市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

横領した巨額使途不明金をタゴ一族から取り戻させるために岡田市長を提訴

2009-05-25 01:38:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■当会は、1週間後の5月31日に迫ったタゴに対する安中市土地開発公社の損害賠償請求権の10年経過を目前にして、4月1日付で岡田市長に関する住民監査請求書を安中市監査委員に提出しておりましたが、既報のとおり、安中市監査委員は、4月22日付で門前払い同然の却下通知を当会に送ってきました。

 せめて、60日間、じっくりと、市民から提出された住民監査請求書の中身を精査して、この異常な事件を安中市民に尻拭いさせることの無いようにするのが、安中市監査委員の役目のはずでしたが、実際には、わずか3分の1の期間で、突き返されてしまったのです。いかに、安中市監査委員(猿谷祐康、田中伸一の両名)は有名無実で役に立たないか、痛感した次第でした。

 当会は、当初は60日間の住民監査請求期間を予想していたため、棄却通知が出されるにしても、6月初めごろになると予想していたので、これほど早く、門前払いしてくるとは思いませんでした。

■法律によると、住民監査請求の却下通知を受け取ってから、30日以内に提訴しないと、住民訴訟の権利が失われてしまいます。そこで、本来は、安中市の岡田市長の対応をギリギリまで見極めたうえで、提訴に踏み切るかどうか、検討する予定でしたが、急遽、住民訴訟資格の確保のために、当会は5月22日(金)午前10時すぎに、前橋地方裁判所に、タゴの再提訴を安中市に求めるため、安中市の岡田義弘市長を相手取り、訴状を提出しました。

 5月23日(土)の市長対話を機会に、当会は本件への対応について直接岡田市長に質したところ、岡田市長は「タゴが生存する限りやらなきゃあ」とか「タゴ所有不動産の競売などの事案も含めて、この件で今法律の専門家と協議中」などと答えていますが、これまでの経緯から、当てにできません。もし、岡田市長がなにも手続きを取らずに、タゴへの損害賠償請求権を失効させた場合には、その責任を問う手段を、市民として確保する必要があることと、あるいは、もし岡田市長がギリギリのタイミングでタゴを再提訴した場合でも、中途半端に手を抜かないようにプレッシャーをかけておく必要があること。どっちになっても対応できるように、住民監査請求が却下された4月22日からちょうど30日後の5月22日に、提訴に踏み切ったものです。

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【訴 状】
平成21年5月22日
前橋地方裁判所民事部 御中
原告 小川 賢
   〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地(送達場所)
         原告 小川 賢
   〒379-0192群馬県安中市安中一丁目23-13
         被告 安中市長 岡田義弘 電話027-382-1111
巨額横領損害金回収等請求事件
 訴訟物の価格 160万0000円(算定不能)
 貼用印紙額   1万3000円
請求の趣旨
1 被告は,連帯保証先の安中市土地開発公社(以下「公社」という。)理事長岡田義弘が,公社元職員多胡邦夫に対して,現在残っている損害賠償請求権を行使し,時効前に再提訴することで,請求権残額22億821万1500円を確実に回収するように指導し,安中市に被害が及ばないようにせよ。
2 被告は,連帯保証先の公社理事長岡田義弘が,平成20年12月26日に群馬銀行との間で交わした合意を破棄し,債務18億5000万円の支払いを拒否するように指導し、これ以上、安中市に被害が及ばないようにせよ。
3 被告は,連帯保証先の公社理事長岡田義弘に対して,公社の余裕金を定款どおり運用し,これを群馬銀行への債務金として使わないように指導するとともに,群馬銀行への債務は,公社理事長岡田義弘自ら負担するように指導し、これ以上、安中市に被害が及ばないようにせよ。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決,並びに仮執行の宣言を求める。
請求の原因
1 当事者
(1) 原告は,安中市に在住し,納税義務を果たしている市民である。
(2) 被告は,平成18年4月24日から現在まで,安中市の市長である。
2 提訴に至る過程
(1) 原告は,平成21年4月1日に,地方自治法第242条第1項に基づき,安中市監査委員に対して被告に関する安中市職員措置請求を行った。(甲1)
(2) 安中市監査委員は、平成21年4月22日に,この請求に対して却下を通知した。(甲2)
3 不法行為
(1) 公社は,安中市土地開発公社定款第24条(余裕金の運用)で定めるように,「(1)国債、地方債その他主務大臣の指定する有価証券の取得 (2)銀行その他主務大臣の指定する金融機関への預金(平20県指令市601―9・一部改正)」の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
4 被告の責任
(1) 公社で平成7年5月18日に発覚した巨額詐欺横領事件では,元職員多胡邦夫が総額51億円余りを群銀から騙し取ったり,安中市から横領したりした。その結果、平成10年12月9日に、群馬銀行と安中市・公社の間で和解が成立し,市が連帯責任を負い,公社が103年に亘り総額24億5000万円を支払うことで合意した。
(2) 和解を受けて,公社は,元職員多胡邦夫に対して損害賠償請求を提訴し,平成11年5月31日に判決で22億2309万2000円とこれに対する民事法定利率である年5分の支払いを認める請求権を獲得した。
(3)和解を受けて,公社は安中市の債務保証を得て,平成10年12月25日に債務金の一部4億円を群馬銀行に支払い,その後,毎年12月25日に2000万円ずつ,債務金の支払いを平成20年12月25日まで10年間続けた。これまで群馬銀行に払った債務金は総額6億円となる。
(4) 公社は安中市の債務保証を得て,平成20年12月26日に,今後さらに10年間,毎年12月25日に2000万円を群馬銀行に支払い、その後も同じように支払い続ける意向を群馬銀行に示す「証」と称する文書を群馬銀行との間に締結した。
(5) この間,公社は,群馬銀行への債務金の原資として,元職員多胡邦夫に対する損害賠償請求権を行使すべき所,一度も内容証明を出す事をせず,余裕金が出た場合,それを群馬銀行への債務金の原資として違法に支出してきた。
(6) さらに,元職員多胡邦夫に対する損害賠償請求権についても,判決が平成11年5月31日だったことから,権利を行使することのできる期間がもうすぐ期限切れとなる恐れがあり,それまでに元職員多胡邦夫に対して裁判上の請求を行わない場合,それ以降に,元職員から時効の援用を告げられた途端に,巨額の請求権が失われることになり,被告の責任は重大である。
5 損害
(1) そのため,元職員に対して,再度,裁判上の請求をしない場合,公社が今後,群馬銀行に対して,和解に伴う巨額の債務を支払う過程で,債務負担に耐えかねて安中市から公金を資本注入しなければならない事態も,十分想定される。
(2) これに関連して,平成21年3月定例市議会では,被告が財政調整基金を取り崩して,公社に貸し付けようとする議案も提案されている。ちなみにこれは全会一致で否決されたと聞くが,このように被告は,公社に対して公金を投入しようとしている意図がうかがえる。
(3) 元職員への損害賠償請求権の行使を怠る場合,財産の管理を怠ることになるばかりか,和解金の支払のため,借り入れ等による債務その他の義務の負担を生じる可能性が高くなるのは明白である。しかも,現下の経済状況を俯瞰する限り,そのような可能性について誰も否定できないというべきである。
(4) かかる状況下において,被告が元職員多胡邦夫に対する損害賠償請求権を行使するための再提訴を行わず,群馬銀行に対する債務金の支払いをこのまま継続すれば,安中市の財務会計上の行為として,借り入れ等による債務その他の義務の負担が,相当の確実さで予測される。
6 まとめ
被告は,債務保証先の公社理事長岡田義弘が,公社定款を無視して,元職員多胡邦夫の横領金の尻拭いに公社の余裕金を充当した故意が認められる一連の不法行為により,元職員多胡邦夫に対し,再提訴を怠っている公社には損害が発生するのは明らかであり,公社の余裕金がその損害補填に充当できないことから,安中市において債務その他の義務の負担が相当の確実さで予測される。さらには被告自身,元職員への再提訴を行わない公社理事長の立場を擁護しており,安中市の損害回避を妨げている。よって被告に対して請求の趣旨に示す事項を求めるものである。
証拠方法
1 甲1号証(安中市職員措置請求) 1通
本件請求が住民監査請求の前置を踏まえていることを立証する。
2 甲2号証(安中市監査委員からの通知) 1通
本件請求が住民監査請求の前置を踏まえていることを立証する。
3 その余は,必要に応じて提出する。
付属書類等
1 甲1,2号証(写し) 各1通
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■上述のように、今回は、住民監査請求が却下されたため、住民訴訟を提起するタイミングが早まったので、若干フライング気味の提訴となってしまいましたが、タゴ51億円事件では、これまで公社という別法人の中の問題として、市民への被害は皆無だという姿勢をとってきた安中市なので、かえってフライング気味のほうが予防的措置としてはよかったかもしれません。

 訴状には、3つの請求趣旨を摘示しました。すなわち、①タゴへの再提訴、②群銀との合意の破棄、③公社余裕金の違法運用の禁止を、岡田市長に求めています。このうち、それぞれについて、岡田市長がきちんと履行すれば、当会はいつでも、その請求の趣旨について、取り下げることにやぶさかではありません。しかし、岡田市長が有言不実行の対応であれば、徹底的にシロクロをはっきり付けたいと思います。

 ただし、今回も楽観はできません。裁判所はかつて「土地開発公社は安中市とは別法人であり、安中市には損害が無い」として、当会に敗訴を言い渡した前歴があるからです。当然、今回も当会の請求を門前払いにしようとする圧力が、安中市から裁判所に加わることは、想像に難くありません。

■前橋地方裁判所民事部では、当会の訴状を受理し、本事案の事件番号を平成21年(行ウ)第8号と認定しました。早ければ、1ヵ月後の6月下旬に第1回の口頭弁論のための期日呼出状が発せられるものと見られます。そのころには、タゴ再提訴に対する岡田市政の対応方針がはっきりするものと思われます。

【ひらく会法務部】
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