4月25日、兵庫県で女子高生の下半身に手の甲を押しつけたとして小学校の校長が容疑否認のまま県迷惑防止条例違反容疑で逮捕されました。小さなローカルニュースでありながらこの事件はNHK、読売新聞、毎日新聞、MSN産経ニュース、時事通信などによって実名で全国に報道されました。教育関係者の痴漢行為は意外性が強く、彼らにはとっても「おいしそうなエサ」に見えるのでしょう。
当然のことながら逮捕時点では容疑がかけられただけで、犯人と決まったわけではありません。推定無罪の原則が適用されてもよい状態ともいえます。しかし大きく報道された時点でこの校長は社会的な生命をほぼ失う状況に陥ります。裁判の結果を待たず、報道が彼に実質的な刑を宣告することになります。
一方、迷惑防止条例違反というような、軽い罪の容疑者の実名を警察は発表する必要はあるのでしょうか。裁判の結果が出てからではなぜいけないのでしょうか。問題なのは判決前に、容疑者を地獄へ落とす権限をマスコミに与えていることです。
実名報道によって受ける被害の大きさは個人差があります。教育関係者や社会的地位のある者には致命的である反面、実際の刑罰以外はほとんど被害を受けない者もいます。マスコミが好んで報道するのは前者、つまり地獄へ突き落とすことができる者です。その選択の基準は注目される記事になるかどうかということ、つまり自らの利益につながるかどうかです。
ここに2007年8月20日、痴漢容疑で逮捕された会社員が12日間拘束された後、不起訴となるまでの詳細な記録があります。警察や検察の取調べの模様、マスコミの対応など、とても興味深いものです。「痴漢容疑で逮捕され」は痴漢容疑の恐ろしさをよく伝えています。冷静に書かれた文章は信頼できるもので、実際に痴漢容疑をかけられたときにも役立つことと思います。
「痴漢容疑で逮捕され」は釈放後、ご本人やそのご親族による警察署への取材を経てまとめられたもので、話題になった映画「それでもボクはやってない」の実話版のようであり、埼玉県大宮署の数人の刑事が実名で登場します。
先日、最高裁で無罪判決を受けた防衛医大の名倉教授の3年間に比べると短いようですが、「実際に筆者の家族は塗炭の苦しみを強いられたのである。母は今でも睡眠障害が治っていない」と書かれているように、僅かなきっかけで地獄に落とされる理不尽さを感じます。そして、幸い不起訴となってもそれを元の状態に戻せるとは限りません。
不起訴後のマスコミの対応については、「朝日新聞、東京新聞、共同通信は概ねきちんと対応してくれた。しかし、残念ながら、一番警察発表に忠実な記事を出した産経新聞からは新たな事実を記事にすることを拒否された。筆者に対する対応も一番不誠実であった」と書かれています。
不起訴や無罪判決を記事にしても全読者が読むわけでなく、回復は不完全なものです。ましてそれを拒否する新聞社の姿勢にはあきれます。こんな新聞社を含むマスコミが、それも営業上の都合によって刑罰以上の制裁を課すことができるのはまったくおかしな話であります。
当然のことながら逮捕時点では容疑がかけられただけで、犯人と決まったわけではありません。推定無罪の原則が適用されてもよい状態ともいえます。しかし大きく報道された時点でこの校長は社会的な生命をほぼ失う状況に陥ります。裁判の結果を待たず、報道が彼に実質的な刑を宣告することになります。
一方、迷惑防止条例違反というような、軽い罪の容疑者の実名を警察は発表する必要はあるのでしょうか。裁判の結果が出てからではなぜいけないのでしょうか。問題なのは判決前に、容疑者を地獄へ落とす権限をマスコミに与えていることです。
実名報道によって受ける被害の大きさは個人差があります。教育関係者や社会的地位のある者には致命的である反面、実際の刑罰以外はほとんど被害を受けない者もいます。マスコミが好んで報道するのは前者、つまり地獄へ突き落とすことができる者です。その選択の基準は注目される記事になるかどうかということ、つまり自らの利益につながるかどうかです。
ここに2007年8月20日、痴漢容疑で逮捕された会社員が12日間拘束された後、不起訴となるまでの詳細な記録があります。警察や検察の取調べの模様、マスコミの対応など、とても興味深いものです。「痴漢容疑で逮捕され」は痴漢容疑の恐ろしさをよく伝えています。冷静に書かれた文章は信頼できるもので、実際に痴漢容疑をかけられたときにも役立つことと思います。
「痴漢容疑で逮捕され」は釈放後、ご本人やそのご親族による警察署への取材を経てまとめられたもので、話題になった映画「それでもボクはやってない」の実話版のようであり、埼玉県大宮署の数人の刑事が実名で登場します。
先日、最高裁で無罪判決を受けた防衛医大の名倉教授の3年間に比べると短いようですが、「実際に筆者の家族は塗炭の苦しみを強いられたのである。母は今でも睡眠障害が治っていない」と書かれているように、僅かなきっかけで地獄に落とされる理不尽さを感じます。そして、幸い不起訴となってもそれを元の状態に戻せるとは限りません。
不起訴後のマスコミの対応については、「朝日新聞、東京新聞、共同通信は概ねきちんと対応してくれた。しかし、残念ながら、一番警察発表に忠実な記事を出した産経新聞からは新たな事実を記事にすることを拒否された。筆者に対する対応も一番不誠実であった」と書かれています。
不起訴や無罪判決を記事にしても全読者が読むわけでなく、回復は不完全なものです。ましてそれを拒否する新聞社の姿勢にはあきれます。こんな新聞社を含むマスコミが、それも営業上の都合によって刑罰以上の制裁を課すことができるのはまったくおかしな話であります。