昨日(22日)はNHK大河『天地人』最終話を高齢組のお相伴。またずいぶんとさらっとした、と言うか水で溶いてのばしたような終わり方になったものですね。兼続(妻夫木聡さん)、すっかり“過去の人”に落ち着いての回想モード。
二代将軍徳川秀忠の指南役に指名されたり、それも引退したり、私財で米沢に学問所を建てたり(あったんだ私財)、妻と生まれ故郷の越後を旅したり、大阪の陣後のいろんなことを一気に詰め込んだ中でも、実の兄弟以上の絆で結ばれた主君・上杉景勝(北村一輝さん)に引退を申し出る場面は「ただのひとときも退屈しない人生で御座りました」以外にももう少し何か劇的な演出があってもよかったような。
長女・次女に続いて、待望の長男だった景明にまで病で先立たれ、落胆著しい妻のお船(常盤貴子さん)を励まして上った越後の峠で「この先の高みを目指す気力はもう無い」「直江の家は私で終いじゃ」と吐露する場面で、兼続のこの時代の武将としての哀愁は尽きていました。謙信公(阿部寛さん)以後家勢ジリ貧一方の上杉家で紅葉の家臣に徹した人生、ドラマは歴史教科書に出てくるビッグネーム武将たちと次々接点を持ち、持てば必ず評価され一目おかれる、『フォレスト・ガンプ』みたいな展開になっていたので、それなりに華やかで幸せだったようにも思いますが。
死期間近な家康(松方弘樹さん)が「兼続を呼べ、江戸城の書物、欲しいだけ持って行って良いと言えばすぐ来るはずだ」と言うところがいちばんおもしろかったかな。“学んで知る”ということに長け、何より重んじてもいた兼続の人となりを、「虫酸が走る」か何か言いながら結局家康はよくわかっていた。松方さんは今作全体に、憎まれ役として得がたい味を出していたと思います。325㌔のマグロも釣れるわけだ。関係ないか。
それにしても指南役兼続、御家人若手衆に人気過ぎ。敗れて謀反人として処刑されたと言えども、国を思い国の将来を考える姿勢において共感できる男だったと言いたいのはわかるけれど、“戦争を知らない子供たち”な幕府の若い衆の士気を考えて、石田三成(小栗旬さん)より「大御所さま(=家康)が、清濁併せ呑み痛みを怖れぬ胆量において図抜けておられた」ぐらいのヨイショしとけばいいのにね。義だ愛だ言いつつ結構空気読めない奴じゃありませんか。マイルドに見えて、決して情の人ではなく、かなり頑固。
妻夫木さんと言えば月河はなぜか『砦なき者』『天国と地獄』といったネジくれた犯罪者の役しかちゃんと観た作品がないのですが、“甘くソフトな顔してきっつい事を言う”おもしろさなら、このキャスティング正解だったと言えるでしょう。惜しむらくは後半の、ヒゲつき老けづくりがまったく似合いませんでしたな。
NHKは早くも29日から放送開始の『坂の上の雲』宣伝に全社一丸となってる雰囲気ですよ。祝日の今朝(23日)も朝8:00台から10:00頃までメイキング番組、主人公の生地である松山ルポを放送していました。
司馬遼太郎さんのこの原作、当初は2007年の大河ドラマとして企画されロケハンまで進められていたのが、脚本・野沢尚さんの04年の自殺で頓挫、新規巻き直しとなり、ようやく放送にこぎつけたと聞きます。熱の入れようもわかりますが、今年の暮れまでに第一部5話、来年秋に第二部4話、再来年秋に最終第三部4話という、壮大というより間遠に過ぎる放送スケジュールはどんなもんでしょう。高齢家族などははなから「絶対最終話放送まで生きてないだろうから原作買って読む」「一部放送終わる(=12月27日)までに絶対完読する」と、勝負投げてんだか逆に喧嘩売ってんだかわからない発言かましているし、再来年2011年秋なら地デジ完全移行後の放送ということになり、“地デジにしないと結末見られないよ”とのソフトな脅迫ともとれます。
明治の元勲、陸海軍の重鎮役がぞろぞろ登場する内容とあって、キャストも脇はベテラン中のベテラン揃い。始まる前から縁起でもありませんが、放送中に、最終話もしくはご自身の登場シーンオンエアを見ることなく、その……何だ、そういうことになる高齢俳優さんが出たりしますまいか。森繁久彌さん、水の江滝子さん、表舞台から距離をおいて静かに天寿を全うされた大御所の訃報が続きましたが、さほどの年齢でもなくついこの間まで元気でTVを賑わせていたかたが突然「…実はこんな病気を抱え治療しながらの出演だった」なんて注釈付きで黒枠になることも珍しくない昨今。
メイキングを見ると海外遠征ロケ、屋外ロケ、昼夜兼行撮影も伴う苛酷なプロジェクトのようで、ちょっと心配になります。心臓に既往歴のあるN・Tさん、やはり大病歴があって事務所社長業も多忙なW・Tさん、若いほうだけれど今回の役のため大減量を敢行したというK・Tさん、逆に近年増量が著しく騎馬姿がきつそうなT・Hさんなど、大丈夫かな。