長崎県外海(そとめ)の海は、冬にはこんなに荒れます。ぼうぼうと音を立てて吹き付ける海からの風に抗(あらが)うように海沿いに進むと、やがて断崖から海を見下ろせるようになります。
凪(なぎ)の時には穏やかな表情を見せている海が、突然無数の殉教者たちの体と燃えるこころを、この絶壁から次々と飲み込んでいったのでした。
遠藤周作館が近くにあり、そこに足を運ぶと、遠藤氏が生涯を賭けて追っていった名もなき殉教者たちの祈りが、今も響いてくるようです。
小高くなった見晴らしのよいところに、遠藤周作のことばの碑が静かに建っています。
「人間がこんなに哀しいのに 主よ 海が あまりに碧いのです。」
しばらく足を止めて黙想しました。
ここしばらく、何回かに分けて外海訪問記を書いているようですね。とても寒い日に、初めて訪れたのでした。