かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

ずっこけた民事再生

2007-06-11 | 事例
彼は「今のままならば破産となる。」と思っていました。
民事再生が認可されてまだ1年を過ぎておりません。
300万以上の債権者には96%もカットして頂いたのですが、早くも2回目の配当が払えないのです。
民事再生の場合、途中で計画通りに行かない企業は破産を命じられると聞いておりました。

民事再生申請の時に債権者間で揉めました。
リース会社とその他の会社です。
半年に1度の返済にしてくれとの債務者の要望に対し、一般債権者は同意しましたがリース業者だけは反対です。どうしても3ヶ月に1度の返済にして欲しいと譲りません。結局リース業者は3ヶ月に1度。他の債権者は6ヶ月に1度の返済で再生法は決定しました。

もう10ケ月を経ました。
何とかリース業者には3回、他の債権者には1回払っては来ましたが、次回はどうしても払えません。

彼には一つの計算がありました。
今の和食のファミリーレストランが駄目になったのは、一つは地の理が悪い事、
もう一つは飲酒運転の禁止強化です。特に彼の地方で、この場所ならば車で無いと帰宅できません。
彼はそこで自然食中心のレストランの変えようと思っていたのです。
健康を売り物にすれば酒との縁は切れる。そこで少し変わった料理を出せば、人はわざわざ食べに来てくれる筈だ。どうせ皆さん、車で来るだろうから交通の便など関係ない筈だ。

そちらに鞍替えしよう。借金を引きずってやると難しいから、友達の名前で新会社でやろう。保健所は今の内からてを打てば間に合うが、場所は暫くはこの場所を利用するより他無い。競売を伸ばさないと駄目だ。
要は今の会社を利用して出来るだけ其処で商売を続け、其の間にお金を貯めたり
新店のアンテナショップとして利用しようと云う算段です。

民事再生法が駄目になっても破産が決定するまでは時間が掛かるだろう。それから競売ならば売れるまでに時間が掛かる。どう考えても後1年半は此処で家賃は唯で商売が出来るな。

そんな彼に入れ知恵した人が居ります。
「予定通り払えなければ思い切って半分にしてもらったら。大丈夫。幾ら民事再生法と言っても債務者が再建しないことにはどうしようも無いから皆賛成するよ。
先ずお宅の依頼した弁護士に相談して弁護士に動いて貰おうよ。今から急に払わないより、
それでトントン以上ならば伸ばした方が得でしょう。」
そんなこと出来るかと思って恐る恐る弁護士に相談したところが簡単に出来たのです。

ここでもリースと一般債権者で一致しませんでした。リースは反対したのです。しかし今回は弁護士に押し切られた形です。

この事は更に彼を大胆にしました。彼は「なあーんだ。民事再生と云ってもリスケも出来るのではないか。次回は30%の支払いで皆に通告をしても大丈夫だな。」と一人で決めてしまったのです。

3ヶ月過ぎました。リース業者にはこの前と同じく50%の支払いです。
その間自然食の方のメニュウは大して進んで居りません。
山菜と魚を組み合わせる予定でしたが特に魚はどうしても輸入物に頼らないと
非常に割高になります。大都市近郊の町では少し無理です。

結局何もしないうちに一般債権者の3回目の支払いがやってきました。

しかし弁護士は彼の要望を聞いて首を縦に振りません。「難しい、そして物事には限度があるが。」とつぶやく弁護士に、失敗しても良いですからと無理に頼んだのです。

さすが今度は大揉めに揉めました。一番の反対者は銀行でした。
「責任者の態度を見ていると再生をやろうという気構えが欠けて居ります。ただ返済を少なくすれば良いと考えて居ると見受けられる。再生は無理と考えます。当行は担保処分に踏み切らせて頂きます。」
協議は裁判所で開かれました。

裁判官は簡単でした。一通り訊いた後でもう一度彼に質問しました。
「債権者の言っている通り50%の減額では駄目ですか。」
「出来ません。」と彼が答えると
「では債務者を破産に命じます。」
と宣告です。こんなことは想定だにしておりません。
破産を命じるからにはもう少し討議や質問があると思っていたのです。
会社に持ち帰り検討する時間が与えられると思って居たのです。
全体の流れの状況では、今回は50%払ってもと思っていたのが、この簡単な一言で終わってしまったのです。

でもいいや。競売で立ち退くまで、少しは時間が有るからこの店も使えるよ。
破産は今日言われたのだから明日からの収入は全て俺のもの。何処にも返済などしなくて良いから少しは残るだろう。

こんな彼のもくろみは次の日に簡単に崩れました。

社長と進退を共にしますと誓っていた従業員が全員辞めてしまったのです。
唯でさえ頭数は少なく一人欠けても響きます。
3-4名の退社を機に3日後には全員が居なくなってしまったのです。

民事再生が失敗して破産を命じられても必ず生き残れる筈でしたが世間はそんなに
甘くありませんでした。






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