電車予報(車両運用の話)-11

《前回の続きです》

~運転再開~

どれくらい止まっていたかにもよりますが、たいていの場合はそのまま走らせていたのではダイヤは元に戻りません。それどころか一部の電車に利用者が殺到してしまいさらに遅れが増してしまいます。そういう状況のことを「増延(ぞうえん)」と呼んでいます。空白の時間を埋めるべく、列車の運行にあれこれ手を加えて早期復旧を目指します。「運転整理」などと呼んでいます。
こんな時によく見かける手法を紹介しますと、
「青梅線との直通運転の取りやめ」(「分離運転」という)
があります。これは、中央線の遅れを青梅線に持ち込まないで影響範囲を最小限に抑えるための措置と思われます。具体的には下りの青梅線直通の電車をすべて立川で折り返してしまうというものです。平常時でも立川駅で電車を観察していると、東京からの青梅行きが来るタイミングと、青梅線からの東京行きが来るタイミングがほぼ一致していて、それぞれが立川で折り返しても成り立つようなダイヤになっていることが良く分かります。ですから、青梅線のダイヤは平常のままで、中央線のダイヤが復旧したところで乗り入れを再開すればスムーズに復旧が計れるという整理です。
次に「折り返し変更」を紹介します。
これは文字通り折り返す電車を予定の運用から別の運用に変更するというものです。終着駅等で折り返す際に、ちょうどその時刻に発車する別の運用に列車番号を変更してしまえば、その電車については正常ダイヤとすることができます。遅れが大きい場合には予定していた終着駅まで行かず途中駅で前途運休して折り返す場合もあります。上りの新宿行や下りの特別快速豊田行など、普段見られない行き先の電車はこれをやっているということです。
しかし、いろいろやりくりしてもどうにもならない場合は、運休(「ウヤ」と略して呼ぶ場合があります)となります。これはお客さんに一番影響が大きいので最後の手段です。車両のやりくりがつかない場合と、乗務員のやりくりがつかない場合があります。

輸送混乱時にもっとも気になるのが以前紹介した限定運用です。折り返し変更する時に、例えば分割が必要な電車に分割できない編成(「貫通編成」と呼ぶ)が充当されてしまった場合はどうなるのでしょうか。そうならないように事前に調整はしているのですが、やはり年に何回かはどうしようもない場合があり、貫通編成の河口湖行等の走行シーンを見かけます。10両編成では入れない区間がありますので、お客さんには乗り換えてもらうことになりますが通例では途中の駅で編成を交換(「車両交換」「車交(しゃこう)」と呼ぶ)して運転します。車両故障などの場合にも同様の対応が見られます。仮に豊田でお客さんを下ろして車交する場合でも、行き先は正規の行き先を表示するようにしているので、緑色のナンバープレートを下げた編成の河口湖行なども走っていることが時々あります。

本題に戻りますが、ダイヤも運用もガタガタになってしまっても、何分位遅れたか知ることができれば、その後の運用状況についても予測することができる場合もあります。さらに、数本の電車についてどのような整理がなされたかサンプルがあれば更に確度の高い予測も可能となります。

しかしながら、趣味的には興味深い現象ですが、現場の方々にとっては食事も採れず、風呂にも入れず、寝ることもできないという状況だと思われますので、なるべくこういうことの無いことを祈っています。

ざっと思いつく事柄について紹介させていただきました。また何か思い出したら補足版で記事を追加しますが、ひとまず電車予報の話はこれで終わらせていただきます。
最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
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電車予報(車両運用の話)-10

《前回の続きです》

~電車がこない~

そんな時は…まず会社に電話する。
イライラしても始まらないのでいろいろ観察することにする。天気と同じでいつも晴天とは限らない。

どこかで「危険を知らせる信号」が出て電車が止まっているらしい。信号と言っても赤信号の様な信号が出るわけではなく、無線で「ピピピ」と鳴るだけの信号で「防護(ぼうご)無線」という。防護無線は危険な状況を確認した乗務員が事故を未然に防ぐために発報するもので、この無線を受信した電車は止まらなければならないことになっている。したがって、広範囲にわたってダイヤが乱れることになる。

しばらくして電車がやってくる。でも、いつ発車するか分からないとのこと。ホームにある表示器に「通知」という文字が点滅している。これは「出発時機表示器」というもので、ホームの一番前と後ろにあり、運転士と車掌に指示を出す装置である。「通知」というのは「通知運転」が発令されているということで、事故等の場合に停車場(主に駅のこと)と停車場の間に旅客の乗車した列車を長時間停車させないために出す指令である。つまり、次の駅のホームはすべて列車でうまっている(「在線(ざいせん)がある」という)ので発車しないでくれということ。駅間で止めようものなら旅客が勝手にドアをあけて線路におりてしまいもう一度「防護無線」という最悪のシナリオが待っている。
しばらく見ていると「通知」の点滅が早くなり、そして表示が消えた。
やっと運転再開。

しかし、ここからが勝負。

《つづく》
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電車予報(車両運用の話)-9

《前回の続きです》

~あくまでも予報です~

今回は予報どおりに行かなかった場合の話です。
予測が外れる場合は、ある程度予測可能な場合とそうでない場合とあります。
前者は、車両の検査や線路・設備の工事などで変更される場合、
後者は、輸送障害(悪天候や車両トラブル、人身事故など)によりダイヤが乱れた場合です。

比較的短い周期で車両センターで行なわれる検査については、日々のローテーションで行なえるように運用が組まれていますが、数ヶ月・数年に1回行なわれる大規模な検査・修繕については、運用を離脱して行なうことになります。検修の周期は期間または走行距離で決まります。このあたりの話は大宮総合車両センター(旧大宮工場)のHPに説明があります。
http://www4.odn.ne.jp/~eab13200/repair.htm

中央線快速電車の場合、走行距離での周期が先にくるようで、分割編成では2年程度、貫通編成では2年弱に1回の割合で工場に入っているようです。59本もの編成がありますので、常にいずれかの編成は運用を離脱していることになります。さらに、故障などの対応も考えて必要な編成数より多めに車両を準備してあり、予備車あるいは予備編成と呼ばれています。

予備車についてもいろいろな場合があり、編成単位で予備を用意しておき、常にローテーションに就く場合もあれば、バラで予備を用意しておき、普段はまったく運用に就かない予備車もあります。中央快速線用の車両は前者であり、同じ豊田車両センター所属でも青梅線の方は後者のようなバラの車両があります。また、青梅線用の車両を借りて中央快速線用編成に組み込んで走行したこともありました。

前回の工場での検査年月は車両と車両の連結面に「17-1 東京総合車セ」(平成17年1月東京総合車両センターの意)などと明記されていますので、次回の入場年月は大体予想ができます。工場へ送る前には車両センターで装備品をはずしたり準備が必要ですので、豊田車両センター入庫後ということになります。そろそろだな、という編成が予定通りに来なかったら、ああ工場に入場したな、という感じです。
《続く》
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電車予報(車両運用の話)-8

《前回の続きです》

~限定運用のはなし~

前回、編成両数の都合から編成の分割併合のあるH運用はH編成による限定運用になっているというところまでお話しましたが、実際には車両運用の都合もありH運用すべてが分割併合するわけではありません。
限定運用の区間に入る平日の運用を一通り挙げると

河口湖:07H、09H、27H、29H
高麗川:13H、15H、35H
武蔵五日市:13H、15H、33H、35H
奥多摩:23H、25H

河口湖編成(4両)は大月で、高麗川編成(4両)はいずれも武蔵五日市編成(6両)と拝島で、奥多摩編成(4両)は青梅で分割・併合します。

例えば07Hは夕方の通勤快速で大月に着くと編成を分割し、4両は富士急線に乗り入れ河口湖で一夜を明かし(実際に河口湖駅で泊まるかどうかは未確認です、富士急線内の車庫に回送しているかもしれません)、残った6両は大月で折り返して高尾で一夜を明かします。したがって、翌日の09Hはそのまま4両が河口湖、6両が高尾から出庫し、前日の逆ルートでそれぞれが大月を目指し、再び元の10両に連結されて東京を目指します。27Hも同様で翌日の29Hとセットになっています。なお、高尾~大月間はE電ではないため、記号は「H」ではなくM電の「M」に列車番号を変更します。さらに富士急線内では別の列車番号に変更されます。
13Hは高麗川・武蔵五日市行きで、翌日は15Hに、33Hは高麗川には行かず拝島・武蔵五日市行きで、翌朝は高麗川からの35Hとなります。なお、八高線内は別の運行番号(71Eなどの別の番号)になります。
25Hは前日の23Hが青梅で入庫した編成を分割して使い、4両で青梅を出庫して奥多摩に向かいます。そして、奥多摩発東京行となり、青梅で6両増結して元の編成になります。
したがって、これら以外の運用であればT編成での代走も可能です。

《つづく》
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電車予報(車両運用の話)-7

《前回の続きです》

~訳ありのH運用~

予備知識として、まず中央快速線用電車の平日の運用範囲を示します。

東京~立川~高尾~大月~河口湖(中央線・富士急線)
立川~拝島~青梅~奥多摩(青梅線)
拝島~武蔵五日市(五日市線)
拝島~高麗川(八高線)

このうち、太字部分の区間はH編成しか入線できない区間になっています。これらの区間についてすべて共通していることは、10両編成が入線できない区間ということです。このため、H編成は4両編成と6両編成の2つの編成を連結して10両編成となっており、分割可能な編成であることから「分割編成」と呼ばれています。そして、東京方の4両を付属編成、6両を基本編成と区別しており、編成番号札にも「フ1」とか「キ1」と記してあり、番号札の裏側に「分割可能編成」とステッカーが貼られています。

余談ですが、
かつては、特別快速に使われる運用や立川~青梅間・高尾~大月間を運転する電車についても編成の限定がありましたが、いずれも現在は解消されています。特に、高尾~大月間には高さの低いトンネルがあるため特殊なパンタグラフを装備していないと通過できないトンネル(「狭小トンネル」と呼ばれる)があり、現在のH編成には「高尾以西運用可能車」というステッカーが貼られていました。

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電車予報(車両運用の話)-6

《前回の続きです》

~ 電車もいろいろ・運用もいろいろ ~

ここまでは25H運用を例に説明してきましたが、自分が確認した電車は運行番号表示が25Tのように違う記号だった人や、黄緑のプラカードがぶら下がっていたという人など、まだ疑問の残る方も多いことと思います。今回は他の運行番号やプラカードについて解説します。

ラッシュ時に次から次とやってくる朱色の電車ですが、一体何本の編成があり、いくつの運用があるのでしょうか。

現在、中央快速線の営業運転に使用可能な朱色の電車は全部で59編成あり、すべて豊田駅の近くにある八王子支社豊田車両センター(略して八トタと標記します)の所属となっています。そして、前面の窓部にぶら下がっているプラカードには59本もの編成を識別するための編成番号が記されており、白地に赤文字のものがH編成(H1~H25の25本)、黄緑地に白文字のものがT編成(T1~T34の34本)と呼ばれています。
一方、運行番号の方は平日の場合、H運用(01H~37H)とT運用(01T~71T)の2グループ55運用があります。
H編成は主にH運用で使用され、T編成はT運用に使用されます。しかし、T運用は36運用に対しT編成は34本しかありませんので、常にH編成が数本入ることになります。一方、T編成がH運用に入ることはあまりありません。H運用には特別な事情があってH編成しか使えない運用があるためです。使用できる編成が限定されることから、こういう運用のことを「限定運用」と呼んでいます。

《続く》
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電車予報(車両運用の話)-5

《前回の続きです》

~ 中央線電車予報士になろう(4) ~

今回は翌日の電車の予報の話で、やっと本題に入れます。
引き続き25H運用を例題にして進めます。前日に1925Hが20:28に豊田に入庫します。使われていた編成を仮に20と書かれたプラカードをさげた編成(以降「H20」編成と呼びます)だったとします。このH20編成は翌日は豊田から出庫するしかありませんので、特別な事情が無い限りは豊田始発の電車に充当されるのが普通です。したがって、他の車庫や駅から出庫する運用に就くことはあまりありません。では、H20編成は翌日も25Hで運転されるのでしょうか。25Hはどこから出庫するか時刻表をさかのぼって調べてみると青梅を5:19に出庫することがわかります。このことからも、25Hに使われる編成は毎日入れ替わり立ち代り別の編成が使われていることがわかります。実際に追跡調査をしてみると、前日25Hに使用された編成は、翌日27Hに使われている場合が多く27Hは豊田始発の運用になっています。そして順に29H→31H→33H…、と運用されていきます。したがって、明日の25Hに充当される編成は今日の23Hで、あさってならば21Hに充当されている編成をチェックできれば予測が可能となるのです。

《続く》
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電車予報(車両運用の話)-4

《前回の続きです》

~ 中央線電車予報士になろう(3) ~

今回は電車の表示と列車番号の関係についてお話しようと思います。
「えきから」で確認した列車番号の英数下3桁と電車に表示されている英数3桁が同一あるいはマイナス1となっていることにお気づきいただいたことと思います。そして、同一だった人は下り電車を利用している人、マイナス1だった人は上り電車を利用している人、ということになります。
前回の例(624H)で更にすすめると、この電車は東京駅1番線に8:12に到着します。折り返しの時刻を東京駅下り時刻表から調べると、8:14発の825Hとなることが確認できます。一般に列車番号は下りが奇数、上りが偶数を用い、それを電車の前後に表示することになっています。しかし、折り返しのたびに番号を変更するのは手間がかかりますので、中央線などのE電の多くは下り列車の奇数番号を表示することが多いようです。また、列車番号は4桁までの数字を使用しますが、中央線の場合、表示が省略されている上2桁は、始発駅の時間をつけるようになっています。825Hの場合は東京駅を8時台に発車することがわかります。そしてこの電車は、924H~1025H~1124H~1325H~1424H~1525H~1624H~1725H~1824H~1925Hと走り続けた後、20:28に豊田で運用を終え車庫(豊田車両センター)に入庫します。
したがって、朝25Hの編成を確認しておけば、夕方の帰りの25Hの編成も同じであり、予測が可能となります。
では、翌日の電車はどうなるのでしょうか。お楽しみに

《続く》
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電車予報(車両運用の話)-3

《前回の続きです》

~ 中央線電車予報士になろう(2) ~

ついに一週間が始まりました、そして電車予報活動も。
さっそく今朝、中央線快速電車の顔をじっくりと眺めた方も中にはいらっしゃるかと思います。
今日は「えきから時刻表」(ぐるなび)を使って解説を進めたいと思います。

ホームページのアドレスは
http://ekikara.jp
です。地図の東京をクリックすると、
http://ekikara.jp/newdata/state/linemap/13-1.htm
に移動します。そしてJR中央線(快速)をクリックすると
http://ekikara.jp/newdata/line/station/1301062.htm
になります。

ここからは、実例を示しながら進めて行きます。
今日が土日の場合は平日をクリックして平日のダイヤを表示させます。
例えば乗車した電車が西国分寺7:21発の東京行だったとします。
そして、正面には25Hと表示され、プラカードには赤い字で20と書いてあったとします。

西国分寺の上り時刻表を表示します。
http://ekikara.jp/newdata/line/1301062/13214021/up-1_1.htm
そして、7:21の時刻をクリックすると奥多摩発東京行電車の時刻表が表示されます。
http://ekikara.jp/newdata/detail/13010266/6.htm

表示された内容を一部示すと
列車名 |快速
列車番号|624H
---省略---
西国分寺|7:21着
    |7:21発
---省略---
のようになっています。
この列車番号と電車正面に表示されている数字と記号の間には密接な関係があります。
みなさんが確認された列車についても同様にして調べてみてください。

《続く》
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電車予報(車両運用の話)-2

《前回の続きです》

~ 中央線電車予報士になろう ~

明日は月曜日、また一週間の始まりです。
この季節、着膨れも手伝って一層厳しいラッシュですが、ちょっとだけ早起きして、確認して欲しいことがあります。
いつもより1~2分早目にホームに着いて、やってくる電車の前面に掲出されている数字や記号を観察(できればメモ)して欲しいのです。

-確認すべきポイントは2箇所-

中央快速線(オレンジ色の電車)の前面を向かってみると、上の中央部に前部標識灯(ヘッドライト)が二つ、その右側に行き先表示器があります。そして、左側には緑色のLEDで二桁の数字と1桁の記号が表示されています。これが一つ目のポイント。そして、今度は下のほうへ行くと、窓の内側にプラカードがぶら下がっています。こちらが二つ目のポイントです。

もちろん、帰りの電車やすれ違う電車にもありますので、どんなのがあるか調査範囲を広げてみるのも面白いと思います。

これらの解説は、また次回の投稿にて行なう予定です。お楽しみに。
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電車予報(車両運用の話)

明日の天気予報ならぬ電車予報の話をしようと思います。

先日書いた記事で
「24T通勤特快でADトレインを確認」
というものを載せました。
24Tとは一体何?わからない方も多いのではないかと思います。
私も高校の鉄道研究会に入るまで、まったくそのようなものは知りませんでした。
多くの通勤通学の方は毎日同じ時間に同じ電車にのっていると思いますが、実は毎日ちょっとずつ違う電車がやってきているのにお気づきでしょうか。そして、同じ時間にやってくる明日の電車の予想が何日も前にわかってしまうなんて。

そこで、これから数回に渡って、少しずつこの件について書いていこうと思います。
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