女子フィギュアスケートはどうでしょうか。オリンピックも、日本人選手が高確率でメダル取れそうな種目がほとんどコレだけになってきたので、要りもしないトリビアも乱れ飛んでヘンな過熱報道になっていますね。
日本時間24日のSPではキム・ヨナ選手が浅田真央選手を一歩リード。しかし、夜も何度も何度も各局でリプレイしていましたけど、5pt弱の差がどこでつくのか、技術オンリーで見てったらシロウトには本当にわからないですね。プログラム序盤でのコンビネーション・ジャンプが、ヨナさんは堂々たる3回転+3回転、対して真央さんは最初の3回転がより難度の高いアクセルで、ふたつめは2回転のトゥループなので、若干“ついでに回った”感があったかなと思う程度。
ただ、全体の印象はだいぶ違いますね。選曲やテイストというより“芸風”が違う。同じ1990年生まれ満19歳でも、ヨナさん、何かやたら色っぽいんですよ。それも、思いっきり誤解を怖れずに言えば、いささかションベン臭い背伸びした色気で、切れ長アイズ直球アジアンな風貌の、貧にゅ…いやその、スレンダーな少女のああいう演技って、特に欧米人には結構琴線にふれるんじゃないかしら。アゴを突き出してクネッとしたり、指パッチンしたり、かなり開き直ってB級。
一方真央選手は、ひたすらお行儀よくきれいきれいに滑っていて、一見したあと、これまた誤解を怖れずに言えば「…だから何?」という気がしないでもない。文句なしにじょうずなんだけど、不思議と記憶に残らない。
同じ種目でも、男子と違って女子の場合“技術”“運動選手的能力”に“美的芸術的センス”を掛け合わせるだけでなく、それと知られないぎりぎりの微量“媚態”を混入させないと、高レベルの争いの中アタマひとつ抜け出るのは難しいということでしょうね。
ただしその“微量”の匙加減がスーパー難儀なため、真央さん陣営なんかは初めからそこに踏み込んでいないふしがある。
その点ヨナさんのコーチは男性。しかも、コレはあくまで月河の想像ですが、このブライアン・オーサーさんって(若干加山雄三さん似ですがそれはともかく)“内的にユニセックス”な男性ではないでしょうか。ウォーミングアップ中のヨナさんを見つめる眼差しでなんとなくそう思ったのです。演技に“色気”“媚態”を潜り込ませることにまったくためらいがない。
ジュニア時代には真央さんに後れを取り気味だったヨナさんが、シニアに入ってから徐々に逆転してきたのは、ご本人の資質や努力プラス、コーチの方向付けの力もあるでしょう。
その点、安藤美姫選手は攻めてましたねー。胸に十字架&袖ヒラヒラの転びキリシタンみたいなあの衣裳だけで嬉しくなっちゃうね。この人もコーチが男性でしょう。練習もかなりぎゃんぎゃん英語(ロシア語?)でやり合いながらやってるんだろうなあ。「もうあのオッサンとはクチきかない!」とか言って、これでもかこれでもかと3回転成功させて「“参りました、ずっとコーチやらせて美姫様”ってひざまずかせてやる」みたいなプレイ。いやプレイってことはないか。性格のきっつい負けん気な感じがストレートに外見に出ていて、しかも出た分がそっくり演技の長所にも短所にもなっている。フリーも攻めてほしいなあ。
日本代表“第三の女”鈴木明子選手は、いささか選曲が古いですね。若さとか未知の魅力が感じられない。いや24歳で、代表中最年長、ブランクがはさまって遅咲きになっただけでかなりのベテラン実力者らしいですが。演技している分には気にならないけれど、アップになるとやはり摂食障害独特のホルモンバランス悪そうな浮腫み顔、黒ずんだ歯並びが痛々しい。他の選手と比べて何位だではなく、彼女の中での“自分の夢への決着の戦い”として見守るべきでしょう。
あと、今大会思ったのは、日本人3選手と、韓国のヨナ選手だけ別格で、あと欧米の各選手軒並み、やたら大きくないですか。ぶっちゃけ胸やヒップに栄養が行き渡っているというか。3位に入ったジョアニー・ロシェット選手もそうだし、両親ともに日本人のアメリカ国籍長洲未来選手、全米優勝のレイチェル・フラット選手などはち切れそう。フィギュアの女子選手ってあんなんだったかしら。ジャンプするのが大変そうなんですよ。だからますます真央さんヨナさんが抜きん出て輝いて見える。
タイムや記録と同じ俎板に“美”という禁断の果実を載せてしまった厄介な競技。企画構成組み立てるのも、演じるのも、観て評価するのも、さらにその評価に対して侃侃諤諤するのも人間。厄介が3乗4乗するリンクで、それでもスマイルで滑走する選手の皆さんは大変だと思いますが、全員ミスなく、誰が誰の上になっても下になっても後悔のない演技ができますように。