昨年、菅義偉官房長官は「携帯電話料金は4割下げられる余地がある」、「OECDの調査によると(日本の料金は)OECD加盟国平均の2倍程度。他の主要国と比べても高い水準にある」と発言、これが契機になったのだと思うが、携帯大手3社はこのほど料金の引き下げに動いた。この携帯電話料金が高すぎるという指摘が野党でもメディアでも、また経済学者でもなかったことに注意していただきたい。そして菅発言の直後3社の株価は一時、値下がりし経営に与える影響が懸念された。
ところが、ドコモが値下げを発表した4月以降、3社の株価は上昇に転じている。最大4割の値下げを謳っている会社もあり、4割値下げが実現するかという期待を持たせたが、次のデータをみるとそれがどうもイカサマ臭いのである。以下は19年3月と20年3月の決算予想である(会社四季報3月15日更新)。左側が19年度、右側が20年度。
売上高 (億円) 営業利益 (億円)
KDDI 51200 → 52000 10200 → 10400
Softbank 37000 → 37600 7050 → 7150
Docomo 48300 → 47500 9940 → 8940
KDDIとソフトバンクは売上高、営業利益とも微増、ドコモだけは微減となっている。正直に料金を4割下げればこんな数字が出るわけがない。少なくとも増加なんてあり得ない。この予想が正しければKDDIとソフトバンクはより多くの金をユーザーから吸い取る算段であることが分かる。ドコモは少しマシだが、微減である。売上に対する営業利益率はそれぞれ20%、19%、18.8%であり超優良企業である。優良企業であることはよいことだが、それは公共的な事業でない場合である。来期の予想から3社とも身を切るような値下げは考えていないと思われる。政府の誘導だけでは限界があることを示している。ちなみに公共的な性格の強い中部電力の営業利益率は約4%、関西電力は約6%、大阪ガスは約4.6%である(2019年度予想)。
携帯料金が高すぎる問題に対して、野党からもメディアからも、また経済学者からも指摘がなかった。また各社が高すぎたことを実質的に認めて値下げを発表してからも、寡占状態の弊害に対する指摘は誰からもなかった。携帯電話事業は極めて公共性の高い事業であり、3社の寡占による超過利潤は道義的にも問題である。またその額も3社合計で2兆7千億円と巨額であり、この額は秋の消費税増税による増収額の半分ほどになる。価格競争が働いていなかった事実はもっと重大に受け止める必要があると思われる。資本主義経済は自由競争が前提であり、独占の禁止はその根幹をなすものである。むろん独占禁止法があるが、それが十分に機能しなかった事例として認識しなければならない。携帯電話業界においては現行の独禁法はザル法なのである。
例えばガソリンはどのスタンドで買っても同じ商品であるから、選択は価格が中心になる。大変わかりやすいので放っておいても価格競争になる。中には過当競争で共倒れという例さえある。ところが携帯電話は多くのプラン、多くの値引き、契約期間の制限など故意に複雑化して、ユーザーが他社との比較判断ができないようにしてある。そして極端な複雑化のため契約に何時間も要するようになり、また高齢者などは理解しないままに契約せざるを得ない状況を作り出す。3社は販売方法について2017年、2018年と毎年のように公取から行政指導や注意を受けている。違法スレスレの販売をやっているためであり、モラルが低い。
もう半世紀も前のことだが、当時、八幡製鉄と富士製鉄が合併するという話が持ち上がり、これが大論争を引き起こした。公正取引委員会は独占禁止法に触れる恐れがあるとし、また一部の経済学者らも強く反対した。確かではないがメディアも参加していたように思う。何が言いたいかというと、当時は独占ということに世の中が敏感であったということである。
いま、携帯電話業界の寡占問題に対して指摘をする経済学者を私は知らない。経済学者は株や金利の予想に忙し過ぎるのか、独占の問題には興味がないようである。野党とメディアに至っては、それが問題だと認識することさえないように思える。まあこの問題ひとつとってみても野党とメディアの見識の低さが分かる、つまりかなり無能ということが。だからこそモリカケ問題ごときに熱中するのだろうけれど。
ところが、ドコモが値下げを発表した4月以降、3社の株価は上昇に転じている。最大4割の値下げを謳っている会社もあり、4割値下げが実現するかという期待を持たせたが、次のデータをみるとそれがどうもイカサマ臭いのである。以下は19年3月と20年3月の決算予想である(会社四季報3月15日更新)。左側が19年度、右側が20年度。
売上高 (億円) 営業利益 (億円)
KDDI 51200 → 52000 10200 → 10400
Softbank 37000 → 37600 7050 → 7150
Docomo 48300 → 47500 9940 → 8940
KDDIとソフトバンクは売上高、営業利益とも微増、ドコモだけは微減となっている。正直に料金を4割下げればこんな数字が出るわけがない。少なくとも増加なんてあり得ない。この予想が正しければKDDIとソフトバンクはより多くの金をユーザーから吸い取る算段であることが分かる。ドコモは少しマシだが、微減である。売上に対する営業利益率はそれぞれ20%、19%、18.8%であり超優良企業である。優良企業であることはよいことだが、それは公共的な事業でない場合である。来期の予想から3社とも身を切るような値下げは考えていないと思われる。政府の誘導だけでは限界があることを示している。ちなみに公共的な性格の強い中部電力の営業利益率は約4%、関西電力は約6%、大阪ガスは約4.6%である(2019年度予想)。
携帯料金が高すぎる問題に対して、野党からもメディアからも、また経済学者からも指摘がなかった。また各社が高すぎたことを実質的に認めて値下げを発表してからも、寡占状態の弊害に対する指摘は誰からもなかった。携帯電話事業は極めて公共性の高い事業であり、3社の寡占による超過利潤は道義的にも問題である。またその額も3社合計で2兆7千億円と巨額であり、この額は秋の消費税増税による増収額の半分ほどになる。価格競争が働いていなかった事実はもっと重大に受け止める必要があると思われる。資本主義経済は自由競争が前提であり、独占の禁止はその根幹をなすものである。むろん独占禁止法があるが、それが十分に機能しなかった事例として認識しなければならない。携帯電話業界においては現行の独禁法はザル法なのである。
例えばガソリンはどのスタンドで買っても同じ商品であるから、選択は価格が中心になる。大変わかりやすいので放っておいても価格競争になる。中には過当競争で共倒れという例さえある。ところが携帯電話は多くのプラン、多くの値引き、契約期間の制限など故意に複雑化して、ユーザーが他社との比較判断ができないようにしてある。そして極端な複雑化のため契約に何時間も要するようになり、また高齢者などは理解しないままに契約せざるを得ない状況を作り出す。3社は販売方法について2017年、2018年と毎年のように公取から行政指導や注意を受けている。違法スレスレの販売をやっているためであり、モラルが低い。
もう半世紀も前のことだが、当時、八幡製鉄と富士製鉄が合併するという話が持ち上がり、これが大論争を引き起こした。公正取引委員会は独占禁止法に触れる恐れがあるとし、また一部の経済学者らも強く反対した。確かではないがメディアも参加していたように思う。何が言いたいかというと、当時は独占ということに世の中が敏感であったということである。
いま、携帯電話業界の寡占問題に対して指摘をする経済学者を私は知らない。経済学者は株や金利の予想に忙し過ぎるのか、独占の問題には興味がないようである。野党とメディアに至っては、それが問題だと認識することさえないように思える。まあこの問題ひとつとってみても野党とメディアの見識の低さが分かる、つまりかなり無能ということが。だからこそモリカケ問題ごときに熱中するのだろうけれど。