長崎まで出かけることがあったら、ちょっと足を伸ばして外海(そとめ)まで行ってみてください。遠藤周作記念館が断崖の上に建っていて、数知れぬキリシタンたちがその崖から信仰故に突き落とされていった海を、静かに見下ろしています。
ド・ロ記念館もそのあたりにあります。パリ外国宣教会の司祭であったde Rotz師は、1868年に来日。以来、1914年に亡くなるまで、狭義での布教活動というよりは、地元の生活の向上、社会福祉のために、救助院や授産所を設立したりしながら尽力しました。
ド・ロ師の指導の下に製品化まで漕ぎ着けたというそうめん作りでしたが、今も「ドロそうめん」と呼ばれています。外海に行ったらぜひ召し上がってみてください。若い頃、これを耳にしたとき「泥そうめん」だと思っていました。
さて、ド・ロ様と呼ばれ地元の人々から敬愛されていた神父ですが、広い活動に役立てるためにフランスから運んできた器具や、愛用の祭服や生活用品などが、ド・ロ記念館に展示されています。
手狭な館内にはそうした展示に混じって、同じくフランスから持ってきたというオルガンが置いてあります。“名物シスター”としてかつてはガイドブックにも紹介されたという老シスターが、見学者にド・ロ師ゆかりのオルガンを弾いてくれました。この写真は多分最後にお目にかかったときのものだと思います。
オルガンには楽譜ではなくて大きなパネルが立てかけてあり、いつくしみ深き~と大きな字で歌詞が書いてあるのです。演奏者の後ろに立って見学者が歌えるように。
このシスター、かなりご高齢の様子でしたので、今もお元気なことを祈っています。
オルガンは一度修理されて、再びド・ロ師のこころの歌を奏でるべく、外海の地に戻ってきたのでした。