28日(土)に第3話を放送した『外事警察』にじわじわ嵌まっていますね。午後9:00台のTVは何曜日でも、ほぼ録画視聴なのですが、万障繰り合わせてTVの前に座り、リアルタイムで食い入るように観たいと思わせるドラマです。
とにかく戦略的に画面が暗くてしょうがないドラマなので、自室のアナログVHSでは正常に録れても全篇の大半何やってっかわからない映像になりそうだということもありますが、ハンディカメラを多用した、常に小刻みに揺れる画面が奇妙に「いま見逃したら終わりだ」という、錯覚的な一期一会感をちらつかせるのに貢献しています。
父親(堀部圭亮さん)も警察官だった住本(渡部篤郎さん)の少年期の体験を現在の人格や捜査手法の原点のようにフラッシュバックで見せる辺り、“精神的に特殊で、突出したキャラになる原因はすべて親がらみの幼児体験”に帰するサイコロジカル・サスペンスのお約束めいていてちょっとベタですが、NHKにしかできない“CM中断なしの1時間枠”を鐚一文弛緩させない緊密な作りで、パッと見でのベタさを埋め合わせてお釣りが来ます。
原作麻生幾さんは何度か総合誌の記事でお名前を拝見しましたが、脚本古沢良太さんは『相棒』Season 4からクレジットでお馴染みになりました。
亀山くん(寺脇康文さん)が右京さん(水谷豊さん)のちょっとした悪戯心から、埋蔵金目当ての犯人により暗号解読のために郊外の廃家屋に拉致監禁されてしまう『監禁』、不幸な成り行きでヤクザの愛人にされた女(鈴木杏樹さん)の一発逆転狙い『ついてない女』(以上Season 4)、亀ちゃんが美和子(鈴木砂羽さん)との愛の巣にと法外の廉価で購入したアンティーク豪邸に仮面の幽霊もどきが出没し…『スウィートホーム』、平凡な独身リーマン(林泰文さん)がなぜか記憶の飛んだ前日の行動のため強盗犯容疑者にされ、特命コンビとともに失われた一日をたどる『イエスタデイ』(以上Season 5)、人里離れた田舎屋で隠遁生活を送る女流フランス文学者(岸惠子さん)が、偶然離れに同居させるも密室服毒死した浮浪者男(国広富之さん)の正体解明を、東大での教え子右京さんに依頼する『密愛』(Season 7)など、『相棒』ワールドではちょっと変化球で、いつもの特命係の条件とは違う、シチュエーション・コメディならぬ“シチュエーション・ミステリ”を、古沢さんはとりわけ得意としているイメージがあります。月河も再放送で観て、かなり気に入ったエピソードが多い。
『つばさ』の戸田山雅司さんもそうですが、『相棒』経験者の脚本家さんは、いまや「ドラマの」のカンムリを付けていいと思うNHKで、大活躍されていますね。これは嬉しい限りです。
『外事警察』も全6話で終わるのが惜しいな。住本の上司役・遠藤憲一さんも、登場シーン少ないながら、『不毛地帯』でのそれの倍以上の味を出していると思います。