2000年
半信半疑だった東尾監督の視線がマジになった。「変化球やストレートにキレが出てくれば戦力になるはずだよ」と指揮官から期待を寄せられているのが新外国人、ラファエル・ディアスだ。2月22日に極秘来日した無名の助っ人が、高知キャンプの入団テストにも合格。レオ投手陣に新ストッパー候補が誕生した。69年メキシコ生まれの30歳。89年から大リーグのマイナーに所属し、96年からはメキシカンリーグでプレーした。昨年の成績は8勝2敗18S、防御率2.60。メキシコ代表としてシドニー五輪予選にも出場した実績を持つ右腕が、文字通り一発回答を演じたのは2月29日の紅白戦だった。ピッチングは粘り強かった。予定の3回を3安打無失点(1四球)に封じる。まだ本来のスピードではないとはいえ、ストレートは最速147㌔をマーク。さらにはチェンジアップ、スライダーを織り交ぜた巧みな投球術で、紅軍打線を手玉に取ってみせたのだ。来日直後の2月23日、二軍の紅白戦(西武ドーム)では、見守った浦田球団本部長も驚きのMAX150㌔を計時したという。そして、高知キャンプでは一軍首脳陣をうならせてテスト合格。「体調は100㌫じゃないし、スピードにも満足していないヨ。3か月も練習してなかったから。でも、自分の出来はまあまあだった」念願の西武入りを決めたディアスだが、ハングリー精神も並大抵ではない。とにかく練習熱心で気を抜かない。「松坂?知っているヨ。ものすごく速いボールを投げるらしいネ。話も聞いてみたいし、見習いたいな」打線はフェルナンデス、ジェファーソンの現役大リーガーを獲得したが、ディアスの加入で投手陣の競争が熾烈を極めるのは必至の状況になってきた。テスト合格を手土産に、ビザ取得の手続きを行うため3月1日に一時帰国、プリセラ夫人、長男・ペンジャミン君(6歳)と喜びを分かち合った。掘り出し物の助っ人右腕が、日本球界で旋風を起こすかもしれない。