11月、朝日新聞は1週間にわたって一面トップに吉兆事件を連ねましたが、今度は佐世保市の乱射事件を12月15日朝刊から17日朝刊まで連続で一面トップに載せています(これはNHKニュースもいい勝負です)。一面の軽量化というより軽薄化というべきかもしません。
まあ百歩譲って、第1報は一面でもいいとしても、加害者や被害者の細かい事情など、周辺事実を第一面トップに載せるのには強い違和感があります。16日の朝刊は「別の同級生も再三誘う」、17日朝刊は「殺傷力強い単発弾使用」という記事がトップです。これらがその日の日本の最重要ニュースでしょうか。
第2報以後の事件の周辺事実などの重要度は低く、探偵趣味のある読者が読めばいいわけで、三面で十分です。決して新聞社が「ぜひ読んでください」と推薦する性格のものではないからです。こんなことをやるから過熱報道という非難を受けるのでしょう。
しかし、いくら連日一面トップを使ってたとしても、読者の興味を満足させるという意味では、豊富な映像が使えるテレビのワイドショーの敵ではありません。その一方で必要な記事が削られるという弊害の方が深刻です。
興味本位の、不祥事と凶悪事件に重点を置いた報道は、読者に対する迎合であり、カタルシスの効果があるかもしれませんが、必要な報道が減少することにより、社会に対する理解力や政治的な判断力などの低下を招きます。それは子供の欲求に負けて、甘いお菓子ばかり与えると、徐々に子供の健康が蝕まれるのと似ています。
政治的な判断力の低下はタレント議員やタレント知事を産む理由になります。大阪府民は行政経験のない、漫才師出身の横山ノック氏を知事に選びましたが、結果はご承知のとおりです(ノック氏の功績は、特別な能力がなくても知事の仕事が務まることを世に知らせたことです)。選挙で適切な人物を選ぶことができなくなれば、民主主義体制の基盤が危うくなります。
新聞の大衆迎合路線は政治的な成熟度に悪影響を与え、それは投票行動にも影響するでしょう。不祥事や凶悪事件報道でテレビのワイドショーと張り合うようなことをせず、新聞としての矜持をもち、多少面白くなくても知らせるべきものを記事にしてほしいと思います。
重要な記事を興味深く、またわかりやすく解説するのが新聞の役割です。無数の情報の中から必要なものを選び出す機能があってこそ、新聞の権威、さらには存在理由があるといってもよいでしょう。
上に書いたことは至極あたりまえのことで、新聞社の偉い方々は先刻ご承知のことと思います。それでも興味本位の紙面づくりをやらざるを得ない営業上のご事情があることもわかります。しかし戦前、新聞が軍の片棒を担いだのも、社員を路頭に迷わすわけにはいかないという営業上の事情であったとされています。営業上の事情と引換えに失うものの大きさを常に考えていただきたいと思います。
教育や労働などは市場主義にはなじまいという指摘を、しばしば紙上で拝見しますが、新聞も売れればよいという市場主義になじまないものであり、そのために競争制限である再販制、特殊指定による保護が認められているわけです。営業本位体制はほどほどにしていただかないと・・・。
まあ百歩譲って、第1報は一面でもいいとしても、加害者や被害者の細かい事情など、周辺事実を第一面トップに載せるのには強い違和感があります。16日の朝刊は「別の同級生も再三誘う」、17日朝刊は「殺傷力強い単発弾使用」という記事がトップです。これらがその日の日本の最重要ニュースでしょうか。
第2報以後の事件の周辺事実などの重要度は低く、探偵趣味のある読者が読めばいいわけで、三面で十分です。決して新聞社が「ぜひ読んでください」と推薦する性格のものではないからです。こんなことをやるから過熱報道という非難を受けるのでしょう。
しかし、いくら連日一面トップを使ってたとしても、読者の興味を満足させるという意味では、豊富な映像が使えるテレビのワイドショーの敵ではありません。その一方で必要な記事が削られるという弊害の方が深刻です。
興味本位の、不祥事と凶悪事件に重点を置いた報道は、読者に対する迎合であり、カタルシスの効果があるかもしれませんが、必要な報道が減少することにより、社会に対する理解力や政治的な判断力などの低下を招きます。それは子供の欲求に負けて、甘いお菓子ばかり与えると、徐々に子供の健康が蝕まれるのと似ています。
政治的な判断力の低下はタレント議員やタレント知事を産む理由になります。大阪府民は行政経験のない、漫才師出身の横山ノック氏を知事に選びましたが、結果はご承知のとおりです(ノック氏の功績は、特別な能力がなくても知事の仕事が務まることを世に知らせたことです)。選挙で適切な人物を選ぶことができなくなれば、民主主義体制の基盤が危うくなります。
新聞の大衆迎合路線は政治的な成熟度に悪影響を与え、それは投票行動にも影響するでしょう。不祥事や凶悪事件報道でテレビのワイドショーと張り合うようなことをせず、新聞としての矜持をもち、多少面白くなくても知らせるべきものを記事にしてほしいと思います。
重要な記事を興味深く、またわかりやすく解説するのが新聞の役割です。無数の情報の中から必要なものを選び出す機能があってこそ、新聞の権威、さらには存在理由があるといってもよいでしょう。
上に書いたことは至極あたりまえのことで、新聞社の偉い方々は先刻ご承知のことと思います。それでも興味本位の紙面づくりをやらざるを得ない営業上のご事情があることもわかります。しかし戦前、新聞が軍の片棒を担いだのも、社員を路頭に迷わすわけにはいかないという営業上の事情であったとされています。営業上の事情と引換えに失うものの大きさを常に考えていただきたいと思います。
教育や労働などは市場主義にはなじまいという指摘を、しばしば紙上で拝見しますが、新聞も売れればよいという市場主義になじまないものであり、そのために競争制限である再販制、特殊指定による保護が認められているわけです。営業本位体制はほどほどにしていただかないと・・・。