一花の燻り

風、
朝は余り気にならなかった風、昼前から強く吹くようになって騒がしい感じがする。
陽射しはかなりあるのに日陰で浴びるとひんやりして肌寒く、
花冷え？そう思わせる強い風。
まだ少し残るさくらの花びらがこの風によって無理やり剥奪されるように剥され、空に舞いながら落ちて来る昼下がり。

地上に散らばる花びらは重く、つむじ風に巻き上げられるように駆け足で地表を走り、段差のある所々で吹き溜まりを作っている、
このまま朽ちて行くか・・・その想いが巡る風の強い一日。
燻るさくら

４月もまだ清明を過ぎたばかりで
初夏にほど遠い４月初旬
あのさくらに
歓喜酔いしれたのが昨日のように思われる
さくらの終盤

未だにさくらは燻り
あの華やかな面影を残しているのに
人々はもう見向きもしない

そんなもの
・・・
春
さくらの開花と共に花に走る
異常な情熱も一週間ほどで失せて
もうさくらは過去の花となって空に舞い落ちて
地表に降り積もり時を経て朽ちる
・・・
人々の脳裏から消えていくさくら
さくらに対して人の想いなんてこんなもの
薄い一枚の紙切れの愛情となって
直ぐに破り捨てられる。