かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

自社株をとられた男

2007-12-03 | 事例
甥の新社長は叔父の常務を役員から外す絶好のチャンスと
張り切りました。メイン銀行からこっそり呼ばれたのです。

「常務に個人的に融資したお金が、自宅以外は全てを処分したが
未だかなり残って居ます。常務は会社の株を10%持っているが、
此れを売却するように薦めて居るが、常務は首を振りません。銀行で
再度薦めてどうしても売らない場合は差押えます。会社で安く買って
いただけないでしょうか。勿論買戻し資金は当行で融資をします。」
勿論銀行は、常務の社内の評判は聞いております。
こんな話も会社の改善策に役立っても、恨みを買うような事は無いと
計算づくです。新社長が出来たら叔父の株を全部買い戻したいと
考えて居ることも察知しての密談です。

母が違う二人兄弟。
父は10年前に急に亡くなりました。生前から後妻と二人の子供には
充分な資産を与えて有りました。
しかし会社に関しては全てを兄に託して居たのです。
弟には10%の株を与えて、二人に言って居ました。
「この株を次男が持っている間は役員として優遇してくれ。
どんな事情にしても、手放すことがあるようならば役員を辞めさせてよい。
むしろ辞めさせるべきだ。」
父は弟の力量と性格を見抜いて居たのです。
包容力のある兄は社長になっても驕らず、何とか弟を引き立てようと
して居ましたが此れも2年前に癌でアット云う間に他界しました。

子供が社会に出たばかりであったために義姉が一時社長になりました。
弟の常務は存在感を示すチャンスとばかりに出しゃばりますが、
元々実力が付いておりません。特に古参の社員たちからも嫌われて、
いたるところで仕事面で云い負け、逆に社員の力をアピールしたような
ものです。

こんな常務を心底嫌っている甥が母親の後の新社長になったのです。

常務は株を抱きかかえております。此れを持って居れば常務の地位は
安泰だと思って居ました。しかも株は店頭株にでもなれば相当な
価格が付きます。銀行が何と云おうが手放すわけには行きません。

銀行は店頭株になると決まっているわけでなし、普通だったら差押など
出来ない株を少しでも回収にあてたいと考えて居ます。それには株の
所有者と仲の悪い新社長を利用することが一番可能性があると踏んで
います。しかも客観的に見ても常務は居ない方が会社のためだと
断言できます。会社の改善にも一役買っているつもりです。

若い新社長は此処が正念場とばかりに、叔父の常務を口説きました。
本来ならば取締役会で承認しないと株は売れないが、この場合は
メイン銀行の依頼でもあり、承認どころか逆に協力します。売却を
しないと差押が有ります。その場合は株だけでなく役員報酬まで
差押えると言って居ます。そうなれば会社に居ることは遠慮して頂きます。
株を売却しても常務が個人的に若干を抜く事はモラル上で来ません。
等です。

相当抵抗しましたが、結局常務は自社株を手放しました。
自分には1円の得も有りません。
株は古参の社員3名が買いました。

そして次男は常務ばかりか役員を解任されています。
会社を止めると思って居ましたが、心当たり全部に断られたらしいです。
今までの会社にしがみ付きました。
工場の部品管理に回されましたのです。あらゆる屈辱、此処で身をもって
知りました。

しかし、会社は不景気に勝てませんでした。それから間もなく不渡り
を発生したのです。
其れを知ったときの常務の顔、嬉しいような、一面悲しいような、実に
万感こみ上げると云う表情でした。

甘やかされて育っているために、人情の機微も知らない男、親の力で
若干天狗となって嫌われた男。
その彼の心を踏みにじった連中に対いして乾杯です。
しかし彼も職を失います。幾ら探しても無かった職を。
その心中を察して何故か涙が出そうになりました。     





日記@BlogRanking
↑宜しければ、クリックして下さい


↑こちらのランキングもお願いします

 
↑こちらのブログランキングもお願いします