イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ノックしてターン

2009-11-06 19:57:33 | 昼ドラマ

1週が終わろうとしていますが、Xmasの奇蹟』に、我ながら驚くほど惹き込まれません。この枠『危険な関係』その他でヒロイン実績ある高橋かおりさん主演の甘美なラブファンタジーとの触れ込み、良い意味でベタな泣かせが見られそうと期待していたのですがね。

まず“謎の覆面ピアニスト”というファンタジー仕様ツールの扱いがスーパーなおざり。ひとりの若手ディレクター(岡田浩暉さん)が大手レコード会社を辞めて、恋人の女性宣伝部員(高橋さん)をも辞めさせて、新会社を立ち上げるまでに惚れ込んで売り出そうとしていたアーティストについて、1年余りにもわたってファイルもノートも、連絡先を書いたメモ用紙ひとつ残さず、自分ひとりの胸にしまったままCDリリースや販促活動、デビューコンサートのハコ押さえができるなんて、どうしても考えられない。

まぁ敵(=業界ライバル会社やマスコミ)を欺くにはまず味方からということもあるし、謎のピアノマンのCDの上がりだけで新会社が立ち行くとも思えず、そもそもこのディレクターと宣伝部員カップル、同じく前の会社から引き抜いてきた(あまり敏腕そうにもやる気ありそうにも見えない)営業くんと、あとは宣伝部員の妹である事務員(月河期待の蒲生麻由さん)だけで、事務所経費払って、給料払って黒の出る会社経営できていたのかなんてこともファンタジーのうちと思って、こちらもスーパー大目に見るとしましょう。

問題はその“ファンタジー”自体が、なんとも志低く小スケールで、新鮮味に欠けるにもほどがあるということ。

はっきり言ってしまえば韓国ドラマっぽのです。っぽ過ぎるのです。

新ドラマや新作映画を見ていて、序盤で「あ、この設定、このストーリー、過去作の『○○』に似てるな」と思うことは珍しくなく、思ったからといって作品として致命傷になるわけでもなく、展開のひねり方やキャラの立て方、俳優さんの役の読み込み膨らませ方などで、最終的に「似てるけどこっちのほうがずっとおもしろかった」とめでたく好評を獲得することもできます。

しかし『Xmas』、華やかな音楽業界舞台・バリバリ働くヒロイン・幸せの絶頂で恋人事故死・見知らぬ青年として現われる恋人人格・亡き恋人の親友の誠実なる横恋慕…などの設定モチーフだけではなく、人物の、男女ともに流行先端業界人たちにしてはいまいち貧乏臭く古めかしく、キリッと感のないヘアメイクや衣装、昼ドラ常套“行きつけの店”であるバー“ノクターン”の、せせこましく煮込み臭いしつらえ、全体に妙に黄色っぽく平板な照明など、立ちこめる空気が隙間なく、平日の1000台や1500台に再放送されているような56年前製作の“現代もの”韓国ドラマを思い出させるのです。

韓国ドラマについて多くを知らないのに大きなことは言えませんが、日本でかの国のドラマが人気したのは要するに“とりたててものすごく斬新なところがひとつもない”からだと思うのです。日本のドラマ視聴者がもともと持っていた“メロドラマ好き”“ベタでダサな泣かせ好き”の琴線に、ほどのよい飢餓感を伴ってタイムリーに触れた。日本のTV局や制作会社が「陳腐だし、当節もう飽きられただろう」「いまどきこんなのやったら他社に笑われる」と長いこと物置にしまっていたネタ、モチーフを“いまさら”臆面もなくご披露してくれたから、「そうそう、こういうの、見たかったのに最近なかったのよー!」と入れ食いで食いついてくれる客が思いのほか多くいた。

しかも、六本木で酒飲んでブイブイ言わせたり、グラビアモデル連れてマンション入って写真誌に載ったりすることのない韓国の俳優さんたちは、かつての銀幕スタア並みにほどよく神秘性があって有り難味もありました。

 言わば市場の“気がつけば意外と深く広いニッチ”に嵌まったに過ぎない韓国ドラマを、日本のドラマが(それこそ)“いまさら”まるなぞり、まる追いかけとはあまりに志が低すぎませんか。ラブ“ファンタジー”という謳い文句も、要は“あり得ない設定をアリにさせる”ための免罪符にしか聞こえません。

ファンタジーと銘打てばどんなにはちゃめちゃで噴飯な設定も展開も通用すると思っているのだとしたら、ファンタジーという概念を冒涜しているとさえ言える。ファンタジーとは既成の価値観や予定調和を想像力の飛翔で突き抜け無限に上昇する、創作創造における至高の高みなのに。

「大丈夫か、昼帯」

…同枠前作『嵐がくれたもの』のあまりと言えばあまりな最終話も込みで言わせていただきます。TV界でいちばんこの枠を贔屓にしている月河としては、結果的にはちゃめちゃになってもいいから、もっとオリジナルで、もっと魂の入った、もっと“攻めてる”ドラマを観せていただきたいのですが。

………まっ何だかんだ言っても、横恋慕親友博人(大内厚雄さん)のズレっぷり、『非婚同盟』三原じゅん子さんの“ツッパリでない版”のようなノクターンミツコ(白石まるみさん)の“半分親身、半分好奇心”っぷりは楽しいですよ。白石さんと火野正平さんが昔なじみのわけありかぁ。

コメント
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