンサルタンツ株式会社
○代理人:―

■東京高等裁判所第17民事部
    裁判長 矢尾渉
    裁判官 橋本英史
    裁判官 三浦隆志
    裁判官 今井和佳子
    裁判官 田中一隆
    書記官 坪田朋子
**********

 まだ20分余り時間があるので、1階のロビーの隅にある休憩スベースで時間調整をしました。つい時間を忘れて過ごしていた所、開廷5分前になっていたので、急ぎ8階に向かいました。

■812号法廷に入ると、既に被控訴人訴訟代理人の藍澤弁護士が法廷内の被控訴人席に座っているのが見えました。筆者も出頭カードにサインして、法廷に入りました。傍聴席には、中ほどに高専機構本部からの職員とみられる男が一人、メモ帳を片手に、待機していました。眼鏡をかけておらず、つい8日前の3月9日に行われた第二次訴訟控訴審口頭弁論に来ていた職員とは別人のようでした。

 第一次訴訟控訴審の第1回弁論は、午後2時半から開廷しました。

 冒頭、書記官が「令和2年(行コ)第251号。控訴人、市民オンブズマン群馬。被控訴人、独立行政法人国立高等専門学校機構」と事件番号と当事者を告げました。以下、控訴人=当会出廷者、被控訴人=藍澤弁護士です。

 裁判長が「では弁論を行います。控訴人は控訴状よろしいですね?」とさっそく訊いてきたので、控訴人当会は「はい、陳述します」と答えました。すると裁判長は、「控訴の趣旨について、2(訴訟費用)は分かるが、1について確認したい。自分の理解では、今回の控訴の趣旨1項別紙に示す部分の不開示取消請求というのは、要するに原判決が取り消さなかった部分……原判決が取消請求を棄却した部分全部を取り消す、という把握の仕方なんですが……」というので、控訴人として「その通りです」と答えました。

 裁判長が再度「そうですかね」と確認したので、控訴人は「その通りです」と重ねて答えると、裁判長は「はい、はい」と苦い微笑みを浮かべながら返しました。

 裁判長は「一部を取り消したことが前提の上で控訴状の陳述をする、ということですね?」と言うので、「はい。一部はね。『ごく』一部は認容されていますが」と、控訴人の主張の殆どが認められなかった一審判決を思い出しながら言いました。

■続いて裁判長は「それで、被控訴人は答弁書を陳述でよろしいですね?」と被控訴人の藍澤弁護士に訊くと、藍澤弁護士は「はい」と答えました。

 裁判長は「双方、原判決記載の通り、現審の口頭弁論の結果を陳述」と決まり文句を口にしながら、続いて「控訴人の方から控訴理由書」と言ったので、控訴人として「はい、陳述します」と答えました。さらに裁判長は書証について「甲の47から50をいずれも写しですね?」と確認を求めてきたので、控訴人は「はい、写しで提出します」と言いました。原本はきちんと保管しておくべきなのですが、膨大な書証を保管する場所の確保が大変なので、よほど重要書類でない限り、写しでパソコンに保存しているのが当会の現状です。

 裁判長は「あと当事者の方から何かございますか?」と訊くので、控訴人も被控訴人も「特にありません」と答えました。ここで裁判長が終結宣言をするかと思いました。

■すると裁判長は続けて「念のため確認したい点が1点あります」として、控訴理由書の2ページ目(2)中、高専校長候補者の推薦機関などの種別が書いてある(と思われる)箇所の不開示にかかる控訴人の主張について、「被控訴人に確認を求めたい」と問いかけました。具体的には、2ページ目の第2段落と第3段落の記載についてのようです。

 裁判長が指摘したのは、「『第3段落の中の細目番号②は高専や大学を含む教育機関からの推薦者ないし出身者を、細目番号①はその他の研究機関や官公庁からの推薦者ないし出身者を、それぞれまとめたものであることが極めて強く推知できる』との控訴人の意見ないし評価という部分について、被控訴人の答弁書の中では直接の認否が、あるいはこれに反論した記載の有無が、ハッキリしない」ということでした。

 そして裁判長は、「この点につき、もし答弁書の中で言及しているつもりでも、できれば個別に認否ないし反論という形で書いていただけると、裁判所としては理解しやすくて助かる。これについて、被控訴人としての見解を聞かせてほしい」と、被控訴人に尋ねました。

 それに対して被控訴人は「細目番号に関する当方の理解としては、甲47号証の一覧表のうちの、例えば2枚目のもので言えば、『推薦機関』という記載になっていて、3枚目は『学校名』というふうに書いてあり、こうした項目の表記の違いによって、細目番号①②と分けている、というように理解している」と答えました。

 裁判長は「控訴人の主張をそう理解しているということですかね?」というと、被控訴人は「はい」と答えました。被控訴人は続けて、「内容について、控訴人は推知できると指摘するが、そうした推知はできないだろうというのが被控訴人としての反論。答弁書で記載した趣旨のとおりであり、それ以上の細部については、特に補充の要がないと思う」と答えました。それを聞いた裁判長は、「推知できるという主張につき、争うということか?」と問うと、被控訴人は「はい」と答えました。

■それを聞いてしばし黙り込む裁判長を見て、右陪席裁判官が「よろしいですか?」と、裁判長に申し出ました。裁判長のOKを得た右陪席裁判官は、「さきほど裁判長が指摘した控訴理由書の2ページ目の第2、第3段落について細かく確認したい。年度で言うとH23/4付~H29/4付までと、次の第4段落で、H30/4付とH31/4付でそれぞれ分けて開示された文書の内容について、控訴人は番号を具体的に記載したうえで、それぞれ違う主張をしている」と、控訴人側の主張の論理構成を細かく確認しました。

 続けて右陪席裁判官は、「それに対して答弁書は、この第2、第3段落と第4段落における年度別の個別具体主張に対して、特に区別せず包括的に色々と混合して反論している。だから被控訴人がどういう理由で、どの部分を、どのように争うのか、というのが裁判所にとって分かりにくい。弁論の全趣旨を解釈すると、第2、第3段落、とくに第3段落については、特に争わないというような読み取り方もできる。答弁書の読み取り方によってはそういう解釈も可能だということを踏まえて念のため確認しておきたい。よって、できればそのあたりを正確に裁判所の方で把握できるように、裁判長の指摘した通り、第2、第3段落、とりわけ第3段落について、個別的な反論を書面でいただけた方が、受訴裁判所として正確な把握ができると考えている。自分としては、そのことにより適正な判断ができると思う。今日は第1回目の期日だから、被控訴人にあらためてこの点を検討してもらい、書面化していただいても結構。この点よく確認していただいて、個別説明の必要がないという見解であればもう弁論の終結をしてもよいが、またあらためてその箇所の答弁をできるのであれば、それを願いたい。そこを明確にしてほしいと思っている」と、言葉を変えながら同じ趣旨の発言を繰り返しつつ、詳しく説明しました。

 それを聞いた被控訴人は「第2段落と、第3段落については、今申し上げた通り。第4段落のH30年4月付け、H31年4月向けの部分について、個別に検討するとして、細目番号1で6名、細目番号2で云々という記載があるが、これ(細目番号)は甲47号証のこのH30年以降の候補者一覧のどこをさしているのか。これは控訴人に訊いているが」と、突然、控訴人に話を振ってきました。どうやら控訴理由書の中身をよく精査し理解しないままで、裁判官から何を質問されているのか分かっていない様子です。

■それを見かねてか、右陪席裁判官が「控訴理由の2枚目の第4段落ですね?」と念押しすると、被控訴人は「今、裁判長から指摘いただいた2ページ目、第4段落はその前と記載内容が異なっていて、甲48号証を引用しつつ各人数を記載されているが、甲47号証の一覧表でいうとどれと対応しているのか分からないのですが」と困惑したようすで返事をしました。

 右陪席裁判官は「こちら側が今設明している点に関して、確認したいということですね?」と再度問うと、被控訴人は「そうです。第2段落と第3段落については、H29年までの一覧表は確かに項目の中身や記載の仕方に差が付いているので、そこは細目番号①と②という区別の仕方でわかります。さっき申し上げたとおり、そういう推知はできないだろうというのが被控訴人の反論です。それで、今指摘いただいた第4段落のH30年4月付け、H31年4月付けの部分については、この記載の中身が甲47号証の平成30年4月付け高専校長候補者一覧表のどこの部分を指しているのか分からない」と、相変わらず「細目番号」の意味が把握できていない様子です。

 右陪席裁判官は「『平成31年4月付け』とあるこの表示が分かりますか」と言い、一覧表の右上に小さく表示された文字がよく判るように、当該ページを抜いて、よく見るように被控訴人に促しました。

 右陪席裁判官はさらに具体的に「平成30年4月付の一覧表の右上に資料6-1とありますよね?」と確認し、被控訴人が「はい」と言ったので、「これが控訴理由書の第4段落で言うところの番号です。それで、次のページの右上にもやはり資料6-2とありますよね?」と言うと、被控訴人はまだわかっていない様子です。

 「右上まで見ないと、ズレ方によって見難いんですよ」と裁判官に言われて、ようやく被控訴人は、何を言われているのか悟ったようです。

 右陪席裁判官は「資料6-1と資料6-2が第4段落で言うところの細目番号。その次の、裏面に『No.1』としか書いてないのが細目番号無しの最初の1点。次のページが細目番号無しの資料の2点目。それで次のページの裏、ナンバーが『1』しかないんですが、これが番号のない資料の3点目です」と、控訴人に代わって丁寧に説明しました。控訴人は、高専機構自身が資料に割り振っている番号を便宜上そのまま使って区別しているだけなのに、藍澤弁護士は、雇い主の高専機構が資料に番号を振っているという目の前の事実をずっと認識していなかったのです。

 被控訴人がようやく「はい」と言うのを聞いて、裁判官は「そういうことです」と安堵した様子でした。

■しかし、被控訴人がまだよく訳の分からないことを言い続けるのを見て心配になったのか、さらに右陪席裁判官が口を開き、「H23からH29までの、細目番号①②としかないものについてはこういうふうに推知をしますと。一方で、H30、H31については資料が細かいときもあるので、校長の実際の就任状況と併せてこういう推知をします、H31についても同じように推知ができますと。控訴人が別個の推知の仕方を用いているのに、被控訴人の答弁書では、その最初の方についても、『実際に校長に就任した者との対比によれば』という言い方をして、ゴチャゴチャに答弁をしている」と、被控訴人に言い聞かせるようにして懇切丁寧に指摘しました。

 「はい……はい」と返すだけの被控訴人について、まだ完全に分かっていないのではないかと懸念したのか、右陪席裁判官は被控訴人に「先生。その書証の綴じ代の上の方が見えなかったのかもしれませんね。だから、分かりにくくて、ごっちゃにしてしまったのかもしれませんね」とフォローしました。それにしても、ここまでプロの弁護士に対して裁判官が懇切丁寧に説明しなければならないとは……すったもんだの光景を目の当たりにした当会出廷者の率直な感想です。

 被控訴人はようやく「ご説明の趣旨は分かりました。ただし、反論の骨子は、今申し上げた通り。どういうふうに一覧表にまとめているかというのは、必ずしも控訴人の控訴理由書の記載の通りとは限らないだろう、というのが骨子になる。なので、それはH30、H31についても同様、ということにはなると思うが、書面でその旨を指摘したほうが良ければそうさせていただく」と答えました。

 右陪席裁判官はようやくホッとした様子で「そうしてください」と声を掛けました。そしてさらに、「ちなみに、実際の資料をみると、平成29年も別の組み立て方になっている部分がある。できれば、別の組み立て方になっているものについて別の仕方で争う、という方針でよければ、非常に参考になると思う」と、もはや裁判の公平性が疑われるレベルで、更に痒いところに手が届くアドバイスをしました。

■被控訴人と右陪席裁判官とのすったもんだが一段落し、ようやく裁判長が控訴人に向かって「よろしいでしょうか? 一回、先方にて書面でまとめるというので」と意見を求めてきました。控訴人は「はい、ぜひ被控訴人からの書面を拝見したいと思います」と答えました。

 すると裁判長は「それでは弁論を続行します」と宣言し、被控訴人に向かって「どのくらい期間を置けばよろしいですか」と尋ねました。被控訴人は「早急に」と言ったきり、具体的な日数を言いませんでした。

 裁判長が「早急というと、来週の終わりまでくらいですか?」と確認を求めると、被控訴人は「はい、はい」というので、裁判長は、今度は控訴人に向かって「では、その書面を見て、何か反論があったらまた出していただくということでよろしいですか?」と確認を求めてました。控訴人は「はい、かしこまりました」と答えました。

 そして、裁判長は、「そのための期間を勘案して、次回弁論期日は1か月後くらいで……4月14日、10時というのはどうですか?」と、控訴人・被控訴人に提案しました。双方とも「はい、結構です」と答えました。

 その結果、次回期日は4月14日で、被控訴人の書面提出期限は3月26日までとし、控訴人はそれを見て認否や反論があれば4月7日までに提出することに決まりました。

 控訴人としては、被控訴人からの準備書面が、どんな内容のものが出てくるのか分からないため、裁判長にできればもう少し期限を延ばしてもらいたいと要請しましたが、裁判長は「1、2日くらいはいいが、裁判所としては4月14日の期日になるべくやりたいので」というので、「裁判長がそう仰るのであれば、それを目途に努力し、7日提出を厳守します」と裁判長に告げました。

 裁判長は「それではよろしくお願いします。ではそれを見て特段さらに議論が必要か必要でないかによりますが、必要なければ次回終結ということにしたい」と述べ、「では今日はこれで終わりにします」と言って陪席裁判官2名と共に退出していきました。

 以上がメモと記憶により再現した今回の弁論の概要です。不正確な箇所もあるかもしれませんが、概ね様子を分かって頂けたかと思います。

■こうして、初回で終結するかと思われていた高裁での控訴審は、意外なほどに裁判官からの突っ込みが差し込まれて継続となり、次回期日が4月14日(水)午前10時に設定されました。

 今回の第1回口頭弁論の大半は、裁判官に質問攻めにされる藍澤弁護士を、蚊帳の外の当会出廷者が眺める構図でした。あまりにも主張が杜撰な高専機構の訴訟代理人のせいで、裁判官が自ら手取り足取り指南とフォローをしてあげている感が強いものでした。同時に、東京高裁第17民事部の裁判官らが、当会と高専機構双方の主張を割と読み込んできていることに驚きました。同高裁第2民事部が担当する第二次訴訟の初回口頭弁論が、白石裁判長の指揮によりさっさと即日結審したのとは雲泥の差です。

 やはり事前に予測されたとおり、第17民事部は「完全な手抜き答弁でも忖度して勝たせてくれる」わけではないようで、高専機構と田中・木村法律事務所としてもやりにくさを感じているのは確かなようです。

 ただ、公平中立であるべき裁判官自ら、藍澤弁護士を「先生」呼びしながら「主張の改善点」を詳細にアドバイスしてくれるということは、裏を返せば、どんなにポンコツでも一応は法曹仲間の弁護士センセイであり、さらに行政側の訴訟代理人である藍澤弁護士をなるべく勝たせてあげたいとは思っている証左なのかもしれません。

■さて、口頭弁論が終わるとまだ午後3時前でした。第二次訴訟控訴審での手数料還付手続について教示を受けるべく、16階の高裁第2民事部窓口に行き、参考資料を受け取りました。こうして、裁判所での用事を済ませた当会出廷者は、玄関から庁舎の外にでました。

 すると、南側の傍聴希望者コーナーで40名くらいの人たちが並んでいるのを目にしました。まだ河合夫妻の夫の裁判が続いていることから、その裁判かと思いきや、掲示板を見ると「裁判所名: 東京高等裁判所 第22民事部. 日時・場所: 令和3年3月17日 午後3時40分 2番交付所. 事件名: 査証発給拒否国家賠償請求控訴事件 令和2年(ネ)第1320号. 備考: 【抽選】当日,午後3時40分までに2番交付所に来られた方」とあります。

 後で調べたところ、いわゆる安保法制反対を訴える市民団体が、日本の過去の戦争犯罪を議論するためのゲストに中国人十数名を招こうとしたところ、日本政府がビザを発給拒否したことに端を発する「中国人ビザ拒否訴訟」に関しての高裁判決言渡期日だったことがわかりました。昨年1月に地裁で市民団体側が全面敗訴したため控訴審に移行しており、この日に高裁での判決言い渡しが控えていたようです。なお、その後の高裁判決結果については、またも全面敗訴に終わってしまったようです。

●参考https://news.yahoo.co.jp/articles/97d5791794ca63e8a2f8c0ac1b63d93718ab3fe2

 たまたま居合わせた判決言渡を傍聴している時間的余裕はなかったので、当会出廷者は裁判所をあとにし、群馬へ帰投することにしました。


■さて、上記のとおり、口頭弁論の次週までに高専機構から主張補充がなされるはこびになったため、当会では被控訴人準備書面の来着を待つことにしました。すると、3月22日の午後5時過ぎ、さっそく銀座の田中・木村法律事務所から当会事務局宛てに補充準備書面がFAXされてきました。

●被控訴人(高専機構)R3.3.22付け準備書面 ZIP ⇒ iitirj.zip

*****送付書兼受領書*****
2021年3月22日 17時20分 田中・木村法律事務所  No.7930 P.1

              準備書面等の送付書

                           令和3年3月22日

 下記のとおり書類をご送付いたします。
 受領書欄に記名・押印のうえ,この書面を当職及び裁判所宛FAX等でお送り下さい。

●送付先:
 東京高等裁判所第17民事部 ニ係  御中
 FAX 03-3592-0942
 控訴人  市民オンブズマン群馬  御中
 FAX 027-224-6624

●発信者:
 〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
     被控訴人訴訟代理人弁護士  木  村  美  隆
 TEL:03-3573-7041 FAX:03-3572-4559

●事件番号:令和2年(行コ)第251号
●当事者名:
 控訴人  市民オンブズマン群馬
 被控訴人 独立行政法人 国立高等専門学校機構
●次回期日:令和3年4月14日(水)午前10時

●文書名:準備書面(R3.3.22付)

●送信枚数:3枚(送信書を除く)
●相手方への送信の有無:有

=====受領書=====
               受 領 書
東京高等裁判所第17民事部 ニ係  御中 (FAX:03-3592-0942)
被控訴人代理人 弁護士 木村美隆 宛  (FAX:03-3572-4559)

 上記書類を受領しました。
  令和 年 月 日
     控訴人

 通信欄:本FAXを正式書面として受領ください。
**********

*****3/22付準備書面(高専機構)*****
令和2年(行コ)第251号
 控訴人  市民オンブズマン群馬
 被控訴人 独立行政法人国立高等専門学校機構

             準 備 書 面

                           令和3年3月22日

東京高等裁判所第17民事部ニ係  御中

                   被控訴人訴訟代理人弁護士  木 村 美 隆
                        同        藍 澤 幸 弘

                 記

控訴理由書1項(2)(甲第47号証と推薦機関の別)について
1 控訴人は,同項において,甲第47号証で部分開示された国立高等専門学校長候補者一覧(以下「一覧表」という)のうち,平成23年から同28年分のものは,項目名に「推薦機関」とあるものと,「学校名」とあるものの2種類に分かれており(細目番号①,②),これにより各表が教育機関の推薦者と研究機関や官公庁からの推薦者をまとめたものであることが推知できる,と主張するが,この主張は争う。
 高専の校長の前職は高等専門学校や国立大学の教授,文部科学省や国立の研究所といったように複数あり,これらの候補者が控訴人のいう細目番号①ないし②の一覧表のどちらに記載されているかは,各表の形式からは明らかではない。たとえば,国立大学の教授を,控訴人が推知しているように細目番号②の表に記載することも,細目番号①の表に記載することも,分類としてはありうるのであり,控訴人の上記指摘は,単なる推論にすぎない。
 控訴人は,この推論をもとに,各文書が取り扱う大まかな推薦機関の種別を開示しても,被控訴人における人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ(法5条4項ヘ)がないとするが,控訴人の主張が単なる推論を前提にしている以上,その主張に理由がないことは明らかである。

2 また,一覧表のうち平成29年のものは,それ以前のものとは異なり細目番号①,②について,一覧表の項目名に違いはなく,平成28年以前の一覧表と比べて,より記載内容を推知することが難しくなっている。よって,前記(1)と同様,一覧表にどの推薦期間(ママ)等からの候補者が記載されているかを推知でき,一覧表が取り扱う大まかな推薦機関の種別を開示しても,法5条4号ヘのおそれがないとの控訴人の主張は,いずれも争う。

3 控訴人は,平成30年以降の一覧表について,一覧表に記載された項目Noから推薦機関ごとの推薦者の人数が明らかとなり,これと実際に校長に就任した者の人数を比較すれば,一覧表にどの推薦機関の候補者が記載されているか,推知可能であると主張するが,この主張は争う。
 平成30年の一覧表は,甲第47号証の15枚目から17枚目(各表裏で計6頁)に分かれているところ,各表に振られた項目NoをみてもNo1しかないものが2ページあり,どちらの表にどの推薦機関の候補者が記載されているか,推知することはできない。
 また校長の前職(甲48)をみても,大学の研究所に所属していた者もいれば,大学院の研究科に所属していた者もあり,控訴人の指摘するように,「大学(院)出身者5名」との分類が正確か,一覧表の体裁から判断することはできない。
 さらに,一覧表の項目Noにどの程度の意味があるか,たとえば推薦機関ごとに通し番号を付して表を整理しているか,といったことも甲第47号証で開示された一覧表からは不明である。たとえば同じ推薦機関からの候補者でも,経歴や年齢等の違いにより表の頁を分けてNo1から振り直して整理したり,複数回開催する会議に応じてNoを振り直した表を作成する,ということも方法としてはありうるのであって,単純に項目Noと校長の前職のみから,各一覧表がどの推薦機関の候補者が記載されたものかを推知することはできない。
 控訴人は校長の出身機関を4種類に分類しているが,実際の平成30年の一覧表は,項目Noごとに分けると5種類に分けられる。このことからも,上記の観点により,控訴人の推知とは違う方法により一覧表が作成されており,控訴人の推知は当たっていないとも考えられるのである。
 以上からすれば,一覧表に記載されたNoと校長の前職から,一覧表にどの推薦機関の候補者が記載されているか推知可能との控訴人の主張は,単なる推論にすぎない。平成30年,31年の一覧表のうち,各表の大まかな推薦機関を開示しても,被控訴人における人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ(法5条4項ヘ)がないとの控訴人の主張には,理由がない。

                                  以上
**********

■当会では、被控訴人の高専機構が出してきた控訴答弁書と補充準備書面に対して、反論があれば4月7日必着で提出し、東京高裁812号法廷で4月14日(水)午前10時から行われる第2回口頭弁論を迎えることになります。

 その後の本件推移については、追ってご報告します。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【高専過剰不開示体質是正訴訟・第二次訴訟控訴審】機構側控訴答弁書と 3/9高裁弁論(即日結審)の一部始終

2021-03-23 06:04:00 | 群馬高専アカハラ問題

東京地裁・東京高裁のある霞ヶ関の裁判所合同ビル。令和3年3月9日午後1時撮影。

■群馬高専アカハラ犯・雑賀洋平の沼津逃亡中、その異動期間がなぜか秘匿されて文書開示がなされてきた問題について、当会ではここに争点を絞った訴訟をあえて東京地裁に提起し、第二次訴訟と呼称することにしました。第二次訴訟において当会は、1年間をかけて被告高専機構のデタラメ極まる言い分をひとつひとつ丹念に潰していき、誰の目にも高専機構の敗色が濃厚になりつつありました。

 ところが、時間稼ぎしている間に雑賀本人の群馬帰還と担任就任強行を成功させたことで「目的達成」と考えたのか、高専機構は問題とされた処分ごと突如消滅させてハシゴを外す「訴訟おじゃん作戦」を発動してきました。

 この事態に、当会では緊急で訴えの変更を申し立てましたが、あろうことか清水知恵子裁判長はそれを問答無用で却下し、一方で被告高専機構の卑怯極まる作戦を素通しで認め、「請求に理由なし」として原告当会の全面敗訴判決を出してしまいました。オマケに、なぜか理由の記載も一切ないまま訴訟費用もすべて原告負担にされていました。

 当会としては、この稀代のトンデモ判決を断じて認容するわけにいかないとの結論に達し、2020年12月8日に東京高裁へと控訴を行い、次いで本年1月27日に控訴理由書を提出しました。あとは、3月9日に決まった控訴審の口頭弁論期日を控え、被控訴人となった高専機構からの控訴答弁書を待つ番になりました。

○2020年11月25日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html
○2021年2月1日:【高専過剰不開示体質是正訴訟】控訴理由書を提出し初回弁論日3/9決定の第二次訴訟控訴審…早速の暗雲?
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3275.html

■すると、口頭弁論の約2週間前となる2月24日、いつもの高専機構御用達弁護士からの2月22日付け控訴答弁書、および付属の証拠説明書・乙7号証が当会事務局に郵送で送られてきました。

 高専機構が頼りにする銀座の田中・木村法律事務所から送達されてきた控訴答弁書等一式の内容は以下のとおりです。

●第二次訴訟控訴審・高専機構の控訴答弁書等一式 ZIP ⇒ 20210224tir.zip

*****送付書兼受領書*****

              準備書面等の送付書

                           令和3年2月22日

 下記のとおり書類をご送付いたします。
 受領書欄に記名・押印のうえ,この書面を当職及び裁判所宛FAX等でお送り下さい。

●送付先:
 東京高等裁判所第2民事部 御中
 FAX 03-3580-3840
 控訴人  市民オンブズマン群馬  御中
 FAX 027-224-6624

●発信者:
 〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
     被控訴人訴訟代理人弁護士  木  村  美  隆
 TEL:03-3573-7041 FAX:03-3572-4559

●事件番号:令和2年(行コ)第259号
●当事者名:
 控訴人  市民オンブズマン群馬
 被控訴人 独立行政法人 国立高等専門学校機構
●次回期日:令和3年3月9日(火)午後2時

●文書名:答弁書、証拠説明書(R3.2.22付)、乙第7号証

●送信枚数: 枚
●相手方への送信の有無:有

=====受領書=====
                  受 領 書
東京高等裁判所第2民事部  御中     (FAX:03-3580-3840)
被控訴人訴訟代理人 弁護士 木村美隆 宛 (FAX:03-3572-4559)

 上記書類を受領しました。
  令和 年 月 日
     控訴人
 通信欄:
**********

*****答弁書*****
令和2年(行コ)第259号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件
 控訴人  市民オンブズマン群馬
 被控訴人 独立行政法人国立高等専門学校機構

              答 弁 書

                        令和3年2月22日

東京高等裁判所第2民事部  御中

              (送達場所)
                〒104-0061
                 東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
                  田中・木村法律事務所
                   電話 03(3573)7041番
                   FAX 03(3572)4559番

               被控訴人訴訟代理人弁護士  木 村 美 隆
                    同        藍 澤 幸 弘


                  記

             控訴の趣旨に対する答弁

1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。
 との判決を求める。


             控訴の理由に対する反論

1 原審における訴えの変更申立に関する控訴人の主張について
 控訴人は,原判決が控訴人(原告,以下原審における手続についても,単に「控訴人」と記載し,被控訴人についても同様とする)の訴えの変更申立を認めずに請求を却下したことについて,著しく信義則にもとるものであり,請求を却下したことは職権の濫用であると主張する。
 しかし,原審において被控訴人(被告)が第3準備書面を提出して,原審における控訴人の請求の趣旨に対応する形で不開示部分を開示したこと(乙4から6),これにより控訴人の請求に訴えの利益が失われたことは原判決(第3,2項)の認定するとおりであり,控訴人の訴えの変更申立の時点で,原審における訴訟の全部が裁判をするのに熟していたことは明らかである。
 被控訴人が,控訴人の原審における請求の趣旨に対応する形で不開示部分を開示した理由は,再開示決定(乙4) の時点で,開示請求の対象となる教員の教員交流制度における派遣期間が満了し,対象教員が派遣元校に復帰していることが明らかであった,という個別事情を踏まえ,原審における手続を早期に終了させるためである。これに対し,控訴人の訴えの変更申立が認められた場合には,被控訴人における教員交流制度の派遣期間が一般的に外部に公開されたものであり,開示情報に該当するかどうか,という争点について主張整理の手続が引き続き行われることとなる。控訴人による訴えの変更申立の時点で,原審における訴訟の全部が裁判をするのに熟していたことは上記のとおりであり,控訴人の訴えの変更申立を認めることにより訴訟手続が原審の手続が著しく遅滞することとなること(民事訴訟法143条1項但書)は明らかである。
 控訴人は,訴えの変更申立を認めないことが著しく信義則にもとり,訴えの変更を認めずに原告の請求を却下したことは職権濫用に当たると主張する。しかし,そもそも原審において被控訴人の再開示決定(乙4)より前の段階で,控訴人が訴えの変更申立をすることができなかったといった事情はない。控訴人の訴えの変更申立は,控訴人が控訴理由書で自ら述べるように,被控訴人の再開示決定により,訴訟提起時の請求の趣旨について訴えの利益が消滅したにもかかわらず,原審における「訴えの利益を確保するためやむをえず」(控訴理由書2頁)なされたものでしかない。このように,控訴人は訴えの利益を確保するために争点の範囲を拡大させようとしたのであり,この控訴人の訴えの変更申立を認めなかった原審の判断は,何ら信義則に反し,職権濫用にあたるものではない。
 控訴人の本件控訴に,理由がないことは明らかである。


2 訴訟費用に対する原判決の判断への不服申立について
 訴訟費用の負担の裁判に対しては,独立して上訴することができない(民事訴訟法282条)が,これは訴訟費用の裁判が本案の裁判に付随してなされるものであることに鑑み,この裁判と離れて費用の裁判のみの当否を上訴審で判断させることを回避したものである。
 そして,故意に本案について理由なき上訴をして費用の裁判のみに対する上訴の目的を遂げようとする脱法行為を阻止するため,たとえ本案の裁判とともに費用の裁判に対し上訴が申し立てられた場合でも,本案に対する上訴が理由なきものとされ,本案の裁判が変更されないようなときは,費用の裁判もまた変更すべきではなく,この点に関する不服の申立は許されない(以上につき,最判昭29.1.28民集8.1.308(乙8))。
 控訴人は,本件控訴において,原判決が訴訟費用を原告(控訴人)の負担とする旨判断したことについて,その判断理由や根拠法令を一切記載していないと主張する。
 しかし,控訴人の原判決の本案に対する控訴に理由のないことは,前記のとおりであり,原判決における費用の裁判も変更すべきではなく,この点に対する不服申立は許されない。
 控訴人による費用の裁判に対ずる不服申立が認められないことは,明らかである。
                          以上
**********

*****証拠説明書*****
令和2年(行コ)第259号
 控訴人  市民オンブズマン群馬
 被控訴人 独立行政法人国立高等専門学校機構

              証 拠 説 明 書

                         令和3年2月22日

東京高等裁判所第2民事部  御中

              被控訴人訴訟代理人弁護士  木 村 美 隆
                   同        藍 澤 幸 弘

                記

●号証:乙7
○標目:判例(最判昭29.1.28)
○原本・写:写し
○作成年月日:R3.2
○作成者:ウエストロージャパン株式会社
○立証趣旨:本案に対する上訴が理由なきものとされ,本案の裁判が変更されないときは,費用の裁判もまた変更すべきではなく,この点に関する不服の申立は許されないこと
**********

●乙7(最判昭29.1.28):上記掲載資料内のとおり。
またはhttps://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/344/057344_hanrei.pdf(裁判所公式データベース掲載の同一判例)


■このように、被控訴人となった高専機構は、地裁審で清水裁判長からプレゼントしてもらったトンデモ肩入れ判決を何としても既成事実とすべく、あらゆるムチャクチャを並べ立ててきました。

 高専機構が、「再開示決定」を軸とした訴訟オジャン作戦を発動したことによってはじめて、同様情報を不開示とする妥当性と、それまで不当に応訴を続けて当会に無駄な負担を掛け続けてきた責任を問う必要性が生じたことは、火を見るより明らかな事実です。

 それにも関わらず、高専機構は、「被控訴人の再開示決定より前の段階で,控訴人が訴えの変更申立をすることができなかったといった事情はない」などと呆れた事実無根の大ウソを付いてきました。

 しかも、原判決において訴訟費用までなぜか全額当会負担とされたことについては、その妥当性には一切踏み込まず、筋違いの最高裁判決まで持ち出して、「変更は許されない」の一点張りです。千歩譲っても、この最高裁判例は、本筋の事件及びそれに附随した訴訟費用負担の両方について、下級審でキチンと合理的に判断を行っていた場合、という大前提があるはずです。本件の地裁判決は、訴訟費用の負担について、理由も法的根拠も判断も一切示さなかった無法判決なのですから、この判例を適用することはできないはずです。

■また今回、高専機構側は、控訴答弁書の提出を控訴審口頭弁論の2週間前に持ってきました。

 ここで一言断っておくと、裁判における書面とりわけ答弁書の提出タイミングについては、統一された見解はなくそれぞれの事情や好みにより、1週間前ではなく2週間前に設定されてくることは特に珍しくありません。

 ただし、高専機構とその御用達である田中・木村法律事務所に話を限定すると、当会が闘ってきたこれまでの高専関連訴訟の数々において何回も提出されてきた「答弁書」は、おおむね初回口頭弁論の1週間前±4日程度のタイミングで来ています。すると本件控訴審においては、木村・藍澤弁護士らがあえて早めに答弁書提出日を設定してきた可能性がうかがえます。

 既報のとおり、トンデモ地裁判決を出した清水知恵子裁判長から審理を引き継いだ白石史子裁判長は、裁判所庁舎前で連日立て看板を立てられて抗議される程度には、行政寄り不当判決の常習犯のようです。現実に、裁判が始まる前から機構優遇の姿勢が見え隠れしてもいます。

 すると、木村・藍澤弁護士らの意図としては、「勝ち」を盤石にするために、答弁書を早期に出して白石裁判長らに方針を固めさせ、出来レースをより確実にしてしまおうという狙いがあることも考えられます。そうなると、東京高裁の口頭弁論では、白石裁判長が控訴人当会に反論の機会を与えず、問答無用で即日結審にかかろうとする展開も見え見えです。

 当会では、こうした想定のもと準備を整えて、3月9日の口頭弁論期日に臨むことにしました。

■口頭弁論当日、当会出廷者が高崎駅に着くと、西口のタクシー乗り場の脇にある郵便ポストに、長野高専宛と高専機構本部宛の法人文書開示請求書をそれぞれ普通郵便で投函しました。当会の担当者が全員多忙を極めており、郵便局に寄る暇すら確保できなかったために手っ取り早い方法を選択したものでしたが、長野高専宛の請求書をめぐって間もなくこのスキを容赦なく突かれ、余計に面倒臭い事態に発展する(https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3284.html)とは、この時の当会出廷者は知る由もありませんでした。さっそく、午前11時46分高崎発のはくたか558号に乗り、午後0時36分に東京駅に到着しました。




 そして、午後0時46分に丸の内線に乗り、同50分に霞ヶ関駅に到着しました。改札を出ると、地上の方から階段口を伝って、拡声器でガナリ立てる声が聞こえました。一体何事かと思い、地表に出てみると、裁判所の前に黒山の人だかりが見えました。



 近づいてみると、街宣車が歩道に横付けされており、付けられた垂れ幕には「六千人虐殺も嘘 徴用工強制連行も嘘」「追悼に名を借りた政治集会を許可するな」「我々の先祖へのヘイトスピーチやめろ」「真実の関東大震災 石原町犠牲者慰霊祭」「六千人の嘘に友好なし謝罪不要」と書かれていました。街宣車の脇に目を落とすと、「北朝鮮総連の奴隷狩りを許すな」「13歳で拉致された寺越武志」と書いたプラカードが掲げられており、そのプラカードの前あたりで、初老の男がスピーカーのマイクを手にガナリ立てていました。



 そのすぐ周りには、カウンター・デモとして「ヘイトスピーチやめなさい」「NO MORE HATE SPEECH」と書いたプラカードを掲げ抗議する集団も見えます。緊急事態宣言発令中とは到底思えない人混みの中には、警察官や裁判所の係官らしき者もおり、辺りは騒然とした雰囲気です。

 どうやら、北朝鮮の拉致事件に反対する集団と、それに抗議する人たちのようです。あとでネットで調べてみると、「そよ風」という新興右派団体が裁判所の前で示威活動をしていたことが判明しました。この日までに学校法人「東京朝鮮学園」が、運営する朝鮮大学校(東京都小平市)の周辺で同校などを非難する街宣活動をしていた男性の活動禁止を求めた仮処分手続きで、東京地裁立川支部(河田泰常裁判官)が、学校正門から半径500メートル以内での演説やシュプレヒコールの禁止を命じる決定を出したことに抗議して、この霞ヶ関の東京地裁前で抗議の集会を開いたものとみられます。



 北朝鮮による拉致問題は絶対に許してはならない国際犯罪であり、我が国の主権及び国民の生命と安全に関わる極めて重大な問題であり、日本国民として決して黙してはならないと思います。ただし、どう考えても、徴用工強制連行や関東大震災での朝鮮人虐殺などの歴史的事件やいわゆる朝鮮学校の存在が、拉致問題とその解決、拉致被害者の救済に関係するとは到底思えません。耳をつんざく大音量で、暴言に近い糾弾を繰り返せば、通行人から不快に思われこそすれ支持はされないでしょう。主張の内容や方法について、最低限の節度を保ちながらでないと、せっかくの思いも周囲に伝えづらくなります。

 この新興右翼団体が「そよ風」と名乗っている背景には、現在もなお北朝鮮にいるであろう拉致被害者に向け、毎日日本政府が放送しているラジオ放送「ふるさとの風」が関係しているのかもしれません。であれば、「そよ風」に相応しい音量と内容でのアジテーションが望まれます。
※北朝鮮による日本人拉致問題:北朝鮮向けラジオ放送「ふるさとの風」/日本語番組
https://www.rachi.go.jp/jp/shisei/radio/radio_j.html#R2


■5分程その騒動現場を眺めてから、裁判所庁舎に入り、さっそく開廷予定場所の東京高裁8階に上がりました。822号法廷前に辿り着くと、開廷表に確かに当会の事件(令和2年(行コ)第259号)の記載があります。

*****東京高裁822号法廷開廷表(3月9日)*****
令和3年3月9日 火曜日
●開始/終了/予定:11:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4269号、同第4415号/損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件
○当事者:選定当事者石黒公子外/島崎量、川内香(旧氏名)
○代理人:-
○担当:第2民事部BE係
    裁判長 白石史子
    裁判官 浅井憲
    裁判官 湯川克彦
    書記官 風間新

●開始/終了/予定:11:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和3年(ネ)第19号、同第560号/離婚等請求控訴事件、同附帯控訴事件
○当事者:ヤシロ・キャサリン/矢代晃乙
○代理人:-
○担当:第2民事部AB係
    裁判長 白石史子
    裁判官 湯川克彦
    裁判官 沢井久文
    書記官 岡松真理

●開始/終了/予定:14:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(行コ)第259号/法人文書不開示処分取消請求控訴事件
○当事者:市民オンブズマン群馬/独立行政法人国立高等専門学校機構
○代理人:―
○担当:第2民事部AB係
    裁判長 白石史子
    裁判官 湯川克彦
    裁判官 澤井久文
    書記官 風間新


●開始/終了/予定:14:30/15:30/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ネ)第4306号/貸金返還請求控訴事件
○当事者:長澤竜太/高橋竜
○代理人:―
○担当:第2民事部EA係
    裁判長 白石史子
    裁判官 浅井憲
    裁判官 澤井久文
    書記官 久次幸佳
**********

■その時点でまだ午後1時20分なので、16階にある東京高裁第2民事部窓口に行き、事前に用意していた手数料還付請求書を提出することにしました。本件控訴の際、いつも通り手数料1万9500円を支払い、窓口でも何事も無く受理されたのですが、「東京地裁での一審で「却下」(請求につき判断せず)の判決が言い渡されていたため、訴訟費用の規定にしたがって半額の9750円となるため、申し出れば半額を還付する」と第2民事部の風間書記官から指示が出されていたのです。同書記官からは「特に急ぎでもないので、次回、高裁に来る機会の提出で構わない」と言われており、この機会に以下の手数料還付申立書を提出することにしていました。

*****手数料還付申立書*****ZIP ⇒ iitirj.zip
令和2年(行コ)第259号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件
 控訴人   市民オンブズマン群馬
 被控訴人  独立行政法人国立高等専門学校機構

              手数料還付申立書
                          令和3年3月9日

東京高等裁判所第2民事部  御中
                       申立人 市民オンブズマン群馬
                       上記代表   小川 賢  印

 頭書事件について,下記のとおり手数料の還付を申し立てます。

                 記

1 納付した手数料  1万9500円
2 還付を求める金額 9750円
 理由:申立人(頭書事件の控訴人)は,控訴の際,民事訴訟費用等に関する法律の3ないし4条,および同法別表第1の1ないし2項の規定に基づき上記手数料を納付した。しかしその際,原審請求について判断をせず却下した原判決にかかる控訴であるにも関わらず,同表4項の規定が適用されていなかった。したがって,同法9条1項の規定に基づき,その差額の還付を求める。

                             以上
**********

 東京高裁第2民事部の窓口で、コロナ対策用のビニールカーテン越しに、中に向かって「手数料還付の件で」声を掛けました。すると、まず手前に居た女性職員がこちらを向きましたが、その奥で午後の裁判の準備中だった男性の書記官もワンテンポ遅れて気付き、席から立ちあがってこちらにやって来ました。「小川といいます。電話でいつもすいません。例の手数料還付の件で、この様式でよろしいのか、ちょっと見てもらえますか」と申立書を提示すると、風間書記官は「これでじゃあ、まずは受け付けて、何かあれば連絡を差し上げます」と言って受領してくれました。当方からは「分かりました。ではご連絡お待ちしています」と返しました。

 そのまま当会出廷者が「今日はよろしくお願いします」と言いつつ窓口を去ろうとすると、風間書記官が「822号法廷になりますので、10分くらい前に開けておきますので」と声を掛けてきたので、「分かりました。まだ時間があるので、ちょっと腹ごしらえをしてきます」と返事をしました。まだ昼食を摂っていなかったので、戦の前の腹ごしらえとして、地下1階の食堂で遅めの昼食をゆっくり摂りました。

■昼食のあと、8階の待合室で時間まで待機していました。定刻10分前ごろ、風間書記官の言ったとおり、傍聴席側のドアが開けられる音がしたので、7分前に法廷に入りました。出頭カードに署名して中に入り、控訴人席に座っていると、風間書記官が声を掛けてきました。控訴にあたり、原告適格の証明書を提出したのが昨年12月末だったところ、当会の(役員選出をする)総会は毎年1月に行われるため、その後代表者に変更がないかという点が気になっているようです。

風間書記官:あのう、この時点での確認だけなんですけど、通常であればこの定例会報告みたいなのがあるようですが。
当会出廷者:ああ、最新のものですか。
風間書記官:はい、最新の、今年もやりました?
当会出廷者:やりました。
風間書記官:やりました?……そうすると、また代表ということに決まったんですかね?
当会出廷者:(今年)1月の下旬に総会をして続投と決まりました。ではその議事録を(また提出してほしいということでしょうか)?
風間書記官:いや、大丈夫です。あくまでこの控訴時のものは、去年のもので、とりあえずは大丈夫です。今現在も小川さんということでよろしいですか?
当会出廷者:そうです。(今年)1月に同じように(総会で代表者の選出を)やりましたので。
風間書記官:引き続き継続ということで、分かりました。

 風間書記官が確認を終えて離れていったあと、またしばらく動きを待っていると、開廷寸前になって、被控訴人・高専機構の訴訟代理人である藍澤弁護士と、機構本部からと思われる一人の男性職員が、一緒に部屋に入ってきました。その随伴職員は眼鏡をかけ、灰色のジャケットを着て、緑黒2色の斜めストライプが入ったネクタイを締めていました。

 随伴の機構職員は傍聴席に座り、一方で藍澤弁護士はそのまま法廷の中に入ってきて、被控訴人席に着座しました。

■定刻の午後2時、本控訴審を担当する白石史子裁判長が、2名の男性裁判官を従えてつかつかと入廷してきました。一同一礼のあと書記官が、「令和2年(行コ)第259号、控訴人・市民オンブズマン群馬、被控訴人・独立行政法人国立高等専門学校機構」と事件番号と当事者名を読み上げました。

 冒頭、白石裁判長が「控訴人は、控訴状と控訴理由書を陳述されますね?」と控訴人である当会に確認を求めてきたので、「陳述します」と答えました。

 裁判長は「はい。被控訴人は、(控訴)答弁書を陳述されますね?」と今度は被控訴人高専機構の訴訟代理人に向かって確認を求めたところ、藍澤弁護士は「……」と無言で頷きました。

 裁判長は「双方とも、原判決に示すとおり、原審の口頭弁論を陳述することでよろしいですか?」と言い、双方「はい」と言いました。

 次いで裁判長は「証拠の関係ですが、甲号証が甲の19号証で写しということでよろしいでしょうか?」と控訴人に尋ねたので、控訴人は「はい、写しで提出します」と答えました。

 裁判長は「はい。乙号証が乙の7号証で写しということですね?」と今度は被控訴人に確認を求めると、藍澤弁護士は「はい」と言いました。

 裁判長はそれを聞くと「頂いたものは以上で間違いないでしょうか?」と双方に尋ねました。双方とも「はい」と答えました。

■そこまで確認を終えると、裁判長はさっそく「はい、それでは、これで現審を……」と審理終結宣言をしようとしました。

 控訴人当会の出廷者は間髪を入れずに「ちょっとすいません! 答弁書を読ませていただいたのですが、色々な、何といいますか、詭弁とか、ちょっと言葉を選ばずに言いますが、内容に瑕疵があるので、一度、再反論の形で、もう一度、弁論をお許しいただけますでしょうか?」と、待ったをかけました。

 裁判長は驚いた様子で「うーん。ちょっと今の話しだけだと、もう一度というのは難しいですが、まあ、あのう、どういうふうに反論され、また、こちら側でまた反論という状態になるので、(再度の弁論は)できませんが、あのう、出されたら、拝見して、口頭弁論は終わりますが、裁判所として、そのまま判断できるものがあれば判断します」と、即席で頭を動かしながらも、再度の口頭弁論は許さないという旨を早口で述べました。

 当会出廷者は、事前想定通りの展開になっているのを確信し、「わかりました。裁判長がそう仰るのであれば、それを尊重したいと思いますけれど」と返してみると、裁判長は「すぐに、であれば」と口にしました。その流れを逃さず、控訴人から「ええ、実は、あの……」と提案の姿勢を示すと、裁判長は「はい」とこちらに注目しました。

■そのタイミングで、当会出廷者は、「控訴人として、ここに(準備書面を)用意しましたので、ここでこれをこの場、今この場で陳述させていただきます。で、これを提出しますので、よろしくお願いします」と、「陳述させていただきます」を強調しながら発声しました。実は、白石裁判長が次回口頭弁論を許さなかった場合の備えとして、当日提出用の反論準備書面(内容後述)をあらかじめ用意しておいたのでした。

 すると白石裁判長は多少狼狽したかの様子で「ちょっと、はい、あのう、部数はあるんですか?」と質問してきたので、控訴人は「ええ、部数はございます。正副」と、カバンから準備書面を取り出しながら返事をしました。

 裁判長はそれを見て「じゃあ、(控訴人から準備書面を)受け取っていただけますか」と書記官に指示しました。控訴人当会は、「はい、お願いします。すいません、風間さん、お願いします」と書記官に声を掛けて、準備書面の正副2部を手渡しました。風間書記官は「ああ、わかりました」と言って、控訴人から準備書面を受け取ると、裁判長と被控訴人訴訟代理人の藍澤弁護士に配りました。控訴人はそのタイミングに合わせて「お忙しいでしょうから用意してきました」と声を掛けました。

 控訴人当会からの突然の準備書面提出に、白石裁判長は面食らった様子で、裁判長の右側(傍聴席から向かって左側)の陪席裁判官にも準備書面を見せて中身に目を通し始め、時々、何やらこそこそ話し合っていました。

 控訴人当会が準備書面を緊急提出してから1分40秒ほど経過したあたりで、白石裁判長が「合議をしますので、しばらく退席します」と言って立ち上がり、陪席裁判官2名と共に、裏手に去っていきました。

 当会としても、当日緊急提出の形になる準備書面が不受理にされる可能性も十分に覚悟しており、その場合は「次回口頭弁論開催を許さず、他方で準備書面も受理しないなら、控訴人の反論陳述機会を完全に奪っており、不当極まる」と断固として抗議する心積もりでした。審理の天秤が最初から圧倒的に機構寄りなのは見え見えですから、白石裁判長らの「心証」に精一杯配慮しても無駄なのは明らかであり、そうであれば一本でも多く釘を刺して抵抗すべきという判断です。白石裁判長らが奥でどのような結論に到達しているのか、緊張と沈黙の数分間が流れました。

■そして、別室でおよそ3分半協議したと思われるあたりで、白石裁判長が2名の陪席裁判官とともに法廷に戻ってきました。

 再び着席した裁判長は「今、拝見しました。まず、被控訴人の方でどういうふうに対応するつもりでございますかね。この主張にもし、反論したいと言えば、今すぐにはともかく、再度弁論を開かざるを得ないことになります」と被控訴人訴訟代理人の藍澤弁護士に向かって意見を求めました。どうやら一応、当会の準備書面は受理され、高専機構として再反論があるかを聞く段に進んでいることがわかりました。

 そこで、控訴人当会の出廷者からも、被控訴人訴訟代理人に向かって、「ええ、ぜひ、反論していただきたいと思います」と声を掛けました。

 裁判長が、「どういうふうに対応するつもりでございますかね」と、被控訴人訴訟代理人の藍澤弁護士に再度促すと、「はい、あの拝見しまして、中身についてよく精査はできていないのですが、(訴えの)変更の評価とかに関するものがほとんどだと思いますので、ちょっとこちらで補足したり反論したりするようなコメントはないかと思います」と、ちょっと不安な様子をにじませながら返事をしました。

 それを聞いた裁判長は「今日の準備書面を見て、(コメントはない)ということでよろしいですね? ということでいいですか? では、反論の陳述をしなくてよいということですね?」と、重ねて反論の意向がないことを被控訴人に確認しました。それに対して藍澤弁護士は「はい」と答えました。

 すると裁判長は「はい、それでは控訴人の方でこの準備書面を陳述ということでよろしいですね?」と控訴人に訊いてきたので、控訴人は「はい、今ここで陳述します」とはっきりと宣言しました。

 裁判長はすかさず、「その上で終結します。判決言渡期日は4月23日の午後1時20分です」と宣言しました。控訴人が「はい、ありがとうございます」と返すと、裁判長は頷き、陪席裁判官2名と共に、さっさと退廷していきました。

■というわけで、8分半ほどの第二次訴訟控訴審第1回弁論が終わって即日結審し、この事件の判決言渡し期日は4月23日13時20分と決まりました。

 口頭弁論の間じゅう、藍澤弁護士はいつもどおり終始無表情で、いっぽう傍聴席の高専機構職員はなにやらメモを取っていました。閉廷後、随伴の機構職員と藍澤弁護士は、何やら語り合いながら822号法廷を退出していきました。

 それを見届けた当会出廷者は、風間書記官に「では(手数料還付請求についての)ご連絡をお待ちしてます」と挨拶してから、822号法廷を退出しました。

 そして裁判所庁舎の外に出ると、1時間前にあれほど大騒ぎだった正門前の歩道からほとんど人影がなくなっており、ひっそりとしていました。



 しかし、裁判所の正面ゲートの歩道脇には、デカデカと、今さっきお目にかかった白石史子裁判長を糾弾する立て看板や、その他の裁判官の言い渡した判決の不当性を大書きで綴った抗議プラカードが並べられていました。





 裁判所脇の地下鉄霞ヶ関駅ホームに降り、丸の内線東京方面に午後2時18分乗車し、同23分に東京駅に着きました。



 そして、帰りは急ぐこともなかったため、久しぶりに普通列車の上野湘南ラインを利用してゆったりと高崎に戻ることにしました。東京駅7番ホームに行き、午後2時39分発の電車で高崎駅に向かいました。高崎駅に着いたのは午後4時41分でした。



■控訴人当会が、控訴答弁書への反論として3月9日の口頭弁論当日に緊急提出した準備書面の内容は以下のとおりです。

*****3/9緊急準備書面*****ZIP ⇒ 202103092itir.zip
令和2年(行コ)第259号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件
 控訴人   市民オンブズマン群馬
 被控訴人  独立行政法人国立高等専門学校機構

            準 備 書 面
                           令和3年3月9日

東京高等裁判所第2民事部  御中

                       控訴人 市民オンブズマン群馬
                       上記代表   小川 賢  印

 被控訴人の令和3年2月22日付け「答弁書」(以下「控訴答弁書」という。)における主張について,控訴人は以下のとおり反論する。なお,略称等は原判決において用いられたものを引き続き踏襲する。

               記

1 「控訴の理由に対する反論」1項に対する反論
(1)原判決における本件新請求1の却下について
 被控訴人は,控訴答弁書において,令和2年10月2日の本件再決定および原審における同日付けの第3準備書面の提出(以下「本件再決定等行為」という。)が,開示対象となる特定教員の派遣が満了しているという個別事情を踏まえ,原審における手続を早期に終了させるためであった旨主張する(2頁)。そして,(本件新請求1にかかる)訴えの変更を認めた場合,争点が拡大するために訴訟手続が著しく遅滞するおそれがあった旨を主張する。
 しかし第一に,原審において被控訴人が,本件再決定等行為に至った理由について説明した事実は一切無く(乙4ないし6号証,同準備書面,及び第3回口頭弁論調書から明らか),上記の理由付けは本件控訴を受けた控訴答弁書において初めてなされた後出しのものである。この事実関係に鑑みれば,控訴人が原審において本件訴えの変更申立てをした時点において,被控訴人における教員交流制度の予定派遣期間が(特に派遣終了後において)一般的に開示されるべきであるという認識のもとに,控訴人が本件再決定等行為に至った客観的な可能性もまた否定できないものであった。その場合において,本件不開示部分2と他教員不開示部分で差別的な取り扱いをする理由は存在しないのであり,本件新請求1を認めても新たな議論をほとんど要さないことは明らかである。しかるに原審は,民事訴訟法(以下「民訴法」という。)149条に基づいた釈明権行使などによって被控訴人(原審被告)の認識を確認することも十分に可能であったところ,これもせず原判決で本件新請求1にかかる本件訴えの変更申立てを却下するに至ったものであり,この却下がその時点において正当な理由を有さないものであったことは明らかである。
 また,本件再決定等行為が,「教員交流制度における派遣期間が満了し,対象教員が派遣元校に復帰していることが明らかであったという個別事情」を踏まえたものであったという被控訴人自らの説明(控訴答弁書2頁)に基づけば,同様に本件再決定等行為時点において派遣期間が満了している他教員不開示部分の記載教員についても,当然にこの「個別事情」の適用がなされるべきである(本件再決定は,あくまでも本件開示請求に対する独立の決定であって,訴外において法に基づき下されたものである。法人文書の不開示処分は特別な場合にのみ認められるのであって,その一部または全部を合理的な理由なく不開示とすることは許されない法の趣旨に基づけば,同様性質の情報について差別的取扱いをし,開示範囲を不当に狭めることについて,正当性が一切ないことは明らかである。特定事件における請求対象とされているかどうかは,法に基づく文書開示における情報の取扱いに差異を設けるべき理由にはならない)。
 他方において,他教員不開示部分に記載があり,かつ本件再決定等行為時点において派遣期間が満了し派遣元校に復帰している教員が現に存在していることは明らかであり(甲4および甲17),したがって他にも被控訴人のいう「個別事情」が適用されるべき対象が現に存在していることは明らかである。
 すると,本件新請求1を認めても,被控訴人の主張する「個別事情」をそのまま他教員不開示部分にも適用するかどうかというところが争点になることは明らかであり,特段にこれと性質を異にする新争点が生じることは考えにくく,被控訴人のいう「争点拡大」の主張は言いがかりに等しいものである。よって,これを理由に本件新請求1にかかる訴えの変更を認めないこととした原判決は,明らかに合理的な根拠を欠いた不当なものであるから,取り消されることが妥当である。

(2)原判決における本件新請求2の却下について
 被控訴人は,「しかし,そもそも原審において被控訴人の再開示決定(乙4)より前の段階で,控訴人が訴えの変更申立をすることができなかったといった事情はない」(控訴答弁書2頁)などと指摘するが,本件訴えの変更申立てにおける本件新請求1はともかくとして,少なくとも本件新請求2の必要性は被控訴人の本件再決定等行為によってはじめて生じたものであり,この指摘が全くあたらないことは明らかである。
 被控訴人の方こそ,「本件訴えの提起前あるいは提起直後の段階で,本件再決定をすることができなかったという事情はない」のであり,原審における本件訴えの提起から本件再決定に至るまでの約1年間にわたる全面的な応訴行為によって,控訴人が多大かつ不要な訴訟負担を強いられたことにつき,被控訴人に過失を認めない(あるいは過失の可能性を一切認めない)ということはできない。
 本件再決定により,被控訴人には新たにこの点での過失責任が問われるところ,この過失が,原審での訴訟過程そのものにつき密接に付随するものである事実に否定の余地はない(請求の基礎に変更を生じない)。すなわち,原審の審理を継続し,過失責任についての裁判を行うことは相当の合理性を有するものであったことは明らかである。また,現にそのような訴えの変更を認めている高裁判例(甲18)が存在する以上,本件新請求2にかかる本件訴えの変更申立てを却下するのであれば,そうした事例と扱いを異にするだけの合理的で十分な理由が示されなければならないはずである。
 ところが原判決は,被控訴人の過失責任を問いたければ,控訴人が新規に一から訴訟を提起せよと判示しているに等しいものである。そうすると,(新規に提起した訴訟丸一つ分の)多大な訴訟費用や出廷の負担を要することはもとより,一から経緯説明や主張,証拠調べを行う必要が生じるなど,控訴人に莫大な訴訟負担を不合理に強いるものである。一方,民訴法143条が,請求の基礎に変更がない場合に請求やその原因の変更を認めている大きな目的のひとつは,蓄積された審理過程を柔軟に使用し,もって各種資源を無駄にしないためである。すると原判決は,回避可能な資源の消耗を当事者らに強いるものである以上,民訴法143条の趣旨にもそぐわないものであり,不当であることは明らかである。
 また,そもそも,控訴人・被控訴人のみならず裁判所にとっても,既に議論と事実関係が蓄積されている原審を継続することで要される業務負担や時間が,新たな審理を一から行うために要されるそれより遥かに小さいことは明らかであり,当事者および裁判所のすべてに対して本来不必要な労力と時間の負担を強いる原判決は,公正かつ迅速な訴訟の実現を定める民訴法2条の規定に背くものでもある。
 したがって,本件新請求2にかかる本件訴えの変更申立てを却下した原判決は不当なものであり,取り消しに足る理由が存在する。

 ところで,控訴人が控訴答弁書の「控訴の理由に対する反論」1項において主張するのは,上記引用箇所のほか,「これに対し,控訴人の訴えの変更申立が認められた場合には,被控訴人における教員交流制度の派遣期間が一般的に外部に公開されたものであり,開示情報に該当するかどうか,という争点について主張整理の手続が引き続き行われることとなる。」(控訴答弁書2頁)といったものであり,本件訴えの変更申立てにおける本件新請求1のみを念頭に置いていることは明らかである。また,「控訴の理由に対する反論」1項において,本件新請求2を念頭に置いたとみられる反論主張は一切にわたって認められない。
 すると,原判決が本件新請求2を却下したことが不当であるという点につき,被控訴人において特に異論や争う意思がないことは明らかであり,よって当事者双方において争いがない。また,本件新請求2の却下が不当であるという点につき,被控訴人は原審・控訴審にわたって一切の主張をしていないから,本件新請求2の却下決定をした原判決を取り消さないことは,当事者が申し立てていない事項について,裁判所が独自に一方当事者に偏った判決をする行為として,民訴法246条の規定および民訴法2条の公正則に違反することになる以上,少なくともこの点につき原判決の取消が避けられないことは明らかである。

2 「控訴の理由に対する反論」2項に対する反論
 被控訴人は,原判決の本案に対する控訴に理由がなく,よって本案に対する判決に変更がなければ訴訟費用の負担の裁判における判決も変更されるべきでない旨主張し,乙7の最高裁判例(最判昭29.1.28)を援用する。
 しかしながら,乙7の最高裁判例は,下級審が,本案における当事者の勝訴・敗訴の割合やその他事情に応じ,その裁量の範疇において訴訟費用の負担の裁判を適法に行ったという大前提のもとで,本案判決と訴訟費用の負担の裁判を連動させたものであることは明らかである。
 他方において,原判決は,主文2項において訴訟費用をすべて控訴人に負担させるという判決をしておきながら,その判断(原判決第3)において,訴訟費用を控訴人負担とする判断,およびその理由と適用法令に関する言及は,一切にわたって全く認められない。すると原判決の主文2項が不適法(民訴法253条違反)であることが明らかなばかりか,そもそもいわゆる法的三段論法に基づく判断自体が全く存在していないから,訴訟費用の負担にかかる裁判に脱漏があるという事実について,異論の余地はない。
 すると,本件控訴が手続上適法になされている事実に鑑みれば,民訴法258条2項および4項の規定に基づき,控訴裁判所(東京高裁)が訴訟の総費用についてその負担の裁判をしなければならないことは明らかである。
 本件の訴訟費用負担については,本件訴えの利益を消滅させた本件再決定が,その提起から約1年も経ってから事後的に行われた事情に鑑みれば,民訴法61条を単純適用できないことは言うまでもない。控訴人が本件訴えを提起したことはその時点での権利の伸長に必要な行為であり,民訴法62条を適用して被控訴人の全額負担とすべきことは明らかである(甲19)。
(これは,原判決が本件訴えの変更申立てを却下して,請求に変更なきまま判決に至っているのだから,尚更である。)

                              以上
**********


■以上のとおり控訴審本体は、双方主張を出し切って高裁判決待ちになりました。一方で、過払い手数料の還付請求という細かいタスクがまだ残っていました。

 当会からの申立書を受領した風間書記官からの連絡を待っていると、さっそく東京高裁第2民事部から、口頭弁論当日である3月9日の日付の手数料還付決定正本とその送付書兼受領書が送達されてきました。

●3/9付手数料還付決定正本と送付書兼受領書 ZIP ⇒ 20210309t.zip

*****送付書兼受領書*****
令和2年(行コ)第259号
控訴人  市民オンブズマン群馬
被控訴人 慰謝料損害賠償請求控訴事件

                           令和3年3月9日

控訴人 市民オンブズマン群馬
    代表者代表 小川 賢 殿

               東京高等裁判所第2民事部
                   裁判所書記官 風 間  新
                   電話03-3581-2009(直通)
                   FAX03-3580-3840

              送 付 書

 頭書の事件について,下記の書類を送付します。
 受領後は,下部の受領書に記入・押印の上,本書面から切り離さずにファクシミリ等で当裁判所に提出してください。

                記
  手数料還付決定正本
                               以上

              受 領 書
 上記書面を受領しました。
   令和  年  月  日          印
**********

*****手数料還付決定*****
               決  定
                    申立人(控訴人) 市民オンブズマン群馬
                    同代表者代表   小川 賢

 申立人から,当庁令和2年(行コ)第259号法人文書不開示処分取消請求控訴事件について,民事訴訟費用等に関する法律第9条1項による手数料の還付を求める旨の申立てがあったので,申立てを理由あるものと認め,次のとおり決定する。

               主  文
   申立人に対し,9750円を還付する。
     令和3年3月9日
         東京高等裁判所第2民事部
            裁判長裁判官  白 石 史 子
               裁判官  湯 川 克 彦
               裁判官  澤 田 久 文

               これは正本である。
                令和3年3月9日
                東京高等裁判所第2民事部
                  裁判所書記官 風 間  新
**********

■風間書記官からの送付書兼受領書を見て、当会担当者は仰天してしまいました。独法高専機構の名前が書かれるべき被控訴人欄に、なぜか「慰謝料損害賠償請求控訴事件」などという全く無関係の事件名が記載されています。何をどう間違えたら、被控訴人欄に事件名を書き、しかもその事件名すら完全に無関係の代物などという、二重に大間違いを重ねる事態が起こるのでしょう。とても天下の東京高裁で働くプロの書記官が作った書類とは思えません。

 膨大な控訴案件を片端から流れ処理するために、処理速度重視・質は二の次の「ベルトコンベアー」と揶揄される高裁の裁判処理体質が、その書記官の身に染み付いてしまっていることを否が応でも痛感させられる出来事です。流石に唖然とした当会担当者は、この杜撰なノリで審理がなされていることを思ってやるせない気持ちになりつつ、当該ミスを訂正して受領書を送り返しました。

■こうして還付決定正本は受け取ったものの、実際に還付を請求して還付金を受け取る手続きがまだ控えていました。折よく、本件と並行して東京高裁に控訴した第一次訴訟控訴審の第1回口頭弁論期日が3月17日にもたれたため、口頭弁論終了後の同日午後3時前、同高裁第2民事部を再訪して具体的な手続きを教えてもらうことにしました。

 窓口で用事を告げると、女性書記官が席を立ってやってきました。「風間書記官は在席していますか」と尋ねると、その日はテレワークによる在宅勤務のため裁判所には不在とのこと。そのため、対応に出たその女性書記官に、手数料還付決定を受け取った後の還付請求手続きの具体的な方法がわからない旨を伝えると、還付請求の方法と請求書の参考例をプリントアウトして、当会担当者に渡してくれました。先日受け取った決定正本原本を添えて、振込先口座等を記入した手数料還付請求書を、高裁事務局会計課経理係に提出せよ、ということのようです。

●手数料還付請求の案内・手数料還付請求書様式(東京高裁) ZIP ⇒ 20210324ty.zip

 そして、還付請求書を3月22日に郵送提出し、一連の手続きはようやく終わりました。

■さて、第二次訴訟控訴審に関する今回の報告は以上となります。上記のとおり、さっそく高裁判決が言い渡されることに決定しています。

【第二次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第259号)判決言渡】
●日時:令和3年4月23日(金)13時20分~
●場所:東京高裁822号法廷(8階)


 当会の控訴に対し、白石裁判長らはどのような判断を下すのでしょうか。正門前の看板にも轟く悪名に違わず、問答無用のアクロバティック論理を駆使して当会の控訴を全面棄却しにかかるのでしょうか。それとも、公平公正に法と良心に照らすという裁判官の使命を思い出し、わずかなりとも当会の主張を認めて、控訴した甲斐アリという結果にしてくれるのでしょうか。

 判決の行方については、結果が判明次第、追ってご報告いたします。

【4月11日追記】
■4月9日、過払い手数料の還付金を当会指定口座に振り込んだ旨の通知が国から届きましたので、手数料の件については一段落が付いたことを参考までにご報告します。

●還付手数料振込通知 ZIP ⇒ 20210409um.zip

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【群馬高専】チグハグ新型コロナ対応に内部関係者から不安の声続く…当会の問合せもヌカに釘

2021-03-20 23:13:00 | 群馬高専アカハラ問題
■一昨年の年末に中国武漢から密かに世界に向けて放たれた新型コロナ禍の勃発から1年以上、全世界が死に物狂いで対策に取り組みながらも、未だに完全収束の旗は遠く先の果てに立っています。人類の科学力を惜しみなく投入した各社のCOVID-19ワクチンも、先行接種が徐々に始まりつつありますが、膨大な人口に行き渡らせるには年単位の所要時間が見込まれています。

 天皇の政治利用を企んだ習近平の国賓訪日や中国からの観光客のインバウンド需要に目がくらみ、水際対策のタイミングと手法を誤った我が国では、今年(2021年)に入って早々、菅首相が1月8日からの第二次緊急事態宣言を発令しました。首都圏では、二度の延長を経て3月21日まで同宣言が続けられ、相当な効果はありましたが、もはや一定ライン以下には新規感染者数が減らない「下げ止まり」の状況を呈しています。今後も、人命(医療)と経済(国民生活)の天秤を慎重に見極めながら、「Withコロナ」の時代を生きていくことになります。

 昨年の新型コロナ禍勃発直後(2020年春)の群馬高専では、入学式をめぐる「昼令暮改」など、あまりに杜撰な対応の数々が繰り広げられました。「コロナはただの風邪」と言い張る最高幹部の存在が裏にあったという話もあります。群馬高専のこうした杜撰コロナ対応について、当会は昨年9月の公開質問状において質問項目に盛り込みましたが、同校の回答は話のすり替えに終始し、相変わらず誠意も責任感も感じられない代物でした。

○2020年4月13日:群馬高専の杜撰なコロナ対応にみる腐敗体質のツケ…「学生ファースト」になれぬなら教育機関を名乗るな!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3150.html
○2020年10月1日:【群馬高専】アカハラ犯雑賀の担任就任強行や杜撰コロナ対応への薄ペラ回答にみる相変わらずの腐敗体質
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3215.html

 とはいえその後、勃発時の混乱はとっくに収まって「Withコロナ」も本格化し、さすがの群馬高専でも無難なコロナ対応くらいは行えるようになっただろうと考えました。そう思いきや、2021年に入ってもなお、同校の新型コロナ対応に関して、内部関係者からの不安と不満の声が当会に寄せられ続けています。一体どういうことなのでしょう。


年度末休業中の群馬高専の正門。3月20日午後1時過ぎ撮影。5年生の卒業式は前日の3月19日(金)午前9時から第一体育館でリハーサルの後、9時40分から卒業生代表者として、謝辞朗読者、記念品贈呈者、証書授与代表学生(各学科より)5名の計7名のみ出席で、教室で行われた。


春分の日だが、まだ葉を落としたままのイチョウ並木。


玄関の外ガラス戸に貼られているコロナ対策の張り紙。

玄関の内側ドア前にある手指消毒用スプレー。

 昨年の群馬高専では、4月初頭の昼令暮改で入学式・授業開始・開寮を全て取り止めた後、5月7日頃から泥縄式で遠隔授業を開始したようです。緊急事態宣言が解除されても学校再開には慎重で、1か月以上が経った6月29日にようやく対面授業を再開し、同時に学生寮も開けられたようです。

●参考:群馬高専HP『【重要】登校禁止期間の延長について(令和2年4月30日現在)』
https://www.gunma-ct.ac.jp/cms/oshirase/toukoukinshikikanencho.htm
●参考:群馬高専HP『通常授業再開について』(R2.6.22)
https://www.gunma-ct.ac.jp/cms/oshirase/20200622kyoumu.htm

 そして、登校再開に先行する同年6月17日には、「新型コロナウィルス感染症に対する学校運営の基本方針」を策定・公表しているようです。内容を筆者が確認したところ、「方針」自体は極めて妥当なものですが、概して理念や大まかな方針にとどまっており、具体的にどのような状況になったらどう対応するのか、という点への言及がないことに気が付きました。そうした具体基準については別のページで公表しているのかと思いきや、まったく見当たりません。

●参考:群馬高専HP『【2020/06/17】新型コロナウィルス感染症に対する学校運営の基本方針』
https://www.gunma-ct.ac.jp/cms/oshirase/13055.htm

 群馬高専内部学生の話によれば、昨年10月の最終週には、状況悪化に備えた訓練ということで、1週間だけ遠隔授業が行われたようです。そこには、「教職員や学生に多少負担をかけてでも、状況悪化に柔軟に対応できるよう備えておく」という学校の意気込みがあったはずです。

■そして、2021年が明けてさっそくの1月8日、とうとう群馬高専学生の新型コロナウイルス感染が判明してしまいました。

●参考:群馬高専HP『【2021/01/09】本校における新型コロナウイルス感染者の発生について』
https://www.gunma-ct.ac.jp/cms/oshirase/87594.htm
●参考:群馬高専HP『【2021/01/12】本校における新型コロナウイルス感染者の発生に伴う対応及び遠隔授業等の実施について』
https://www.gunma-ct.ac.jp/cms/oshirase/87595.htm
●参考:群馬高専HP『【2021/01/14】本校における新型コロナウイルス感染者の発生に伴う状況について(続報)』
https://www.gunma-ct.ac.jp/cms/oshirase/859642.htm

 これとほぼ同時に、1月8日から首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)への緊急事態宣言が発令され、間もない同月13日栃木県も同宣言の対象となりました。群馬県は、ダイレクトな宣言対象地域にこそされなかったものの、宣言発令区域に挟まれる形になってしまいました。

 ところが群馬高専は、年明け直後に風雲急を告げる新型コロナ情勢に際し、一部授業を遠隔にし、併せて「不安な学生は勝手に休んでいい」と告げるだけでお茶を濁してしまったようです。しかも、遠隔にされたという一部授業も、実態は「ごく一部」に過ぎず、大多数の学生にとっては事実上の通常態勢続行であったとのこと。任意で授業を休んだ場合についても、公欠扱いにするというだけで、何かしらの代替サポートがあるわけではなく、「自習に努めよ」というだけのようです。要するに、任意で休むことでの学習面の不利益は「自己責任」扱いにされているようです。

 そうなると、「不安な学生の意思も尊重」とは建前だけで、実態は選択にハードルを設けているのと変わりません。また、家庭に高齢者や基礎疾患を持つ家族がいるなどの切実な事情がある学生も少なくないはずであり、十把一絡げに「不安」などと矮小化できるものではないはずです。それに、「全学遠隔授業訓練」の経緯からして、昨年10月時点で全学レベルでの対策強化の必要性は十分に認識していたことは明らかなのですから、最低でもいわゆる「ハイブリッド型」(対面授業を遠隔配信)などの対策を前々から準備することも可能だったはずです。

 さらに言えば、一部を遠隔授業にしても、1日のうちで対面授業が1つでもあれば、結局その日は登校せざるを得なくなってしまいます。しかもこの場合、移動時間の問題から、結局は学校のどこかの自習スペースに集まって「遠隔授業」を受けることになる可能性も高く、意味がありません。

■このように、年明け以降に群馬高専が繰り出した一貫しない対応・穴だらけ対策の数々に対し、同校関係者らから当会に不安・不満の声が続々寄せられたというわけです。学生の声の中には、「この状況で遠隔授業にしないのなら、10月にわざわざ遠隔訓練に付き合わされた意味は何だったのか」といったものもありました。

 当会としても、不満と苦情の声が高まっている状況に鑑みて、新型コロナ対応に関する見解をあらためて同校に問わなければならないと判断しました。よって、3月6日、以下の問い合わせメールを群馬高専尾内総務課長宛てに送信しました。

*****3/6群馬高専宛質問メール*****
From: masaru ogawa
To: 群馬高専総務課 尾内
日付: 2021/03/06 8:38
件名: 貴学の新型コロナ対応に関する問合せ

群馬高専
総務課長
尾内様

 平素より格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。

 さて、今般の新型コロナ禍に際して、年明け間もなく発令されている二度目の緊急事態宣言も首都圏では長期化を重ねております。
 幸い、群馬県では同宣言を発令するほどの状況にはこれまで至っておりませんが、群馬県を挟む形で埼玉県や栃木県が宣言対象地域とされ、とくに埼玉県は3月5日現在においても発令が続いております。
 このように、関東圏に所在する貴学において、事態推移は予断を許さないものであることはご承知のことと拝察いたします。

 こうした時局の中、貴学の近ごろの新型コロナ対応について、いくつか気になる点がございましたので、以下のとおりメールにて質問をさせていただきます。

【質問1:登校停止(及び再開)・遠隔授業切替の客観的基準について】
 貴学においては、昨年6月17日付けで「新型コロナウィルス感染症に対する学校運営の基本方針」(リスク管理室名義)を公表されております。
https://www.gunma-ct.ac.jp/cms/oshirase/13055.htm
 当該基本方針の理念については極めて妥当な内容であり、弊方より意見を差し挟む余地はございませんが、同方針において、感染リスクが高まった場合の登校停止・遠隔講義切替の措置を行うことが示唆されているにも関わらず、その具体的な基準がまったく示されていないことが気にかかりました。
 なお、貴学がHPにて公表されている「新型コロナウイルス感染症に関連するお知らせ」を弊方にて確認しましたが、そうした基準が公表されている事実は認められません。
 よって、貴学において、感染拡大防止のための登校停止及び遠隔講義切替の措置を取る場合、どういった具体的かつ客観的な判断基準(特に感染状況等の数値)を設けているのか、ご教示をお願いいたします。また同様に、登校・対面授業の再開、及び閉寮・開寮といった措置についても、具体的にどのような客観基準を設定しているのかご教示をお願いいたします。
 あわせて、貴学において措置を行う判断基準を示した資料等を作成していれば、メール添付にてご提供いただければ幸いです(新型コロナ対応の客観的な基準を示した資料は、一般的に、特段の機密性を要するものではないと思料いたします)。


【質問2:今年1月以降、貴学が全面遠隔化に踏み切っていない理由について】
 貴学では今年1月9日に学生の新型コロナウイルス感染が確認されました。更にそれとほぼ同時に、埼玉県を含む首都圏と栃木県では緊急事態宣言が発令され、群馬県は緊急事態宣言対象地域に挟まれる形になりました。
 こうした状況に際して、貴学では、学生の自主的な欠席については公欠を認めて出席数の面での不利益が出ないようにしたり、教員の自主判断で一部授業を遠隔授業にするといった対応を取っています。こうした対応について、柔軟性を見せようと努力されていることは率直に評価いたします。
 しかしながら、いくら公欠にするといっても、欠席によってそもそも授業を受けられなければ、学習面での不利益が生じてしまうという根本的な問題は避けられません。しかも、自主判断による欠席を認めるといった対応は、聞こえこそいいかもしれませんが、授業を受けられないことによる学習の遅れといった不利益をすべて「自己責任」に押し付けてしまいかねない問題があります。学生のご家庭に高齢者や基礎疾患を持つ方がいるなど、ほぼやむを得ない事情で「欠席」を選択されるケースも多いことを考慮すると、この問題は重く捉えるべきではないかと感じます。
 さらに、教員の自主判断で一部遠隔授業を行っても、対面授業と混在していては、結局学生は登校せざるをえません。しかも、移動時間の問題から、せっかくの遠隔授業も学校で受けるしかない状況が生じてくる可能性も指摘されます。
 また、貴学では、昨年(2020年)の10月最終週に、訓練的な意味合いで1週間の遠隔講義実施を行ったようですが、教員や学生に多大な負担を強いてまでも遠隔講義の試行をおこなったのは、まさに有事の際の円滑な移行に備えるためであり、決して思い付きで振り回したわけではなかったはずです。
 さて、学生から感染者が出たり、群馬県が緊急事態宣言対象地域に挟まれるといった1月中旬の緊迫した状況に鑑みて、貴学の学生や保護者の方々からは「なぜ遠隔授業に全面移行しないのか非常に不可解」というご意見が弊会に次々寄せられておりました。また貴学の対応に付随する上記問題点へのご指摘のほか、「この状況で遠隔授業に移行しないのなら、10月にわざわざ遠隔授業訓練をさせられたのは何だったのか」というご意見もございました。
 そのため、今年1月以降、貴学が全面遠隔措置への移行に踏み切らなかった理由について、明瞭な説明をいただきたく存じております。あわせて、貴学の対応に付随する上記のような問題点について貴学がどのようにお考えになっており、またそうした問題点を塞げるような対処に着手されているかどうかについても回答をいただきたく存じます。


 公務ご多用のところ恐縮ながら、以上質問2点につきまして、迅速かつ詳細なご回答をよろしくお願いいたします。可能でございましたら、令和3年3月19日(金)までにご回答を賜れれば幸いです。また、何らかの事情により回答が不能あるいは大幅に遅延する場合、その旨と詳細な理由を前もってお伝えいただきたく存じます。


市民オンブズマン群馬
代表 小川賢
**********

■以上のとおり、「①群馬高専で設定している登校停止や再開等の具体客観の基準」、「②2021年1月の状況悪化に際して全面遠隔措置に踏み切らなかった理由および暫定対応の問題点にかかる見解」、の2点について、2週間という十分な回答期限を設けたうえで正面から問い合わせました。

 2週間が過ぎ、当会が設定した回答期限である3月19日を迎えました。正午になっても回答メールは寄せられていなかったため、当日中に回答する意向はあるのか、13時過ぎに群馬高専総務課に電話して確認することにしました。

電話をかけると、村田課長補佐が出てきました。「尾内課長は在席中か」と訊いたところ、「席を外している」とのこと。なので、村田課長補佐に対し、「貴学の新型コロナ対応に関する見解を問い合わせているメールについて、今日中に回答をもらえそうか」と確認を求めたところ、「尾内課長が返事をすると言っていたので、今日中に返事をすると思う」と返ってきました。

 そのまま返事を待っていると、同日15時半ごろ、尾内課長から以下の回答メールが届きました。

*****3/19群馬高専回答メール*****
From: 群馬高専総務課 尾内
Date: 2021年3月19日(金) 15:29
Subject: RE: 貴学の新型コロナ対応に関する問合せ
To: masaru ogawa
Cc: 村田課長補佐, 総務課

市民オンブズマン群馬
  代表 小川 賢 様

 お世話になっております。群馬高専の尾内です。
 3月6日付けメールにてご照会をいただきました2件のご質問に対し,とりまとめて以下のとおりご回答申し上げます。

【ご質問1:登校停止(及び再開)・遠隔授業切替の客観的基準について】
【ご質問2:今年1月以降、貴学が全面遠隔化に踏み切っていない理由について】

【回答】
 本校では,関係機関(文科省,高専機構,群馬県等)からの各ガイドライン等を基に,そして群馬県の警戒度に応じた行動基準や県内の高等学校の対応を考慮しつつ,状況に応じて登校停止や遠隔授業実施の判断を行っております。
また,本校における感染者発生時は保健所と相談の上,対応の判断を慎重に行っております。
 このように地域や本校における感染状況により,上記ガイドライン等に沿って事案に応じて総合的に判断を行っておりますので,明文化した基準はございません。
 ご理解のほどよろしくお願いいたします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
独立行政法人国立高等専門学校機構
群馬工業高等専門学校
総務課長 尾内 仁志

〒371-8530 群馬県前橋市鳥羽町580
Tel:Fax:E-mail:(省略)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
**********

■読者の皆様、特に群馬高専関係者の皆様は、どう思われましたでしょうか。群馬高専の情報隠蔽・不誠実回答癖にはもはや今更驚きもありませんが、新型コロナ禍をもってしてもなお叩き直されなかったことに溜息しか出ません。

 まず、群馬高専では、感染状況等に応じた登校停止・再開等の措置について、「明文化した基準はない」と言ってきました。「総合的な判断」という極めて抽象的な言葉で誤魔化してきていますが、要するに山崎校長ら幹部陣の恣意的な気まぐれでしかありません。これでは、登校停止措置をするにせよしないにせよ、その極めて恣意的で理由不透明な判断に、内部者から不安や不満が噴出して当然です。

 なお、お隣の長野高専でさえ、厳格に守られてはいないせよ、対コロナ措置に関する客観的な基準(学内感染者や県の感染状況等)を設け、しっかりと内部に示しています。

○2020年7月26日:【出張!オンブズマン】長野高専総務課長コロナ規則破り疑惑に同校と機構監査室が横並びで隠蔽グル回答
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3183.html

■さらに、「今年1月以降に遠隔移行に踏み切らなかった理由はなにか」という肝心の質問に対しては、まったく何も答えられていません。「実際に行われた判断の理由」を聞いているにも関わらず、「状況に応じて判断を行っております」「対応の判断を慎重に行っております」「総合的に判断を行っております」の三連発で終わりの禅問答ぶりです。

 J科アカハラ事件や寮生連続自殺事件のような本物の闇と異なり、新型コロナ対応関連の話は学校に都合の悪い情報ではないのですから、「このような理由から、このように判断いたしました」と正々堂々答えればそれで済むはずです。それすらも一切答えたがらない群馬高専の情報隠し体質の異常さは、コロナ禍でも遺憾なく際立っています。

 しかも、上記に挙げたような学校の対応の問題点や、実際に学校内部関係者から不満・不安の声が寄せられているという現実については、完璧にスルーされています。

■このように、群馬高専は相変わらず、トピックが何であっても、答えるべきことに何も答えようとしません。「誠実に答えたら死んでしまう病気」にでも罹っているのでしょう。

 ところで、学校に求められるコロナ対応として、完全オンラインの遠隔授業が絶対の正解かといえば、もちろん違います。通信制でなければ、実際に学校に来て、その身で様々に得難い体験を積み重ねていくことを前提に進学しているわけですから、安直なオンライン化はその前提から奪ってしまいます。昨年度、全国の学生の方々から理不尽にも奪われてしまったものは、二度とない若き日々にあるべきだった日常や機会の数々は、決して「仕方ない」で済ませられるような代物ではないはずです。

 だからこそ、対面授業か・遠隔授業か、という究極の二択は、コロナ禍勃発以後、全国の学校運営者たちの頭を悩ませ続ける問題として横たわっているわけです。そのため、「遠隔授業に踏み切らない」という判断も、ひとつの決断の形として尊重されるべきであるとは考えております。

■とはいえ、スタンスはあくまで相対的なもので正解はないにせよ、絶対的な過ちというものは存在します。

 ひとつは、「姿勢が一貫しない」ということであり、より大きなもうひとつは、「自らの判断理由について一切説明をしようとしない」ということです。理由を一切説明できない判断など、間違いなくロクなものではありません。

 当会では、相変わらず内部関係者置いてけぼりの杜撰コロナ対応を繰り出しては人を小馬鹿にし続けている群馬高専について、動向を注視していくことにしています。

■なお、3月19日に群馬高専に電話を掛けた際、J科アカハラ犯の雑賀洋平について、「来年度も引き続き4J担任になる予定か」と尋ねたところ、応対した村田課長補佐いわく「まだ資料が手元にない」とのこと。当会担当者から「(尾内)課長なら知っているか」と突っ込むと、「課長も資料を持っていない」とのこと。(課長は席を空けているというのに、なぜ即答できるのか?)

 「では、4月1日にならないとわからないというわけか」と訊くと、「その日ならわかると思う」と返ってきました。『資料』が手元にないも何も、どのみち課長(補佐)権限で確認すればすぐに判明するはずなのに、このスットボケぶりです。

 関係者の皆様方には、群馬高専という学校組織の情けなさについて、しっかりと目に焼き付けていただきたいと存じます。

【3/22追記】
■本記事掲載後に情報提供と示唆があり、群馬高専電子情報工学科の令和3年度(2021年度)版シラバスを確認したところ、同学科4年次学生実験の筆頭が「荒川達也」准教授になっているとのこと。

 通例、「ある学年の学生実験における筆頭担当教員=当該学年クラスの主担任」であるらしく、さらに通例、3年次担任はそのまま5年次まで持ち上がり、卒業まで務めるとのこと。そうしたことを考え合わせると、さしもの群馬高専も雑賀洋平を担任から外さざるを得なくなり、悪夢は1年限りで終わったという可能性も急浮上してきました。


令和3年度・4J「電子情報工学実験実習」シラバス

 念のために他の学年のシラバスも調べてみると、学生実験の筆頭担当について、2年次は「築地伸和」助教、3年次は「大墳聡」教授、5年次は「川本真一」准教授となっており、雑賀洋平の文字は見当たりません。なお参考までに、昨年3月に雑賀洋平の担任着任予定が発覚し、騒然とした際の様子は以下の記事にて報告しております。

○2020年3月4日:【仰天速報】反省なき凶悪アカハラ犯・雑賀洋平が群馬高専に堂々凱旋+J科3年クラス正担任着任か!?
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3127.html

■以上のとおり、恥知らずな群馬高専も凶悪アカハラ犯を担任に就け続けることを断念したかに見えますが、油断は一切禁物です。

 去年の「反省」から、事前の発覚と反発を避けるため、わざとシラバスに「雑賀洋平」の名前を載せないようにしているだけの可能性も十分高いからです。さらには、仮に来年度、担任を外されていたとしても、それ以降でホトボリが冷めればまた再度、性懲りもなく担任就任を強行してくることも十分に想定されます。

 したがって、年度明け後に群馬高専が明かす雑賀の処遇如何が注目されます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【高専過剰不開示体質是正訴訟】控訴理由書を提出し初回弁論日3/9決定の第二次訴訟控訴審…早速の暗雲?

2021-02-01 22:00:00 | 群馬高専アカハラ問題
■群馬高専アカハラ犯の雑賀洋平が沼津に「人事交流」で異動していた最中、この「異動」に関する経緯等情報の開示を求めたところ、沼津異動期間がなぜか黒塗りとされて文書が出てきました。裏には、高専機構の情報不開示アドバイザーであるいつもの銀座の弁護士の影がありました。とにかく執拗に延々と理不尽な黒塗りで嫌がらせしてくることに辟易としたため、高専過剰不開示体質是正訴訟の一環として、ここに争点を絞った訴訟を提起し、第二次訴訟としていました。

 第二次訴訟において当会は、1年間をかけて被告高専機構のデタラメ極まる言い分をひとつひとつ丹念に潰していき、誰の目にも高専機構の敗色が濃厚になりつつありました。ところが高専機構は突如として、問題となっていた処分ごと消滅させる「訴訟おじゃん作戦」を発動してきました。この状況に、当会では緊急で訴えの変更を申し立てましたが、あろうことか清水知恵子裁判長はそれを問答無用で却下し、一方で被告高専機構の卑怯極まる作戦を丸々認め、「請求に理由なし」として原告当会の全面敗訴判決を出してしまいました。オマケに、なぜか理由の記載も一切ないまま訴訟費用もすべて原告負担にされていました。

 当会としては、この稀代のトンデモ判決を断じて認容するわけにいかないとの結論に達し、2020年12月8日に控訴を行っていました。

○2020年11月25日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html

■第二次訴訟の控訴にあたり、ひとつ確認しておきたいことがありました。清水裁判長があまりにも口頭弁論の流れを無視した強引な判決をしたので、口頭弁論の記録がキッチリ取られているのかという所から疑問が生じたのです。なお、民事訴訟法第160条3項によると、「口頭弁論の方式に関する規定の遵守は、調書によってのみ証明することができる」とされています。

 したがって、第二次訴訟に関する流れがどう正式に記録されているのか、今一度確認してみることにしました。そこで控訴状提出当日となる12月8日の朝、民事第51部の戸谷書記官に電話を入れ、地裁判決に至るまでの口頭弁論調書等訴訟記録一式の閲覧と謄写を申し入れました。

 当会担当者が「本日午後4時半ごろに伺いたい」と申し入れると、「訴訟記録謄写とあわせて控訴状提出いただくとなると、高裁への記録等の準備で、謄写しにくい状況が予想されます」とやや難色を示す反応が返されました。「それでは謄写のほうは日を改めてということになりますか?」と質問したところ、「前橋から何度も来られるのは大変でしょうから、何とかしますが、できればもう少し早く来ていただければありがたい」とのこと。「それでは午後3時ごろお伺いします」と言うと、「分かりました。調書一式を準備しておきます」との返事をもらいました。

 というわけで同日、控訴状を14階民事事件係(受付)で提出した後、少し遅れた午後3時半ごろに、10階の民事51部を訪れました。ところが戸谷書記官は外出中ということで不在でした。そこで居合わせた男性書記官に、閲覧謄写資料の件を話し、準備してもらったはずの資料を探してもらいましたが、見つかりません。結局、閲覧謄写を後日あらためて行うことにしてその日は裁判所合同庁舎を後にしました。

■リベンジとして、12月14日午後4時からの閲覧謄写を戸谷書記官に予約し直し、裁判所合同庁舎14階の東京地裁民事訟廷事務室事件係を訪れました。いつも控訴や上告手続きでお世話になっている窓口です。窓口に声をかけると、男性職員が中から出てきて、「閲覧謄写室はあちらになります」と廊下の先を指さして案内してくれました。

 さっそくその方向に歩いていくと、廊下の天井に吊ってある案内板に「民事訟廷事務室記録閲覧謄写係」とありました。右に入ると同係の受付が見えました。さっそく話しかけると、窓口の男性の年配職員は「そしたらこれを書いてください」と言い、案内の書かれた紙とともに、脇にある用紙箱に入っている申請書を指し示しました。
※参考情報:申請案内
https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/file/20171117-eturan-tousya.pdf

 申請用紙を一枚取り、窓口脇にある机の上で記入しました。その間にも新たな申請者が次々に窓口へと訪れて来ました。申請用紙への記入作業は意外に手間取り、5分以上かかりました。記入中も、「5時までに出してもらわないと間に合わないですよ」「あらかじめ担当部署に確認してからお越しください」などという声が横から聞こえてきます。ようやく記入を終えて、窓口にある「申請書提出用の箱」に放り込んだ後、傍らで3分ほど待機していると、部屋の奥にある謄写係のブースのほうから「小川さーん」と呼ぶ声がしました。その声に呼ばれて、今度は謄写係の担当窓口に行きました。担当職員曰く、申請書の事件番号に一部記載ミスがあるとのことなので、すぐ訂正しました。

■すると、同職員がそのまま内線電話で民事51部の戸谷書記官に電話を掛け「閲覧室ですが、戸谷さんご担当の事件なんですが、令和元年(行ウ)549。この件で、市民オンブズマン群馬小川さんの方から準備書面の部分等の閲覧謄写で来られてます」と伝達しました。

 そして確認後、「ここは(部分ではなく)記録全部というふうに書いてもらったほうがいい、と(戸谷さんが)言うので、そのように訂正してもらった方が早い」と言ってきました。つまり、弁論調書等裁判記録は一式、ファイルに綴られており、部分的に閲覧謄写をするよりも記録全部のほうが、いちいち当該裁判記録を選別する必要がなく、手間が省けるという趣旨のようです。特に異議もないので、そのように書き直して訂正しました。

 また、さらなる指摘として、「この事件は市民オンブズマン群馬として扱われたため、代表者の名前だけでなく、きちんと団体名を記録すること」や「被告の名称も、国立高等専門学校機構だけでなく、頭に独立行政法人を付けること」など、当事者の名称を正確に記載するようにアドバイスがありました。

■続いて、「本人確認をさせていただきます」というので、運転免許証を提示しました。すると、「この住所とオンブズマンの住所が違うのですが」と指摘が来たので、「私の自宅がこれ(運転免許証)で、オンブズマンの事務局がこちら(オンブズマンの住所)となります」と説明をしました。同職員は「どうしようかな。今、書記官が記録の綴りをもってこちらに来るので、そのとき本人確認で住所についても確認させていただきます」とのこと。
(※このような場合に、オンブズマンとしての所在地を対外的に証明するためにも、会則に「事務局を前橋市の現住所に置く」と明記すべきだったと痛感。2021年明けのオンブズ総会で会則の修正を行いました)

 しかし少し待っても姿が現れず、担当職員が再度電話を掛けようと受話器を手に取ったちょうどそのとき、戸谷書記官が記録一式を綴ったファイルを持参してやって来ました。そして担当者の住所と当会の事務局の住所の不整合について、あらためて同書記官から説明していただきました。一審での訴訟手続きにおいて、原告市民オンブズマン群馬としての会則や総会議事録を提出したことを根拠に、戸谷書記官から「担当書記官確認済みで問題なし」との扱いを閲覧謄写係の窓口担当職員に申し入れてもらい、ようやく担当職員に納得させることができました。記入住所を事務局の住所に訂正することで決着し、ようやく窓口での申請手続きが完了しました。

■ところで、ちょうど戸谷書記官に期せずして面談できたので、12月8日に民事第51部を訪れた時の状況について、「せっかく用意いただいていたはずの資料を他の書記官に探してもらったが見当たらず、入手が遅れたのは残念です。当時どこに置いてあったのですか」と質問しました。すると戸谷書記官は、「引継ぎのために記録を一応置いてあったのですが……あまり難しくないところに隠さないのですが、普通は。(あの時は)逆に、違うところに置いてしまったので、それで見つかりにくかったようで」と釈明しました。

 続けて戸谷書記官が「ところで今後は高裁ですね」と話を変えたので、担当者は「また裁判所にはお世話になります」と答えると、同書記官は「あのう、全然関係ない話ですが、(民事)2部さんのほうは出したんですか?控訴を」と質問してきました。担当者が「ええ、出しました」と答えると、同書記官は「ああそうですか。なかなか同じ時にやれないですのでね」と返しました。

 担当者が「併合してほしいとは頼んだんですがね。でも結果的には争点がお互いシンプルになって扱いやすくなったとは思います。2件並行なのでコストはかかりますが」、と言ったところで、閲覧謄写職員が話しかけてきました。「ではこれで、番号をとりましたので」と言いながら、謄写のための裁判記録綴りのファイルとNo.3と書いた番号札を窓口から差し出してきました。それを見ていた戸谷書記官はタイミングを見計らい「じゃあ私はこれで」と挨拶を残して10階の民事51部の持ち場に戻っていきました。

■謄写係の担当職員は「これ(ファイルと番号札)をお渡ししますので。えーと注意事項なんですが、取外し禁止なんですね。ですので、このままの状態でコピーいただきます」と言ってきました。続けて、「向こうのほうにコピー機がありますので、1枚10円のコピー機で、カラーは1枚50円です。で、ここを緩めておきますのでばらさないでこのままの状態でお願いします。3番でお願いします。こちらのほう(番号札)が許可証で、コピーできる人と言うのが決まっているので。謄写OKということで、これを首にぶら下げてコピー作業をお願いします」と説明しました。

 見ると、謄写用のコピー機が5台並んでいる横に、コロナ対策のアクリル板の衝立てで仕切られた作業机が置かれていました。その一つに貸与されたファイルを置き、コピー作業に取り掛かりました。コピー機は5台ならんでおり、両端のコピー機が使用中でした。ところで、「3番でお願いします」と言われたので、当初はてっきり、番号札に対応した「3番」のコピー機を使えという意味に取ってしまいました。そのため、コピー機本体に番号を記した銘板のようなものがあるかと探してみましたが、見つかりません。再び窓口で聞いてみると、「空いているコピー機ならどれでも使用してよい」とのこと。

 ちょうど5台あるので、真ん中のコピー機で謄写作業をすることにし、500円玉を投入して作業をスタートさせました。よく見ると、別の壁際にもさらに3台のコピー機があります。これらは謄写専門で、一心不乱で大量の裁判記録をコピーしている人が3名ほどいました。法律事務所のスタッフなのかもしれません。

 訴状や答弁書、そして原告・被告のそれぞれの準備書面は、あらためて写す意味も薄いので、表紙のみ謄写することにしました。謄写作業そのものは20分程度で完了しました。番号札と裁判記録綴りを、今度は別の窓口で返却すると、窓口の担当職員が、ファイルの事件番号や全体を確認して「はい、ご苦労様でした」と言いました。エレベーターで1階に降り、裁判所の外に出るとすでに午後5時ごろで、すっかりあたりは暗くなっていました。

■謄写した第二次訴訟第一審(令和元年(行ウ)第549号)の裁判記録は以下掲載のとおりです。

○第二次訴訟第一審裁判記録 ZIP ⇒ i_l2.zip

 見ると、口頭弁論調書自体は、内容を最低限不足なく、かつ嘘偽りなく反映していることがわかりました。そのため、8月20日の第二回口頭弁論で仔細に説明するよう訴訟指揮をしたのに、それを完全に無視して訴訟おじゃん作戦に走った高専機構に対し、10月16日の第三回口頭弁論で一切不問にして結審した清水裁判長の異常さが際立ちます。

 それよりも目を引いたのは、結審直後の10月23日に、藍澤弁護士が第三回口頭弁論の調書を謄写しに来た記録が残っていることでした。目的欄を見ると「報告のため」とあります。清水裁判長の高配で訴訟おじゃん作戦が成功したことを確信し、依頼主である高専機構に報告をしに行ったということでしょうか。


藍澤幸弘弁護士が10月23日に第3回口頭弁論調書を謄写していった際の閲覧・謄写表。ちなみに裁判全体を通じて閲覧・謄写記録はこれのみ。依頼人である高専機構に一体何を「報告」したのか、興味がひかれる

■さて、どのような形で第一審の裁判記録が残されているのかは確認できたため、東京高裁からのアプローチを待っていると、12月25日に東京高裁第2民事部の風間書記官から着電がありました。曰く、「控訴人・被控訴人の訴訟資格証明書を原告・被告の両方分を提出して欲しい」とのこと。担当部はそのように決まったようです。当会からはさっそく、第一次訴訟控訴審で提出したものと同様の書類を用意し直し、28日に郵送しました。

 すると、年が明けた2021年1月12日に風間書記官から電話があり、第二次訴訟控訴審の第一回口頭弁論期日が、822号法廷にて、3月9日(火)14時からで決定したとのこと。加えて、控訴審の事件番号は、令和2年(行コ)第259号に決まったと伝達されました。なお、被控訴人である高専機構の訴訟代理人は、一審と同じ弁護士(木村・藍澤)とのこと。

 さらに、風間書記官曰く、「本件控訴審の手数料を、訴額160万円ということで1万9500円払い込んでいただいたが、一審が(棄却でなく)却下ということで、手数料は半分の9750円となります。手数料還付手続きの書類を出してもらえれば、半額返却します」とのこと。というのも、民事訴訟費用等に関する法律では、「請求について判断をしなかった判決に対する控訴の提起又は上告の提起若しくは上告受理の申立て」についての手数料は通常控訴の半額になるという定めがあり、これが適用になったものとみられます。

○参考;民事訴訟費用等に関する法律
http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?re=&vm=01&id=3585

 なお、この還付手続きについては全く急ぎではなく、口頭弁論期日で高裁へ出頭する機会に合わせ、書記官に還付書類を提出すればよいとのこと。

■こうして、第二次訴訟控訴審についても一応セッティングは整ったので、控訴状提出から50日の期限となる1月27日、次の控訴理由書を東京高裁第2民事部宛てに郵送で提出しました。

*****控訴理由書(第二次訴訟控訴審)*****ZIP ⇒ 20210127itir.zip
令和2年(行コ)第259号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件
控 訴 人 市民オンブズマン群馬
被控訴人 独立行政法人国立高等専門学校機構

            控  訴  理  由  書

                           令和3年1月27日

  東京高等裁判所第2民事部御中

                     控訴人 市民オンブズマン群馬
                         代表 小川 賢 印

 頭書の事件について,控訴人の控訴理由は以下の通りである。
なお,本書面においては,特に断らない限り,原判決が用いたものと同様の略称を用いる。

            控 訴 の 理 由

1 控訴人(原審原告)の訴えの変更申立てを原判決が却下したことの不当性
(1)控訴人(原審原告)に著しく不合理かつ多大な不利益が強いられること
 原判決中に摘示される前提事実のとおり,本件においては,控訴人(原審原告)の法人文書開示請求に対し,被控訴人(原審被告)が本件各不開示部分を不開示とする決定を下したため,その取消しを求めて令和元年10月18日に提訴したものである。被控訴人は,全面的に応訴したのち,提訴から約1年後となる令和2年10月2日時点で突如請求事実となる決定を理由もなく職権で取消し(本件再決定),請求原因事実と訴えの利益を消滅させた。被控訴人(原審被告)は,同日付け準備書面において,本件再決定により原告の訴えの利益が消滅したため本件訴訟が却下されるべきである旨を突如主張し始めるに至った。
 控訴人(原審原告)は,訴えの利益を確保するためにやむを得ず,民事訴訟法(以下「民訴法」という。)第143条の規定に基づいて同年10月9日に本件訴えの変更申立てをしたところ,東京地方裁判所は同年11月24日付けの原判決をもって当該申立てを認めない決定をした。そして原判決は,請求の変更を許さないまま,元の訴えは請求原因がないものとして全面的に却下している。
 しかしながら,被控訴人(原審被告)の全面的な応訴によって原告が約1年間にわたり多大かつ不要な訴訟負担を強いられた事実等に鑑みれば,被告の不意打ち的な本件再決定をもって即座に「裁判をするのに熟した」(原判決5頁)と一方的に判断して本件訴えの変更申立てや元の訴えの請求を却下することは,それまで控訴人(原審原告)が積み重ねてきた負担や経過,議論を無に帰するものであり,著しく信義則にもとるものである。
 本件訴えの変更申立てにおいて,併記された同種情報の開示を求める本件新請求1はもちろん,本件新請求2も裁判経過自体をもとにした請求であり,いずれも請求の基礎に変更のない訴えの交換的変更である。当事者双方の審級の利益の問題から,控訴審から訴えを変更することも困難である。そうなると原判決は,本件訴えの変更申立てに示した本件新請求1および2について,また一から新たな訴訟を提起し,一から経過説明や主張,立証を積み重ねろと突き付けるに等しいものである。
 また,原審が本件訴えの変更申立てを却下したことが民訴法第143条4項に基づく裁判所の職権行使であったとしても,公平の原則や信義則からして訴えの利益を確保できるよう配慮すべきであったところそれをせず,むしろ控訴人(原審原告)に不要かつ多大な金銭的・肉体的・精神的負担を強いるものであるから,この却下決定は職権の濫用であり著しく不当である。
 さらに言えば,同種の事例において同様な訴えの変更が問題なく認められた事例もあり(大阪高判令元.12.17,甲18),本件訴えの変更申立てが「著しく訴訟手続を遅滞させる」ような性質のものでないことは明らかである。
 すると,本件訴えの変更申立てへの却下決定をした原判決も不当なものというべきである。

(2)原判決が当事者の申し立てていない事項について判決を行っていること
 原審においては,被控訴人(原審被告)による本件再決定とそれに伴う準備書面提出がなされ,さらに控訴人(原審原告)が本件訴えの変更申立てを行った直後の令和2年10月16日に第3回口頭弁論期日がもたれ,そこで結審した。
ところで,この第3回口頭弁論期日にかかる調書によれば,被控訴人(原審被告)は令和2年10月2日付け準備書面(3)を陳述したのみであり,特に控訴人(原審原告)による訴えの変更を却下するように申し立ててはいないことが認められる。また,裁判長もしくは陪席裁判官らにより,その点について被控訴人(原審被告)に釈明権が行使された事実も認められない。あわせて訴訟記録によれば,控訴人(原審原告)による本件訴えの変更申立てから原審判決に至るまで,口頭弁論外で被控訴人(原審被告)が当該申立ての却下を申し立てていた事実も認められない。
 すると,判決に至るまでの間,被控訴人(原審被告)が実際に内心でどう考えていたかに関わらず,被控訴人(原審被告)が本件訴えの変更申立てに同意している可能性が残っていた状態にあったはずである。
 そうなると,判決をもって本件訴えの変更申立ての却下を決定した原判決は,当事者がまったく申し立てていない事項(当該申立ての却下)について判決を下したものであり,明らかに民訴法第246条に違反したものである。そうなると原判決は,手続自体に法律違反が認められるというべきである。

(3)小括
 したがって,本件訴えの変更申立てを却下した原判決はその手続が違法というべきであり,民訴法第306条の規定にしたがって取り消されるべきである。また,そうでなくとも,原判決は上記で指摘したとおり控訴人に多大な不利益を被らせるものであって極めて不当であり,また原告に強いられる不利益に足るほどの正当な理由も認められないから,民訴法第305条の規定により取り消されるべきである。そののち,原判決は訴えを不適法として却下したものであるから,民訴法第307条の規定にしたがって東京地方裁判所に差し戻されるべきである。
 以上から,控訴の趣旨1項のとおり請求する。

2 訴訟費用について
 本件においては,提訴から約1年も経過したのちに,被控訴人(原審被告)がその職権で事後的に請求原因となる決定を取り消し,よって請求原因事実と訴えの利益が消滅したと突如主張し始めたものである。当然ながら,提訴時点においてかかる決定は有効であり,控訴人(原審原告)がその取消しを求めて訴えを提起したことは,その時点でのその権利の伸張に必要な行為である。
 よって訴訟費用については,単純に民訴法61条を適用して敗訴者負担とできないことは明らかである。この場合,控訴人(原審原告)の訴訟費用は,その権利の伸張に必要な行為として生じたものであるから,民訴法62条を適用して被控訴人(原審被告)の負担とすべきである。なお,同様の事件において,被告負担にすべきとした判例も存在する(東京地判平16.6.16,甲19)。また,この点については,控訴人(原審原告)が原審において令和2年10月9日に提出した「訴えの変更申立書」の5項においても言及している。
 ところが原判決は,その主文において訴訟費用をすべて控訴人(原審原告)負担とする判決を示した。しかも裁判所の判断理由が記載されるべき箇所において,その判断理由や根拠法令等を一切摘示もしないどころか,訴訟費用に関する判断を一切記載していない。
 すると,原判決は,訴訟費用の負担にかかる請求に対して判断を一切しないまま控訴人(原審原告)に極めて不利益な判決を下したものであり,断じて認容できない。したがって,原判決が訴訟費用の負担の裁判を脱漏していたことは明らかであるから,民訴法第258条2項および4項の規定に基づき,訴訟費用をすべて被控訴人(原審被告)の負担とする判決を求める。
 以上から,控訴の趣旨2項のとおり請求する。

                             以 上


            附 属 書 類
1 控訴理由書副本     1通
**********

○証拠説明書(甲19)及び甲号証 ZIP ⇒ 20120127ib19.zip


■ところで、1月12日に風間書記官から第一回口頭弁論期日の決定通知が電話で伝えられてきたことは上述のとおりです。電話口に出た担当者は、当時多忙だったこともありそのまま二つ返事で受け入れました。しかし、別の当会担当者にこの連絡を共有したところ、「どうにもキナ臭い」と眉をひそめました。

 というのも、同じく東京高裁民事第17部で控訴手続きが進んでいた第一次訴訟については、控訴人・被控訴人双方に「訴訟進行に関する照会書」が送られ、多数の日程候補について意向を確認したのちに、双方にとって都合のいい日程を調整していたからです。当会の抱える別案件として、群馬県知事山本一太を被告ないし被控訴人とした前橋バイオマス訴訟がありますが、こちらも東京高裁民事第22部はキチンと当事者双方の予定と意向を照会して日程をすり合わせていました。

 ところが、今回の第二次訴訟控訴審を担当した民事第2部は、なぜか控訴人であるオンブズマンを差し置いて、先に被控訴人である高専機構の方と日程調整と確定を勝手に済ませてしまい、一方的に日程を通知してくる形になっています。先に高専機構の方にご都合伺いに向かうという妙な優遇のニオイを感じ取り、上記の当会担当者は眉をひそめたのでした。

■そこで1月13日、風間書記官に電話をかけ、「他の控訴事件等では、『訴訟進行に関する照会』として日程の選択候補を複数提示するなどしてくれた。しかし本件では控訴人の都合を一切聞かれることもなく日程が決定事項として通知されてきたが、なぜか」とストレートに質問しました。

 すると風間書記官は、「最初に機構本部に問いあわせたところ、この日時を希望してきた。そこで控訴人(オンブズマン)に連絡をして、その日時での可否を打診したもの。決して被控訴人の都合をそのまま受け入れたわけではない。」と釈明してきました。風間書記官は、特に問題ではないということを強調するかのような喋り方をしていましたが、わざわざ高専機構へ先にご都合伺いをした合理的な理由は何も説明されず、やはり不自然で不公平という感は拭えません。

 そこで、この第二次訴訟控訴審を担当することになった東京高裁第2民事部について調べてみたところ、理由の一端がわかりました。同民事部の担当裁判官は、「白石史子,浅井憲,野口宣大,湯川克彦」となっており、すると、筆頭に来ている「白石史子」なる判事が裁判長となる可能性が極めて高いものとみられます。

○参考:東京高等裁判所 担当裁判官一覧
https://www.courts.go.jp/tokyo-h/saiban/tanto/tanto/index.html

 当会担当者の記憶の底では、この名前にどこか見覚えがありました。引っかかるものを感じて過去の記事をチェックしたところ、とんでもない事実が発覚しました。「白石史子」裁判長は、いつも東京高等地方簡易裁判所合同庁舎の正門前にめげず立ち続けている不当判決への抗議立て看板において、名指しで抗議されている当の張本人だったのです。

●参考記事(記事内画像参照)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3194.html
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3225.html

■すると、市民の権利をないがしろにした不当判決の常習犯である可能性が高いことになります。裁判が始まる前から機構優遇の姿勢は見え見えなことにも、これで妙に合点が行きました。

 被害に遭った先人が、わざわざ途方もない労力を掛けて、その被害を周知してくれているのですから、見えている地雷はできれば踏みたくありません。しかし、裁判官忌避の申立ても極めてハードルが高いので、このまま控訴審に突っ込むしかないことを覚悟しました。また、当会担当者としては、そこまで不当判決を連発した挙句に連日抗議立て看板を立てられても平然としている裁判官というのは果たしてどんな人物なのか、顔を見たい気もしました。

 このように、第二次訴訟控訴審は、出足からあまり幸先がいいものとは言い難く、暗雲が立ち込めています。とはいえ、やる前から諦めていても仕方がないので、白石裁判長の良心と常識に何とか訴えかけられるようベストを尽くす所存でおります。

■以上のとおり、第二次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第259号)の第1回口頭弁論日程は、以下のとおり決定しております。

日時:令和3年3月9日 14時00分~
場所:東京高裁8階822号法廷


 今後、口頭弁論一週間前となる3月2日頃に被控訴人である高専機構からの控訴答弁書が提出されたのち、東京高裁の第822号法廷で再び機構御用達の銀座弁護士たちと相まみえることになります。

 高専機構からの控訴答弁書の内容と第一回口頭弁論の様子は、結果がまとまり次第、追ってご報告いたします。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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【高専過剰不開示体質是正訴訟】第一次訴訟控訴審の弁論日が3/17に決定&控訴人当会が控訴理由書提出

2021-01-31 23:56:00 | 群馬高専アカハラ問題
■国立高専校長の選考実態、群馬高専J科アカハラ情報不開示取消訴訟の弁護士費用、長野高専連続自殺の発生年月日などなど、高専組織が執拗に黒塗りにこだわる「都合の悪い」情報は枚挙にいとまがありません。そうした悪質な不開示処分の取消しを求め高専機構を提訴した第一次訴訟では、卑怯な法廷戦術の嵐やコロナ禍での長期中断を乗り越えてようやく結審し、2020年11月24日に森英明裁判長らにより判決が下されました。

 しかしそれは、ありとあらゆる理屈を総動員して被告高専機構の杜撰極まる言い分を片端から素通しし、ごくわずかの勝訴部分を除いて当会の全面敗訴というあからさまな不当判決でした。「こんな滅茶苦茶な判決を許してはいけない」という憤りとエールの声が次々に高専関係者らから寄せられたこともあり、当会では同年12月8日に第一次訴訟の不当判決に抗うべく控訴を行いました。

○2020年11月25日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3244.html
○2020年12月10日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】隠蔽体質追認のダブル不当判決に抗うべく東京高裁に両件控訴!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3252.html

 その後、本件控訴審の第一回口頭弁論日程が決まるとともに、当会から控訴理由書の提出も済ませましたので、流れをご報告します。

■控訴状を提出して間もなく、高専機構側から予期せぬアクションがありました。同年12月16日に突然、高専機構本部からの郵便物が届いたのです。封筒を開けてみると、令和2年12月14日付けの法人文書開示決定通知書とともに、第一次訴訟で唯一の被告敗訴部分である項目名及び整理Noの黒塗りのみが外された各年度の高専校長候補者一覧表が入っていました。

○修正開示の決定書と各年度の高専校長候補者一覧表 ZIP ⇒ 202012141ljmj11.zip
202012142j12to3.zip
202012143j14to6.zip
202012144j17to8.zip
202012145j18to9.zip

※参照比較:https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2676.html 内開示文書

 文書が届いた当初、高専機構がこうした突飛な行動に出てきた理由が呑み込めませんでした。良心的に考えると、第一次訴訟判決の敗訴部分(50分の1)については高専機構が控訴せず事実上確定したことから、とりあえずそこだけ開示することにしたのでしょうか。

 悪い方に考えれば、第二次訴訟における訴訟おじゃん作戦大成功のトンデモ判決に味を占め、50分の1の敗訴部分も潰すべく、「おじゃん作戦その2」をかましてきたのかもしれません。しかし、向こうは控訴をしていないので、裁判所はそもそもその点について判断できないはずです。この場合、どこかのタイミングで附帯控訴を仕掛けてくることが想定されますが、附帯控訴費用19,500円はじめ追加の弁護士費用は当然かかります。さすがに無いとは思いますが、3年前の群馬高専アカハラ情報不開示取消訴訟で控訴してきた時のように、莫大な公金を投じてバカな真似をしでかすのだけは勘弁してほしいものです。

■一方で、控訴した東京高裁での手続きの進捗はというと、まず12月22日の午前11時ごろに同高裁から着電がありました。出ると、東京高裁第17民事部の渡邊書記官と名乗り、「控訴に伴い、当事者双方の資格証明書を新たに提出願いたい」とのこと。担当部と担当書記官はそのように決まったようです。当会ではさっそく、当会の資格証明(会則と代表選出会議録)と高専機構の登記簿(履歴全部証明書)の謄本を同日中に郵送提出しました。

○当事者双方の適格証明書 ZIP ⇒ 202012221eiki.zip
202012222iki.zip

 その翌々日となる24日、今度は訴訟進行に関する照会書が当会事務局宛てにFAX送信されてきました。見ると、控訴審の事件番号は「令和2年(行コ)第251号」、使用法廷は812号法廷に決まったようです。

○訴訟進行に関する照会書(第一次訴訟控訴審) ZIP ⇒ 2020122417iisfax.zip

 口頭弁論期日の候補としては、2021年の3月17日、3月22日、4月14日、4月21日の4つが提示されていました。審理が早く済むに越したことはないので、3月中の日程を希望することにしました。

■年が明けて1月13日、渡邊書記官から電話があり、控訴審の第一回口頭弁論期日が3月17日(水)の11時00分に決まったとのこと(※後述のとおり後に変更)。

 高裁のセッティングが整ったので、控訴状提出からちょうど50日目となる1月27日、当会では第一次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第251号)の控訴理由書を以下のとおり提出しました。

*****控訴理由書(第一次訴訟控訴審)*****ZIP ⇒ 20210127itir.zip
令和2年(行コ)第251号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件
控 訴 人 市民オンブズマン群馬
被控訴人 独立行政法人国立高等専門学校機構

            控  訴  理  由  書

                           令和3年1月27日

  東京高等裁判所第17民事部御中

控訴人 市民オンブズマン群馬
                          代表 小川 賢  印

 頭書の事件について,控訴人の控訴理由は以下の通りである。
なお,本書面においては,特に断らない限り,原判決が用いたものと同様の略称を用いる。

            控 訴 の 理 由

1 控訴状別紙1項(本件文書1)にかかる情報について
(1)原判決を受けた被控訴人による文書の追加開示
 被控訴人は、令和2年11月24日の原判決を受け、本件決定のうち本件文書1の項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分(原判決敗訴部分)を取り消す再決定を同年12月14日に行った。そして、その日付の高機第105号法人文書開示決定通知および不開示の一部取消しを行った新たな開示文書(以下「本件再開示文書」)を控訴人に送付した(甲47)。

(2)各文書の扱う推薦機関の種別について
 本件再開示文書は、本件決定において開示された被控訴人における各年度の国立高等専門学校長候補者一覧のうちで、それまで不開示としていた項目名及び整理Noを新たに明らかにしたものである。
 そこで本件再開示文書を確認すると、まず、平成23年4月付けから平成29年4月付けまでの各年分においては、右上に資料番号が付されており、いずれも細目番号①と②の二つに区分されていることがわかる。また、被控訴人の原審における主張によれば、当該文書は、各候補者を推薦機関の種別によって区分し、表にまとめたものである。そこでさらに確認すると、細目番号①では所属先もしくは推薦機関を現わした一つ目の項目が「推薦機関」となっており、一方で細目番号②では「学校名」となっていることがわかる。
 すると、細目番号②は高専や大学を含む教育機関からの推薦者ないし出身者を、細目番号①はその他の研究機関や官公庁からの推薦者ないし出身者を、それぞれまとめたものであることが極めて強く推知できる。すると、各細目番号に区分される資料が扱う推薦機関の種別は事実上すでに明らかであり、直接的にこの種別を示す記載を開示しても、新たに法5条4号ヘにいうおそれが生じるとはいえないことは明らかである。
 また、平成30年4月付けと平成31年4月付けの分については、記載方法が変わっているので、個別に検討する。平成30年4月付けの分については、細目番号1で6名、細目番号2で4名、また細目番号なしの資料3点についてそれぞれ1名、2名、1名の候補者が記載されている。
 一方で、実際に同年に高専校長に就任した者の前職をみると、高専教員4名、大学(院)出身者5名、文部科学省2名、国立教育政策研究所1名となっている(甲48)。
ある区分について、就任者数が推薦者数を上回ることはありえないので、細目番号1が大学出身者、細目番号2が高専出身者、また細目番号なしの資料のうち2名記載分が文部科学省出身者であることがここから推知できる。よって、区分に係る推薦機関の種別が推知可能である。また、平成31年4月付け分についても、同様の手法で区分に係る推薦機関の種別が推知可能であると考えられる。
 よって、本件文書1に含まれる情報のうちで、各文書が取り扱う大まかな推薦機関の種別は、すでに明らかになっている情報から推知できる情報であり、法5条4号ヘにいう人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれをあらたに生じさせる情報ではないことは明らかである。
 また、さらに言えば、本件文書1において推薦機関の種別はせいぜい2つか3つ程度に区分されていることが明らかであり、多数の様々な推薦機関に対してかなり大まかな区分方法となっていることは明らかである。すると、本件文書1の各文書が取り扱う推薦機関の種別にかかる情報を明らかにしたところで、選考に通過しなかったものの構成は極めて大雑把にしか把握しえないのであって、法5条4号ヘにいうおそれが生じるとは考えられない。

(3)各候補者の推薦機関又はその種別に係る情報について
 原判決は、本件文書1に記載のある各候補者の推薦機関又はその種別に係る情報について、これを開示した場合、校長に就任しなかった候補者の構成を推測することが可能となり、そのため、推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなどするおそれがあるとして、法5条4号ヘに該当すると判示する(原判決19頁)。
 しかしながらこれは、被控訴人が推薦機関によって候補者を差別していることを前提とした判断である。甲8号証や甲37号証のとおり、国立の機関の長となるものの選考にあたっては、被控訴人独自の判断基準は多少あるにせよ、基本的には候補者本人の純粋な実力や資質のみをみて公平に選考が行われていることが前提とされるべきことは言うまでもない。原判決は、判断にあたってこの点にまったく言及しておらず、極めて不合理である。

(4)選考通過者のうち実際に校長に就任した者にかかる記載情報について
 また原判決は、選考通過者のうち実際に校長に就任した者にかかる記載情報について、公開情報として法5条1号但書イに該当したとしても、同条4号ヘ該当性による不開示を否定するものでない旨判示する(原判決20頁)。しかし、もともと公開されている情報を開示したところで、法5条4号ヘにいうおそれが新たに生じるわけがなく、また他の候補者に係る情報が明らかにされるわけでもないであるから、この判断もまた不合理である。また仮に、この情報を明らかにすることで、記載のある文書が取り扱う推薦機関の種別が明らかになるとしても、上記指摘のとおり、推薦機関の種別は法5条4号ヘにいうおそれを生じさせる性質のものではない。よって、原判決の判断は誤りである。


2 控訴状別紙2項(本件文書2)にかかる情報について
 原判決は、本件文書2について、「本件文書2は,西尾の辞職願のうち群馬高専を辞職する理由を記録した部分であって,その記録部分の長さから20字強の記載があり,相応の記載内容があることがうかがわれ(甲4),その記載内容から群馬高専内の者や群馬高専の関係者が辞職する個人を識別することが可能であるものと考えられることから,本件文書2に記録された情報は法5条1号本文の個人識別情報に該当するというべきである。」(原判決21頁)と判示する。
 しかし、本件文書2はそもそも最初から「西尾典眞」の辞職願と特定されているものであり、もはや個人を識別することを要さないにも関わらず、「群馬高専内の者や群馬高専の関係者が辞職する個人を識別することが可能である」ことを理由に、辞職理由が法5条1号本文の個人識別情報に該当すると認定するのは明らかに不合理である。
 すなわち、辞職理由が法5条1号本文の個人識別情報に該当するかどうかは、あくまで当該情報が個人識別性をもつプライバシーに属する情報であり、その開示によって西尾への権利利益侵害が生じるかどうかに帰せられるところ、かかる辞職理由は、すでに甲9号証のとおり被告自身が事実上明らかにしているものであり、本件文書2について辞職理由を開示しても西尾への権利利益の侵害は起こらないか、あるいは受忍限度に留まるものと解するべきである。
 したがって、本件文書2における西尾の辞職理由は法5条1号本文にあたらないから、開示されるべきである。


3 控訴状別紙3項(本件文書3)にかかる情報について
(1)異動・退職等人事が行われた者の所属・職名等情報について
 本件文書3の人事が行われた教職員に関する不開示部分のうち、氏名等情報を抜いて人事前後の被控訴人内部における所属や職名のみ開示しても、それは単に当該部署等で人事が行われたことを示すだけの情報であり、また内部の者として当然その事実(かかる者にかかる人事が行われたこと)は既知であり、外部の一般人から推測する余地もないから、差し支えなく開示されるべきである。
 しかし原判決は、「しかしながら,法5条1号本文の個人識別情報に該当するか否かは,当該情報により,又は当該情報と他の情報とを照合することにより,特定の個人を識別することができるか否かにより決せられるのであり,当該情報が内部の者にとって既知であるか否かにより決まるものではなく,原告の主張は失当である。」とし、さらに、「原告は,「職名」は法5条1号本文の個人識別情報に該当しない旨主張するが,群馬高専において一時期に異動等する者の人数は限られることからすれば,「職名」に異動等の時期を併せることで,群馬高専内の者や群馬高専と関係のある者において当該情報に係る個人を特定することが可能になると考えられるから,「職名」は同号本文の個人識別情報に該当するというべきである。」などと判示する(原判決22頁)。
 しかし、原判決がいうように、既に特定機関内部の者等にとって既知であるかどうかに関係なく、特定機関内部の者を基準にして同じく内部の個人を特定する性質の情報だからといって一律に不開示とするのであれば、あらゆる公文書や法人文書において、公表されている以外ではいかなる職名や職位の記載も不開示が許されてしまうのであり、ひいては不開示範囲も野放図に広がってしまうのは明らかであって、極めて強引で不合理な法解釈というべきである。個人に関する情報のすべてを片端から情報公開の対象外とすることは、法が想定しているところでないのは明らかである。
 ある情報が法5条1号本文の個人識別情報に該当するか否かは、一般人基準を採用するのが通例であり、また仮に特定機関内部者や他関係者の基準から個人識別性を認めようとすれば、それは特定される対象人物の権利利益が害される場合と解されるのが通例である(甲49)。
 これを本件に適用して考えると、まず職員の氏名が公表されていない場合は、職名のみを開示しても外部の一般人がそれ以上の情報を推量する余地はなく、他方で氏名が公表されているならそもそも法5条1号ただし書イに該当するわけだから、いずれにせよ個人識別性は問題とならない。また、異動や退職等の人事が行われた者を現に知る群馬高専の内部関係者等の基準を採用するにせよ、その人物に当該異動や退職が行われた事実は常識的に考えて既知なのであり、したがって、異動が行われた部署や職名を開示したところで、かかる人事の対象者の権利利益を害さないのは当たり前である。よって、人事前後の群馬高専における部署や職名・職位等情報のみが、法5条1号本文の個人識別情報にあたらないことは明らかであって、当然開示されるべきである。

(2)群馬高専教育研究支援センター所属の技術補佐員について
 原審において控訴人は、群馬高専教育研究支援センター所属の技術補佐員について、その採用・昇進・異動・退職に関する情報が同校HPで様々な方法で事実上公表されており、公開情報であるから当然開示されるべきことを指摘した。
 ところが原判決は、「技術補佐員の退職挨拶が掲載されているのは,当該技術補佐員の勤務期間や担当職務等の個別事情を考慮したものであり,技術補佐員が退職する際に「年報」に挨拶を掲載するといった慣行はなく,(中略)本件文書3の(1)で不開示となっている技術補佐員の採用,異動及び退職に係る情報が群馬高専の外部に公開されている事実を認めることはできない。」(原判決23頁)などとし、さらに、「原告は,ホームページや「年報」における職員氏名一覧の掲載状況を追跡することで,異動や退職といった人事状況を事実上公表されている情報として把握することができるから,技術補佐員の異動や退職について公表する慣行が存在している旨主張する。しかしながら,原告の主張する方法によっても,職員が当該部署に在籍するようになったり,在籍しなくなったりしたことが確認できるのみであり,異動,退職等の具体的な内容が明らかになるわけではないから,群馬高専において異動,退職等の人事情報を公表する慣行が存在しているとはいえない。」(原判決23ないし24頁)などと判示して、法5条1号ただし書イに該当しないとした。
 しかしながら、法5条1号ただし書イの公表慣行とは事実上の慣行で足りるのであって、「個別事情を考慮した」という恣意的な理由付けの有無で慣行かどうかが即座に決せられるわけではない。また少なくとも、「個別事情を考慮して人事に関する挨拶等を掲載する」という慣行が成立していることは明らかであり、すでに年報その他によって人事が明らかになっている分の群馬高専教育研究支援センター所属の技術補佐員に関する本件文書3の不開示情報は、法5条1号ただし書イを適用して開示とすべきである。
 また原判決は、ホームページや「年報」における職員氏名一覧の掲載状況を追跡しても、教育研究支援センターに所属するようになったりしないようになったりした事実が分かるだけであると判示する。しかしながら、まず教育研究支援センター内での昇進や降格、異動はホームページの記載形式からして容易に判明しうる(甲10)。また群馬高専において、技術補佐員を含む技術職員の所属は教育研究支援センターに一元化されており(甲50)、所属するようになったりしないようになったりすることは採用や退職と直結している。よって、原判決の指摘は誤りであり、かかる人事は慣例公表情報から事実上把握可能なものとして、法5条1号ただし書イに該当するから、開示が妥当である。


4 控訴状別紙4項(本件文書4)にかかる情報について
 被控訴人が特定事件について木村弁護士に支払った弁護士費用情報を不開示としたことについて、原判決は「弁護士は,報酬の算定方法や金額等を依頼者との合意によって自由に定めることができるところ,弁護士費用の額が明らかになると,これを認識した競合する弁護士や弁護士法人が,上記の額を踏まえて,より有利な弁護士費用の額を提示して競争上優位な立場に立つ可能性があり,木村弁護士の競争上の地位に影響を与えるおそれがある。」という理由で、弁護士費用情報が法5条2号イの不開示情報に該当すると判断し、よって不開示としたことは適法であると判示する(原判決26ないし27頁)。
 しかしながら、特定の事件について、競合する弁護士や弁護士法人が有利な金額を提示して容喙するなどというおそれが有り得るとしても、それは提訴されたあるいは応訴する当事者が訴訟代理人となる弁護士を探しており受任契約に至っていない状態においてである。または、せいぜい事件がまだ係争中の状態においてである。一方で、控訴人は決してそのような状態にある事件も含めて弁護士費用を開示することが当然と主張しているわけではない。控訴人が開示を求める弁護士費用が支払われた木村弁護士の受任事件である平成28年(行ウ)第499号及びその控訴・付帯控訴事件はいずれも甲1の開示請求時点で判決が確定しており、他の弁護士や弁護士法人が容喙することにより木村弁護士の競争上の利益が害される余地は存在しない。
 よしんば、過去の他事件に関する弁護士費用情報から、少なくとも判決未確定状態の事件についてその弁護士費用を推測するにしても、原判決自体が判示するとおり、弁護士費用は弁護士自身が個々の事件について自由に定められるのであり、当該事件についての弁護士費用を知り得ない他弁護士等が確実に「有利な金額」を提示することは不可能である。
 また、本件文書4に記載のある項目のうち、「うち消費税額」や「配分金額」は、個々の対応にかかる費用として木村弁護士の営業秘密に属するとしても、全体として支払った金額から事案性質や対応内容を推察することは困難であり、開示を阻む事情は存在しない。
 さらに、控訴人は原審において、国や地方自治体の答申においては弁護士費用等情報が問題なく開示された事例が多数あり、特定弁護士事務所の競争上の利益が害されるおそれが現に生じていないことは明らかであることを指摘したにも関わらず、原判決はこの点との整合性も一切説明していない。
 よって、原判決のうちかかる箇所はその根拠を欠いたものであり、支払決議書の不開示部分のうち,「合計金額」,「支払金額」は開示されるべきである。

5 控訴状別紙5項(本件文書5)にかかる情報について
 控訴人は原審において、本件文書5にかかる本件報告書等の記載年月日等情報について、開示請求の対象文書の作成時期を個別に区切ることにより,開示される文書に違いが生じることから、公衆が知り得る状態に置かれているものとして,記載年月日等情報が法5条1号ただし書イに該当することを指摘した。
 ところが原判決は、「しかしながら,原告の指摘する開示請求の方法によって本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があるとしても,それは,開示請求の対照(ママ)文書の作成時期の区切り方という偶然に左右されるものといわざるを得ない。したがって,原告の指摘する開示請求の方法によって,本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があることをもって,当該情報が法5条1号ただし書イに該当するとはいえない。」などとして、法5条1号ただし書イ該当性を否定し、かかる情報の不開示が適法であると判示する(原判決28頁)。
 しかし、開示請求の対象文書の作成時期の区切り方は、開示請求者が任意に設定できるものであり、複数回開示請求を行うまたは複数人が開示請求した結果が付き合わされることなどによって、対象文書の作成時期は、少なくとも年単位、月単位において容易に絞り込めうるものである。すると、対象文書の作成時期が自ずと特定されていくことは偶然ではなく必然に寄っていくのであり、これを「偶然に特定されるもの」とした原判決は明らかに誤りというべきである。そしてここから、本件報告書の年月日等に係る情報は公の国民一般が知り得る状態に置かれていることは明らかであるから、記載年月日等情報が法5条1号ただし書イに該当し、開示が妥当である。

6 結語
 以上のとおりであるから、控訴の趣旨のとおり請求する。

                                以上

            附 属 書 類
1 控訴理由書副本     1通
**********

○証拠説明書(甲47~50)及び甲48-50号証 ZIP ⇒ 20210127ib4850.zip
○甲47号証 ZIP ⇒ 202012141ljmj11.zip
202012142j12to3.zip
202012143j14to6.zip
202012144j17to8.zip
202012145j18to9.zip


■ところで、この控訴理由書の提出に前後して、トラブルに見舞われました。もともと予定されていた第一回口頭弁論期日は、前述のとおり3月17日(水)の11時ちょうどでしたが、当会の出廷担当者において、同日のその時間帯にどうしても外せない用事が入ってしまいました。仕方がないので、1月27日、弁論期日の変更にかかる上申書を同高裁に提出しました。電話口で事情を話し、上申書を提出したことを伝えた際の渡邊書記官曰く、「期日変更が認められるかは裁判官の判断になる。認められても(既に日程が詰まっているので)5月以降になるかもしれない」とのことで、冷や汗が出ました。

 すると翌日、東京高裁第17民事部の渡邊書記官から電話があり、「昨日申し出のあった期日変更について、新たな日時が決まりました。新たな期日は3月17日(水)14:30から第812号法廷です。ついてはあらためて期日請書を送ってください」とのこと。幸いなことに、日付は同じまま、時間が数時間後ろにズレるだけで済んだようです。

■よって、第一次訴訟控訴審(令和2年(行コ)第251号)の第1回口頭弁論日程は、以下のとおり決定しました。

日時:令和3年3月17日 14時30分~
場所:東京高裁8階812号法廷


 今後、口頭弁論一週間前となる3月10日頃に被控訴人である高専機構からの控訴答弁書が提出されたのち、東京高裁の第812号法廷で再び機構御用達の銀座弁護士たちと相まみえることになります。

 高専機構からの控訴答弁書の内容と第一回口頭弁論の様子は、結果がまとまり次第、追ってご報告いたします。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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