■本日、平成23年11月8日(水)午前11時から、東京高等裁判所の8階にある民事第817号法廷で、平成23年(行コ)第306号公文書不公開処分取消請求控訴事件の第一回口頭弁論が行われました。当会からは事務局長が出席。一方、安中市側からは顧問弁護士の渡邉明男氏のほか、安中市企画課から田中、富田、須藤の3氏が岡田義弘市長の代理人として出席しました。また、高裁は3人の裁判官による合議制として本件について、審議する体制です。
↑今日の東京高裁のようす。↑
冒頭、裁判長が、これまでに控訴人(当会)と被控訴人(安中市長)から提出された裁判書類として、それぞれ控訴人から控訴状と控訴理由書、被控訴人から答弁書と準備書面(1)が提出されていること、そして、本日、控訴人から準備書面(1)が提出され、これらが陳述されたとして、訴訟指揮が行われました。
控訴人(当会)からは、本日の10時過ぎに、第4民事部に準備書面(1)を提出しておいたため、裁判長から、「内容について簡単に説明してほしい」と訴訟指揮がありました。そこで控訴人(当会)は、「この書面の内容は、被控訴人の答弁書と準備書面(1)の内容に対して、あらためて、絵画等6点は、元職員が職員として勤務していた期間に公金で買ったものであり、あきらかに安中市の所有物であることを説明するものです」などと簡単に説明しました。
■続いて、証拠書類として控訴人(当会)から甲11号証と甲12号証が提出され、これらはいずれも写し(コピー)であることから、原本チェックは行われず、一方、被控訴人(安中市長)から提出された乙1号証と乙2号証は原本のため、チェックが行われました。被控訴人(安中市長)から、15年前の計画書が原本として提示されましたが、たぶん改ざんはされていないだとうとして、控訴人(当会)として確認をしておきました。
その後、裁判長から控訴人(当会)に対して、「これは法律的な、また技術的なことだが」と前置きのあった後、「控訴の趣旨として原判決を取り消す、としか書いてないが、それに加えて、当初、一審で請求した、“本件異議申立てに係る処分のうち、絵画等6点に関するビジュアル情報を不開示とした部分を取り消す”ということを控訴の趣旨に追加することになる」と指揮があったため、控訴人(当会)はこれを了承しました。
■続けて裁判長は、被控訴人(安中市長)に対して、「本日、控訴人から準備書面が提出された。これは被控訴人の反論に対する再反論だが、この控訴人の準備書面について、どのように考えるか」と質問したところ、被控訴人の代理人である渡邉明男・顧問弁護士は「まだ、いまさっきもらったばっかなので…」と言いつつ、当会が提出した準備書面をペラペラとめくりつつ、「結局、これに対する反論は同じことになるので、あらためて(再反論は)必要ない」との見解が示されました。
裁判長はさらに被控訴人(安中市長)に対して「すでに答弁書でも主張されておられるが、控訴人とすれば、絵画等6点は公社のものではなく、市の所有ではないか、と主張していて、被控訴人は、組織として公社は別の組織だとしているが、市長が理事長と同一であり、控訴人としては、そういう点からすれば(公社は)市と同じ身内ではないか、という主張だがその点はどうか。別組織であるという点については?」と質問したところ、安中市長の代理人の顧問弁護士は「これは別の組織だ…、と思う」と述べるにとどまりました。
■裁判長は「公社にも条例で開示を求める規定があると思う。市としても、いちおう公社に開示を求めたわけだが、なぜ…」と、疑問を被控訴人にぶつけると、安中市長の代理人は「(それを公社が)拒否したわけだ」と答えました。裁判長は「同じ市長であるわけだが、拒否する理由が分かりにくい。なぜ…」と重ねて疑問を被控訴人にぶつけたところ、市長の代理人は「(ビジュアル情報を)明らかにすると売却の時に不利益になる」と答えました。
すると、今度は右陪審の裁判官が、「それは答弁書でも書かれているが、真贋についてはいずれ明らかにしなければならないはず。ニセモノを持つわけには行かないし、もしニセモノだとわかっても、それは贋作として売るしかない。(ビジュアル情報で)真贋があきらかになることがなぜ問題なのか?の重ねて質問しました。
渡邉明男・顧問弁護士は、さすがにこれ以上、返答に窮したらしく「必要であればまた準備書面で出す」と苦し紛れに言いました。
これをみていた控訴人(当会)は、呆れてしまい「(公社を別法人として扱いたがる安中市役所では)この状態がもう16年間も続いているからなあ」と思わず言葉を漏らしてしまいました。
■裁判長はすかさず、「進行について合議する」と言い残し、3名の裁判官と共に法廷から一時退場しました。
その間、手持ち無沙汰だった為、控訴人(当会)は、傍聴席に座っている安中市企画課の3氏に向かって、「いま絵画等6点はどこにしまってあるのですか」と訊いて見ました。しかし、3氏はうつむくだけで返事がありません。そこで、「本当に、絵画等6点は存在するのでしょうか。ひょっとしたら無いのでは?」と再度質問しましたが、これまた黙秘されました。
■約3分間ほど経過しました。裁判長を初め3名の裁判官が再入場しました。一同、起立して礼をして迎えました。
裁判長は「進行について裁判所で合議した。今後の進め方については、この処分取消の訴訟自体については、裁判所で判断できるため、これにて弁論を終結する。ただし、若干、さきほどあったように公社が開示を拒否する理由が曖昧であることと、市が公社に対して積極的に開示を求めようとしないのはどうしてなのか。このあたりをもう少しお聞かせ願いたいので、被控訴人で検討してもらい、必要な範囲で書面を提出するのであれば11月末までに提出すること。一応、終結後の書面なので陳述はしないが、控訴人のほうでも何かあれば、それはそれで受け付ける」と述べました。
控訴人(当会)としては、前橋地裁とは全く異なる裁判所の対応に驚くと共に、思わず「ありがとうございます」と感謝の言葉を発しました。
↑裁判所の壁に掲示されている傍聴についての注意事項。法廷内では写真撮影や録音は禁止されているため、この記事はメモと記憶に頼っています。なるべく正確に再現できるように努めてはいますが、不正確な個所があるかもしれません。その場合はご指摘ください。↑
■裁判長は「ということで少し時間をいただく。判決の言渡期日は12月22日、木曜日、午後1時20分とする」と宣言し、3名の裁判官は法廷を退出していきました。
安中市が、元職員をかばう為に、どのような準備書面(2)を11月末までに提出してくるのか、非常に関心が集まるところです。
【ひらく会事務局】
※参考までに、本日、当会が東京高裁に提出した準備書面(1)は次の通りです。
平成23年(行コ)第306号公文書不公開処分取消請求控訴事件
控 訴 人 小 川 賢
被控訴人 安 中 市
準 備 書 面 (1)
平成23年11月8日
東京高等裁判所第4民事部 御中
〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
控訴人 小 川 賢
電 話 027-382-0468
FAX 027-381-0364
Ⅰ.平成23年10月24日付の答弁書に対する反論
1.第2 第2項(安中市情報公開条例(以下「条例」という。)2条2項を無視した判決の誤り)について
(1)被控訴人は「安中市土地開発公社(以下「公社」という。)は、昭和55年に群馬県知事の認可を得て設立され、安中市とは別個の独立した法人であって、所有する文書も市の業務とは別に区分され、公社で独自に管理している。」と主張しているが、実際には、公社は安中市の幹部やOBや市議会関係者の利権の巣窟として機能していたものであり、「公社で独自に管理している」というべき代物ではないことは、巨額詐欺横領事件の発生の経緯と結果を見ても明らかである。
(2)被控訴人は「本件に係る絵画等6点については、元職員が職務行為とは全く無関係に、元職員本人の個人的な理由により、骨董品又は美術品蒐集の一環で行われたものであるため、懲戒免職前に取得したとしても、公社又は安中市が所有するものではないことは明らかである。」と主張しているが、本件絵画等6点を含む骨董品又は美術品の購入資金は、元職員が詐欺横領により取得した公金に由来するものである。したがって、「その損害賠償の一部の支払いとして、元職員の妻が公社に差し入れた」としても、元職員の知人のものでも、元職員の配偶者のものでもなく、もともと安中市の財産であり、安中市の所有物である。現に、安中市・公社は連帯して毎年12月25日に、群馬銀行に和解金として2000万円を支出しており、安中市民は史上空前の詐欺横領事件の尻拭いをさせられている。
(3)被控訴人は「「したがって、控訴人から情報開示請求により、条例第24条第2項に基づいて、安中市長として公社に本件文書の提出を求めたが、経営に支障を及ぼすおそれがあるなどの理由により、その提出を拒否されたため、本件文書については、実施機関(安中市長)として保有しておらず、不存在である。」としているが、巨額詐欺横領事件は安中市長が公社理事長を兼務していたからこそ起きた事件であることは、刑事記録でも裁判記録でも明らかである。それなのに、16年前のように、岡田義弘安中市長が岡田義弘公社理事長に対して文書の提出を求め、岡田義弘公社理事長が岡田義弘市長に本件文書の提出を拒否されたから、安中市長として不存在である、などという理論はいったいどこから出てくるのか。元職員と懇意だった岡田義弘市長(事件当時市議ないし県議)ならではの特別な事情が、そのような対応をさせているのではないか。なお、巨額詐欺横領事件の真相はもとより、この特別な事情についても、被控訴人は、これまで一度も安中市民に説明責任を果たしたことがない。
(4)被控訴人は「また、条例第24条第2項の情報提出については、強制力はないため、公社の任意の協力が得られない以上、実施機関(安中市長)に本件文書(情報)が存在しないのは、やむを得ないことであるとした、原判決は正当なものである。」と主張しているが、安中市の屋台骨を揺るがしてきた巨額詐欺横領事件の14億円余りといわれる巨額使途不明金の行方とも関係する本件絵画等6点について、事件当事者である被控訴人が「情報提供の求めに対して強制力が無い」などとどうして言えようか。公社は、民間で言えば、安中市の100%子会社であり、連結決算の対象である。そこが保管している安中市の公金で購入した絵画等6点の情報は、当然、親会社の指示により、子会社から無条件で提出されるべきものである。しかも同一人物である安中市長=公社理事長が、意見を異にすること自体、民間ではありえない事象である。このような非常識な論理が、公正な裁判所で通用すると思ったら大間違いだ。
2.第3 第3項(絵画等6点は元職員が在職中に入手した行政文書)について
(1)被控訴人は「これは条例を恣意的かつ不当に解釈したものであり、その主張を認めることは到底できない。」と主張しているが、噴飯ものである。そもそも、「実施機関の職員が職務上作成し又は取得した…」とは、行政機関の職員が当該職員に職務上の命令として割り当てられた業務を遂行する立場で、すなわち公的立場において作成し、又は取得した文書の事を示すものである。元職員は、実施機関の職員であり、公社公印を駆使して、さまざまな公文書を自由自在に作成できた立場にある。したがって、元職員の身分を知る富岡市在住の古物商の免許を持ち、仲介者としてほとんど全ての骨董品又は古美術品の購入に当たった事件当時甘楽信用金庫勤務の知人としては、元職員が「美術館の建設計画がある」と言っても言わなくても、公務員であった元職員からの要請を受ければ、なんらかの公的な目的で購入が必要だと思うはずであり、だから、仲介者は何の疑いもなくこれらの絵画等6点の購入を仲介したのである。
(2)これに関連して、前項1.(2)にも示したように、被控訴人は「本件に係る絵画等6点については、元職員が職務行為とは全く無関係に、元職員本人の個人的な理由により、骨董品又は美術品蒐集の一環で行われたものである。」と主張しているが、仲介人は、当時甘楽信用金庫安中支店に勤務しており、元職員に1000万円規模の住宅資金の融資をしていた。したがって、何億円もの単位に上る巨額の骨董品又は美術品収集のための資金が元職員本人の自己資金であるとは到底信じられるはずもなく、当然、元職員が「美術館の建設計画がある」と言っても言わなくても、公務員であった元職員の職位や職務を考えて、なんらかの公的な目的で骨董品又は美術品を収集していると思うのは当然であり、被控訴人の主張は、この点からも失当である。
(3)このように、外見上からも、行政機関の職員が巨額の資金を使って行った行為については、その結果として公的立場において作成し、又は取得したものと考えることは決して不自然ではない。控訴人が原審でも主張したとおり、元職員が本件絵画等6点を取得した時期については、あきらかに元職員が懲戒免職前に取得したものであり、絵画等6点のように、著名と思われる作品を、一般の市民の立場で購入することは不可能であり、元職員が公的な職務に携わっていたからこそ、購入が可能であった。したがって、本件絵画等6点を購入した行為は公務として行ったものとみなすことができる。
(4)控訴人が提出した甲11号証については、捜査にあたった当該警察官らが自ら告白しているように、「幹を切るだけで精一杯で、枝葉までは切れなかった」としていることから、甲11号証に記載のある関係者のみならず、多くの市役所の関係者らが、巨額の資金を自由に扱える元職員に対して、一部にはいぶかっていた者もいるかもしれないが、つながりをもっていたと考えるのが妥当である。
(5)にもかかわらず、被控訴人は「公文書の不公開処分の取消についてであるにもかかわらず控訴人は、甲11号証の捜査資料も論拠に、既に終結した刑事事件について憶測を廻らせ、繰り返し詭弁を論述し、条例の不当な解釈を用い、恣意的な結論づけを行っている。」などと主張している。史上空前の巨額詐欺横領事件を起こした自治体としての反省や後悔もなく、あたかも事件に関与していないかのような無責任な陳述に対して、安中市民及び納税者として看過できるものではない。強く抗議する。
(6)被控訴人は、条例第2条第2項を引き合いに出して、行政文書について「『・‥当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの…』としている。『組織的に用いる』とは、組織として共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該行政機関の組織において、業務上必要なものとして、利用又は保存されている状態のものを意味する。仮に、絵画等6点が文書であるとして、また、その取得時期が元職員の懲戒免職前であったとしても、前述のとおり元職員が公務として行ったものではなく、単独で為した行為であることは間違いがないため、実施機関の職員が組織的に用いるもので実施機関が保有している文書には該当しない」と主張しているが、元職員が公務員であったからこそ、多数の高額な骨董品又は古美術品を購入できたわけであり、一般の常識から言えば、本件絵画等6点の購入は公務として行われたということができる。
(7)安中市がいまだに、公社を温存しているのは、群馬銀行に対する和解金の支払いの原資をひねり出す為に必要不可欠な存在だからだ。高崎市を初め全国のほとんどの自治体では、総務省の指導により、公社の公共用地の先行取得という役割は既に終わったとして、公社を解散する動きが全国的に活発化している。にもかかわらず、いまだに公社の権益を後生大事に守ろうとする岡田義弘市長=公社理事長(平成7年5月18日の事件発覚当時は、市会議員から県会議員に鞍替えして当選した直後)には、元職員が起こした巨額詐欺横領事件に関与したひとりとして、また、公社役員経験者として、事件発覚当時から、詳細な経緯と事実関係を元にした説明責任が求められていたにもかかわらず、いまだにそれが果たされていない。
Ⅱ.被控訴人の準備書面(1)についての反論
1.第1 第1項「本件公文書(絵画等6点)は安中市元職員が職務上取得したものであること」について
(1)被控訴人は「控訴人は既に終了した刑事事件について推論で論理展開を行っている。絵画等6点の取得については、元職員がどのような経緯で取得したのか、安中市にとって不知であり、控訴人の推論を認めることはできない。」と主張しているが、事件の当事者である被控訴人がこのような無責任な陳述をする背景には、何か特別な理由があるに違いない。通常であれば、巨額の公金を横領された自治体としては、積極的に捜査に協力し、刑事記録についても積極的に入手し、事件の真相と責任の所在の明確化、そして再発防止策を徹底的に講ずるはずである。これを怠っている被控訴人は、事件関係者としてよほど特別な事情があるに違いない。
(2)被控訴人は「答弁書でも述べたとおり、元職員が骨董品や古美術品類を取得する際に美術館建設の話をしていたか否かは不知であり、事件発覚前の状況において、当時の安中市には具体的な美術館建設の計画はない(乙1号証および乙2号証)。安中市が美術館のような大規模建造物の建設等、主要な事業を実施する際には、あらかじめ安中市総合計画に根幹事業として登載し、実施していくものである。」と主張して、乙1号証および乙2号証を提出してきたが、これらは何の意味も持たない。なぜなら、公社は公有地拡大の推進に関する法律に基づき設置されたものであり、5年計画のような短期的な視点から事業をしているわけではないからである。そのことは公社の理事長を兼務し、かつては理事或いは監事として元職員と一緒に公社の運低にあたった経験を持つ被控訴人が最もよく知るところであり、ここであらためて指摘するまでもない。
(3)被控訴人は「なお、仮に、刑事記録等に控訴人が主張するような事実が残されていたとしても、元職員が虚偽の美術館建設構想を口実として、仲介人の古物商から個人的に美術品等を購入していた事実が判明するだけであって、所有権が安中市にあることを証明するものではない。」としているが、このことを明らかにする為に、控訴人は、民事訴訟法226条に基づき、甲12号証の「証拠等関係カード」に掲載された情報について、文書送付嘱託を行う用意がある。
2.第2 第2項「本件公文書(絵画等6点)の所有権は、もともと安中市に存在すること」について
(1)被控訴人は、「本件公文書(絵画等6点)が元職員の懲戒免職前の取引であって、公務員の資格で公金を使って取得したものであるから、安中市に所有権があると主張しているが、全く事実と反する。公務員として職務命令に基づき公金により取得したものでない。」と主張するが、前述のとおり、元職員が正規の公務員であり、さらに公印を自由自在に使いこなし、当時の市長(また現市長)とも懇意であり、巨額資金が横領した公金であっても貸し出した側の金融機関は安中市に正規の手続で融資したと警察の捜査に対して供述しており、事実、金融機関との裁判では、安中市・公社としても落ち度はなかったと主張していた背景を鑑みれば、公金により本件絵画等6点を取得したことは疑う余地のないところである。
(2)被控訴人は、「さらに公社は、昭和55年に群馬県知事の認可を得て設立され、安中市とは別個の独立した法人である。公社が所有する文書についても市の業務とは別に区分され独自に管理されており、法人としての意思決定の手続きについても、別個に行われている。」と主張するが、史上空前の巨額詐欺横領事件を起こしておきながら、よくまあこんなことがしゃあしゃあと言えるものだと呆れる。市民として納税者としてこのような自治体に税金を支払うのは本当にアホらしくなるが、それはさておき、少なくとも、市長が公社理事長を兼務することは、16年前の元職員による巨額詐欺横領事件発生直後に、安中市として厳しく自戒して、だから、兼務を解いたはずである。それがなぜ、元職員と親しく、この事件の説明責任も果たしていない岡田義弘市長が公社理事長を、合併市長選に当選直後、兼務するようになったのかは非常に問題だ。
(3)被控訴人は、「当該絵画等6点について、公社が引き取った平成22年5月14日(甲10号証)以前において、安中市の所有であった事実はない」と主張するが、本件絵画等6点は、元職員が富岡市在住の古物商の免許を持つ知人である仲介者に、事件発覚直後から逮捕されるまでの間に預けておいたものである。元職員が手ガネで買えたはずもなく、絵画の目利きのある仲介者を経由して購入したことは警察の捜査資料でも明らかであり、その原資は、公社の理事長印と市長印が押印された公文書により、金融機関から融資された公金であることは、被控訴人も否定できないはずである。
(4)被控訴人は、「また、公社が引き取った後は、引き続き公社で保管しており、安中市には使用、収益、処分等、当該絵画等6点に対する支配権は及ばない状況にある」などと意味不明のことを主張するが、前述のとおり安中市の公金で購入したことは明らかであるから、公金を出した安中市に所有権があるのは当然であり、被控訴人の主張には理由がなく失当である。
以上
↑今日の東京高裁のようす。↑
冒頭、裁判長が、これまでに控訴人(当会)と被控訴人(安中市長)から提出された裁判書類として、それぞれ控訴人から控訴状と控訴理由書、被控訴人から答弁書と準備書面(1)が提出されていること、そして、本日、控訴人から準備書面(1)が提出され、これらが陳述されたとして、訴訟指揮が行われました。
控訴人(当会)からは、本日の10時過ぎに、第4民事部に準備書面(1)を提出しておいたため、裁判長から、「内容について簡単に説明してほしい」と訴訟指揮がありました。そこで控訴人(当会)は、「この書面の内容は、被控訴人の答弁書と準備書面(1)の内容に対して、あらためて、絵画等6点は、元職員が職員として勤務していた期間に公金で買ったものであり、あきらかに安中市の所有物であることを説明するものです」などと簡単に説明しました。
■続いて、証拠書類として控訴人(当会)から甲11号証と甲12号証が提出され、これらはいずれも写し(コピー)であることから、原本チェックは行われず、一方、被控訴人(安中市長)から提出された乙1号証と乙2号証は原本のため、チェックが行われました。被控訴人(安中市長)から、15年前の計画書が原本として提示されましたが、たぶん改ざんはされていないだとうとして、控訴人(当会)として確認をしておきました。
その後、裁判長から控訴人(当会)に対して、「これは法律的な、また技術的なことだが」と前置きのあった後、「控訴の趣旨として原判決を取り消す、としか書いてないが、それに加えて、当初、一審で請求した、“本件異議申立てに係る処分のうち、絵画等6点に関するビジュアル情報を不開示とした部分を取り消す”ということを控訴の趣旨に追加することになる」と指揮があったため、控訴人(当会)はこれを了承しました。
■続けて裁判長は、被控訴人(安中市長)に対して、「本日、控訴人から準備書面が提出された。これは被控訴人の反論に対する再反論だが、この控訴人の準備書面について、どのように考えるか」と質問したところ、被控訴人の代理人である渡邉明男・顧問弁護士は「まだ、いまさっきもらったばっかなので…」と言いつつ、当会が提出した準備書面をペラペラとめくりつつ、「結局、これに対する反論は同じことになるので、あらためて(再反論は)必要ない」との見解が示されました。
裁判長はさらに被控訴人(安中市長)に対して「すでに答弁書でも主張されておられるが、控訴人とすれば、絵画等6点は公社のものではなく、市の所有ではないか、と主張していて、被控訴人は、組織として公社は別の組織だとしているが、市長が理事長と同一であり、控訴人としては、そういう点からすれば(公社は)市と同じ身内ではないか、という主張だがその点はどうか。別組織であるという点については?」と質問したところ、安中市長の代理人の顧問弁護士は「これは別の組織だ…、と思う」と述べるにとどまりました。
■裁判長は「公社にも条例で開示を求める規定があると思う。市としても、いちおう公社に開示を求めたわけだが、なぜ…」と、疑問を被控訴人にぶつけると、安中市長の代理人は「(それを公社が)拒否したわけだ」と答えました。裁判長は「同じ市長であるわけだが、拒否する理由が分かりにくい。なぜ…」と重ねて疑問を被控訴人にぶつけたところ、市長の代理人は「(ビジュアル情報を)明らかにすると売却の時に不利益になる」と答えました。
すると、今度は右陪審の裁判官が、「それは答弁書でも書かれているが、真贋についてはいずれ明らかにしなければならないはず。ニセモノを持つわけには行かないし、もしニセモノだとわかっても、それは贋作として売るしかない。(ビジュアル情報で)真贋があきらかになることがなぜ問題なのか?の重ねて質問しました。
渡邉明男・顧問弁護士は、さすがにこれ以上、返答に窮したらしく「必要であればまた準備書面で出す」と苦し紛れに言いました。
これをみていた控訴人(当会)は、呆れてしまい「(公社を別法人として扱いたがる安中市役所では)この状態がもう16年間も続いているからなあ」と思わず言葉を漏らしてしまいました。
■裁判長はすかさず、「進行について合議する」と言い残し、3名の裁判官と共に法廷から一時退場しました。
その間、手持ち無沙汰だった為、控訴人(当会)は、傍聴席に座っている安中市企画課の3氏に向かって、「いま絵画等6点はどこにしまってあるのですか」と訊いて見ました。しかし、3氏はうつむくだけで返事がありません。そこで、「本当に、絵画等6点は存在するのでしょうか。ひょっとしたら無いのでは?」と再度質問しましたが、これまた黙秘されました。
■約3分間ほど経過しました。裁判長を初め3名の裁判官が再入場しました。一同、起立して礼をして迎えました。
裁判長は「進行について裁判所で合議した。今後の進め方については、この処分取消の訴訟自体については、裁判所で判断できるため、これにて弁論を終結する。ただし、若干、さきほどあったように公社が開示を拒否する理由が曖昧であることと、市が公社に対して積極的に開示を求めようとしないのはどうしてなのか。このあたりをもう少しお聞かせ願いたいので、被控訴人で検討してもらい、必要な範囲で書面を提出するのであれば11月末までに提出すること。一応、終結後の書面なので陳述はしないが、控訴人のほうでも何かあれば、それはそれで受け付ける」と述べました。
控訴人(当会)としては、前橋地裁とは全く異なる裁判所の対応に驚くと共に、思わず「ありがとうございます」と感謝の言葉を発しました。
↑裁判所の壁に掲示されている傍聴についての注意事項。法廷内では写真撮影や録音は禁止されているため、この記事はメモと記憶に頼っています。なるべく正確に再現できるように努めてはいますが、不正確な個所があるかもしれません。その場合はご指摘ください。↑
■裁判長は「ということで少し時間をいただく。判決の言渡期日は12月22日、木曜日、午後1時20分とする」と宣言し、3名の裁判官は法廷を退出していきました。
安中市が、元職員をかばう為に、どのような準備書面(2)を11月末までに提出してくるのか、非常に関心が集まるところです。
【ひらく会事務局】
※参考までに、本日、当会が東京高裁に提出した準備書面(1)は次の通りです。
平成23年(行コ)第306号公文書不公開処分取消請求控訴事件
控 訴 人 小 川 賢
被控訴人 安 中 市
準 備 書 面 (1)
平成23年11月8日
東京高等裁判所第4民事部 御中
〒379-0114 群馬県安中市野殿980番地
控訴人 小 川 賢
電 話 027-382-0468
FAX 027-381-0364
Ⅰ.平成23年10月24日付の答弁書に対する反論
1.第2 第2項(安中市情報公開条例(以下「条例」という。)2条2項を無視した判決の誤り)について
(1)被控訴人は「安中市土地開発公社(以下「公社」という。)は、昭和55年に群馬県知事の認可を得て設立され、安中市とは別個の独立した法人であって、所有する文書も市の業務とは別に区分され、公社で独自に管理している。」と主張しているが、実際には、公社は安中市の幹部やOBや市議会関係者の利権の巣窟として機能していたものであり、「公社で独自に管理している」というべき代物ではないことは、巨額詐欺横領事件の発生の経緯と結果を見ても明らかである。
(2)被控訴人は「本件に係る絵画等6点については、元職員が職務行為とは全く無関係に、元職員本人の個人的な理由により、骨董品又は美術品蒐集の一環で行われたものであるため、懲戒免職前に取得したとしても、公社又は安中市が所有するものではないことは明らかである。」と主張しているが、本件絵画等6点を含む骨董品又は美術品の購入資金は、元職員が詐欺横領により取得した公金に由来するものである。したがって、「その損害賠償の一部の支払いとして、元職員の妻が公社に差し入れた」としても、元職員の知人のものでも、元職員の配偶者のものでもなく、もともと安中市の財産であり、安中市の所有物である。現に、安中市・公社は連帯して毎年12月25日に、群馬銀行に和解金として2000万円を支出しており、安中市民は史上空前の詐欺横領事件の尻拭いをさせられている。
(3)被控訴人は「「したがって、控訴人から情報開示請求により、条例第24条第2項に基づいて、安中市長として公社に本件文書の提出を求めたが、経営に支障を及ぼすおそれがあるなどの理由により、その提出を拒否されたため、本件文書については、実施機関(安中市長)として保有しておらず、不存在である。」としているが、巨額詐欺横領事件は安中市長が公社理事長を兼務していたからこそ起きた事件であることは、刑事記録でも裁判記録でも明らかである。それなのに、16年前のように、岡田義弘安中市長が岡田義弘公社理事長に対して文書の提出を求め、岡田義弘公社理事長が岡田義弘市長に本件文書の提出を拒否されたから、安中市長として不存在である、などという理論はいったいどこから出てくるのか。元職員と懇意だった岡田義弘市長(事件当時市議ないし県議)ならではの特別な事情が、そのような対応をさせているのではないか。なお、巨額詐欺横領事件の真相はもとより、この特別な事情についても、被控訴人は、これまで一度も安中市民に説明責任を果たしたことがない。
(4)被控訴人は「また、条例第24条第2項の情報提出については、強制力はないため、公社の任意の協力が得られない以上、実施機関(安中市長)に本件文書(情報)が存在しないのは、やむを得ないことであるとした、原判決は正当なものである。」と主張しているが、安中市の屋台骨を揺るがしてきた巨額詐欺横領事件の14億円余りといわれる巨額使途不明金の行方とも関係する本件絵画等6点について、事件当事者である被控訴人が「情報提供の求めに対して強制力が無い」などとどうして言えようか。公社は、民間で言えば、安中市の100%子会社であり、連結決算の対象である。そこが保管している安中市の公金で購入した絵画等6点の情報は、当然、親会社の指示により、子会社から無条件で提出されるべきものである。しかも同一人物である安中市長=公社理事長が、意見を異にすること自体、民間ではありえない事象である。このような非常識な論理が、公正な裁判所で通用すると思ったら大間違いだ。
2.第3 第3項(絵画等6点は元職員が在職中に入手した行政文書)について
(1)被控訴人は「これは条例を恣意的かつ不当に解釈したものであり、その主張を認めることは到底できない。」と主張しているが、噴飯ものである。そもそも、「実施機関の職員が職務上作成し又は取得した…」とは、行政機関の職員が当該職員に職務上の命令として割り当てられた業務を遂行する立場で、すなわち公的立場において作成し、又は取得した文書の事を示すものである。元職員は、実施機関の職員であり、公社公印を駆使して、さまざまな公文書を自由自在に作成できた立場にある。したがって、元職員の身分を知る富岡市在住の古物商の免許を持ち、仲介者としてほとんど全ての骨董品又は古美術品の購入に当たった事件当時甘楽信用金庫勤務の知人としては、元職員が「美術館の建設計画がある」と言っても言わなくても、公務員であった元職員からの要請を受ければ、なんらかの公的な目的で購入が必要だと思うはずであり、だから、仲介者は何の疑いもなくこれらの絵画等6点の購入を仲介したのである。
(2)これに関連して、前項1.(2)にも示したように、被控訴人は「本件に係る絵画等6点については、元職員が職務行為とは全く無関係に、元職員本人の個人的な理由により、骨董品又は美術品蒐集の一環で行われたものである。」と主張しているが、仲介人は、当時甘楽信用金庫安中支店に勤務しており、元職員に1000万円規模の住宅資金の融資をしていた。したがって、何億円もの単位に上る巨額の骨董品又は美術品収集のための資金が元職員本人の自己資金であるとは到底信じられるはずもなく、当然、元職員が「美術館の建設計画がある」と言っても言わなくても、公務員であった元職員の職位や職務を考えて、なんらかの公的な目的で骨董品又は美術品を収集していると思うのは当然であり、被控訴人の主張は、この点からも失当である。
(3)このように、外見上からも、行政機関の職員が巨額の資金を使って行った行為については、その結果として公的立場において作成し、又は取得したものと考えることは決して不自然ではない。控訴人が原審でも主張したとおり、元職員が本件絵画等6点を取得した時期については、あきらかに元職員が懲戒免職前に取得したものであり、絵画等6点のように、著名と思われる作品を、一般の市民の立場で購入することは不可能であり、元職員が公的な職務に携わっていたからこそ、購入が可能であった。したがって、本件絵画等6点を購入した行為は公務として行ったものとみなすことができる。
(4)控訴人が提出した甲11号証については、捜査にあたった当該警察官らが自ら告白しているように、「幹を切るだけで精一杯で、枝葉までは切れなかった」としていることから、甲11号証に記載のある関係者のみならず、多くの市役所の関係者らが、巨額の資金を自由に扱える元職員に対して、一部にはいぶかっていた者もいるかもしれないが、つながりをもっていたと考えるのが妥当である。
(5)にもかかわらず、被控訴人は「公文書の不公開処分の取消についてであるにもかかわらず控訴人は、甲11号証の捜査資料も論拠に、既に終結した刑事事件について憶測を廻らせ、繰り返し詭弁を論述し、条例の不当な解釈を用い、恣意的な結論づけを行っている。」などと主張している。史上空前の巨額詐欺横領事件を起こした自治体としての反省や後悔もなく、あたかも事件に関与していないかのような無責任な陳述に対して、安中市民及び納税者として看過できるものではない。強く抗議する。
(6)被控訴人は、条例第2条第2項を引き合いに出して、行政文書について「『・‥当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの…』としている。『組織的に用いる』とは、組織として共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該行政機関の組織において、業務上必要なものとして、利用又は保存されている状態のものを意味する。仮に、絵画等6点が文書であるとして、また、その取得時期が元職員の懲戒免職前であったとしても、前述のとおり元職員が公務として行ったものではなく、単独で為した行為であることは間違いがないため、実施機関の職員が組織的に用いるもので実施機関が保有している文書には該当しない」と主張しているが、元職員が公務員であったからこそ、多数の高額な骨董品又は古美術品を購入できたわけであり、一般の常識から言えば、本件絵画等6点の購入は公務として行われたということができる。
(7)安中市がいまだに、公社を温存しているのは、群馬銀行に対する和解金の支払いの原資をひねり出す為に必要不可欠な存在だからだ。高崎市を初め全国のほとんどの自治体では、総務省の指導により、公社の公共用地の先行取得という役割は既に終わったとして、公社を解散する動きが全国的に活発化している。にもかかわらず、いまだに公社の権益を後生大事に守ろうとする岡田義弘市長=公社理事長(平成7年5月18日の事件発覚当時は、市会議員から県会議員に鞍替えして当選した直後)には、元職員が起こした巨額詐欺横領事件に関与したひとりとして、また、公社役員経験者として、事件発覚当時から、詳細な経緯と事実関係を元にした説明責任が求められていたにもかかわらず、いまだにそれが果たされていない。
Ⅱ.被控訴人の準備書面(1)についての反論
1.第1 第1項「本件公文書(絵画等6点)は安中市元職員が職務上取得したものであること」について
(1)被控訴人は「控訴人は既に終了した刑事事件について推論で論理展開を行っている。絵画等6点の取得については、元職員がどのような経緯で取得したのか、安中市にとって不知であり、控訴人の推論を認めることはできない。」と主張しているが、事件の当事者である被控訴人がこのような無責任な陳述をする背景には、何か特別な理由があるに違いない。通常であれば、巨額の公金を横領された自治体としては、積極的に捜査に協力し、刑事記録についても積極的に入手し、事件の真相と責任の所在の明確化、そして再発防止策を徹底的に講ずるはずである。これを怠っている被控訴人は、事件関係者としてよほど特別な事情があるに違いない。
(2)被控訴人は「答弁書でも述べたとおり、元職員が骨董品や古美術品類を取得する際に美術館建設の話をしていたか否かは不知であり、事件発覚前の状況において、当時の安中市には具体的な美術館建設の計画はない(乙1号証および乙2号証)。安中市が美術館のような大規模建造物の建設等、主要な事業を実施する際には、あらかじめ安中市総合計画に根幹事業として登載し、実施していくものである。」と主張して、乙1号証および乙2号証を提出してきたが、これらは何の意味も持たない。なぜなら、公社は公有地拡大の推進に関する法律に基づき設置されたものであり、5年計画のような短期的な視点から事業をしているわけではないからである。そのことは公社の理事長を兼務し、かつては理事或いは監事として元職員と一緒に公社の運低にあたった経験を持つ被控訴人が最もよく知るところであり、ここであらためて指摘するまでもない。
(3)被控訴人は「なお、仮に、刑事記録等に控訴人が主張するような事実が残されていたとしても、元職員が虚偽の美術館建設構想を口実として、仲介人の古物商から個人的に美術品等を購入していた事実が判明するだけであって、所有権が安中市にあることを証明するものではない。」としているが、このことを明らかにする為に、控訴人は、民事訴訟法226条に基づき、甲12号証の「証拠等関係カード」に掲載された情報について、文書送付嘱託を行う用意がある。
2.第2 第2項「本件公文書(絵画等6点)の所有権は、もともと安中市に存在すること」について
(1)被控訴人は、「本件公文書(絵画等6点)が元職員の懲戒免職前の取引であって、公務員の資格で公金を使って取得したものであるから、安中市に所有権があると主張しているが、全く事実と反する。公務員として職務命令に基づき公金により取得したものでない。」と主張するが、前述のとおり、元職員が正規の公務員であり、さらに公印を自由自在に使いこなし、当時の市長(また現市長)とも懇意であり、巨額資金が横領した公金であっても貸し出した側の金融機関は安中市に正規の手続で融資したと警察の捜査に対して供述しており、事実、金融機関との裁判では、安中市・公社としても落ち度はなかったと主張していた背景を鑑みれば、公金により本件絵画等6点を取得したことは疑う余地のないところである。
(2)被控訴人は、「さらに公社は、昭和55年に群馬県知事の認可を得て設立され、安中市とは別個の独立した法人である。公社が所有する文書についても市の業務とは別に区分され独自に管理されており、法人としての意思決定の手続きについても、別個に行われている。」と主張するが、史上空前の巨額詐欺横領事件を起こしておきながら、よくまあこんなことがしゃあしゃあと言えるものだと呆れる。市民として納税者としてこのような自治体に税金を支払うのは本当にアホらしくなるが、それはさておき、少なくとも、市長が公社理事長を兼務することは、16年前の元職員による巨額詐欺横領事件発生直後に、安中市として厳しく自戒して、だから、兼務を解いたはずである。それがなぜ、元職員と親しく、この事件の説明責任も果たしていない岡田義弘市長が公社理事長を、合併市長選に当選直後、兼務するようになったのかは非常に問題だ。
(3)被控訴人は、「当該絵画等6点について、公社が引き取った平成22年5月14日(甲10号証)以前において、安中市の所有であった事実はない」と主張するが、本件絵画等6点は、元職員が富岡市在住の古物商の免許を持つ知人である仲介者に、事件発覚直後から逮捕されるまでの間に預けておいたものである。元職員が手ガネで買えたはずもなく、絵画の目利きのある仲介者を経由して購入したことは警察の捜査資料でも明らかであり、その原資は、公社の理事長印と市長印が押印された公文書により、金融機関から融資された公金であることは、被控訴人も否定できないはずである。
(4)被控訴人は、「また、公社が引き取った後は、引き続き公社で保管しており、安中市には使用、収益、処分等、当該絵画等6点に対する支配権は及ばない状況にある」などと意味不明のことを主張するが、前述のとおり安中市の公金で購入したことは明らかであるから、公金を出した安中市に所有権があるのは当然であり、被控訴人の主張には理由がなく失当である。
以上