■今から10年前の平成11年(1999年)4月初め、安中市土地開発公社は、タゴを相手取り、多額の裁判費用をかけて損害賠償請求の民事訴訟を前橋地裁に提訴しました。その結果、全面勝訴をしましたが、これまでに回収できたのは、訴額22億2300万円に対して、わずか1488万500円のみ。
この裁判の弁護士費用は、群馬銀行との民事裁判や、市民からの真相追及を回避するための回避ノウハウ料と抱き合わせでしたが、公社は東京の弁護士2名に合計なんと1億円を支払いました。にもかかわらず、安中市土地開発公社も、連帯保証人の安中市も、タゴやその親族、そして事件で焼け太った関係者らから損害を回収しようとせず、裁判所に出した訴状に貼る手数料の印紙代さえも、結局公金から支出した形になっています。結局、何の、誰のための裁判だったのかと疑問に思う今日この頃ですが、公社や市の怠慢がもたらした現在の債権未回収の状態は放置できません。勝訴から10年目を迎える今年5月31日までに、タゴを相手取り、再提訴をするかどうかの判断が、タゴをよく知る公社理事長でもある岡田市長に、今まさに問われているのです。
■では、10年前に安中市土地開発公社が、タゴを相手取り、損害賠償請求訴訟をしたときの状況を思い出してみましょう。まずは、当会が、事件後、毎月発行していた安中市民通信「まど」第40号(1999年4月20日発行)から引用してみましょう。
**********
51億円事件第3幕 公社がタゴを民事提訴
市民に先越されしぶしぶ損害賠償請求
相手をタゴに限定!!
安中市土地開発公社を舞台にした巨額横領着服事件は、①元職員タゴに対する刑事訴訟が、平成8年4月8日に判決(懲役14年、但し未決勾留200日含む)、②約40億円のカネをだましとられた(その後、隠し財産返済で33億円強に減額)群銀による安中市・公社相手の民事訴訟が平成10年12月9日に和解(和解金24億5000万円を市・公社が単純計算で103年返済)、という経緯をたどってきました。
さあいよいよ安中市・公社が原告になり、損害賠償請求をする番だと、市民は中島市長の迅速な決断と実行を[期待」したのですが、2ケ月たっても3ケ月たっても行動する気配はありませんでした。それどころか、当会が2月5日に安中市監査委員に住民監査請求をしたところ、2月16日にナント「不受理]という通知が届く始末で、市民をガッカリさせました。
ところが4月上旬に、安中市でなく公社の名前で突然、元職員タゴを被告として総額約22億2千万円の損害賠償請求訴訟を起こしたのです。なぜ約22億2千万円という損害額なのか、その根拠はわかりません。
当会の試算によれば、タゴが群銀から不正に借入れ、公社名義の口座から横領した実質40億円近いカネ(返済や和解により24億5千万円に減額)、その他にも、安中市から振込まれた公金3億4500万円の横領、および帳簿改ざんによる粉飾経理で浮かせた数億円の公金横領が損害として計上されなければならないはずです。
この度の原告公社による突然の提訴の背景には、この他にもいろいろな疑問があります。
損害額がなぜ22億2千万円なのか、を始め、なぜ連帯保証人の安中市長は訴訟参加をしなかったのか、なぜ元職員タゴ一人だけを相手取ったのか、なぜ事件発覚後3年10ケ月余もたってから、また群銀との和解成立から115日もたってから急に提訴したのか・・・などです。
この背景を知るには訴状の写しを入手し、疑問点を明らかにしたいところですが、おそらく情報開示で裁判の書類(訴状、答弁書、準備書面など)の公開を請求しても、安中市長は「公社は別法人だから」と言って拒む可能性が高いでしょう。
原告公社の訴訟代理人の弁護士は「事件を風化させないためにも、張本人の責任を厳しく追及しなければならない」(4月6日付上毛紙)と、この提訴の抱負を公社理事長(=安中市長)に代わって語っていますが、公社の使用者責任はいったいどういうふうに追及するのか、聞きたいものです。
また、市議会3月定例会で明らかになったように市・公社は東京の田辺・菰田(こもだ)弁護士に着手金一千万円と日当等実費を支払ったようですが、今度の裁判では、いったいどこの弁護士を起用しているのか、大変興味が湧きます。
タゴが塀の向こうに居るため、民事訴訟がどう展開してゆくのか予断を許しません。当会のこれまでの印象ですと、塀の向こうは一種の「安全地帯」であり、民事訴訟を通じて、タゴにどれほど損害を償わせられるのか、また事件の真相がどれほど明らかになるのか、心配なところです。
当会ではそのため、タゴ以外にも、その私的縁故者、公社の監督責任者、安中市の職責者、その他の本件関与者らに対しても損害金を回収するよう市監査委員に監査請求したわけです。
しかし、門前払いを言い渡されたため逸早く法的対処に踏み切ることとし、3月12日に実行しました。
今回の公社による突然のタゴ提訴には、そうした諸般の事情が複雑に絡んでいると想像できます。
いずれにしても、安中市は事件の幕引きを性急に行おうとせず、事件の尻拭いをきちんと完遂させ、この未曾有のハレンチ事件の真相を市民に明かにすることを最重点目標に掲げて、行政の信頼回復に務めなければなりません。 【事務局】
**********
■そして、当会のほうが先に提訴したのに、裁判所は、タゴ欠席のまま、初公判からわずか4日後の平成11年5月31日に、公社勝訴の判決を出したのでした。そのときのもようを、当会の広報紙である安中市民通信「まど」第42号(1999年6月20日発行)から見てみましょう。
**********
第3幕・あっという間の幕引き
タゴを訴えた公社 『ひとり勝ち』
公社51億円事件で、平成10年12月9日群馬銀行と和解した安中市と土地開発公社は、4月初めにようやく「百年ローン」を無視するわけにいかなくなり、現在千葉刑務所で服役中のタゴだけを相手取り、約22億2千万円の返還を求める損害賠償請求訴訟を前橋地裁に起こした。
当会では、タゴ事件の当事者間における「第3幕」の不当利得返還請求は、事件の尻拭いの責任を当事者に負わせるためにも、当然行われることになると、事件発覚直後から各地での説明会で説明していた。
≪損害ない筈だった市・公社≫
平成7年6月3日に事件が公になってしぱらくの間、市・公社は「事件はタゴが群銀相手に詐欺を働いたものであり、市・公社は関係なく、従って被害もない」と市民に対して弁解していた。
ところが、群銀への利子返済期日が迫ってきた平成7年9月27日の市議会一般質問では、俄かに雲行きが怪しい答弁をするようになり、同10月10日付けの臨時広報二号で「市に負担が生じることも考えられます」と発表。その場しのぎの対応に市民を呆れさせた経緯がある。
≪しぶしぶタゴだけを提訴≫
結局、市・公社と群銀との和解で、巨額の損害金が発生することになってしまった。当会では、この前代未聞の事件がタゴ一人でなく、その使用責任や共犯責任も含めた関係者らの責任により、その損害は癒されるべきだと考え、逸早く3月12日に提訴に踏み切っていた。
一方、市・公社は3週間遅れて訴訟に踏み切った。群銀との和解から数えて4ヵ月もたって、やっと提訴したのには理由がある。
安中市としては、公社の前経営陣である理事・幹事や上司らの責任を不問にしつつ、タゴひとりだけを提訴する形にしたい。だが、わざわざ500万円余の収入印紙を貼って訴状を裁判所に提出しても、タゴから損害金を回収できないのは明らかであり、そのジレンマに頭を痛めていたからだ。
それが一転したのは、やはり市民に先を越されたからに違いない。しぶしぶ提訴せざるを得なかった。しかし、あくまで公社内での処理という見せかけの建て前を市民に示さなければならないため、安中市は訴訟参加せず、公社だけを原告にした。
必然、訴訟代理人には、小川前市長が東京から呼んできた弁護士(田辺・菰田両弁護士)が再び起用された。事件の真相を覆い隠すためには、内部事情を知りつくしている弁護士以外の者に、訴訟を委せるわけにはゆかないという事情がある。
≪タゴ欠席裁判は初公判で結審≫
初公判は提訴から2カ月足らずの5月27日(木)午前10時から、前橋地裁(村田達生裁判長)で行われた。被告の多胡邦夫側は誰も出廷せず、争うかどうかの答弁書も提出されなかった。そこで原告の公社側の訴訟代理人が、初公判で結審するように指摘をして、約10分足らずで裁判が終了した。判決は4日後の5月31日という超スピード裁判。
≪初公判から4日後のスピード判決≫
注目の判決公判は平成11年(1999年)5月31日(月)午後1時10分から前橋地裁2階の第22号法廷で開かれた。さっそく市民7名が傍聴に赴いた。
法廷の入り口に貼ってあった祗には次のように書かれていた.
事件担当 民事第一部
事件番号 平成11年(ワ)第165号
事件名 損害賠償
事件進行状況 判決言渡
原告 公社
被告 多胡邦夫
裁判官 村田達生
書記官 大島一則
初公判の書記官は阿部という人だったが今回交代していた。
午後1時10分からの公判では、最初に一件他の民事事件の判決言渡しと、最後に別の民事事件があり、3件続けて予定されていた。
午後1時に法廷に入った。傍聴席には公社局長と次長らの姿も見られ、大勢のマスコミ関係者も来ており、36席の傍聴席は満席。だが原告公社の理事長である中島市長の姿はなかった。
1時10分から遅れること10分、村田裁判長が姿を現した。本件は合議案件でないため、裁判官の席はひとつだけだった。判決言渡しなので、原告、被告席共に空席。
おもむろに持参した書類をひらいた裁判長は、まず一件目の判決文を読み上げた。「被告は金150万円を支払え。訴訟費用は被告が負担するものとすると、小声で読み上げた裁判長は、続いて次の書類を広げた。
「それではと・・・事件番号、平成11年、ワ、第165号・・・」と読み上げ始めたので傍聴席には一瞬緊張が走った。
≪タゴに22億円余支払命令≫
「主文、被告は原告に対して金22億2309万2000円を支払え。訴訟費用は被告が負担するものとする」
裁判長が無表情、無感情でボソボソと呟いた途端、公社局長と次長はさっさと席を立ち、ドアを明けてさっさと外に出ていった。裁判長が主文を読みだしてからこの間、わずか20秒足らず。あっけに取られていた傍聴市民や報道陣は、すぐに公社担当者の後を追った。
マスコミのインタビューを避けるように、足早に駐車場に向かおうとしていた公社関係者らは、報道陣に取り囲まれて、しぶしぶ質問に答えざるを得なくなった。
≪回収方法と可能性は未定≫
報道陣から、今後どうやってタゴから賠償金を回収するのか質問が出たが、公社の石井博明事務局次長は「2週間して(タゴが控訴せず)判決が確定してから、公社内で相談して対応を決めたい」と答えるに止まった。
当会は「訴状の写しをくれ」と頼んだが、石井次長は「あれはどこにも出してないんだよね」とそっけない。報道陣にも訴状の内容は知らされていないという。
なぜ今回の訴訟額が22億2309万2000円なのかについては、「群銀との和解金からタゴが水増ししていない正規の借入分を差し引いた金額だ」という答が返ってきた。
なぜ群銀との民事裁判の訴訟費用などを今回の訴額に含めなかったのか、という質問に対しては、「とりあえず実害だけということで請求した」というチンプンカンブンの答だった。
≪裁判費用1億円は支出済み≫
今回の訴訟代理人をなぜ刑事、民事と同じ弁護士に依頼したのか、弁護費用はいくらか、との問いに対しては、「群銀との民事をはじめ、事件当初から携わっている弁護士に今回も依頼した。訴訟費用は東京弁護士会の弁護士報酬会規に基づき算定される。既に、住民訴訟の分も含めて3件まとめて支払済みだ」という。
裁判費用をしつこく聞き質したところ、指一本を上げて見せ、「だいたい1億円」ということだった。これらの裁判費用で、今年度の公社の決算書は大幅赤字になったという。
5分くらいマスコミに取り囲まれ、不本意ながら喋らされた石井次長らは、「じゃあ、そういうことで後は問題ありませんね」とそそくさと車に乗り、市役所に戻って行った。
≪たちまち幕切れた第三幕≫
あまりにもあっけない幕切れに、まだキョトンとしたまま私たちも裁判所のロビーに戻った。新聞各社のインタビューに答えているときに、裁判所の係員が報道陣を呼びに来た。どうやら判決理由文の発表があるらしい。
市民はお呼びでないとのことなので、報道陣には「公社が損害金の賠償請求をしたわけだから、タゴから取りはぐれても、きちんと回収できる成算があるはず。市民としては、すでに提訴した訴訟で、使用者責任を明確化し、市・公社が取りはぐれのないよう最大限の努力をしていきたい」とコメントを出した。
【ひらく会事務局・裁判取材班】
**********
■以上のとおり、当時の中島市長は、タゴから巨額使途不明金のありかを聞き出そうともせず、タゴから何としてでも巨額損害金を返してもらおうという熱意も持たぬまま、形だけ、タゴに損害賠償請求をしたことにして、市民世論の沈静化を図ったのでした。しかしその懸念は、その後、わずか1488万円しか、タゴから賠償金を出させることができず、無策のまま10年目の節目を迎えてしまっている現実となって、市民の前に突きつけられています。
ふたたび、今度は理事長として安中市土地開発公社の経営に携わってから既に3年を経過しようとする岡田市長ですが、裁判費用を自分で工面してまでも、タゴを再提訴して、残る10年間で、タゴ事件で警察が必死になっても使途が判らなかった14億円余(当会の試算では20億円以上)を回収して、103年ローン問題にきちんと終止符を打とうとするのか、それとも、タゴと一緒に公社の運営に携わっていた理事・監事時代と同様に、タゴの身を案じて、これまでどおり市民に尻拭いをさせ、公社のことは「あとは野となれ山となれ」と、100年後の子孫まで引き継がせるつもりなのか。あと2ヵ月後に迫った消滅時効の期限に向けて、岡田理事長がどのように行動するのか、市民・納税者として注目していきたいと思います。
【ひらく会事務局】
この裁判の弁護士費用は、群馬銀行との民事裁判や、市民からの真相追及を回避するための回避ノウハウ料と抱き合わせでしたが、公社は東京の弁護士2名に合計なんと1億円を支払いました。にもかかわらず、安中市土地開発公社も、連帯保証人の安中市も、タゴやその親族、そして事件で焼け太った関係者らから損害を回収しようとせず、裁判所に出した訴状に貼る手数料の印紙代さえも、結局公金から支出した形になっています。結局、何の、誰のための裁判だったのかと疑問に思う今日この頃ですが、公社や市の怠慢がもたらした現在の債権未回収の状態は放置できません。勝訴から10年目を迎える今年5月31日までに、タゴを相手取り、再提訴をするかどうかの判断が、タゴをよく知る公社理事長でもある岡田市長に、今まさに問われているのです。
■では、10年前に安中市土地開発公社が、タゴを相手取り、損害賠償請求訴訟をしたときの状況を思い出してみましょう。まずは、当会が、事件後、毎月発行していた安中市民通信「まど」第40号(1999年4月20日発行)から引用してみましょう。
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51億円事件第3幕 公社がタゴを民事提訴
市民に先越されしぶしぶ損害賠償請求
相手をタゴに限定!!
安中市土地開発公社を舞台にした巨額横領着服事件は、①元職員タゴに対する刑事訴訟が、平成8年4月8日に判決(懲役14年、但し未決勾留200日含む)、②約40億円のカネをだましとられた(その後、隠し財産返済で33億円強に減額)群銀による安中市・公社相手の民事訴訟が平成10年12月9日に和解(和解金24億5000万円を市・公社が単純計算で103年返済)、という経緯をたどってきました。
さあいよいよ安中市・公社が原告になり、損害賠償請求をする番だと、市民は中島市長の迅速な決断と実行を[期待」したのですが、2ケ月たっても3ケ月たっても行動する気配はありませんでした。それどころか、当会が2月5日に安中市監査委員に住民監査請求をしたところ、2月16日にナント「不受理]という通知が届く始末で、市民をガッカリさせました。
ところが4月上旬に、安中市でなく公社の名前で突然、元職員タゴを被告として総額約22億2千万円の損害賠償請求訴訟を起こしたのです。なぜ約22億2千万円という損害額なのか、その根拠はわかりません。
当会の試算によれば、タゴが群銀から不正に借入れ、公社名義の口座から横領した実質40億円近いカネ(返済や和解により24億5千万円に減額)、その他にも、安中市から振込まれた公金3億4500万円の横領、および帳簿改ざんによる粉飾経理で浮かせた数億円の公金横領が損害として計上されなければならないはずです。
この度の原告公社による突然の提訴の背景には、この他にもいろいろな疑問があります。
損害額がなぜ22億2千万円なのか、を始め、なぜ連帯保証人の安中市長は訴訟参加をしなかったのか、なぜ元職員タゴ一人だけを相手取ったのか、なぜ事件発覚後3年10ケ月余もたってから、また群銀との和解成立から115日もたってから急に提訴したのか・・・などです。
この背景を知るには訴状の写しを入手し、疑問点を明らかにしたいところですが、おそらく情報開示で裁判の書類(訴状、答弁書、準備書面など)の公開を請求しても、安中市長は「公社は別法人だから」と言って拒む可能性が高いでしょう。
原告公社の訴訟代理人の弁護士は「事件を風化させないためにも、張本人の責任を厳しく追及しなければならない」(4月6日付上毛紙)と、この提訴の抱負を公社理事長(=安中市長)に代わって語っていますが、公社の使用者責任はいったいどういうふうに追及するのか、聞きたいものです。
また、市議会3月定例会で明らかになったように市・公社は東京の田辺・菰田(こもだ)弁護士に着手金一千万円と日当等実費を支払ったようですが、今度の裁判では、いったいどこの弁護士を起用しているのか、大変興味が湧きます。
タゴが塀の向こうに居るため、民事訴訟がどう展開してゆくのか予断を許しません。当会のこれまでの印象ですと、塀の向こうは一種の「安全地帯」であり、民事訴訟を通じて、タゴにどれほど損害を償わせられるのか、また事件の真相がどれほど明らかになるのか、心配なところです。
当会ではそのため、タゴ以外にも、その私的縁故者、公社の監督責任者、安中市の職責者、その他の本件関与者らに対しても損害金を回収するよう市監査委員に監査請求したわけです。
しかし、門前払いを言い渡されたため逸早く法的対処に踏み切ることとし、3月12日に実行しました。
今回の公社による突然のタゴ提訴には、そうした諸般の事情が複雑に絡んでいると想像できます。
いずれにしても、安中市は事件の幕引きを性急に行おうとせず、事件の尻拭いをきちんと完遂させ、この未曾有のハレンチ事件の真相を市民に明かにすることを最重点目標に掲げて、行政の信頼回復に務めなければなりません。 【事務局】
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■そして、当会のほうが先に提訴したのに、裁判所は、タゴ欠席のまま、初公判からわずか4日後の平成11年5月31日に、公社勝訴の判決を出したのでした。そのときのもようを、当会の広報紙である安中市民通信「まど」第42号(1999年6月20日発行)から見てみましょう。
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第3幕・あっという間の幕引き
タゴを訴えた公社 『ひとり勝ち』
公社51億円事件で、平成10年12月9日群馬銀行と和解した安中市と土地開発公社は、4月初めにようやく「百年ローン」を無視するわけにいかなくなり、現在千葉刑務所で服役中のタゴだけを相手取り、約22億2千万円の返還を求める損害賠償請求訴訟を前橋地裁に起こした。
当会では、タゴ事件の当事者間における「第3幕」の不当利得返還請求は、事件の尻拭いの責任を当事者に負わせるためにも、当然行われることになると、事件発覚直後から各地での説明会で説明していた。
≪損害ない筈だった市・公社≫
平成7年6月3日に事件が公になってしぱらくの間、市・公社は「事件はタゴが群銀相手に詐欺を働いたものであり、市・公社は関係なく、従って被害もない」と市民に対して弁解していた。
ところが、群銀への利子返済期日が迫ってきた平成7年9月27日の市議会一般質問では、俄かに雲行きが怪しい答弁をするようになり、同10月10日付けの臨時広報二号で「市に負担が生じることも考えられます」と発表。その場しのぎの対応に市民を呆れさせた経緯がある。
≪しぶしぶタゴだけを提訴≫
結局、市・公社と群銀との和解で、巨額の損害金が発生することになってしまった。当会では、この前代未聞の事件がタゴ一人でなく、その使用責任や共犯責任も含めた関係者らの責任により、その損害は癒されるべきだと考え、逸早く3月12日に提訴に踏み切っていた。
一方、市・公社は3週間遅れて訴訟に踏み切った。群銀との和解から数えて4ヵ月もたって、やっと提訴したのには理由がある。
安中市としては、公社の前経営陣である理事・幹事や上司らの責任を不問にしつつ、タゴひとりだけを提訴する形にしたい。だが、わざわざ500万円余の収入印紙を貼って訴状を裁判所に提出しても、タゴから損害金を回収できないのは明らかであり、そのジレンマに頭を痛めていたからだ。
それが一転したのは、やはり市民に先を越されたからに違いない。しぶしぶ提訴せざるを得なかった。しかし、あくまで公社内での処理という見せかけの建て前を市民に示さなければならないため、安中市は訴訟参加せず、公社だけを原告にした。
必然、訴訟代理人には、小川前市長が東京から呼んできた弁護士(田辺・菰田両弁護士)が再び起用された。事件の真相を覆い隠すためには、内部事情を知りつくしている弁護士以外の者に、訴訟を委せるわけにはゆかないという事情がある。
≪タゴ欠席裁判は初公判で結審≫
初公判は提訴から2カ月足らずの5月27日(木)午前10時から、前橋地裁(村田達生裁判長)で行われた。被告の多胡邦夫側は誰も出廷せず、争うかどうかの答弁書も提出されなかった。そこで原告の公社側の訴訟代理人が、初公判で結審するように指摘をして、約10分足らずで裁判が終了した。判決は4日後の5月31日という超スピード裁判。
≪初公判から4日後のスピード判決≫
注目の判決公判は平成11年(1999年)5月31日(月)午後1時10分から前橋地裁2階の第22号法廷で開かれた。さっそく市民7名が傍聴に赴いた。
法廷の入り口に貼ってあった祗には次のように書かれていた.
事件担当 民事第一部
事件番号 平成11年(ワ)第165号
事件名 損害賠償
事件進行状況 判決言渡
原告 公社
被告 多胡邦夫
裁判官 村田達生
書記官 大島一則
初公判の書記官は阿部という人だったが今回交代していた。
午後1時10分からの公判では、最初に一件他の民事事件の判決言渡しと、最後に別の民事事件があり、3件続けて予定されていた。
午後1時に法廷に入った。傍聴席には公社局長と次長らの姿も見られ、大勢のマスコミ関係者も来ており、36席の傍聴席は満席。だが原告公社の理事長である中島市長の姿はなかった。
1時10分から遅れること10分、村田裁判長が姿を現した。本件は合議案件でないため、裁判官の席はひとつだけだった。判決言渡しなので、原告、被告席共に空席。
おもむろに持参した書類をひらいた裁判長は、まず一件目の判決文を読み上げた。「被告は金150万円を支払え。訴訟費用は被告が負担するものとすると、小声で読み上げた裁判長は、続いて次の書類を広げた。
「それではと・・・事件番号、平成11年、ワ、第165号・・・」と読み上げ始めたので傍聴席には一瞬緊張が走った。
≪タゴに22億円余支払命令≫
「主文、被告は原告に対して金22億2309万2000円を支払え。訴訟費用は被告が負担するものとする」
裁判長が無表情、無感情でボソボソと呟いた途端、公社局長と次長はさっさと席を立ち、ドアを明けてさっさと外に出ていった。裁判長が主文を読みだしてからこの間、わずか20秒足らず。あっけに取られていた傍聴市民や報道陣は、すぐに公社担当者の後を追った。
マスコミのインタビューを避けるように、足早に駐車場に向かおうとしていた公社関係者らは、報道陣に取り囲まれて、しぶしぶ質問に答えざるを得なくなった。
≪回収方法と可能性は未定≫
報道陣から、今後どうやってタゴから賠償金を回収するのか質問が出たが、公社の石井博明事務局次長は「2週間して(タゴが控訴せず)判決が確定してから、公社内で相談して対応を決めたい」と答えるに止まった。
当会は「訴状の写しをくれ」と頼んだが、石井次長は「あれはどこにも出してないんだよね」とそっけない。報道陣にも訴状の内容は知らされていないという。
なぜ今回の訴訟額が22億2309万2000円なのかについては、「群銀との和解金からタゴが水増ししていない正規の借入分を差し引いた金額だ」という答が返ってきた。
なぜ群銀との民事裁判の訴訟費用などを今回の訴額に含めなかったのか、という質問に対しては、「とりあえず実害だけということで請求した」というチンプンカンブンの答だった。
≪裁判費用1億円は支出済み≫
今回の訴訟代理人をなぜ刑事、民事と同じ弁護士に依頼したのか、弁護費用はいくらか、との問いに対しては、「群銀との民事をはじめ、事件当初から携わっている弁護士に今回も依頼した。訴訟費用は東京弁護士会の弁護士報酬会規に基づき算定される。既に、住民訴訟の分も含めて3件まとめて支払済みだ」という。
裁判費用をしつこく聞き質したところ、指一本を上げて見せ、「だいたい1億円」ということだった。これらの裁判費用で、今年度の公社の決算書は大幅赤字になったという。
5分くらいマスコミに取り囲まれ、不本意ながら喋らされた石井次長らは、「じゃあ、そういうことで後は問題ありませんね」とそそくさと車に乗り、市役所に戻って行った。
≪たちまち幕切れた第三幕≫
あまりにもあっけない幕切れに、まだキョトンとしたまま私たちも裁判所のロビーに戻った。新聞各社のインタビューに答えているときに、裁判所の係員が報道陣を呼びに来た。どうやら判決理由文の発表があるらしい。
市民はお呼びでないとのことなので、報道陣には「公社が損害金の賠償請求をしたわけだから、タゴから取りはぐれても、きちんと回収できる成算があるはず。市民としては、すでに提訴した訴訟で、使用者責任を明確化し、市・公社が取りはぐれのないよう最大限の努力をしていきたい」とコメントを出した。
【ひらく会事務局・裁判取材班】
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■以上のとおり、当時の中島市長は、タゴから巨額使途不明金のありかを聞き出そうともせず、タゴから何としてでも巨額損害金を返してもらおうという熱意も持たぬまま、形だけ、タゴに損害賠償請求をしたことにして、市民世論の沈静化を図ったのでした。しかしその懸念は、その後、わずか1488万円しか、タゴから賠償金を出させることができず、無策のまま10年目の節目を迎えてしまっている現実となって、市民の前に突きつけられています。
ふたたび、今度は理事長として安中市土地開発公社の経営に携わってから既に3年を経過しようとする岡田市長ですが、裁判費用を自分で工面してまでも、タゴを再提訴して、残る10年間で、タゴ事件で警察が必死になっても使途が判らなかった14億円余(当会の試算では20億円以上)を回収して、103年ローン問題にきちんと終止符を打とうとするのか、それとも、タゴと一緒に公社の運営に携わっていた理事・監事時代と同様に、タゴの身を案じて、これまでどおり市民に尻拭いをさせ、公社のことは「あとは野となれ山となれ」と、100年後の子孫まで引き継がせるつもりなのか。あと2ヵ月後に迫った消滅時効の期限に向けて、岡田理事長がどのように行動するのか、市民・納税者として注目していきたいと思います。
【ひらく会事務局】