数学者の森毅さんが自宅で料理中、コンロの火が衣服に燃え移り重度の火傷を負った、という事故がありました。この種の事故はたまにあることなので、私は機会があれば、高齢の方には安全性の高いIHクッキングヒーターを薦めています。あまり高齢になると切り替え後の習熟が難しくなるので早めがよいと思います。
ところが最近、IHを薦めた3人から電磁波が怖いからと否定されました。うち1人は一旦IHに替えながら、電磁波を心配してガスに戻していました。ここまで「電磁波の恐怖」に広く汚染されているとは、と改めて驚いた次第です。
電磁波は危険だとする本が多数刊行されています。タイトルに「電磁波」を含む和書をアマゾンで検索すると187点が表示されます。4年前には86点で、そのうち電磁波の危険を解説した一般書は約半数の44点ありました。危険を煽る本も4年間でほぼ倍増したと考えられます。数冊の本を読みましたが、どれも恐怖を売り物にしたもので、高い危険性を示す信頼性不明の研究発表を寄せ集める点が共通しています。
現在、電磁波の影響を調べた研究のなかで信頼性が認められているのは、高圧送電線の周囲における疫学調査で、4mG(ミリガウス・長期暴露)を越す地域では小児白血病が2倍程度に増加(*1)する影響が見られるということくらいだと思われます。
10万人あたり年間4人の発症率が倍の8人になるということは、10万人あたり年間4人増加するわけですが、これは他の危険要因に比べてどの程度の大きさのものかを認識する必要があります。例えば2005年のガンによる死亡は10万人あたり年間255.1人(発症はこれよりずっと多い)、同様に心疾患死135.4人、肺ガン死(2004)46.9人、不慮の事故死31.1人となっています(リスクと生活より)
IHへの切替をためらう人には、電磁波の影響の前にきっと他の原因で死ぬよ、と説明するのですが、電磁波の危険を信じてしまった人は簡単には納得しないことが多く、困ったものです。電磁波恐怖本は擬似科学的に書かれているので、すっかり騙されてしまうようです。
電磁波の危険を煽る本が多数出版されて、多くの人がその影響を受け、一部の人は電磁波を防止する高価な器具を購入します。本の著者、出版社、器具の販売者らは恐怖を食いものにしているわけです(詳細は拙文 電磁波恐怖商法をご覧下さい)。このような馬鹿げた状況を改善できるのはマスメディアしかありません。
マスメディアは電磁波が健康に悪影響を与えるという研究を信頼性の裏づけもなく、断片的に報道してきました。そのことが電磁波の恐怖を商売にする連中に格好の土壌を提供することになりました。この「負の産業」の繁栄に、メディアは重大な責任があります。このような状況は文明国として恥ずかしいことです。
電磁波についての正しい知識、リスクの程度を繰り返し説明し、周知させる責任があります。世界保健機関(WHO)や国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)などの認識をわかりやすく伝える、あるいはまともな科学者の解説を伝えるだけでよいのです。殺人事件報道のごく一部でもそれに使ってもらえれば状況は好転すると思います。
(*1)WHOのファクトシート N°322によれば磁気暴露のために小児白血病が発症するのは発症全体の0.2~4.95%に相当するとし、磁気によるリスクをさらに低く見積もっています。また、超低周波磁界の長期的影響に関しては、ELF 磁界への曝露と小児白血病との関連についての証拠が弱いことから、曝露低減によって健康上の便益があるかどうか不明としています。
ところが最近、IHを薦めた3人から電磁波が怖いからと否定されました。うち1人は一旦IHに替えながら、電磁波を心配してガスに戻していました。ここまで「電磁波の恐怖」に広く汚染されているとは、と改めて驚いた次第です。
電磁波は危険だとする本が多数刊行されています。タイトルに「電磁波」を含む和書をアマゾンで検索すると187点が表示されます。4年前には86点で、そのうち電磁波の危険を解説した一般書は約半数の44点ありました。危険を煽る本も4年間でほぼ倍増したと考えられます。数冊の本を読みましたが、どれも恐怖を売り物にしたもので、高い危険性を示す信頼性不明の研究発表を寄せ集める点が共通しています。
現在、電磁波の影響を調べた研究のなかで信頼性が認められているのは、高圧送電線の周囲における疫学調査で、4mG(ミリガウス・長期暴露)を越す地域では小児白血病が2倍程度に増加(*1)する影響が見られるということくらいだと思われます。
10万人あたり年間4人の発症率が倍の8人になるということは、10万人あたり年間4人増加するわけですが、これは他の危険要因に比べてどの程度の大きさのものかを認識する必要があります。例えば2005年のガンによる死亡は10万人あたり年間255.1人(発症はこれよりずっと多い)、同様に心疾患死135.4人、肺ガン死(2004)46.9人、不慮の事故死31.1人となっています(リスクと生活より)
IHへの切替をためらう人には、電磁波の影響の前にきっと他の原因で死ぬよ、と説明するのですが、電磁波の危険を信じてしまった人は簡単には納得しないことが多く、困ったものです。電磁波恐怖本は擬似科学的に書かれているので、すっかり騙されてしまうようです。
電磁波の危険を煽る本が多数出版されて、多くの人がその影響を受け、一部の人は電磁波を防止する高価な器具を購入します。本の著者、出版社、器具の販売者らは恐怖を食いものにしているわけです(詳細は拙文 電磁波恐怖商法をご覧下さい)。このような馬鹿げた状況を改善できるのはマスメディアしかありません。
マスメディアは電磁波が健康に悪影響を与えるという研究を信頼性の裏づけもなく、断片的に報道してきました。そのことが電磁波の恐怖を商売にする連中に格好の土壌を提供することになりました。この「負の産業」の繁栄に、メディアは重大な責任があります。このような状況は文明国として恥ずかしいことです。
電磁波についての正しい知識、リスクの程度を繰り返し説明し、周知させる責任があります。世界保健機関(WHO)や国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)などの認識をわかりやすく伝える、あるいはまともな科学者の解説を伝えるだけでよいのです。殺人事件報道のごく一部でもそれに使ってもらえれば状況は好転すると思います。
(*1)WHOのファクトシート N°322によれば磁気暴露のために小児白血病が発症するのは発症全体の0.2~4.95%に相当するとし、磁気によるリスクをさらに低く見積もっています。また、超低周波磁界の長期的影響に関しては、ELF 磁界への曝露と小児白血病との関連についての証拠が弱いことから、曝露低減によって健康上の便益があるかどうか不明としています。