Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

不可能な二次元マッピング

2019-04-24 | 雑感
新聞を開くと小さな記事が目に入った。カナダのバンフで雪崩の中から死体が見つかったというものだ。自然に読み始める。なぜならばマッキンレーで消息の分からなくなった仲間がいたからだ。今回は、植村直己と同じように、その死を予測していた人の死体だった。先週中ごろに消息不明になっていたようだが知らなかった。オーストリア人の母親とシェルパの間に生まれた子供として室内クライミング大会で頭角を現して、極限の登攀をしていたデーフィット・ラマという青年である。この人について名前は聞いていても詳しく知るようになったのは歯医者の勧めで映画を見に行ったからである。

その映画の感想は2014年に書いている。そして今読み直して思い出した。予想通りその映像から数年間しか生きていなかった。技術的以上に明らかに嘗てのアルピニストから言わせると無謀なクライミングをしていただけでなく、なにか感覚が他の極限のクライマーとも大分異なっていたからだ。高峰の頂上付近で数十メートルの滑落を平気で起こすようなクライマーは信用できない。怪我が無くてもその経済性も計算していないような人間はおかしい。それが全てだった。

経済性に言及するのも、実は最初に述べた消息不明の仲間が偶然私に遺して行ってくれた遺言だったからだ。なぜか偶々同じ方向への帰宅への阪急電車中で短いながらも核心に満ちたことを授けてくれた。それから消息不明になるまで何か月ぐらい経ったのかも記憶にはないが、箇条書きにすれば数点しかないことなのだが、どのような書籍を読んでも誰の口からも、それ以上に重要な山における心掛けは未だに聞いていない。

最高の名言は、「どこで距離を置くかが最大の生き延びるチャンスだ」ということで、従来のアルピニズムも続けていれば間違いなく死ぬということを語っていた。実際に頂点のクライマーだったウェリ・シュテックでさえ先ごろ亡くなっている。長谷川恒夫も生きていない。生きている人アレクサンダー・フーバーのような人はいいところで距離を置いている。どのような実力程度であっても自己の極限まで目指すと同じ事になるのである。またその背景にはプロとしての商業主義があって、どうしても次なる冒険へと追いやられる事情がある。アマチュア―においても純粋な欲求が高ければそれほど変わらない。

最近は氷河が小さくなっていることから古い死体が見つかることが多くなっている。見つかる度にすわと思うのは勿論消息不明の近親の者だろう。山岳映画などにはそうした風景が頻繁に描かれていて、殆ど陳腐化したエピソードの一コマともなっている。

それでも結構印象的なシーンで、ガイドの山村で、皆ががやがやと見つかった死体を運び下ろしてくる。そこに駆け寄る婆さんと、また違ったと戻る姿などが描かれていたと思う。アーノルト・ファンクの無声映画か、ショーン・コネリー主演の「ファイヴデーズ ワンサマー」かどうかは観てみないと思い出せない。親族はもとよりも我々もそのような習性に付き纏われることになる。
Five Days One Summer (1982) Official Trailer - Sean Connery, Anna Massey Movie HD


同じような心理状態は、オーデンのリブレットに曲を付けたヘンツェの「若い恋人たちのエレジー」などだけでなく、キリル・ペトレンコが世界初演した「サウスポール」においても同時進行ながら一種独特の心理が描かれている。共通しているのは、恐らく死体の搬送とか埋葬とかではなくて、氷河でも南極でも二次元的なアドレスが明白にならないということなのかもしれない。同じような場合は海にもある筈なのだが、こちらは水自体の流動速度と域が大きいので、特定の地域への捜索意識が固定されない。今回の場合も、カナダであってもバンフと知ってまた異なることを印象した。様子するに5W1Hのアドレス付けに係っているようである。
Opera.TV ELEGIE FÜR JUNGE LIEBENDE

Trailer SOUTH POLE | Conductor: Kirill Petrenko


聖土曜日に購入したパイ類を復活祭日曜日バーデンバーデンから帰宅後に平らげた。来年からもこの期間は同じような生活になりそうである。途中にフランスものを購入できてとても良かった。バーデンバーデンにベルリンから車でやってきているフィルハーモニカーも皆ラインを超えてフランスに買い物に出かけるのであろう。ザルツブルクにはない楽しみだろう。



参照:
あり得ないような燃焼の時 2017-05-01 | 文化一般
若い仲間たちへのエレジー 2015-08-09 | 雑感
廃炉、最終処分の費用分担 2016-05-05 | アウトドーア・環境
「南極」、非日常のその知覚 2016-02-03 | 音
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