想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

不時着しました

2011-08-22 12:48:33 | Weblog
縁側のガラス戸がプツッと音をたてた。
なにかと開けてみると、トンボだった。
昆虫好きではないのでチョウチョもトンボもよく名前を知らない。
カブトムシもたくさんいるけれど、遊びに来た人が騒いでいるだけで
主はとんと興味がないままである。

飛来する生きものでわたしを喜ばせてくれるのはもっぱら野鳥で、
毎日見ていて飽きない。けれどトンボは赤とんぼが増えたね、くらい
の会話で、オニヤンマだ何だと喜ぶのは来客である。
お盆が過ぎて静かになった森の庭。雨が降り出す少し前、まだ朝日が
残っている時間だった。

ガラス戸に衝突して不時着したトンボを発見し、生きているか確認する
と、前脚をこすり合わせていた。
けれど一本の脚が曲がっているようにも見える。
透明の羽はきれいに揃っていて、どこにも傷はなかった。
衝撃が強かったためか、すぐには飛びたたないのだった。



ならば飛ばせようかと羽をそっとつまんで位置を変えた。
飛ばない。じっとしている。
人の手はかえって怯え、脅威かもしれないとも思う。
なにがなんだがわからないだろうし。



トンボにとっては飛べないにしても草の上のほうがいいかもしれないと
縁先の玉石を敷いてある切れ目の、夏草が生えたところへそっと放った。
トンボは草の茎にしがみつくようにして留まった。
見ると、上手に掴まっている。ちょっと感心し、しばらく眺めていた。

ベイビーがそばにきて鼻先でつんつんと膝をつつく。
わたしが何かに意識を集中していると、何かと横から割り込むのである。
ひっつき虫である。昆虫は興味がないけれど、このひっつき虫は好き
なので仕方がない。

頬を挟んでヨシヨシして、顔をあげて草の方をみた。
もうトンボの姿はなかった。その間、数分だろうか。
飛び立ってくれたかどうか、草の間を目を凝らして探した。
どこにもいなかった。
ちょっとほっとして、またヨシヨシの続きに戻った。

コメント
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