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バカのひとつ覚えは遺伝するか

2019-05-12 22:57:35 | マスメディア
バカのひとつ覚えも遺伝するか

 NHKスペシャル「人体」は去年くらいから放送しているが、内容はかなり目新しいものであるにもかかわらず「こんなに凄いのだ、どうだ驚いた」かといった前のめりの姿勢が気になって興味を削がれていた。番組の宣伝をしつこく聞かされているような感じである。しかしこの5月5日に放送されたNHKスペシャル「人体Ⅱ 遺伝子(1)」意外にも面白い番組であった。その面白さのほとんどは内容の斬新さによるものだが。

 簡単に言うと我々のもつDNAの内、2%は機能や役割がまあ判明していたが、残りの98%は機能や役割が不明でありジャンク(ゴミ)と呼ばれていたのが、最近になってその機能や役割がわかってきたと言うのである。驚いたのは、犯人が残した皮膚や体液などの残留物のDNAから犯人の顔が推定でき、すでに捜査に使われているという話である。顔の形に関係する遺伝子は1万以上あり、それらを調べることにより犯人の顔を描き出せるらしい。しかしなんでこんな面白い話がいままで報道されなかったのか、と気になる。犯人捜査に実用化されるまでには何年もかかったと思う。私だけが知らないのかもしれないが、こんな画期的な話なら繰り返し報道してもよい筈である。数多いテレビ局が毎日24時間も放送しているわけだが、あまり役に立たない。

 リンカーンは「40歳を過ぎたら男は自分の顔に責任を持たなくてもならない」と言い、大宅壮一は「男の顔は履歴書」と言った。顔の形が遺伝的に決まるということになれば、これらの言葉は間違いということになる。しかし若い顔は遺伝的に決定される度合いが大きいと思うが、歳を経ると環境要因の比重が高くなると考えられるので、間違いと決めるのは早計であろう。このあたりのことは一卵性双生児の研究で既に分かっていることと思う。

 ジャンクDNAの解読が進むにつれ、姿形だけでなく才能や性格までを決定づける遺伝子が見つかりつつあるという。ガン、アレルギー、アルツハイマーなど病気に対する抵抗性にも関係する遺伝子があるそうだ。今まで環境などにより後天的に決定されると考えられてきたさまざまのものが遺伝子で決定されているということになりそうである。

 従来は食生活や気候、家族などの人間関係など環境要因によって決まると考えられてきた身体や性格など人間の諸々の特性のうち、個々の遺伝子の機能と役割がこのように示されるようになれば、遺伝の重要性は大きくなると思われる。その分、環境要因の重要性が減ることになる。遺伝的に決まるものが多いほど、努力や学習などの意味が低下すると考えられることから、それを避けるため、この種の話は抑制的に伝えられることが多い。逆に努力すれば変えられるという話は誇張気味にされることが多い。運命論に陥らないための親切なのだろうけど。それにしても人間のさまざまな特性のうち、どれが遺伝の影響を受けるのか、どれが環境の影響を受けるのかということの解明はとても興味深いものになりそうである。

 詐欺グループが騙しやすい人を繰り返し標的にするのは、学習によっても変化しない性格があることを示唆する。激しやすい性格や楽天的な性格など、安定していて変わりにくいものは遺伝的の影響が支配的であるものかもしれない。前回「バカのひとつ覚え」で取り上げた、一旦思い込んだら信じ通す人、他人に耳を貸さない頑固な人の存在は社会の無用な分裂を招くこともある重要な要素である。この性格は遺伝的に決まるものか、大いに興味があるところであるが、私は遺伝が関与する部分が大きいように思う。もし遺伝的に決まるのなら解決はかなり困難となりそうである。