年が明けてからの『相棒 Season 8』は、元日SPが観光&薀蓄とアウェイ感、11話『願い』は犯罪被害者たちの逆襲、12話『SPY』は警察組織内暗闘、13話『マジック』は芸の人が芸に殉じる物語、14話『堕ちた偶像』は信念の人が信念ゆえに道を踏み外すお話で、いずれも『相棒』シリーズ内で“いつか見たことがあるような系”には違いないのですが、キャストと脚本家さんたちの個性由来の調理味付けバリエで飽きさせず見せます。
「いつもこんなんばっかり」に偏らずいい具合に味がばらけている分、バランスはいいけれど“忘れ難く引っかかる1エピ”になかなか出会いにくい物足りなさはあります。再放送で時系列不同に視聴し始めたのが一昨年(08年)の春、定時のレギュラー放送を追尾し始めたのが同秋からの亀山くん卒業シリーズSeason 7から。“このSeasonならこのエピが白眉”が、昔ははっきりしていたようですけどね。好視聴率安定株化して、出来が平準化したこともあるか。“良心的で質のいい金太郎飴”みたい。『水戸黄門』のように、キャストちょこちょこ取っかえても、いつからでも始められるようなしろものになっちゃったら、それはちょっと残念ですが。
見逃せない新番組の報が2本。来週14日(日)のスーパーヒーロータイムには新しい東映戦隊シリーズ『天装戦隊ゴセイジャー』が登場。未確認情報段階で“守護天使”イメージの戦隊とは聞いていましたが、天“装”の文字が使われるとは意外でした。『超星神グランセイザー』の「装着!」を思い出します。
公式プレサイトや紙媒体でのヴィジュアルを見る限り、天使っぽい点はシルバーホワイトのタイツに金のベルトとバックルぐらいで、普通にメットにマスクで結構シャープないでたち。ボレロ風な丈短ジャケ?の切り替えがファンタジー戦士らしいかな。
“空”“地”“海”の属性を持つ“種族”の護星天使たちというキャラ設定も、『グランセイザー』の4つのトライブを想起させます。序盤、炎のトライブと風のトライブに行き違いや軋轢があったり、水のトライブが1クール遅れて参加して、再び波風が立ったりもしましたっけ。『ゴセイジャー』はどんなキャラ立て、関係性確立までの工夫がみられるか、先月から流れ始めた予告では、初動キャストの5人みんなそれぞれに“天使”らしい風情があって楽しみです。
年明け早々辺りは「“完結は劇場版で”のディケイド方式の悪夢再びか!?」と不安もよぎった先輩戦隊も、7日放送最終巻でこの脚本家さんらしい一抹の寂寥含みながら、余韻のある結末をきちんと迎えたし、恒例の後任レッドとのバトンタッチもカッコよく決まったし、細工は流々というところ。
もう1本、4月からの東海テレビ枠昼帯は『娼婦と淑女』。かつてのアイドル子役・安達祐実さんもいつの間にか28歳、“満を持して”と申し上げたい昼帯ヒロイン参戦です。
現行のこの枠は、キャラ萌えイケメン擬似戦隊『インディゴの夜』で新風を吹き込みそこそこ快調に走っていますが、4月からは伝統の、コンプレックスと愛憎渦巻くねっちょり情念もの復活となりそう。結婚、出産、離婚も経験された現在の安達さんなら、軽く明るい漫画チック路線より断然合っていますよね。
…って言うか、ご本人サイドも、“娘”“妹”キャラがきつくなってきた近年は、学研のおばちゃんじゃないけれど「まだかな、まだかな」と“昼ドラ主役待ち”気分でおられたのではないかな。
ちょっと気になるのはこの枠の帯ドラマ、07年の『母親失格』辺りから、特に原作無しのオリジナル作の場合、タイトルが“企画会議席上のコンセプトまんま”な、身もフタもない傾向が出はじめていることです。
『白と黒』とか『非婚同盟』とか、コンセプトをまるっと真空パックラッピングしたみたいなひねりのなさ。
大御所の映画解説者さんらがよく言う「最近の洋画配給会社は、原題まるごとカタカナ読みばかりで『哀愁』『追憶』『北北西に進路を取れ』的な、日本語のイメージ喚起力を使って惹きつけようという知恵がない」というのとやや相通じるものもある。
『愛と罪と』(1995年)『その灯は消さない』(96年)『牡丹と薔薇』(2004年)なんて見る前からゾクゾクするようなタイトルではありませんか。原作つきなら原作まんまのタイトルのほうが、謙虚であり原作及び作者のファンにも親切かもしれませんが、『晩鐘』を『女優・杏子』(2001年)にし、『独りまつり』を『愛しき者へ』(03年)にし、『あの道この道』を『冬の輪舞』(05年)にし、『わらの女』を『美しい罠』(06年)にした、「原作はコレだけれども、こういうお話にしてご披露したいんだよ」という前向きな姿勢が伝わってきました(もちろん、全作が全作、前向き通り“命中”したわけではないですけれど)。
考え過ぎかもしれませんが、制作サイドの料簡のどこかに、“視聴者観客の想像力、空想力や読解力を実際以上に低く見積もる”傾向、もっと言えば“ものを知らない、身もフタもなくプレゼンしなければ理解できない愚かな人々相手”という“どうせ”“所詮”な虚脱が眠っていはしないか。
今作『娼婦と淑女』も、プレサイトやスポーツ紙の先行紹介記事を読むと、安達祐実さんが華族令嬢と大工の娘、対照的な出生とキャラの2役を演じ、途中からは令嬢の身分になりすますという筋立てらしいし、もうちょっとなんとかならなかったのかとも思うのですがね。
『泥の華』とか。『灰と紅玉』(←ヒロインが“紅子”だし)とか。
大工の娘だけに釘をイメージして『錆びた純情』とか。鉋(かんな)をイメージして『愛を研ぐひと』とか。
………どっかで聞いたことあるようなのしか浮かんでこないではないか。安達祐実さんじゃなく、吉永小百合さんや和泉雅子さん、松原智恵子さん、男なら宍戸錠さんや赤木圭一郎さんが出てきそう。
企画会議以前のレベルか。月河のセンスも気がつけばだいぶズレてるな。気のせいかな。「気のせいだよ」と言ってくれる人募集。