この前にはここで“はち切れそう”と書いちゃいましたけど、フィギュアの長洲未来選手、フリーで改めて見ると脚が長い長い。おまけに柔らかい。ジャンプの高さなんかはシロウトが見るとびっくりするほどのレベルじゃまだないように思うんですが、着氷の瞬間ピッ!とポーズとってニコッと微笑む、そのキレがとてもいいので、もっと高々跳んだように見える。運動神経が総合的にいいんでしょうね。最終滑走で4位に入って安藤美姫選手を上回りましたが順当かな。16歳、次ソチ大会でも20歳。楽しみですね。
安藤選手の、前にビラビラついた孔雀コスチュームよかったんだけどなー。クレオパトラというよりサロメみたいで。あのいでたちでぜひ表彰台に上がってほしかったんですけど、男子シングルが惜しかった地元カナダ、この表彰台だけはと死守した格好。ジョアニー・ロシェット選手、大人のフィギュアスケートという感じで上品な演技でした。お母さんが天国から力を貸してくれた…なんて注釈は失礼でしょう。実力実力。
我らが浅田真央選手は、やっぱりキム・ヨナ選手の直後の滑走順がこたえましたかね。ここへ来てそんなことでグラつくタマじゃないはずだけど、あれだけ完璧に演られると心理的に影響ないわけがない。いきなり怖かったもの、形相が。両頬自分でビンタくれてムンクの叫び顔になるくだり(←この表現もどうかと思うが)だけじゃなく、全体的に。
ご本人はジャンプでのミスが悔しかったようだけど、出だしから表情が硬く、成功したジャンプも踏み切り前にいくらか逡巡があるように見えました。跳ぶ前に引っかかって1回転になったところは、リンクにエッジが噛んじゃったんでしょうね。リンク傷だらけでしたからね。最終グループ6選手の前に整氷すると思ったら、しないのね。安藤選手もどこかで地味に噛んでたし。
競馬の神様がイタズラ好きで途方もなくタチが悪いのは月河、承知ですが、スケートの神様もかなりロクでもないですな。
そんな中、プレッシャーをはねのけて集中しきったキム・ヨナ選手はお見事と申し上げましょう。3連続ジャンプの3つめのループ、片腕を頭上に上げて跳んだのはかなり加点したんじゃないかな。両腕たたんだ普通の跳び方より難しいんですよね。
エンディングのスピンが終わらないうちに、ブライアン・オーサーコーチがたいへんな喜びようでした。これでもかこれでもかと得意のトリプルアクセルをたたみかけてくる真央選手に、あえてアクセルで対抗せず、「(成功すればジャンプ中最高得点の)アクセルがなくても、ヨナの表現力で上回れる」というプログラミングの賭け大成功で、コーチとしては人生最高の仕事が出来た瞬間。現役選手時代、アクセルを得意としていながらそのアクセルに賭けてアメリカのボイタノ選手(←片腕を上げてのジャンプを得意としていました)に敗れた苦い経験のあるオーサーさんは、多回転ジャンプという技の“蜜”と“罠”を熟知している。
真央さん&タラソワコーチチームは、ヨナさんの技量にというより、オーサーさんの老獪さに敗れたのかもしれない。韓国からコーチギャラいかほどもらってるのかしら(←ヤらしい話)。
こういう結果になったからというわけではないけれど、真央選手のフリーの選曲もどうだったんでしょう。タラソワさんは「いままでとは違う真央を見せ、女子フィギュア自体も変わるための“鐘”を鳴らすプログラムになる」と自信のチョイスだったようですが、曲が進むにつれ真央さんに、いやが上にも切迫感を強いるような、苛酷な拷問のように聞こえてしまいました。
どうも伊藤みどりさんの頃から、日本のフィギュアって、選手の年頃や持つ雰囲気に比べて、必要以上に重たい、古い曲を選ぶ傾向があるような。もっと、いま風の明るさや元気さ、可憐さを活かすような演しものを考えてあげられないかな。その点、8位に飛び込んだ鈴木明子選手のウエストサイド・ストーリーは溌剌としていて、まあどのみちメダルには圏外だろうという逆の安心感もあったけど理屈抜き楽しく観られました。
あと、オリンピック期間はいつでもそうなんですけど、バラエティ寄りの報道番組で「誰だオマエ」的な解説者が続々登場しましたな。名前がテロップで出ると「あー、あの」とおぼえのある人もいれば、もう一度「誰だオマエ」になる人も。村主章枝選手のお姉さん?はあまり似てませんね。
『ミヤネ屋』で宮根さんの隣に、ジャニーズ事務所卒業して10年たちましたみたいな微妙な男性が立っていて、局アナにしてはモゴるし何者だコイツと思っていたら、長野大会で日本代表だった田村岳斗選手。シェルブールの雨傘から12年。あのときも「名曲過ぎるだろ」「て言うか映画知らないだろ」と思ったものですが、その後モヒカン頭にしたり、それを金色にしたり、さらに黒との染め分けにしたりと愉快なB級キャラでした。あのヤマトくんがもう解説者ねぇ。月日の経つのははやいし、選手として輝くことのできる時間は貴重。ヨナさんはこの金メダルで達成感半端ないだろうし引退してしまうかもしれないけど、真央さんはもうひと声いけるでしょう。次大会ではもっとスマイルいっぱいの演技を見たいものです。