先週だったか、堺雅人さんの顔をTVで立て続けに見かけたなと思った頃、偶然ですがよく立ち寄るCD店の旧盤フェアで掘り出し物を見つけました。左柱←←←のトップに載せてみた、2007年のドラマ『孤独の賭け ~愛しき人よ~』サウンドトラックです。ルネ・マグリットの名作『大家族』を連想させるジャケデザインに目がとまり、試聴してみて即決購入。
思い起こせば07年4月からスタートしたドラマで、この時代に五味川純平原作、しかも乗っ取り、復讐、色仕掛け、寝返りとオールドファッションドな道具立てに心惹かれて序盤はしっかり録画視聴体勢だったのですが、主役の伊藤英明さんがどうしても辣腕の成り上がり実業家に見えず、あまりに気の抜けた出来だったため早々に見限って、劇伴音楽の魅力をスルーしていたのです。もったいなかった。
音楽担当は1980年生まれ、気鋭の澤野弘之さん。こんなに若い人がよくぞと思う、すがすがしいまでの昭和アナクロ調全開です。店頭試聴ではメインテーマである01.『BLOOD』を一聴して「特撮ヒーローのプレ決戦シーンに流れてもいける!」と速攻レジに走ったのですが、ほぼ全曲にわたって良きケレン味溢れたホーン群と、好ましくも気障ッたらしいパーカッションがフィーチャーされ、思わず頬の弛むB級感とともに、テンションうなぎのぼり。
高度成長期の社用族華やかなりし頃のナイトクラブ音楽と、80年代半ばプレバブル期の、お恥ずかしカフェバー的AORが渾然一体となったら、あらら奇跡的にカッコよくなっちゃった!みたいな嬉しい衝撃のアルバムです。
それにしても、曲単体で聴いて、「あぁ第何話の、あんなこんなシーンで流れてた」を、これほどいっさい思い出させないサントラも珍しい。第3週ぐらいまでは観たはずなのですが。この曲群、曲想群にドンズバマッチの場面ばかりから成るドラマだったならば、そりゃもうスリリングでいかがわしくて、濃くてクサくて牽引力の強い作品にならないわけがないのに。
ヒロイン役長谷川京子さんは07年の先立つ1月クールで『華麗なる一族』の昭和のお嬢さん妻が意外にはまっていたし、このドラマでも、野心家の新人ファッションデザイナー役ということでとりあえず素敵なお衣裳姿を期待したのですが、スタイリストさんと相性が悪かったのか、ドラマ場面としての総体的な見せ方のせいか、なんだかさっぱり綺麗に見えなかったし、脇の共演に笹野高史さん、井川遥さん、そしてもちろん堺雅人さんと、結構興味なくもない俳優さんが揃っていたのに、どうしてあんなにはまれないドラマになってしまったのか返す返すも不思議。
当時第2週ぐらいの段階で「高学歴高競争率の入社試験をパスして勝ち組感にひたっている在京キーTV局の社員Pやスタッフでは、“どん底から這い上がる”を視覚化するのにどうしていいかわからないのでは」というような意味のことをここで書いた記憶もおぼろげながらあります。
これだけ音楽が粒揃いだったことを遅ればせながら知ると、この際、この原作、昼帯で、再企画リターンマッチといかないかしら。下ごしらえと調理次第で、もっともっと面白くなる素材だと思うのですがね。花形人気企業の花形職種だったTV局P諸君も、さすがにこの不況で07年当時よりは“どん底経験値”が上がったはず。
この旧盤フェアでは他にもドラマ劇伴のラッキーな拾いものがあったので、また後日ゆっくり触れてみたいと思います。