林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

愛の近代化遺産

2007-12-04 | 拍手

  福沢桃介と川上貞

 NHK教育TV、夜10時20分頃から始まる「知るを楽しむ」が面白い。
最近では、終了してしまったが「ニッポン近代化遺産・明治大正昭和、知られざる物語」、中でも木曽川電源開発遺産に関しての「桃介と貞奴の愛のかたち」に感動しました。

本の表紙は「桃介橋 

解説案内人役の国立科学博物館主幹清水慶一先生が纏めた本や、ウィキペディアその他ネット上の文章から、二人の生涯などを簡単に纏めてみました。ふぅ。

桃介(1868~1938)とは福沢桃介であり、何と福沢諭吉に懇請されて福沢家の養子となり、後に次女と結婚した「電力王」のことだった!

福沢桃介(旧姓岩崎)は現在の埼玉県東松山市吉見の貧農の出であり、食い詰めた一家は川越市に移住。
頭脳・容貌・体格に恵まれた桃介は旦那衆の支援で慶応義塾に進学。
直ちに福沢諭吉の目に止まり養子縁組を懇請され、米国留学を条件に承諾。
後に諭吉次女と結婚するという逆玉。

帰国後、北海道炭鉱汽船や王子製紙に勤務したが、死病といわれた肺結核に罹り退社。
病気療養中に始めた株式投資で巨額の利益を得、「相場師」として名を馳せた。
しかし、その後の暴落を前にさっさと実業界に復帰して、いくつか会社を興したが、発電に目を付けて、木曽川の電源開発を開始した。

養父の福沢諭吉は、桃介の大車輪の金儲けにはいささか複雑な感想をもっていたらしい。お札になっちゃったくせに。

そしてこの頃、国際的大女優だった川上貞奴と「再会」するのである。
寡婦になっていた貞奴は既に女優業から引退していたが、超々有名人ではあった。
二人は公然と名古屋の貞奴邸で同棲を始める。

さ、正妻と舅諭吉の対応は.....。それは想像して下さいね。

 川上貞

相方の貞奴。
川上貞奴(1868~1946)、本名川上貞は日本橋の質屋の12番目の子として生まれたが生家は没落、芸者置屋の養女となり、後、「貞奴」として売り出す。
日本舞踊が巧みな才色兼備の芸者として、伊藤博文・西園寺公望ほか明治の元勲おじさま達をドキドキさせた。

後に反政府主義者の川上音二郎と結婚し、以後、山田風太郎先生も真っ青な波乱万丈はウィキペディアをご覧あれ。
欧州ではピカソ・ドビュッシー・ロダン・ジイドなど一流芸術家やフランス大統領夫妻などを夢中にさせた舞台女優に大化けした。
しかし、音二郎の死後、帰国した貞奴はよくあること。外国で評判を取ったことを妬まれて、花の盛りに引退し、名古屋に大邸宅を構えた。

二人は何故「再会」だったのか。
実は、福沢家の養子になる前の桃介は、芸者以前の貞が乗馬の練習中、野犬に襲われていたところを助けてあげたのである。
美少年と美少女は直ちにアツアツになったのである。養子になることを拒んでいたのは無理も無いが、実は福沢諭吉は神谷町のセンセイだったんです。

その後の桃介は猛烈に働いて、結核という災いを以って巨額な資金に成し、株の世界からさっさと足を洗い、紆余曲折。最後に電源開発に目を付けたのである。そのヘンが湯島天神でメソメソしている「婦系図」と異なるところ。

再開した二人は一致協力、襲い来る難局を巧みに、かつ豪胆に乗り切り、見事「電力王」となり、エジソンほか米国からも賞賛され、発電所は現在も稼働中。
多くの発電所や橋梁は、現代の経済至上の殺風景な構築物ではなく、美しい近代化遺産として大切に使われているし、国から重要文化財に指定されている。

二人は所謂不倫関係だった。
だが、貞奴の献身振りは誠に颯爽としており、ある時、難工事を極めた「大井ダム」で、重役達が尻ごみするところを、工事用の籠に二人で乗り込み、ワイヤーロープで谷底まで降りて、現場の作業員からヤンヤの喝采を浴びる壮挙を敢行。
周囲はこの公然たる不倫関係を、むしろ好意的に受け止めていたらしい。

桃介が体調を崩して東京の本宅に帰ってから、貞奴は私費を投じて「貞照寺」を創建。二人の愛の軌跡を見事な浮き彫りに残している由。
また、寺の対岸の鵜沼に広壮な別邸「晩松園」を建てて、朝夕、木曽川の流れを眺めていたそうだ。

以上、二人の巨大な事跡を抜き書きするだけで、草臥れてしまった森男の人生の百倍は生きた桃介と貞は、誠に偉大な二人である。
また、こういう事を教えてくれる「知るを楽しむ」NHKも偉いと思う。

たまたま、レズリー・ダウナーという人が「マダム貞奴」という本を書いて、「集英社」が出版しました。
この本では、貞奴の海外公演の実態を解明し圧巻だそうだが、桃介とのことが詳しく書かれているかどうかは、読んでないから分からない。
でも、NHKが出版した「知るを楽しむ、この人この世界、ニッポン近代化遺産」には好意的に書かれている。かたや2625円、こなた683円。造りは安っぽいけれど、内容は豊富。お勧めします。

ダウナー本は文庫本化したら、買ってみよう。
情けないね、このセコさ。

「マダム貞奴」の書評を朝日新聞書評欄(11/25)から転写しました。▼

 



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3 コメント

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復活しました (霜月一八)
2007-12-04 16:02:12
ご心配お掛けしました。
本日復活しましたのでお知らせいたします。

写真はとりあえず取込みだけですけど
なんとか前の状態に戻せました。

記事に関係ないコメントで申し訳ありません。

お立寄り頂ければ幸いです。
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なかなか読めませんでした。 (ジェームズ)
2007-12-04 17:05:54
森男殿、その後も筆折れることなく激しく書きまくっておられるようで、安心しました。わたくしこの半年ほど急に忙しくなってしまい、なかなか林住期を読めておりませんでした。特に先月の中ほどは静岡県沼津市で開催されたユニバーサル技能五輪の通訳ボランティアに出かけており、疲れが先週末まで残っており、
技能五輪選手のような22歳以下の諸君のように動き回ることができなく、歳の差を痛感させられた一週間でした。年末を迎えてまた仕事が忙しくなり、しばらくは拝読させていただけないかもしれませんが、面白い記事を期待しておりますので、相変わらず頑張ってくださいね。
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それはそれは ()
2007-12-04 20:38:19
ジェームス・ボンドさま。

それはそれはようござんした。
もしかしたら、プーチン氏にとっ捕まって、牢屋にブチ込まれているのか、と心配しておりましたよ。

健康第一、仕事は第二、ボランティアは第三。
「林住記」はおケツの方でようござんすよ。
ふんっ。

........失礼しました。
ご贔屓のほど、宜しくお願いしますね。
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